2022年12月6日 厚生労働委員会質疑「障がい者関連束ね法案 対政府質疑」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。代読お願いします。

突然、通告なしの質問で恐縮ですが、大臣は昨日の参考人質疑をご覧になりましたか。
100年以上、日本の精神科医療政策の真の改革に取り組んだ厚労大臣はいないとの意見。
一向に減らない身体拘束への警鐘。
100名以上の当事者が期待を込めて現地で見守った国連の対日審査。
審査後初めての法改正で総括所見が軽視されたことへの失望。
束ね法案に対する怒り。
私は議員1期目の若輩者ですが、立法府の一員としてじくじたる思いです。
大臣はどう受け止めましたか。
お答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
直接見ておりませんけれども、参考人質疑の概要は目を通させていただきました。

○天畠大輔君
参考人質疑をしっかりと見てください。代読お願いします。

まず、精神保健福祉法について伺います。
精神保健福祉法の改正案第1条に、精神障がい者の「発生の予防」という文言が残っています。
なぜでしょうか。
どのような検討の経緯を経て残すことになったのか、大臣、お答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
残ったというか、改正の対象にしていないということだと思いますけれども、精神保健福祉法の第1条には、法律の目的として、精神障がい者の医療及び保護を行うことや社会復帰の促進等のために必要な援助を行うことのほか、その発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障がい者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図る旨が規定されております。
同法において、精神障がい者とは精神疾患を有する者を意味することから、ご指摘の「発生の予防」という文言については精神疾患の発生を予防することを規定しているものと承知をしております。
この文言については、当事者の方も含めた関係審議会等での議論においても、当該文言の改正に係る要望等がなかったところでございます。
また、その解釈を含め、現行の規定を維持する形で今般の改正案を作成させていただいて提出をしたところでございます。

○天畠大輔君
「発生の予防」という文言は、優生思想を想起させます。代読お願いします。

昨日の参考人質疑でもあったとおり、「発生予防」という4文字は当事者にとって非常につらい響きです。
自分は本来存在すべきではないと思わせる表現です。
検討会で指摘がなかったという答弁ですが、言い訳にならないと思います。
そもそも、昨日も指摘がありましたが、障害者権利条約第17条が示すように、全ての障がい者は他の者との平等を基礎として心身がそのままの状態で尊重される権利を持っています。
「発生の予防」という文言は、この理念の浸透を阻むものです。
改正案の条文から「発生の予防」の文言は即時撤回すべきです。
大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
広くメンタルヘルスの重要性、これが指摘をされているわけでありまして、そういった中で精神疾患の予防の概念、これは重要なものと考えておりますが、一方で、ご指摘のとおり、そうしたご指摘があることも十分承知をしております。
したがって、その「発生の予防」という文言の趣旨について誤解を招くことのないよう、周知の方法も含めて検討していかなきゃならないと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
周知より直ちに撤廃をすべきです。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
同じ答弁の繰り返しになって恐縮ですけれども、メンタルヘルスそのものの重要性が非常に広く認識される中で、そうしたものの予防、これも大変重要だと考えているところでございます。
ただ、先ほどご指摘もあるところもございますので、この「発生予防」という文言の趣旨、これは誤解のないように取り組んでいきたいと考えております。
誤解を招くことがないように取り組んでいきたいと思っております。

○天畠大輔君
代読します。
次に、身体拘束について伺います。
厚労省は身体拘束を減らすと言いながら、現在、身体拘束における医師の裁量が広がる要件検討を、要件変更を検討しています。
大臣、政府はこれまでに、身体拘束を減らすためにどのような政策を行ってきたのですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
身体拘束の最小化を図るため、平成16年の診療報酬改定で、医療保護入院等診療料を新設をし、その算定要件として、精神科病院に行動制限最小化委員会を設置することを定めたところであります。
この委員会では、やむを得ず行動制限を行う場合の手順等を盛り込んだ基本指針の整備、患者の状況の検討会議、身体的拘束の早期解除等のための研修会の実施等を求めているところであります。

○天畠大輔君
代読します。
今言及された行動制限最小化委員会という仕組みは、2004年にできたということです。20年近く行っているこの施策で身体拘束は減ったのでしょうか。2004年から現在までの身体拘束件数の推移をお示しください。
また、行動制限最小化委員会のために使われた診療報酬の量を教えてください。

○政府参考人(辺見聡君)
精神科病院での毎年の調査日、これは6月30日にあたりますが、における身体的拘束の件数は、2004年から2014年の10年間で、5242件から10673件に増加しており、その後はおおむね横ばいで推移し、2021年には11136件でございます。
また、診療報酬の医療保護入院等診療料の毎月の調査日、これも6月審査分でございますけれども、審査月ですね、毎年の審査月における月当たりの算定回数は、2004年から2014年の10年間で、5149回から10318回に増加しており、その後はおおむね横ばいで推移し、2021年は10539回でございます。

○天畠大輔君
代読します。
20年近く身体拘束の改善を目指したけれど、減るどころかむしろ急増している。それにもかかわらず、政府は同じ施策を続けています。
大臣は、身体拘束に関するこれまでの調査研究や政策の効果をどう評価していますか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今ご説明させていただいたように、この間、身体拘束が増加をし、その後、高止まっているという実情もあります。
身体拘束の最小化を図っていくためには、更なる実効的な方策を検討していく必要があります。
本年6月に取りまとめが行われた、地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会において、隔離、身体的拘束の最小化に一層取り組むことが提言をされたところであります。
この提言を踏まえて、現在、隔離、身体的拘束を最小化するための具体的な方策について検討を行っております。
精神障がいを有する当事者の方にも意見を聞きながら、この検討を進めていきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
政策の効果として極めて疑問です。代読お願いします。

しかも、政府は、強制入院又は身体的拘束の最中、その後に発生した死亡事案の件数について把握していません。
今年10月27日の参議院厚労委員会での答弁によると、独立した調査機関を立てたり、身体拘束を減らすための数値目標を立てたりすることにも後ろ向きでした。
手をこまねいているうちに身体拘束で人が亡くなっていきます。
20年近く続いたこれまでの取組の延長では、いけないのではないでしょうか。身体的拘束要件の告示の見直しはすべきではありません。

これからも注視していきます。代読お願いします。

次に、グループホームの見直しについて質問します。
今回の改正案は、一人暮らしを希望する方への支援を明文化するというものです。
この法改正後、一人暮らしへの移行支援に特化した「通過型」というグループホームの新類型をつくることが検討されています。
地域移行を進めていく上で一人暮らしへの支援は大切です。
一方で、今回の改正案にもある地域生活支援拠点等の整備をより一層進めることで、グループホームに限らず、障がい者が制度を利用しながら地域での暮らしを実現できる体制づくりが先決です。
グループホームで一人暮らしへの支援を充実させること自体は否定しません。
しかし、「通過型」という新類型をつくってしまうと、一人暮らしを希望する人は住み慣れたグループホームを離れ、「通過型」に移ることになります。
仮に一人暮らしへの移行が困難だった場合、住み慣れたグループホームに戻れる保証はどこにもありません。
新類型をつくる必然性があるのかが疑問です。
大臣、現行の体系の中で一人暮らしの支援を充実させる方向で検討いただけないでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今般の改正案は、グループホームの支援内容に一人暮らし等に向けた支援等が含まれることを法律上明確化し、その支援の充実を図るというものであります。
障がい者当事者等にも参画いただいた社会保障審議会障害者部会報告書においては、グループホームの利用者の中には一人暮らし等を希望する者が存在をしているとした上で、利用者が安心して暮らすための支援を行うとともに、指定基準、省令において、本人が一人暮らし等を希望する場合の一人暮らし等に向けた支援の充実を検討すべきとされ、一人暮らし等に向けた支援や定着のための支援の充実に対する報酬上の評価について検討を求めるとともに、あわせて、指定基準において新たなグループホームのサービス類型についても検討すべきともされているところであります。
具体的な検討にあたっては、これから具体的な検討を行っていくわけでありますが、衆議院の厚生労働委員会の附帯決議で、福祉からの卒業として一人暮らし等への過度な誘導につながらないよう、新たなグループホームの類型の創設については丁寧に検討することとされているところであります。
こうしたことも踏まえて、先行事例あるいは当事者の皆さんの意見も踏まえながら具体的な検討を進めていきたいと考えております。

○天畠大輔君
代読します。
障害者部会の最終取りまとめ報告書には、「一人暮らし等への移行そのものが目的化した指導・訓練のような性質であってはならない」と書かれています。
「通過型」という新類型をつくったり、現行のグループホームに対して一人暮らし支援に手厚く報酬を付けることは、一人暮らしへの移行を目的化する要因になるのではないかと懸念します。
先日、グループホームで暮らす知的障がい者の方に話を伺いました。
グループホームでは大規模化が進み、10人でトイレやお風呂を共有、食事は宅配の冷凍が1週間分、キッチンには鍵がかかり、自由に使えないところもあるそうです。
これでは施設と変わらない、快適に過ごせて自由がある当事者が住むためのグループホームにしてほしいと話していました。
まずは、グループホームの大規模化、施設基準化といった根本的な問題に目を向けてください。

厚労省は、こうしたグループホームに住む多くの知的障がい者の方を始めとして、当事者の生の声を十分に聞けていると認識されていますか。
また、あるグループホームでは定期的に当事者だけの会議を開き、生活の困り事や支援者からされた嫌なことなどを当事者同士で話し合っています。
国としても、当事者と丁寧に話し合う場を設け、グループホームに住む当事者の生の声を政策に反映していただけないでしょうか。
大臣の考えをお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
まず、今般の障害者総合支援法の見直しにあたっては、社会保障審議会障害者部会において身体障がい及び精神障がいの当事者、知的障がい者の家族に委員として参画をいただき議論を行っていただくとともに、当事者や支援者等の団体などからもヒアリングを行ったところであります。
特に、グループホームの見直しに関しては、グループホームに入居されている障がい者や事業者を対象とした全国調査を実施し、その結果も踏まえて議論を行っていただいており、当事者の声を踏まえながら進めさせていただいているものと考えております。
先ほど申し上げましたように、本件についても、当事者のご意見なども引き続き伺わせていただきながら更に検討を進めていきたいと考えております。

○天畠大輔君
当事者の生活の場を守ってください。代読お願いします。

代読します。
最後に、本法案の附則について伺います。
国連は日本政府に対し、2028年2月20日までに障がい者政策の見直しや検討の結果を報告するよう求めています。
しかし、改正法案附則第2条では施行後5年をめどとして検討する、と定めています。
改正法案が成立した場合、施行は2024年です。
つまり、政府の提案のままでは国連報告に向けた法改正の検討自体が2029年4月以降になり、立法措置などが国連への報告に間に合いません。
精神保健福祉法については、本人の同意がない場合の入院制度のあり方等について附則第3条を設けており、総括所見の趣旨も踏まえ、速やかな検討に着手するとされています。
しかし、障害者総合支援法には、改正部分以外にも国連総括所見で強く勧告されている箇所があります。
それらも含めて検討すべきだと様々な当事者団体から指摘されているはずです。
検討めどは早めるべきではないでしょうか。
大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
改正案の附則第2条において、施行後5年を目途とする検討規定を確かに設けているところでありますが、来年春目途の障害福祉計画に係る基本指針の策定、また令和6年度の障がい福祉サービス等の報酬の改定などに向けて、障がい者をめぐる様々な課題について本総括所見の趣旨も踏まえながら、当事者、また関係団体の皆さんの意見も伺って検討を進めていきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
改めて、速やかに改正の検討を進めるべきと考えます。
さて、障がい者は今、政府にとってちょっと意見を聞く程度の存在です。代読お願いします。

さて、障害者権利条約第4条3項には、条約を実施するための法令や政策の作成などに当たっては、「障害者を代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる」と定めています。
しかし、今回の改正法案の審議の中では、「当事者の声を聞きつつ」「意見を伺いつつ」といった、障がい者をあくまで中心に置かない表現が目立ちます。
しかし、厚労委員会の皆さんが昨日参考人からお聞きになったとおり、障がい者の団体は意見の違いがありながらも一つのパラレルレポートをまとめ上げ、世界へ示しました。既に当事者は行動しています。
昨日の参考人質疑では、政策形成プロセスについても何度も話題に上りました。
いろいろな人がいると収拾が付かなくなるという姿勢で脆弱な政策に甘んじるか、いろいろな人を入れて強靱な政策をつくるか。
私は、柔軟で強い政策の方向に進めたいと思います。
束ね法案は乱暴で稚拙だと再度申し上げなければなりません。
大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今回の束ね法案、束ね法案とご指摘もありますけれども、それぞれ関連する内容になっておりますし、各審議会等における議論においてもそれ以外のところとの連携をしっかり図っていけと、こういう指摘もあり、今回一体として見直しを行うということでこうした形で提案をさせていただいたところであります。

○天畠大輔君
時間が来ましたので、質疑を終わります。