2024年4月16日 厚生労働委員会質疑(生活困窮者自立支援法等法案審議)「8割が選ぶ大学等進学、生活保護世帯の子どもに「あきらめろ」と言えますか?生活困窮者を食い物にする貧困ビジネスを根絶せよ」

〇天畠大輔君 
 れいわ新選組の天畠大輔です。
 引き続き、生活保護世帯内での大学進学について質問いたします。代読お願いします。

 生活保護世帯の子どもが大学進学する場合は、世帯分離措置が必要なため、強制的に生活保護から自立しなければなりません。一方で、実は生活保護世帯内での夜間大学への進学は認められています。厚労省は認めている理由として、稼働能力の活動を前提とした余暇活動の自由を挙げています。つまり、昼間可能な範囲で就労していれば、夜は余暇として大学進学を認めるという理屈です。
 大学進学を余暇と捉える運用にそもそもの違和感はありますが、仮にこの理屈の上に立つのなら、夜間に稼働能力を発揮した上で、昼間の自由時間を使って大学で学ぶことも認められるのではないでしょうか。世帯内就学をめぐるこの夜間大学と昼間の大学の対応の違いの根拠を、大臣、合理的に説明してください。

〇国務大臣(武見敬三君) 
 この夜間大学については、稼働能力を十分に活用した上で就学するものでありまして、その就学がこの世帯としての自立助長に効果的である場合には、夜間大学に就学しながら生活保護費を受給することを認める取扱いとしております。この一方で、昼間の大学等に就学しながら生活保護費を受給することについては、一般世帯においても高等学校卒業後大学等に進学せずに就職する方がいらっしゃることや、奨学金、アルバイト収入などで学費や生活費を賄いながら大学等に就学する方がいらっしゃいます。このような方々とのバランスを考慮する必要があると考えます。
 このために、昼間の大学等への進学者を世帯分離した上で最低生活保障の対象とはしていないものであり、こうした取扱いは稼働能力を十分活用しているかどうかによるものではないと考えております。

委員長(比嘉奈津美君) 
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

天畠大輔君 
 都合が良過ぎる理屈ですね。しかも、時代にそぐわない考え方です。代読お願いします。
 高校進学の世帯内就学が認められた1970年、一般世帯の子どもの高校進学率は80.6%でした。資料1のとおり、現在の大学等進学率は浪人生を含めて84%です。一方、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は42.4%と格差は縮まりません。大臣、大学等の世帯内就学を認めるべき十分な状況になっているのです。

 資料2をご覧ください。
 生活保護受給世帯の子どもが大学進学を機に世帯分離した場合の大学進学前後での生活保護基準額の変化です。子どもが世帯分離して大学生になった途端、保護費の合計金額が5万円近く減少してしまうのです。ほとんど懲罰のように見える減額措置と言えませんか。

 資料3をご覧ください。
 厚労省が調査した生活保護世帯出身の大学生等の生活実態です。大学に通うための年間必要金額の合計は平均で111万円に上っています。そのため、86.5%の学生が奨学金を利用し、そのうち73.2%が貸与型奨学金によって年間平均116万4300円の借金を負わされているのです。

 これらはすべて生活保護受給世帯から世帯分離して大学等に就学している学生たちの極めて厳しい現実です。大学で学ぼうとする人間が生活保護制度から除外され、いかなる貧困状態に陥ったとしても、就学よりもまず就労しろと強制されているというのが政府の姿勢であり、生存権と学びの権利という二重の意味での基本的人権の侵害です。
 学びの過程でたとえどんな学歴の選択をしたとしても、貧困にまで追いやられないような社会を目指すべきと考えますが、大臣、見解をお聞かせください。

国務大臣(武見敬三君) 
 先ほども申し上げたとおりでありまして、この生活保護費を受給しながら大学等に就学することについては、一般世帯とのバランスを考慮する必要があり、最低生活保障の対象とはしておりません。
 一方で、生活保護制度では、大学等への進学者を世帯分離した上で、進学者が転居しない場合には進学者分も住宅扶助を支給する措置などを実施しております。そして、生活保護が継続される世帯と同居しながらも、稼働能力の活用を求めずに、大学等に就学できるようにしております。また、文部科学省の高等教育の修学支援新制度において生活保護世帯の出身者も対象に支援が行われておりまして、就学しやすい環境が整ってきていると考えます。
 本法案では、子育て世帯への訪問等による子どもの進路選択支援事業を創設することとしており、さまざまな施策を引き続きあわせて実施することで、生活保護世帯の子どもの大学等への進学を含め、本人の希望を踏まえた進路選択の実現が図られるよう取り組んでまいりたいと考えます。

委員長(比嘉奈津美君) 
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

天畠大輔君 
 子どもの進路選択のニーズ調査をきちんとされているのかはなはだ疑問です。もう一度視察に行くべきではないでしょうか。代読お願いします。
 
 世帯内の大学就学を認めることは、子どもが将来に希望を持てるために講ずべき施策の1つです。子どもの貧困の連鎖を断ち切るためには、進路選択支援において、体験学習の機会など子どものための社会教育を充実させることで早い段階から多様な選択肢を示すとともに、希望する進路に合わせた経済的支援が必要です。引き続き追及していきます。


 次に、家賃の低廉な住宅への転居支援について伺います。
 家計改善のために引っ越す場合の経費の一部を支給するという住居確保給付金の拡充が本法案に盛り込まれています。厚労省の資料では、「目指す姿③家賃の低廉な住宅への転居支援」というタイトルとともに、「引っ越し代、礼金などを補助」「年金収入で暮らす高齢者や就労収入を増やすことが難しい者が低廉な家賃の住宅に引っ越すことが可能となる」「家賃負担軽減により自己の収入等の範囲内で住み続けることができ、自立の促進が図られる」などと記載されています。
 しかし、これらの表現は家賃の安い住居への転居をあたかも推進しているように見受けられ、生活保護受給者の住宅環境の質の劣化を招きかねないと懸念を抱いています。たとえ家賃は高くなったとしても、その引っ越しによって就労機会が広がったり交通費負担が軽減されたりなど、家計改善や自立に結び付く引っ越しも十分に考えられます。
 
 大臣に確認します。
 場合によっては、転居前よりも家賃が多少高額になるものの、それによって家計が改善し、自立につながるようなケースも住居確保給付金支給の対象となり得ますか。

国務大臣(武見敬三君) 
 この転居費用の補助に関する具体的な内容につきましては、今後、家計全体の改善につながるといった観点から詳細に検討を行った上で、省令などで規定することとなっております。
 その際には、家賃負担が軽減される一般的なケース以外でも、例えば転居に伴い家賃が従前より上がることになるが、通院時の交通費の支出が明らかに減少することなど、家賃負担を含めた家計全体を見たときに支出の改善効果があるようなケースの取扱いも含めて検討することになります。

委員長(比嘉奈津美君) 
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

天畠大輔君 
 重要な答弁をいただきました。住居確保給付金について柔軟な対応をするという考えが確認できました。代読お願いします。

 一方で、現行の住居確保給付金は再就職支援の性格が強く、支給される対象や期間が限られています。参考人質疑において、稲葉剛参考人、石川久仁子参考人は、障がい者や高齢者、若者など、住宅確保が困難な方々に対象を広げるべきだとおっしゃられていました。
 住まいは人権という立場に立てば、本法案においては低所得者層を広く含めた家賃補助制度の創設が必要であったと思います。多くの先進国で整備されている家賃補助制度の創設に向けて早急な検討を強く求めます。

 次に、住宅扶助の代理納付について伺います。
 生活保護法では、住宅扶助は生活保護世帯への直接納付が原則ですが、受給者が家賃を滞納している場合などは、特例として住宅扶助が大家に支払われる代理納付が可能と規定されています。一方で、今回の住宅セーフティーネット法の改正法案に盛り込まれている居住サポート住宅に関しては代理納付が原則とされています。貧困ビジネスの参入に力を貸すことになるのではないかと大きな懸念を抱いています。
 たとえば、貧困ビジネス業者が生活保護受給者との間で金銭管理契約を結び、その中で家賃管理、生活費改善、食事提供と食費徴収、見守りなどのサービスをパッケージとして盛り込むというケースがあります。住宅扶助の代理納付は、このような温床を助長、拡大することになりかねません。
 大臣、生活保護制度をめぐって悪質な業者が入り込む危険性を排除するための施策をどう講じますか。

国務大臣(武見敬三君) 
 生活保護受給者が多く入居している無料低額宿泊所について、平成30年の法改正でいわゆる貧困ビジネス対策として規制強化を行い、金銭管理は本人が行うことを原則とすることであるとか、望まないサービス提供を禁止することなど定めた最低基準や通知を整備しておりまして、都道府県などにおいて最低基準に適合するよう必要な指導は行っております。
 また、無料低額宿泊所以外の住居も含めて、保護費の支払は原則として生活保護受給者に対して行う必要があり、福祉事務所において適切に対応していただくべきものと考えます。
 さらに、福祉事務所は、生活保護受給者への定期的な訪問活動等により、居室の提供以外のサービスの利用を強要するなどの不当な行為があるなど転居が適当と確認した場合には、適切な居住場所への転居を促すといった必要な支援も行います。こうした対応が福祉事務所において適切に行われるよう、昨年9月に自治体宛てに通知を行うとともに、今年3月にも改めて自治体に周知徹底をいたしました。
 こうした取組や本法案における無料低額宿泊所に関わる事前届出の実効性確保の取組等を通じて、生活保護者の居住の安定等を支援をしていきたいと考えます。

天畠大輔君 
 失礼しました。代読します。
 資料4のとおり、相模原市、また町田市などでも似たような事例が起きていると報告されておりますが、このような悪質業者の行為は極めて不適切であるという認識でよろしいですか。また、このような事例の撲滅のために事務連絡などを早急に発出すべきではないですか。大臣、お願いいたします。

国務大臣(武見敬三君) 
 個々の事例によって、適切か不適切かということについてそう簡単に判断できない場合もあるかと思いますが、一般論としては、その保護費の支払は原則として生活保護受給者に対して行う必要があり、福祉事務所において、そうした観点から適切に対応していただくべきものと考えます。
 厚生労働省としては、福祉事務所の定期的な訪問活動等により必要な支援が適切に行われるよう自治体に通知を行い、周知徹底を図っているところです。引き続き、自治体から事例について情報収集も行い、そして必要に応じて助言や指導を行うなど、対応をしっかりとしていきたいと思います。

委員長(比嘉奈津美君) 
 時間が過ぎておりますので、おまとめください。

天畠大輔君 
 代読します。
 直接払いが原則だと大臣からはっきりと答弁がありました。不適切事例根絶に向け、具体策を盛り込んだ事務連絡を出し直すべきと申し上げ、質疑を終わります。


〈反対討論〉
天畠大輔君 
 れいわ新選組の天畠大輔です。貧困の連鎖を断ち切るためにも、生活困窮者自立支援法改正案に対して反対討論を行います。代読お願いします。
 

 私、天畠大輔は、14歳のときの医療ミスで、四肢麻痺、発話障がい、視覚障がい、嚥下障がいを負いました。重度障がい者の私が特別支援学校卒業後、進路の選択肢がほとんどない中、大学に進学できたことで社会参加への道がひらけました。「学び」という営みは私に希望を与えてくれました。
 もちろん、大学に行かなければ貧困から脱出できないなどといった学歴偏重社会もまた、克服すべき課題です。

 こんにち、大学など高等教育機関への進学率は84%にも上っています。生活保護受給世帯の子どもたちが、世帯分離という、福祉行政サービスの枠の外に出ない限り大学進学できないという現行制度は、あまりにも時代錯誤であり、不合理です。貧困の連鎖を断ち切るためにも、大学等の世帯内就学は不可欠です。

 私自身も含め、ここにおられる24人の参議院議員全員がいわゆる高等教育機関卒業者です。皆さん、ご自分がもしも生活保護受給世帯の子どもで、「進学したいのなら世帯分離しなさい」と言われたとしたら、どんなに悲しく悔しい思いをしただろうかと想像していただきたい。

 反対理由の第1は、このような非道を放置したまま本法案が議論されているということです。

 反対理由の第2は、本法案のもう1つの柱である「居住支援」が、「住まいは基本的人権である」という理念にほど遠いという点です。
 日本の住居政策は、「持家購入促進」を最優先とし、快適な住宅を安価に提供するという政策を完全に置き去りにしてきました。本法案も、大家がより貸しやすい環境整備に力点が偏っています。諸外国で既に導入されている住宅手当創設が急務です。

 反対理由の第3は、政府・与党自身が福祉政策をめぐる差別意識の克服に全く無関心だということです。
 世耕弘成議員は、週刊東洋経済2012年7月7日号で、「税金で全額生活を見てもらっている以上、憲法上の権利の一定の制限があっても仕方がない」旨、述べています。12年前の発言ですが、このたびの、桐生市の生活保護相談員の、「おまえは税金で飯を食っている自覚があるのか」という暴言との類似性に慄然とします。「水際作戦」を撲滅する本気を、政府から感じることは全くできません。

 健康で文化的な生活は、衣・食・住など生活全域にわたってすべての人々が享受すべき人権であり、その権利をないがしろにするあらゆる差別と、私たちは闘わなければなりません。そのことを強く申し上げ、本法案に対する反対討論を終わります。

〈配布資料〉