2024年4月2日 厚生労働委員会質疑「年金の障害認定基準 不合理にもほどがある!/災害時に休薬が危険な薬(インスリン製剤など)一人ひとりに届けるために」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
大臣の所信表明を受けて、質問します。代読お願いします。
国は、2025年に年金制度改革を行う方針です。しかし、障害年金に対する議論は進んでいません。特に、年金制度の根幹をなす国民年金法施行令や障害認定基準は、障がいのある方の社会参加が進んできている現代にそぐわない時代錯誤の基準です。
資料1をご覧ください。
国民年金法施行令別表では、1級9号や2級15号の内部障がい等の基準に「長期にわたる安静を必要とする病状」とあります。基準ができた当初は、結核患者が想定されていたからだと推察されます。その後、心臓や腎臓などの機能障がい、代謝疾患の糖尿病も対象に入りましたが、症状が固定化されない内部障がいの実態が反映されないままになっています。まるで一生病院か自室ベッドで寝たきりの人にしか支給しない、と言っているかのようです。
資料2をご覧ください。
障害認定基準の基本的事項2級の例示は、「例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)」と、「家庭内」で「ほとんど何もできない」ことが強調されています。
この基本的事項にある文言は、制度改正前に遡ると、少なくとも昭和41年から変わっていないと厚労省から聞きました。約60年間も変わっていないとは驚きです。障害認定基準は、厚労省が提供する解釈基準であり、国会の審議を経ていないため、今まで民意が反映されてこなかった、というわけです。
では、この「家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)」とは、具体的にはどのような活動を指していますか。大臣、お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
委員ご指摘の障害年金の認定基準における基本的事項の2級の例示については、国民年金法施行令別表に定める「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」の障がいの状態を示したものであり、家庭内での軽食作りや下着程度の洗濯等の極めて温和な活動を想定しております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
大臣は、いつもどのようにご自分の服を洗濯されていますか。もしや、洗濯板を使っておられるのですか。60年前の文言を使うのは時代錯誤だと思いませんか。お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
繰り返しになりますけれども、この「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」の障がいの状態の一例を示したものとして、今日においても不合理なものではないということから、現時点では見直すことは考えてはおりませんけれども、この「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」の障がいの状態というこの表現は、その一例を示したものでございます。そして、個々の障がい者の置かれている状況は本当に様々であろうというふうに思います。したがいまして、障がいの程度については個別の障がいに係る認定基準により認定は行われています。この基準については、必要に応じて最新の医学的な知見を踏まえて見直しを行ってきております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
いやいや、時代錯誤ですよ。代読お願いします。
家電が行き渡っていない時代の洗濯は一苦労だったでしょうが、当時あこがれの電気洗濯機は、今や世帯普及率ほぼ100%の時代です。実態に合っていません。
そして何よりも、障がい者は「家庭内」で「ほぼ何もできない」状態を想定しているのが時代錯誤です。今や、重い障がいを持つ方もヘルパー制度等の障がい福祉サービスが整ってきたことで、その活動範囲が格段に広がっています。
たとえば、ヘルパーを伴って外出し、自らの経験を講演するなど、社会的な活動ができます。また、障がい者などの在宅勤務を促進する企業もあり、「家庭内」であっても可能な範囲で就労できます。誰もが働く経験やステップアップを目指してしかるべきです。
これほどまでに障がい者を取り巻く環境は年々変化しているにもかかわらず、障害認定基準だけが時代から取り残されています。これでは、適切な障害認定ができないだけでなく、これから社会参加をしようとする人の意欲もそいでいます。
改めて、大臣にお伺いします。
現行の障害認定基準は、過度に詳細かつ限定的で、障がいのある方の社会参加が進んできている現代にそぐわない時代錯誤の基準です。障害年金の総論部分に位置付けられる基本的事項に、過度に詳細かつ限定的な例示を示すことは合理的か。現代の障がい者の実態にそぐわない約60年前の文言をいまだに使用していることは合理的か。見直しを検討するべきではないか。以上3点について見解をお聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
これは先ほども申し上げましたけれども、この基本的事項の2級の例示につきましては、この「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」の障がい状態の一例を示したものでございます。個々の障がい者の置かれている状況は本当に様々であるというふうに理解はしておりますので、障がいの程度については個別の障がいに係る認定基準により認定を行っております。しかも、この認定基準については、必要に応じて最新の医学的な知見を踏まえてその都度見直しを行ってきているということを是非ご理解いただきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
「例だから問題ない」は論外です。既に問題が出ています。代読お願いします。
基本的事項はあくまでも一例であると厚労省は認識しているようですが、その例示をあたかも基準のようにして、例示に当たらない人は年金受給の対象でないと判断された事例があります。
たとえば、最初の認定審査は個別に行われても、不支給決定となり、当事者が不服を申し立て、審査請求、再審査請求に進んでいくと、突然この60年前の基本的事項を持ち出して、「おおむね家にいるものとは言えない」「日常生活はできていても仕事もしているから2級には当たらない」と不支給決定理由に使われたケースがあります。
資料3をご覧ください。
障害年金法研究会という弁護士、社労士、研究者、ソーシャルワーカーといった障害年金に関する専門家で構成する会があります。この会によると、社会保険に関する再審査請求事件のうち、障害年金事案は4分の3を占めています。当事者の日々の生活に大きく関わる障害年金の認定がこんな時代錯誤な基準の下で行われ、不支給決定を導きやすくしている状況は不合理にも程があります。
基準の文言が単に古くさいと言っているのではありません。障害年金の大本の基準が身体の状態ばかりに焦点を当て、当事者が社会との関係においてどのような困難を持つか、その視点が欠けています。だから、個別の障害認定基準は医学的な知見、数値に偏っています。特に、内部疾患を持つ障がい者の日常生活上の困難さが考慮されていません。大阪では1型糖尿病患者の原告らが障害認定基準の不合理性を国に訴え、現在、大阪高裁で争われています。
資料4をご覧ください。
社会保障審議会年金部会において島村暁代委員が社会モデルについて触れており、1月31日の年金部会でも「主なご意見」として明記されています。医学モデルに偏った現状の障害認定方法の変革は、2022年の国連権利委員会総括所見による国際的要請でもあります。
そこで、大臣にお伺いします。
次期年金制度改正にむけて、障害認定基準の見直しの必要性や、より深い議論を行う場の設定などを含め、まずは年金部会においてきちんと議論すべきです。議論の際には、障がい者の権利を擁護する弁護士や、社会モデルに詳しい社会福祉士なども参画すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
公的な年金制度は、老齢、障がい、死亡など将来のリスクに社会全体で備える仕組みでございます。給付設計や負担構造など互いに関連をし、一体的な議論が必要であることから、年金部会には、社会保障や経済の専門家、実務に詳しい方など様々な立場の方々に参画をいただいています。
先日の年金部会でご指摘のような意見が出ていることを承知しておりますが、年金部会には障害年金に関するご知見も有している社会保障制度の専門家に参画をしていただき、専門家へのヒアリングを含め、様々なご意見を伺いながら議論するよう努めております。
次期制度改正にむけては、年金制度全体について多岐にわたる論点がある中で、障害年金についても更に議論を深めて、年金部会において意見を取りまとめていきたいと考えております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
もう一度伺います。年金部会に社会モデルの視点を持った人を参画させるべきです。大臣、一緒に考えませんか。
○国務大臣(武見敬三君)
先ほどもお答えをしたとおりであります。この年金部会、この障害年金に関するご知見も有している社会保障制度の専門家に参画をしていただいて、そして、専門家へのヒアリングをも含めて、様々なご意見を伺いながら議論をするよう努めているところであります。
次期制度改正にむけては、年金制度全体について多岐にわたる論点が確実にあるわけでございまして、障害年金についても更に議論を深めて、この年金部会において意見を取りまとめていただきたいと考えております。
○天畠大輔君
代読します。
年金部会では1度しか障害年金にフォーカスしておらず、障害認定基準について具体的な議論はなされていません。社会モデルの視点を持った人を参画させるべきだと重ねて申し上げます。
3月6日に障害年金法研究会が障害年金法制度改革への提言書を出しました。配付資料の最後にそのプレスリリースを紹介しましたので、是非ご覧ください。
提言書では、障害認定基準に社会モデルの視点を取り入れるとはどういうことか、たとえば、社会生活上の困難を数値では示すことのできない難病者や働けていても社会生活上の困難を持つ障がい者を救済する新たな認定基準の試案や、現在喫緊の課題である無年金障がい者をなくすための具体的な方策などを打ち出しています。
また、2月19日には、当事者団体「障害者の生活保障を要求する連絡会議」も、障害認定基準の問題を取り上げ、厚労省と意見交換を行っています。
大臣は、このような専門家や当事者からの要望を真摯に受け止め、障害年金の議論を前に進めるおつもりはありますか。
○国務大臣(武見敬三君)
年金部会には、障害年金に関するご知見も有している社会保障制度の専門家にご参加をいただいて、専門家へのヒアリングも含めて、様々な意見を伺いながら議論をするよう努めているところでございます。厚生労働省としては、ご指摘のような様々なご要望あることも認識した上で、引き続き障害年金についての議論を進めていきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
社会モデルに基づく本当の年金制度とは何か、引き続き話し合いましょう。代読お願いします。
初診日など、細かい運用方法に終始するばかりで、根本的な基準のあり方を議論しないようでは、社会モデルはいつまでたってもなし得ません。抜本的な見直しを強く訴え、次に行きます。
昨年11月の厚労委員会に続いて、糖尿病患者への災害・緊急時支援体制について質問します。
自然災害の多い日本で安心して暮らすために、災害対策は待ったなしと考え取り組んでいましたが、前回の質疑から2か月もたたないうちに能登半島地震が起きてしまいました。被災された皆様に改めてお見舞いを申し上げます。
さて、厚労省は、今回の能登半島地震を受けて、糖尿病医療支援チームDiaMATと連携し、インスリン製剤の不足情報を集め、医療機関等に届ける体制を整備していると聞いています。しかし、そのインスリン製剤が本当に患者さんのもとにきちんと届いているのか、その実態はまだ見えてきていません。これまで、災害時のインスリン製剤の確保・供給方法は都道府県ごとにまちまちでした。そこで、厚労省に伺います。
地域別患者数を国が把握し、各都道府県に周知すれば、医薬品の種類も考慮した適切な備蓄量、あらゆる事態に応じた輸送ルートをより検討しやすくなるはずです。特に、生きていく上でインスリン注射が欠かせない「インスリン依存型の糖尿病患者」には、確実に薬を届ける必要があり、その数をあらかじめ把握することは極めて重要です。
日本糖尿病協会は、患者会を組織し、DiaMATの運営主体でもあります。国は、この協会とも連携しながら、患者数把握と自治体への周知を検討すべきと考えますが、厚労省の見解をお聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
災害発生時の医薬品供給につきましては、災害対策の中心を担う都道府県が地域の実情に応じた方法により必要となる医薬品等を事前に備蓄している、備蓄することとしております。その際に、各都道府県におけるインスリンを使用する患者の数は、適正な数量のインスリン製剤を備蓄するに当たって有用な情報であると考えています。
厚生労働省では、都道府県ごとに糖尿病患者数や糖尿病患者のうちインシュリン治療が実施されている者の割合を把握しており、まずはこれらの情報を各都道府県の備蓄に当たって参考にするように周知をしてまいりたいと思います。
さらに、委員ご指摘のインシュリン依存型の患者数を把握することができるかにつきましては、都道府県やDiaMAT及びその運営主体でございます日本糖尿病協会などと連携をして検討を進めていきたいと思います。
○天畠大輔君
代読します。
是非検討してください。
そして、平時の患者数把握に加え、災害時に患者さんの状況についてどのように情報収集し、適切な支援を行うかも課題です。そこで、DiaMATの中心メンバーであり、日本糖尿病協会理事、佐賀大学医学部教授の安西慶三先生にお話を伺いました。現在も定期的に被災地入りし、糖尿病患者への支援を行っている専門医の方です。
資料5をご覧ください。
2016年の熊本地震によって糖尿病患者の入院がどれぐらい増えたのか、統計が出ています。たとえば、糖尿病ケトアシドーシスによる入院件数は平時に比べて4.7倍にまで増えました。こうした2次的な健康被害、災害関連死を招きかねない状況を防ぐ方策としてDiaMATが創設されました。
資料6と7はDiaMATの活動内容や被災地での支援の様子です。現在は輪島市や珠洲市など奥能登にも入って支援を続けられています。
安西先生が強調されていたのが、これまでの一方通行の情報提供では不十分ということです。特にDiaMATが被災地に入る前の超急性期から急性期には、糖尿病患者からのSOSをいかに受け取れるかが重要です。
資料8をご覧ください。
DiaMATでは、災害に備えた患者登録・情報発信の手段としてLINEアプリの活用を検討しています。素早い情報提供に加えて、インスリン依存型の患者さんとの双方向のコミュニケーションにより、インスリンを必要な場所に正確に届けることが期待されます。安西先生は、抗不整脈薬や抗てんかん薬など休薬が危険な薬剤を使う人たちもこの仕組みを広く活用できる可能性があるとおっしゃっていました。
そこで、武見大臣に伺います。
糖尿病や不整脈、てんかんの患者など、服薬をやめると命の危険がある人たちの災害対策は重要とお考えでしょうか。そのうえで、DiaMATのLINEアプリ活用も含めて、休薬が危険な薬剤を必要とする人たちの災害対策について、積極的に情報収集し、対応を検討していくべきと考えますが、大臣の見解をお聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
厚生労働省としては、災害時においてこの使用を中断すると生命に危険が及ぶ薬剤を必要とする患者に対して、この薬剤を提供することは極めて重要だと認識をしております。
委員ご指摘のとおり、DiaMATが提携アプリを活用し、災害時にインシュリン製剤の不足の有無を確認する仕組みなどを検討していることは承知をしております。こうした仕組みについて、まずはDiaMATが運営して、DiaMATを運営している日本糖尿病協会から検討状況を伺いながら、使用を中断すると生命に危険が及ぶ薬剤を必要とする患者への災害対策としてどのようにこれを活用できるのか、検討をしていきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
是非検討してください。次に、内閣府に伺います。代読お願いします。
資料9をご覧ください。糖尿病の専門病院のサイトで、インスリンを取りに戻って津波でお亡くなりになった方の事例が紹介されています。医薬品をもらうためにはいくつかの選択肢があること、避難所に行けば医療関係者に相談ができること、モバイルファーマシーが出動する可能性もあること、こうした情報を、患者だけでなく地域住民も把握していれば、声を掛け合って避難し、薬を取りに戻って津波に遭うこともなかったのではないでしょうか。
国は、災害時には皆、命を守ることに専念せよと言います。でも、現実には、津波警報が出ている中、余震で倒壊が危険な家に、まさに命を守るために薬を取りに行かなければならない。明らかな矛盾です。
災害時の医薬品供給の流れを含めた避難情報を地域全体で把握しているケースは、管見の限りありません。共助の観点からも、こうした情報は、特定の疾病患者だけでなく、地域住民全体で共有すべき情報と考えます。
「総合防災訓練大綱」では、各自治体が要配慮者の視点に立った避難訓練の実施に努めるよう明記されています。服薬をやめると命の危険がある人たちへの情報提供についても、「積極的に加えるよう努める」取組の1つとして自治体に周知すべきと考えますが、政府の考えはいかがですか。
○大臣政務官(平沼正二郎君)
委員のご質問にお答えいたします。
「総合防災訓練大綱」は、中央防災会議において毎年度決定し、防災訓練を企画・実施する際の基本方針や、地方公共団体の防災訓練での留意点等を示しております。
「令和5年度総合防災訓練大綱」においては、様々な特性を有する要配慮者の視点に立ち、要配慮者本人の参加を得た訓練を実施することや、要配慮者の避難行動の理解促進に向けた取組を実施すること等に努めるものとされております。要配慮者には、休薬が危険な薬剤を必要とする方々も当然含まれておりまして、医薬品の取扱い等に関する情報提供については、これらの記載を踏まえ、地方公共団体等において、それぞれの地域の事情や訓練の目的等に照らし必要な訓練等を行っていただくことが適切と考えております。
内閣府といたしましても、訓練等を実施する地方公共団体への周知の方法などを検討し、必要な対応を進めてまいりたいと思っております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
「総合防災訓練大綱」を改正して周知をするのがより効果的だと考えますが、平沼政務官、いかがでしょうか。
○大臣政務官(平沼正二郎君)
繰り返しになりますけれども、この防災大綱において留意点等などを示させていただいております。その中において、先ほど申し上げましたけれども、要配慮者皆様の避難行動の理解促進に向けた取組を実施することなども記載されておりますので、しっかりとこの実際に訓練する自治体とも連携を深めて、しっかり周知の方法などを引き続きしっかりと検討してまいりたいと思っております。
○天畠大輔君
具体的な周知方法については引き続き追及します。これで質疑を終わります。
〈配付資料〉