2024年3月6日 予算委員会質疑「今こそ改正!障害者基本法」

○天畠大輔君
代読します。
れいわ新選組の天畠大輔です。

今年は、障害者権利条約を日本が批准して10年の節目です。
しかし、障害者施策の理念法である障害者基本法は、権利条約を批准してから一度も見直されていません。障がい当事者団体から、法全体の改正を求める声が、日に日に強まっています。
本日は、総理や大臣に当事者の話を聞いていただきたく、参考人をお呼びしました。
権利条約の批准にあたって尽力された当事者のお一人、日本障害者協議会の藤井克徳代表です。
まず、藤井参考人、この障害者基本法の歴史を教えてください。
これまでの改正の特徴や改正の背景をどう見ていますか。

○参考人(藤井克徳君) 
私は、日本障害者協議会の藤井克徳と申します。お答えいたします。

障害者基本法は、元々は心身障害者対策基本法として1970年に制定されました。当時、厚生政務次官の橋本龍太郎さんが、鉛筆をなめなめ原案を作ったというエピソードが残っております。
海外の情報が入ってくる中で、障がい当事者から法の改正を求める声が出始めてきます。「私たちは、身体とか知的には障がいがあっても心には障がいがない」また「対策という響きは、人権のテーマとしては相入れない」こういう主張でした。また、精神障がい者が法律に入っていなかったことも問題視されました。
こうしたことに、これらに応えるために、1993年、心身障害者対策基本法から「心身」が省かれて、そして「対策」も省かれて、障害者基本法と改称されました。

さらに、2004年と2011年と改正が続きます。ここでの改正のポイントは、地域生活の拡充の方向性、また差別禁止条項の新設、そして新しい障がい者観が明示されました。
この新たな障がい者観というのは、障がいというのは、本人に属するだけではなくて、本人が置かれている環境との関係で障害は重くもなれば軽くもなる、こういう考え方であります。障がいの本質を環境との関係で捉えたことは画期的なことだと思っています。
こうした改正の背景には国際潮流がありました。1981年の国際障害者年、そして2006年に国連で採択された障害者権利条約が重要な役割を果たしました。

○天畠大輔君 
代読します。
ありがとうございます。
国際潮流や国内の声に合わせて改正がされてきたことがわかりました。
再度、藤井参考人に伺います。今の日本の障がい者が置かれている状況をどう見ていますか。

○参考人(藤井克徳君)
私は、全盲状態になった頃から、自分の中に障害者政策の水準をとらえるものさしのようなものができ上がってきました。4つの尺度です。
1つは、障がいを持たない人の暮らしぶりとの比較です。2つ目は、日本と経済的に同水準の国の障がい者政策との比較です。そして3つ目は、過去との比較です。4つ目は、障がい当事者の実態やニーズとどう適合しているか。この物差しは30年前ほどつくったんですけれども、今でもさびついていないというふうに思っています。

そして、時代は下ります。2022年、一昨年ですね、8月のことです。国連の障害者権利委員会において、日本の障害者権利条約の推進状況、実施状況、これが審査を受けました。この審査を受けて総括所見が公表されています。総括所見は大変膨大でありますので、ここでは象徴的なことを3つほど紹介しておきます。
1つは、日本の政策基調はパターナリストアプローチ、人権モデルと調和をしていない。パターナリスト、パターナリズムというのは父権主義と一般的に訳され、本人不在とも言われております。2つ目は過度な分離政策。とりわけ、学校教育に厳しい批判が向けられました。また、3つ目は精神障がい者の立ち遅れであります。
総括所見をいかに生かしていくのか、これは今後官民挙げて考えていくべきテーマかと思っています。

○天畠大輔君 
代読します。
ありがとうございます。
藤井参考人がおっしゃるように、日本は今、総括所見に対する姿勢が問われており、まずは権利条約をしっかりと受け止めていると内外に示すことが必要です。

さて、児童福祉法とこども基本法の第1条には、「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と書かれています。
そこで、こども政策担当の加藤大臣に伺います。この改正の背景を教えてください。

○国務大臣(加藤鮎子君)
お答え申し上げます。
ご指摘の点について、まず児童福祉法につきましては、児童虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策の更なる強化等を図った平成28年の児童福祉法改正の際に、児童福祉法の理念の明確化を図るため盛り込まれたものでございます。これは、児童虐待に係る相談対応件数が年々増加する状況の中で、児童の権利に関する条約に定められているような、こどもが権利の主体であること、その最善の利益が優先されるべきことが明確に法文上なされていない等の課題があったことを踏まえて改正されたものと承知をしてございます。

続きまして、こども基本法につきましてですが、議員立法で制定されたものでございますが、その趣旨説明において、提案者から、「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、「次代の社会を担う全てのこどもが、将来、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会」を目指すことを明示し、それに向けて「こども施策を総合的に推進すること」を目的としている」と述べられていると承知をしてございます。

○天畠大輔君 
代読します。
こども分野は、批准した条約の理念に向かって政策を進めることを明確にするために法文を変えたことが分かりました。
加藤大臣、今度は障害者施策の担当大臣として伺います。
障害者権利条約を批准してから10年がたちます。本来はもっと早く、障害者基本法は改正すべきでした。総括所見を誠実に受け止めるならば、今からでも、障害者基本法も第1条に、たとえば、「障害者の権利に関する条約の精神にのっとり」などと入れるべきではないですか。

○国務大臣(加藤鮎子君) 
お答え申し上げます。
障害者権利条約の批准に向けた法整備として行われた平成23年の障害者基本法の改正においては、障がい当事者を構成員として含む障害者制度改革推進会議における議論の結果等を踏まえ、目的規定を含め、同条約の精神にのっとり必要な改正が行われたものと認識をしてございます。
たとえば、障害者権利条約の第1条には、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること」や、「障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」が目的として規定をされています。
平成23年の障害者基本法の改正におきましては、こうした障害者権利条約の規定を踏まえ、第1条の目的において、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、ひとしく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という理念を規定するなどの改正がなされたものと認識をしております。
その他の障害者基本法の規定についても、障害者権利条約の批准に向けた法整備として改正された平成23年の改正により、障害者権利条約の精神にのっとったものに改正されたものと認識をしてございます。

○委員長(櫻井充君) 
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
答えになっていません。代読お願いします。

平成23年の改正は、障害者権利条約を批准する前の改正でした。私が伺ったのは、既に条約批准から10年がたった今、第1条に書き込むべきだということです。
「条約の趣旨を踏まえているからよい」というのは、不誠実ではないですか。加藤大臣、もう一度ご答弁ください。

○国務大臣(加藤鮎子君)
お答え申し上げます。
条約批准に向けた法整備として改正された平成23年の障害者基本法の改正により、同法の目的規定を含めて障害者権利条約の精神にのっとったものに改正されていると認識をしてございます。

○委員長(櫻井充君) 
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
こどもも障がい者も権利条約を批准している状況は同じなのに、障がい者は法文にない。
加藤大臣、おかしいと思いませんか。

○国務大臣(加藤鮎子君)
お答え申し上げます。
繰り返しの答弁となってしまい恐縮でございますが、本質的には条約批准に向けた法整備として改正された平成23年の障害者基本法の改正により、同法の目的規定を含めて障害者権利条約の精神にのっとったものに改正されているというふうに認識をしており、委員のご指摘の本質の部分については規定の中で法改正の際に盛り込まれているというふうに認識をしてございます。

○委員長(櫻井充君) 
発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
時間がもったいないので、次に行きます。代読お願いします。

ここまで総括所見に関連して伺ってきました。
私たち障がい者は、日々の不平等や深刻な人権侵害の経験に基づき、総括所見が大事だと訴えています。
先ほど、こども分野では児童虐待の相談対応件数が年々増加という話が出ていましたが、障がい者も同じように虐待はずっと問題化されており、その件数も増えています。

藤井参考人に伺います。
現在の障害者基本法には多くの課題がありますが、改めて、なぜ今障害者基本法の改正なのか、あわせて改正にあたっての留意点はありますか。

○参考人(藤井克徳君) 
障害者基本法が改正されて13年がたちます。この間、障害分野をめぐっての状況は随分変わりました。変化を踏まえて、今度の改正において少なくとも次の2点を留意点として挙げておきます。
1つは、2014年に批准された障害者基本法、あっ、すみません、障害者権利条約、これに基づくことです。権利条約と調和するような改正作業でなければいけないと思います。法律の構造、すなわち章立ても見直しが必要かもしれません。
2つ目、遅れているところをやっぱり引き上げることです。総括所見の提起したことに加えて、最近問題になっています優生保護法問題の対処、また、女性障がい者の複合差別問題の解消、本格的な所得保障制度の確立、過度な過重な家族負担からの解放、こういったことが挙げられます。

所得保障でいうならば、38年前の障害基礎年金制度の創設以来、実質的に金額の水準は変わっていません、変わってはいません。これらの好転につながるようじゃなければ本当の改正とは言いません。このまま推移しますと、この国に大規模な置き去り集団が生まれかねません。障害者基本法には、これを食い止める役割があると思います。

政府や国会におかれましては、あの障害者権利条約が作られる過程で何遍も繰り返された、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」これを想起し、そして障がい者、家族が「わが意を得たり」を実感できるような改正を実現してほしいと思います。

○天畠大輔君 
代読します。
ありがとうございます。

総理に伺います。
藤井参考人のお話を伺って、基本法見直しの必要性はご理解いただけたでしょうか。
過去の事例では、閣議決定により内閣府が総合調整権限を持ち、省庁横断での取組ができると伺っています。障がい当事者団体の意見や要望を受けつつ、総括所見の検証と、それを踏まえた基本法改正などの施策の策定に早急に政府全体で取り組むため、この閣議決定をすべきではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
本年度からの5年間を対象期間とする第5次障害者基本計画については、ご指摘の総括所見の勧告等を踏まえつつ、障がい当事者などからなる障害者政策委員会からご意見をいただいて、障害者政策の大きな方向性や取り組むべき政策課題等について策定したものです。

基本計画では、総括所見の勧告等についても、各府省が適切に対応等を行うとともに、障害者政策委員会が監視を行うこととされています。また、基本計画の実施状況に関して、委員会が関係各大臣へ勧告を行うことが可能となっています。まずは、こうした枠組みの中で計画に基づき着実に事務を遂行することが重要であると考えますが、政府としても、各省庁任せになることのないよう、障害者政策委員会の庶務を担当する内閣府が中心となって、政府全体の見地から関係行政機関の連携確保、これを着実に図ってまいりたいと考えております。

○委員長(櫻井充君) 
発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
基本法改正は待ったなしなんです。
1点伺います。総理、障がい者の友人はいますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
私も選挙区、地元で何人か、障がいを負っておられる方、友人として持っております。

○天畠大輔君 
総理、そのご友人の顔を思い浮かべて、基本法改正の意気込みをお願いします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
ご指摘のように、友人の顔も浮かべながら、ご指摘の点について考えていきたいと思います。

そして、先ほど紹介させていただきましたこの第5次障害者基本計画、これはまさに本年度スタートしたものであります。この計画、先ほども申し上げたように、ご指摘のこの国連からの総括所見を踏まえつつ、障がい当事者からなる障害者政策委員会から意見をいただいて策定したものです。そして、この計画の中身においても、この総括所見の勧告等についても適切に対応するとともに、障害者政策委員会、障がい者当事者の皆さんからなるこの障害者政策委員会が監視を行う、さらには、委員会が関係大臣に勧告を行う、こういったことが可能となる、こういった内容になっています。

この計画が本年度からスタートしたわけでありますから、まずはこの本計画の枠組みの中で対応を実際に具体的に進めていくことが重要であると考えておりますが、その上で、障害者施策の効果的な進め方については不断に検討を進めてまいりたいと思います。

○委員長(櫻井充君) 
しばらくお待ちください。

○天畠大輔君 
総括所見に応えるには、そのペースでは間に合いません。代読お願いします。

次回の条約審査に向けた定期報告の締切りは2028年2月です。国連の権利委員会は、その1年前までに事前質問事項を作ります。
総括所見という宿題に取り組める期間は実質3年を切っている中で、個別の法律のバージョンアップを促すためにも基本法の改正は待ったなしです。

「誰1人置き去りにしない」を目指すSDGsの旗を政府は振っていますが、藤井参考人が話されたように、障がい者は今も置き去りです。
基本法を変えない「言い訳のようなもの」も政府は今日、たくさんおっしゃいましたが、やるべき理由はたくさんあります。
今が変えるチャンスだと申し上げ、質疑を終わります。