2024年2月7日 国民生活・経済及び地方に関する調査会質疑「障がい者×まちおこし 住みたい所に住める社会のヒントを探る」

○天畠大輔君 
れいわ新選組の天畠大輔です。
今日は、障がい者の居場所について伺います。代読お願いします。

参考人の皆さま、本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。まず、田口参考人と石田参考人に伺います。
私が過去にインタビューをした、筋肉がだんだん痩せて力がなくなっていく難病、ALSの女性の例を共有させてください。
彼女は、人口3000人程度の町に住んでいました。最初は地元の社協からのヘルパー派遣を受けて実家で暮らしていましたが、症状が進むにつれて、また両親が高齢化するにつれて社協のヘルパー派遣では足りなくなりました。そこで、自分でヘルパーを募集して直接雇用する「自薦」、自分で推薦、という字の「自薦」での一人暮らしに挑戦しましたが、2人しか集まらなかったそうです。そこで、思い切って市街地に引っ越し、何とか介助体制を整えました。もし、この地域にマルチワーク組合があれば彼女は地元に住み続けられたかもしれない、この制度を知ったときにそう思いました。

重度障がい者が地方で暮らす最大のハードルはヘルパー不足です。もともとヘルパーが足りない地域でも、マルチワーク組合が当事者の居住地にあれば、移住者の呼び込みや地元の方の副業で人手確保できる可能性が開けます。
2つ目のハードルは、ヘルパー派遣事業所の圧倒的な不足です。高齢者の介護保険サービスよりも需要が小さく、報酬単価も低いので、なかなか受けてくれる事業所がありません。詳しい方法は省きますが、このマルチワーク組合の枠組みを使えば、事業所不足を解消し、重度障がい者の当事者が人口急減地域でも在宅で自立生活できる可能性はあります。この可能性を実現するにあたって、人口急減地域の社会構造上、何か課題はありそうでしょうか。または、人口急減地域にとって期待される効果や、ご存じの類似事例があれば教えてください。田口参考人、石田参考人の順番でお願いいたします。

○参考人(田口太郎君) 
すみません、私、障がいに関してはそんなに明るくないので、的確な答えになるか分からないんですが、1つその課題として申し上げると、やはり、福祉労働者自体が今やっぱり、特に地方だと労働力不足がすごく言われています。ですので、やっぱりその根本的なその就業希望者ですね、これ地方だと、特に福祉系と観光系の労働力が不足していると言われているんですけれども、どちらも結構ハードワークであるということだと思っています。ですので、やっぱりそれが、じゃ、この特定地域づくり法でマルチワークの可能性ができることによってどれぐらい問題がクリアできるかどうかというと、やっぱりそもそものその求人に対する応募が少ないという業種ですので、なかなか厳しさがあるのかなというふうにちょっと個人的には考えています。

ただ一方で、今、地方で、よく最近いろんなところで地方と都市で炎上するということが起こっていますけれども、やっぱり地方における多様性の少なさみたいなことが多分1つの根本原因だと思っていまして、やっぱりその障がいを持った方々が地方で普通に暮らしている、暮らすということがどんどん保障されていくことが、結果的に地方の寛容性の高さを育むことになると個人的には思っていて、そこはある程度政策的であっても、やっぱりその多様性みたいなものをきちんと地方でも享受できる。だから、これは障がい者の皆さんへのフォローというより、むしろ障がい者の皆さんと接する機会を地方の人たちにもきちんとつくっていかないと、これは地方の人たちの理解不足が広がっていってしまうので、やっぱり何らかの政策的なことがあってもいいのかなと個人的には思っているんですが、なかなかその特定地域づくりのような、そのマルチワークでクリアできるというほど簡単な話ではないのかなというふうに個人的には思っております。
以上です。

○参考人(石田一喜君) 
ご質問いただき、ありがとうございます。
田口先生と重複しないように私からコメントいたしますけれども、福祉・介護施設等の人手不足、特に人口急減地区での人手不足というのは本当に深刻だというふうに私自身も受け止めております。
この中で、特定地域づくり事業協同組合制度も、こうしたキャリア、こうした対応をしたことがあるキャリアを持った方の一端的な受皿であったり、働く場所という意味では機能すると思います。実際にこうした施設での勤務を組み合わせた事例というのも複数出ておりますし、そういったところも実際に取り組んでおります。ただ、もちろん、こういった業種に就く場合には資格なども必要ですし、こうしたキャリアを持った方を新たにつくるとなると、地方での課題というところで受け止めが必要になってくると思います。

また、特定地域づくり事業協同組合制度が自ら事業を行うということは駄目ということになっておりまして、そこで雇用した人を事業所に派遣するということが第一目的となっております。なので、やはり地域に事業所、そういった業務をやるところがないと話が進まないというところがある意味では限界だと思います。
ただ、そこで働いた方が組合を卒業されて、その地域でそういったキャリアを実現していく、あるいは半農半Xじゃないですけれども、農業をやりながら元々やっていた職として介護・福祉施設で働くとか、そういうような選択肢を増やすという意味では当然意味があることですので、そうした意味での私からの回答にさせていただきたいと思います。
ご質問いただき、ありがとうございました。

○天畠大輔君 
代読いたします。
ありがとうございます。参考人のご意見を参考にさせていただきます。

次に、田口参考人に伺います。
クリエイティブサポートレッツという認定NPO法人があります。静岡県浜松市駅前の中心市街地で、重度知的障がい者と外部の人が暮らすシェアハウス・ゲストハウスを併設した文化センターや、誰もが使える私設私営の公民館など、様々な属性の人々が同じ空間で同じ時間を共有することによって双方向の学びが実現する事業を次々展開しています。
この団体が先日開いたシンポジウムでは、浜松の町全体で旧公民館の協働センターが今後どうあるべきか、がテーマでした。私も聞いてきました。すべての人に開かれているはずの公共施設が実際には重度の障がい者が参加できる場になっていない。そして福祉の分野と公民館などの施設の連携が弱いことが問題提起されました。

一方で、浜松市は、旧公民館の協働センターでの地域活動が活発で、配置する「コミュニティ職員」を若手に限定したりと、様々な工夫がされているそうです。また、協働センターと専門職のネットワークの重要性や、民間側も1つの分野にこだわらない仲介者が大事、といった意見が出ていました。私のヘルパーも、いろいろな職業経験があったり、別の本業を持っていたりします。多様な人材と協働することの大切さを日々実感しています。
田口先生は、これからは関係人口も含めた地域づくりに転換すべき、そして行政組織の企画力、政策立案力向上が必要、と指摘されています。社会から周縁化されがちな人たちを含めて地域コミュニティをつくるには、行政側は職員の人材面で、どのような工夫をする必要があるとお考えでしょうか。

○参考人(田口太郎君) 
ありがとうございます。
恐らく、職員の人材面というと、やっぱり今、地方の場合は、財政がなかなか苦しくて自主財源で新しい事業をするということがすごく難しくなっていることもあって、国が提示している補助メニューに乗っからざるを得ないということは現実問題としてあるんです。
その一方、国の方もなかなか地方の苦しさということを理解していて、いろんな、簡単に言うと、もう手取り足取りいろんな施策ができ上がっている結果、ただ、それが、地方の人たちが何も考えずにいろんな事業ができるような状態ができてしまっているということは、実は、結果的に思考停止になる1つの要因なんじゃないかというふうに考えています。

そういう意味でいうと、やっぱり少し、その地方の自治体が企画するときに、特にその分野に精通した現場の人であったり、専門家みたいな人が少し企画伴走をするような仕掛けができてくると、そこでちゃんと行政の方々が自分の企画を壁打ちしながら、その評価、検証みたいなことを確認する。恐らく仮説の立案が上手にできていないという現実が多分あると思うので、その仮説の設定の段階からきちんと対話をしながら伴走するような専門家の存在とか、専門的立場の存在というのが必要なのかなというふうに考えています。
以上です。

○天畠大輔君 
代読します。
ありがとうございます。参考にさせていただきます。次に、平山参考人に伺います。

重度障がい者が住みたい地域で暮らすうえで、家探しは非常に高いハードルとなっています。参考人も論文の中で、「重度肢体不自由者が他人介助者を利用して親と別居し、独立世帯を形成するという選択肢が在宅生活に加わったが、在宅生活の基盤となる安定した住宅を確保できないためにその選択をできないという実態がある」と述べられています。
その解消策として国はセーフティーネット住宅の仕組みを構築しましたが、登録が少なく、空きもあまりないうえに、対象者をカテゴリー化し、障がい者の入居を事実上拒否することも可能なため、成果が上がっていないと思います。
参考人は、重度障がい者の住宅確保には「バリアフリー整備を有する公営借家の供給が必要である」と主張されていますが、年々増え続けている空き家を活用してバリアフリーの公営住宅を増やすために国はどのような施策を取るべきとお考えでしょうか。
また、地域での自立生活を望む重度障がい者に対し、安定した住宅の供給と環境整備への支援として、公営住宅を増やす以外にも具体的なアイデアがありましたらご教示ください。

○参考人(平山洋介君) 
障がい者を含め、いろいろ住宅にお困りの方に対してどうするかということは、いろんな国でいろんなことを試されてきているわけですが、共通しているのは、社会賃貸住宅というカテゴリーなんですけども、そういう住宅を供給するというのが一般的です。
社会賃貸住宅と申しますのは、1つはマーケットより家賃が安いということと、もう1つは自治体が入居者を選ぶということで定義されるんですが、それに対して公的援助がたくさん、結構深い公的援助がなされます。
これは日本では自治体の供給する公営住宅がそれにあたりますが、いろんな国では自治体だけではなくて民間のものも社会住宅にすることができます。ヨーロッパと比べるのが適切かどうかいろんな意見がおありかもしれませんが、ヨーロッパでは大体、国によって違いますが、大体2割ぐらいが社会賃貸住宅です。日本の場合は、公営住宅は3.6%あるだけで極めて少ないということがあります。
障がい者の方はどうされているかというと、大きな親の持家に住まれているということなんですね。日本では社会的に、例えばヨーロッパでは政府が保障するものを日本は家族が保障するということをずっとやってきたという歴史があってそういうこともあるんだろうというふうに思います。ただ、そうなりますと、障がいをお持ちの方は家から出て自分で生活するという選択肢をなかなか持てないということがあります。
ですので、1つは公営住宅を増やす必要があると思いますが、今の公営住宅だけではなく、空き家を使って社会住宅に転換していくというやり方があり得るだろうと思います。

住宅セーフティーネット法が2007年にできまして、2017年に改正されて、そういう方向を目指しているのかなと思いましたが、社会住宅、重要なことは、非常に大規模な補助とその代わり行政の規制ですね、俗な言い方でアメとムチということなんですけども、日本のセーフティーネット法はアメもムチも非常にちょっとしかないということです。ですから、空き家に対して行政がもっと補助金を出してバリアフリーに改造して障がい者に供給していくというやり方が現実的にやれるのではないかなというふうに思います。

今申し上げましたように、障がいをお持ちの方、非常にかなりの割合の方、親御さんの家に住んでおられるということなんですけども、親御さんもいつまでも生きておられるわけではありませんので、その後どうするんだということが割と差し迫った問題になってきていると思いますので、社会賃貸住宅を整備していくというようなやり方、今の住宅セーフティーネット法のアメとムチの両方を強化していくというようなやり方が必要ではないかと考えます。
以上です。

○天畠大輔君 
参考人の皆さま、ありがとうございました。質疑を終わります。