2024年4月11日 厚生労働委員会質疑(生活困窮者自立支援法等法案審議 参考人質疑)「誰ひとり取り残さない居住支援を! 生活保護申請不受理 なぜ「水際作戦」はなくならないのか」 

〇天畠大輔君

 代読します。
 れいわ新選組の天畠大輔です。参考人の皆さま、本日は貴重なお話をありがとうございます。まず、稲葉参考人、石川参考人のお2人に伺います。

 私のような重度障がい者が住みたい地域で暮らしたいと思ったときに、家探しは非常に高いハードルとなりますので、居住支援の重要性は強く認識しているところです。今年2月7日の国民生活・経済及び地方に関する調査会において、住宅政策の専門家平山洋介参考人は、住宅政策の大きな柱として家賃補助の制度化を提言されていました。この点についてはお2人の参考人も先ほど指摘されていたと思います。

 私も、居住支援を充実させる上では、多くの先進国で整備されている家賃補助の制度を日本でも設けるべきだと考えますが、家賃補助の対象者など、具体的にどのような内容が考えられるかなどについて、稲葉参考人、石川参考人の順で見解をお聞かせください。稲葉参考人からお願いいたします。


〇参考人(稲葉剛君)

 ありがとうございます。

 最初の意見陳述でお話ししたのは、住居確保給付金という制度が既にある、これを拡充していくということが重要なのではないかというお話をさせていただきました。
 現在の住居確保給付金は再就職支援としての性格が強いものでして、離職者ですね、仕事をやめた方、失業した方が、ハローワークに通うことを条件に一定期間家賃の補助を受けられるという仕組みになっております。

 ただ、先ほどからお話ありますように、今後、単身高齢者の方、低所得の高齢者の方が増えていく、また、障がいをお持ちの方で生活に困窮されている方々の住宅確保の問題があるということで、こうした方々も利用できるように、再就職の要件を撤廃するであるとか所得の制限についても緩和していくということが必要だろうというふうに思っています。

 これは、ほかの仕組みとの兼ね合いでいえば、たとえば公営住宅の収入階層、公営住宅に入居できる収入階層の人たちまで対象とするといったような方法が考えられるんではないかというふうに思っています。

〇参考人(石川久仁子君)

 ご質問ありがとうございます。
 やはりすべてだというふうには、必要な人すべてだとは思うんですが、特に必要性が高い、まあすべての方が必要性が高いと思うんですけど、やはり若者への家賃補助制度というのはとても必要だというふうに思います。

 私もちょうど20代の娘を持っておりますが、なかなか就労状況が安定しない。これは、教え子たちも、非常にやはり低所得であるとか、また失業するというふうな厳しい状況に置かれています。

 また、先ほど子どもの貧困の関連して、私の教え子たちも、大きな奨学金ですよね、ですので、卒業するときに800万の奨学金を、借金を背負っている学生も普通にいるというふうな状況の中で、ここで家賃を払って生活していくというふうなところで非常に厳しいことがあると思います。

 今後の子どもの支援というふうな視点からも、特に若者への居住支援は力を入れないといけないのではないかというふうに思っております。
 以上です。


〇天畠大輔君 

 代読いたします。
 稲葉参考人に伺います。
 重度障がい者の私が、特別支援学校卒業後の選択肢がほとんどない中、大学に進学できたことで社会参加への道が開けました。貧困の世代間連鎖を断ち切る上でも、大学進学は大きな選択肢の1つだと思います。しかし、現状では、生活保護世帯の子どもが大学へ進学するためには世帯分離措置をとらなければなりません。
 生活保護世帯内での大学進学を認めるべきと私は考えますが、稲葉参考人の見解をお聞かせください。


〇参考人(稲葉剛君)

 ありがとうございます。
 先ほど菊池参考人からも、生活保護世帯に限らず、給付型の奨学金を拡充するなど教育政策全般で底上げを図っていく必要があるというお話がありました。
 私も、教育政策で、低所得者の方々、ご家庭の方々が大学などに進学できるように学費を下げていくとか給付型奨学金を拡充していくということは必要だと思いますが、それと同時に、生活保護制度におきましても、生活保護の枠内で大学進学できるようにするのが現実的ではないかというふうに考えております。
 生活保護世帯のお子さんたちが大学に進学する際、現在は世帯分離という措置がとられておりますけれども、それでもいまだに格差が存在しています。一般の大学、短大、専門学校への進学率は浪人も合わせると8割を超えている、一方で、生活保護世帯のお子さんたちについては4割程度、少し上がっていますけど4割程度ということで、依然として格差が存在している。これは世帯分離の弊害というものがやはりあるんではないかというふうに考えておりますので、やっぱりさまざま議論行われていますけれども、そこを変えていく必要があるだろうと。
 健康で文化的な最低限度の生活というその程度というものは、やっぱり時代とともに変わっていくべきものだと思います。厚生労働省の中にはまだまだ大学進学というのはぜいたくだというような見方があるんだろうというふうに思いますが、時代とともに健康で文化的な保障水準というのを変えていく、その上で、その中で、大学進学の問題であるとか、あと地方における自動車保有の問題であるとか、改善していくべきだというふうに考えております。


〇天畠大輔君

 続いて、稲葉参考人に伺います。
 生活保護をめぐる自治体の水際作戦が一向になくならない理由は何だとお考えですか。

〇参考人(稲葉剛君)

 ありがとうございます。
 先ほど、監査、都道府県の監査あるいは厚生労働省の監査において濫給防止に主眼が置かれていて、漏給防止、受給漏れを防ぐという観点が弱いのではないかというお話をさせていただきました。
 今年度、厚生労働省が警察官OBの配置を更に進めようとしております。21ページにありますように、不正受給対策を行う際には、制度に対する信頼が揺らいでいるというような表現をよく厚生労働省は使われるわけですけれども、一方で、桐生市のような事態、人権侵害や水際作戦が起こったときには、住民の制度に対する信頼が揺らいでいるというような表現はあまり使われているのを見たことがないわけですね。やはり、行政が加害者になってしまうという点への自覚が足りないんではないかというふうに思っています。
 水際作戦が生じる背景には、各福祉事務所における人員が不足していると、オーバーワークになってしまっていて、なるべくなら受け付けないようにしたいというような問題もあります。さまざま予算の問題もありますけれども、まずは国、厚生労働省が、水際作戦を根絶するんだという方針を示す、捕捉率を上げるんだという方針を示すということは一番重要だというふうに思っています。


〇委員長(比嘉奈津美君)

 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。


〇天畠大輔君 

 続けて、稲葉参考人に伺います。
 水際作戦撲滅の具体的なアイデアがほかにもあればお聞かせください。


〇参考人(稲葉剛君)

 ありがとうございます。
 水際作戦をなくすためには、まず、先ほど厚生労働省が方針を示すことが一番重要だとお話ししましたけれども、テクニカルな面でお話ししますと、1つは生活保護のオンライン申請を可能にするということです。
 これは、実は東京都の西多摩福祉事務所、東京都の西多摩郡の福祉事務所、東京都が直轄で行っている福祉事務所では既に電子申請のシステムができております。インターネット上で生活保護を申請するという仕組みがつくられていて、既にもう活用されております。
 以前、厚生労働省に申入れをした際、生活保護のオンライン申請についてお聞きしたところ、課内では検討しているというお話はありましたけれども、今、デジタル化の流れの中で、政府のさまざまな施策についてもオンラインで申請できるような仕組みをつくっていこうという動きが出てきておりますので、是非、生活保護についてもオンラインで申請できる仕組みをつくってほしい、全国的につくってほしいというふうに考えております。
 もう1つは、ネットの使用ということについてはなかなか難しい方もいらっしゃいますので、生活保護の窓口、これも一部の福祉事務所では行われておりますけれども、福祉事務所、各自治体の窓口に生活保護の申請書を常置すると、来庁者が手に取れる場所に生活保護の申請書を置くと。通常、住民の方が、印鑑証明等を取られる方にまず申請書を書いて窓口まで持ってきますけれども、生活保護の場合はなかなか窓口で申請しても申請書が出てこないという問題がありますので、最初から手に取れる場所に申請書を置くということをすべての自治体で行うと。この2つを行うだけでも水際作戦というのはかなりなくせるんではないかなというふうに思っております。
 あとは、福祉事務所の職員を増やすということですね。オーバーワークをなくしていくということだと思います。


〇委員長(比嘉奈津美君) 

 時間が来ておりますので、おまとめください。


〇天畠大輔君

 良いお話をありがとうございました。
 質疑を終わります。