2023年5月9日 厚生労働委員会質疑(全世代型社会保障法案審議 対総理質疑 対政府質疑)「世代間対立をあおる社会保障の持続不可能法案を問う!」

〈対総理質疑〉
○天畠大輔君
代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。
はじめに、通告なしですが、総理に伺います。私は、3月30日の予算成立挨拶のとき、優生手術裁判の原告からの要請書をお渡ししました。総理は「読ませていただきます」とおっしゃっていましたが、その後、要請書は読まれたのでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
要請書を拝見いたしました。

○天畠大輔君
代読します。
この質問は、今回の法案にも関連しています。
少子化対策や子育て支援の前提は、どんなこどもも歓迎される社会だというのは、どなたもご異論はないと思います。しかし、障がい当事者の私から見ると、根本のところでどうしても本腰が入っていないように見えるのです。

特に、優生手術裁判への上訴を取り下げない国の姿勢です。昨年には、北海道のグループホームで、知的障がいのある入居者が結婚や同棲を希望する場合、不妊処置を提案していたことが明らかになりました。この事件に対し、「障がい者はこどもなんて持たなくていい」「周りに迷惑だ」といった差別的な反応があります。そして、私たちは日々、そのような視線にさらされて生きています。そんな社会の中で、政府が優生手術裁判への上訴を続けていては、障がいをもつこどもは歓迎されないというメッセージになってしまいませんか。
通告なしですが、総理の考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
ご指摘の裁判については、この内容に対応、内容への対応はもちろん大事でありますが、除斥期間等、法的な問題も含んでいるという観点から、政府として対応について今検討を続けている、こういった状況にあると認識をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
政府が両手を広げて、最大限、人権を守ろうとしなければ、私たち障がい者やこども、高齢者の尊厳は吹き飛びます。代読お願いします。

あらゆる政策や事業の中心に、障がい者への配慮の視点を取り入れる、障がいの主流化という概念があります。JICAは、国際協力の分野において10年ほど前からこれに取り組んでいます。
今回の改正法案では、「医療費適正化」をさらに推し進めるために、支払基金や国保連の業務目的に医療費適正化を加えます。また、医療機関の経営情報をデータベース化し、医療機関への適切な支援に結び付けることも盛り込まれています。これらの改正内容に、障がいの主流化の視点はありません。これまで虐待や診療報酬の不正請求などで問題になった精神科病院は複数存在します。障がいの主流化の視点があれば、たとえば、不正請求をより発見しやすくして虐待の兆候を発見するといった方向性の議論がなされたのではないでしょうか。

権利擁護を担うのは、障がい福祉や虐待防止の部署だけではありません。政府全体としても、当事者参画のみならず、JICAと同様に、あらゆる法令や施策に障がい者の視点を取り入れる動きを進めてはいかがでしょうか。総理の見解をお願いします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
今後5年間の障害者施策を総合的かつ計画的に推進するために、本年3月策定した「第5次障害者基本計画」においては、障害者施策の更なる推進のために、各府省において取り組むべき施策についても、国の審議会等への障がい者委員の参画や、障がい者やその家族をはじめとする関係者への意見聴取等を通じた当事者参画の推進、これに留意する、このようにされています。一方、ご指摘のこの虐待事案等が疑われる医療機関の把握を行い、関係法令に基づく厳正な対処を行うこと、これも重要な課題であります。この両方をしっかり進めていくことが重要であると認識をしております。そのことによって、ご指摘のように、障がいのある方々の視点により一層施策を反映させること、こうした取組を進めていくことを考えていきたいと認識をしております。

○天畠大輔君
代読します。
当事者参画はスタートラインにすぎません。政府自らが当事者の視点をもてる仕組みが必要です。
最後に、改めて伺います。優生保護法訴訟の原告団、弁護団に総理が会うべきですと予算委員会でも申し上げました。総理は、「面会については、その方法等は検討したい」と答弁されました。その後、検討されたのでしょうか。総理、今こそ政治決断をすべきではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
ご指摘の点については、予算委員会後もお問合せをいただいたと承知をしております。この お会いする具体的な方法について検討をしているところであります。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
引き続き検討をよろしくお願いします。私は決してあきらめません。質疑を終わります。

〈対政府質疑〉
○天畠大輔君

れいわ新選組の天畠大輔です。本法案は世代間対立をあおる悪法です。代読お願いします。

そもそも、高齢者医療制度にあたり、当事者を65歳から74歳までの「前期高齢者」と、75歳以降の「後期高齢者」に分けて、別々の保険制度を設けること自体、世代間に分裂を持ち込む過ちです。階層を分ければ分けるほど、どの層の負担が重くて損か、どの層の受けるサービスが手厚くて得かなどという議論が始まります。政府は、年金の報酬比例部分の支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げるにあたり、対象者に対して2歳刻みに6段階の差を設けました。また、老齢基礎・厚生年金の繰上げ受給者に対しても、1か月あたり0.4%ないし0.5%という極めて細かい数値を設定しています。

資料をご覧ください。
たとえば、1962年、昭和37年4月1日以前に生まれた人が、65歳から14万円受け取るはずの年金を、5年早い60歳から受け取るとします。この階層の1月あたりの減額率は0.5%ですから、毎月の受給額は30%減の9.8万円となります。毎月の受給額は9.8万円ですから、65歳までに合計588万円を受け取ることになります。
一方で、65歳から受け取る人は、早期受給者よりも4.2万円多い、満額の14万円を毎月受け取るわけですから、140か月、すなわち11年と8か月で追い付く形になります。つまり、76歳8か月よりも早死にするなら早期受給者の得、長生きするなら65歳受給者の得という非情な「損益分岐点」を、国民・市民に選ばせる制度なのです。
さらに言うと、早期受給を選択せざるを得ない人々の中には、職を失ったり、老後の蓄えがなかったりする人もいます。政府の経済雇用政策の失敗と格差社会の犠牲者ともいえる人々に対して、このような選択を強いる年金制度は、非人間的ではないですか。

フランスでは、年金支給年齢を62歳から64歳に引き上げるにあたり、112万人もの労働者・市民がデモに繰り出しました。今般の法改正も、人々に不信と憎悪を植え付けるものと考えますが、厚労大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
ちょっと多岐にわたったんですが、1つ1つ答弁するとかなり長くなりますが、それでもよろしければ1個1個ご答弁させていただきたいと思いますが。総じて言えば、今回のそもそもの改正は、従前から申し上げておりますように、それぞれの能力に応じて負担をお願いすると、まさに全世代型社会保障の構築、これに向けての一歩ということで対応させていただいているところでございます。

○天畠大輔君
代読します。
政府は、後期高齢者医療制度がスタートした2008年から2022年までの間に、高齢者1人あたり保険料が5332円から6472円へ1.2倍になったのに比べ、現役世代の1人あたり支援金が2980円から5456円へ1.7倍になったという事実をもって、伸びが同じになるよう見直すとして本法案を作りましたが、全く無責任です。現役世代に対して、14年間で2476円、つまり1年あたり177円以上の給与のベースアップが実現できていれば、受容できたはずではありませんか。大臣、本法案は自らの失政の責任をごまかして世代間の対立へと転嫁する法案ではありませんか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今回の、後期高齢者医療制度の創設以来、今委員からご指摘のように、後期高齢者の保険料の伸びと現役世代の負担の伸びが、片や1.2倍、片や1.7倍ということで大きく上回り、これが現役世代の負担感を高めているということであります。介護保険を参考に両者の伸びを同じようにするということで制度の見直しを図ったものであります。
しかし、この見直しに当たっても、後期高齢者において、所得の低い方には十分配慮をし、一定の所得以上の方にご負担をお願いする、あるいは、一遍に負担が増えないような緩和措置も入れる、こうした配慮も行っているところでございますので、全体として、先ほど申し上げた、それぞれに応じて負担を分かち合っていただく、そうした観点に立って今回の提案をさせていただきました。
さらに、今賃上げのお話もありました。これ、賃上げについては、現在、春闘で今賃上げ交渉が行われているわけでありますが、現状、大変力強い賃上げの動きが見られているところでありますので、引き続き、賃上げが引き上げられ、今回の春において中小企業あるいは非正規の方にも賃上げの波が及んでいくようなこと、また、今回1回限りに終わらず、構造的な賃上げがこれからも続くように政府としても努力をしていきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)

速記を起こしてください。

○天畠大輔君
人々が分断され、社会で不平等を感じるようであれば、全世代対応でも持続可能でもありません。代読お願いします。

社会保障費については、その財源を保険料中心ではなく税収中心に改め、こども、若者、現役、高齢者全体に目を配った上で予算配分し、全ての階層の福祉を向上させてこそ「全世代対応型」といえるのではないですか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
現在の社会保障の仕組みは、広く国民が直面する典型的なリスク、医療、介護、あるいは年金、高齢化ということでありますが、リスクに対し共同してリスクに備える仕組みである共助としての社会保険制度を基本に対応するという考え方に立ちつつ、低所得者の方については公費を投入することで、共助の仕組みに組み入れる形で、保障の仕組みを整備をしてきたところであります。
加えて、このような保障の仕組みの下でもなお最低限度の生活が維持できない場合などについては、生活保護制度や生活困窮者自立支援制度などの公助によって、必要な保障を講じてきました。さらに、社会保障・税の一体改革においても、社会保障の機能強化として、消費税財源も活用して、こども・子育て支援の充実、低所得者に対する保険料軽減制度の拡充、年金生活者支援給付金の創設等に取り組んできたところでございます。
大事なことは、自助、共助、公助のバランスを適切に図っていくということであります。引き続き、社会経済の変化に対応して社会保障制度が求められる機能を果たし続けることができるよう、こうしたバランスもしっかり踏まえながら不断の見直しを行っていきたいと考えております。

○天畠大輔君
順番がまったく逆です。代読お願いします。

岸田政権の社会保障政策は、公助、共助、自助が逆立ちしています。特定の世代や階層の負担を単純に比較してその差をならすだけなら、政府は要りません。社会保障の財源については、累進性を高めた税収をその基本とすべきです。土台は公助であるべきです。
ところが、政府はこの公助をどんどん縮減して、保険料負担の押し付け方を変えて帳尻を合わせようとしています。さらに、政府は、この帳尻合わせに乗じて、50億円も公費負担を軽くしようとしています。

東京保険医協会のある医師は、こう報告しています。
「後期高齢者の中には、毎月受診が必要なのに隔月にしたいと自分から申し出る人や、1か月分で出した薬を自分で間引いて2か月分にして服用している人がいる。」
まさに後期高齢者の命がないがしろにされています。せめてこの50億円を吐き出して、後期高齢者の負担増を圧縮するつもりはありませんか。大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
本法案による後期高齢者負担率の見直しに伴って、約50億円分の公費負担の減少が見込まれているところであります。これは、国民健康保険において後期高齢者支援金についても公費が投入されていることから、後期高齢者負担率を見直すことで国民健康保険に加入する現役世代が負担する後期高齢者支援金が減少することに伴い、結果として公費負担が減少するということであります。後期高齢者の増加等により医療費をはじめとする社会保障の増大が見込まれており、社会保障全体で見ていただきますと、もう国庫負担は年々増加をしているわけであります。今回の取扱いに、公費の取扱いについては今後の予算編成の過程で議論されるところでございますけれども、まさにこうした社会保障全体をどういう形で負担をしていくのか、またそれぞれ議論をさせていただかなければならないと考えております。

○天畠大輔君
代読します。
国保加入の現役世代の負担金減少50億円を公費削減のためにかすめ取るのは、まさに「火事場泥棒」です。政府は、前期高齢者について「もう少し生きそう」、後期高齢者について「もう少しで死にそう」と考えているのですか。まるで高齢者が死ぬのを待っているかのようです。「高齢者は社会の重荷になっている。せめてもっと負担を受け持って、現役世代に迷惑をかけるな」という法案ではありませんか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
先ほどから説明をさせていただいていますけれども、今回の公費もここで50億減るわけでありますが、これから高齢者が増えて更に医療費の負担が増えていく、そうした中でこれまでも公費の負担が上がってきている、このことをしっかりとご認識をまずいただく必要があるんだろうというふうに思っております。今回の措置においても、今回の法案の中においても、後期高齢者負担の見直し、あるいは出産育児金の負担も含めて後期高齢者の皆さんにもご負担はお願いをしておりますが、ただ、その際にも、高齢者全員に一律の負担をお願いするのではなく、低所得者の方々の負担が生じないよう、負担能力に応じた負担にするよう、あるいは一遍に負担が上がらないような緩和措置、こうしたことも盛り込ませているところでございます。
こうしたことを通じて、先ほどから申し上げておりますけれども、それぞれの方々が負担能力に応じて必要な医療をはじめとした社会保障サービスが提供できるこの基盤の構築、これを進めていきたい、これが今回の法律の趣旨でございます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
本法案は、むしろ人々の連帯を阻害しています。代読お願いします。

社会保障は、世代を超えた全ての人々が連帯し、困難を分かち合い、未来の社会に向けて協力し合うためにあるというのなら、なおのこと累進性を強化した税収中心へと変えていくべきです。

麻生太郎当時の財務大臣は、2016年6月、「90になって老後が心配とか、訳の分からないことを言っている人がテレビに出ていたけど、『おまえいつまで生きているつもりだ』と思いながら見ていました」と発言しました。極めて不適切な発言と考えますが、大臣の見解をお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
ご指摘の発言はまさに政治家個人の発言でありますので、大臣の立場として見解を、それに対して見解を申し上げる立場にはないというふうに考えております。その上で、本格的な少子高齢化、人口減少時代を迎える中で、政府としては、全ての年代の人々が希望に応じて意欲、能力を生かして活躍できる社会づくりを目指しております。同時に、超高齢化社会に備え、全ての国民がその能力に応じて支え合い、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障がバランス良く提供される、全世代型対応型の持続可能な社会保障制度の構築、これに向けて取り組んでいきたいと考えております。

○天畠大輔君
代読します。
その麻生氏もあと7年で90歳を迎えられます。優生思想の下では、私たち障がい者は「生きている価値のない人間」として扱われました。ところが国は、優生手術裁判において、国敗訴の判決を不服として控訴・上告を繰り返しています。このような国の姿勢と本法案は根っこの部分でつながっているのではありませんか。全ての人々に対して「かけがえのない存在だ」といえる社会を目指すのならば、大臣、本法案は廃案にすべきではありませんか。

○国務大臣(加藤勝信君)
強制不妊手術事案に係る訴訟については、こども家庭庁にも移管しておりますのでこの場では答えを控えさせていただきたいと思いますが、お尋ねのような優生思想については、現 在、政府としてそのような考えは持っておりません。全ての国民が障がいの有無にかかわらず等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念 などについて普及啓発を行っております。また、本法案は、先ほどから申し上げておりますけれども、まさに全世代型対応型の持続可能な社会保障制度を構築するためのものであります。超高齢化社会にあっては、社会保障は世代を超えた全ての人々がまさに連帯をし、困難を分かち合い、未来の社会に向けて協力し合うためにあるという認識を全ての世代にわたって広く共有していただくことが大事だと考えております。
こうした考え方に立って、年齢や障がいの有無にかかわらず、全ての国民が安心して生活できるよう、本法案による改革も含めて、1つ1つ施策を進めていきたいと考えております。

○天畠大輔君
本法案は悪法であり、撤回すべきと再度申し上げて、質疑を終わります。