2023年2月22日 国民生活・経済及び地方に関する調査会質疑 参考人質疑「障がい者を含む就労困難な人たちへの就労支援や所得保障について」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。本日はありがとうございます。
就労困難者への支援について質問いたします。代読お願いします。

代読いたします。
現在、物価高が進む中で、給料のベースアップの必要性が叫ばれていますが、そもそも就労困難な私たち障がい者は、労働市場から排除されている現実があります。日本では、一般就労が困難な障がい者には、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業所やB型事業所などの福祉的就労しか選択肢がほとんどない状況です。

B型事業所を例に挙げると、労働契約を結ばない前提の制度になっているため、労働契約関係の法律の適用や雇用保険への加入もなく、最低賃金法の適用もありません。「工賃」と呼ばれる報酬は平均月額1万5000円程度しかなく、親族の支援や障害者年金がなければ生活ができません。東京のあるB型事業所では、PCのデータ入力、バザーの物品販売を1か月行っても、工賃は1500円から2000円ほどしかもらえません。

このような状況の中で、事業所の全国組織きょうされんの2022年の調査では、障がい当事者の約6割が物価高による食費の値上がりに困窮し、「洗濯は5日に一度」「シャワーは水」「衣類を買わない」など、人権侵害とも言われるような、明らかに過度な節約を強いられている現状が明らかになりました。物価高対策以前に、障がい者の所得保障すらされていない現状では、障がい者の社会参加は進みません。さらに、A型・B型事業所では、働いている障がい者はあくまでもサービスを受ける対象であり、サービス提供者に利用料を払っています。健常者と対等な立場で働ける環境ではありません。

一方、海外に目を向けると、特にヨーロッパでは、障がい者や長期失業者、高齢者、移民、薬物常用者、シングルマザーの方々など、社会的に不利な状況にある人たちが、ほかの人たちとともに働く社会的事業所、ソーシャルファームの取組が進んでいます。このソーシャルファームの最も重要な理念は、障がいなどの困難性の有無にかかわらず、みなが「同じ報酬で、対等な立場で」働ける場の提供です。日本では、2005年に滋賀県が社会的事業所の制度を創設し、事業所に対する補助も行っています。東京都では、2019年に条例が制定され、ソーシャルファームの創設や活動に対する支援を行っています。しかし、国として社会的事業所を認証し支援する制度は確立されていません。

小峰参考人は、就労困難な人たちへの支援を進める日本財団の「WORK!DIVERSITYプロジェクト」にも関わっておられると思います。ソーシャルファームの実践も含めて、就労困難者の社会参加を進めるためにどのような方策が考えられるのか、小峰参考人のご意見をお聞かせください。また、久我参考人と酒井参考人からも、ソーシャルファームに限らず、就労困難な人たちへの支援のあり方についてご意見がありましたらお願いいたします。

○参考人(小峰隆夫君)
ご質問ありがとうございます。
ご質問の中にありましたような活動を私もしておりますが、私の担っていた任務というのは、そういった障がい者をはじめとして、なかなか就労が困難な人たちが世の中にどれぐらい存在して、その人たちが通常の職業を得て、通常の所得を得るようになると経済的にどれぐらいのプラスがあるのかということを推計するというのが、私が参加していた委員会の任務でしたので、そういったことをいたしまして、ですから、具体的に何をやればいいかというところまでは私たちの担当した委員会ではやってないんですけれども、少なくとも、潜在的な、そういった今なかなか社会参加ができない人たちがいる、その人たちを社会参加に導いていけば相当大きな潜在力は発揮できるという点を確認したというのが私たちの委員会の成果で、これはまさにこの調査会が掲げている、「誰もが取り残されず希望が持てる社会の構築」ということにもつながるというふうに思います。

○参考人(久我尚子君)
その就労困難者の方の支援ということについて、ちょっと私の専門の領域ではなかなか意見を申し上げることが非常に難しいんですけれども、ひとつは、やはりこういう場でいろんな機会で声を出していただくことは非常に有意義だと思いますし、小峰先生のようなお立場の方が、その就労困難者の方のポテンシャルのようなものを、先ほど推計したような数字のお話も出されていましたが、やっぱり世の中を動かしていくにはどれくらいの数の方がお困りになっていて、具体的にどういうところで、希望がかなえられるとこういうポテンシャルがあるというのを具体的に示していくということは非常に重要だと思います。

○参考人(酒井正君)
私として、障害者雇用詳しいわけではないので、就労困難者一般ということで意見を述べさせていただくとすると、やはり、その就労困難者への支援ということを言われるんですけれども、現実的にそれをやっていくというふうになると、いろいろと難しいところが出てくる。

先ほど私の意見陳述の中で詳しく述べた求職者支援制度も、実はこの対象者として就労困難者というのが想定されているわけなんですね。その就労困難者にもかかわらず、たとえば出席要件が非常に厳しいというと、その中の、そういう人たちの中には、必ずしも一般の人と同じように職業訓練に参加できる、そういう人たちばっかりではないと、そういう配慮から今回このコロナ禍で出席要件緩和されたというふうに私は解釈しておるところなんですけれども。そのように、何か訓練を与えようとして、スキルアップの機会を与えようとしても、そもそもそういうところに乗ってくることが難しいという方に対する対応、配慮というのが今後もどうしても必要なんじゃないかというふうに思っております。そういう意味でも、そういった人たちへの配慮を持った制度づくりというものが今後も行われていってほしいなと考える次第です。

○会長(福山哲郎君)
速記を止めてください。

○会長(福山哲郎君)

速記を起こしてください。

○天畠大輔君
ありがとうございます。
続いて、障がい者のテレワークについて質問いたします。代読お願いいたします。

酒井参考人に伺います。
就労困難者の就労支援を考える上で、業務のオンライン化も重要なテーマであると考えています。
パンデミックを契機に業務のオンライン化が進む中で、酒井参考人はテレワークによって中間層の仕事喪失リスクを論じられています。その一方で、テレワークが障がい者などの就労の選択肢を広げていることも事実だと考えております。雇用の観点から、テレワークのメリット、デメリットについて酒井参考人のご意見をお聞かせください。

○参考人(酒井正君)
ありがとうございます。テレワークに関して、私、一応、資料を一番最後に、30ページ目に参考として用意したわけなんですけれども、ちょっと時間がなくて紹介する機会はなかったんですけれども、テレワークがどういうふうにあるべきかということとは別に、客観的にどういうことを予想するのかということを述べさせていただきたいと思います。

いくつかの調査あるいは研究から、このコロナ禍で急速に広がったテレワークというものが、主に年収の高いような職種でテレワーク実施率が高く実施されているということが分かっているわけです。私、全般的にテレワークが普及したということは、先ほど就労困難者という話ありましたけれども、まさにいろいろな働き方、働きやすさということを実現する上でも非常に重要です。
また、ちょっと参考資料として、ごめんなさい、今回入っていなかったかと思いますけれども、たとえば家庭のあり方ですね、父親の育児、家事参加といったことにもテレワークというのはいい方向に寄与するんじゃないかというふうに希望を込めて書いたこともございます。
ただ、このテレワーク、先ほど年収の高い職種の方が実施率高いというふうに申し上げましたが、単純にこれを何か喜ぶだけでいいのかということがあるかと思います。

長期的な視点で考えたときに、もしかして現下で、コロナ禍において、テレワーク非常に実施するようになった職種においても、もしかして、これテレワークができるようになったということは、企業にとってはフィジカルな距離といったものが関係なく、その場にいなくても仕事ができるということに気づいたわけですね。そうすると、これ極端な話、この仕事海外にやってもいいんじゃないかと、海外でやってもらっても同じことできるんじゃないかというような発想にもなりかねないわけです。
そうすると、テレワークが実施できる仕事、確かに統計を見れば、年収の高いような仕事で、また、比較的非定型的なスキルを要するような仕事だというようなことを言われていますけれども、単純にそれだけかというようなことがあって、もしかして、ある種の雇用喪失を、ジョブディストラクションを発生させているんじゃないかというような懸念を述べた次第です。そこがある意味でのデメリットというか、今後長期的な観点で注視していかなければいけないところだというふうに思います。
ただ、その流れというのは止めるわけにはいかなくて、やはりそのテレワークのメリットというのを生かしながら、海外にも流出しないような仕事、あるいはデジタル化されて奪われないような仕事というものにシフトしていく、そういう中でテレワークというものを使っていくということが重要なのではないかなというふうに考えるところです。

○天畠大輔君
参考人の皆さま、ありがとうございました。これで質疑を終わります。