2023年5月30日 厚生労働委員会質疑(国立健康危機管理研究機構法案審議)「感染症対策は『格差対策』だ」


〈質疑〉
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。代読お願いします。

本日は、私のコロナ療養の体験談から話を始めます。
私は、昨年12月に新型コロナウイルスに感染し、介助者とともに自宅療養を余儀なくされました。通常、重度障がい者はコロナに感染した時点で入院を勧められますが、私は慣れた介助者との自宅療養を選びました。なぜなら、病院では完全看護体制やコロナ禍の感染対策を理由に介助者の付添いを断られることがほとんどだからです。
常に介助が必要な障がい者は、入院中も介助者が付き添わなければ、安心して治療を受けることができません。その障がい者によって異なる介助方法を熟知していない看護師が、食事やトイレ、体位交換等のケアを行えば、誤嚥やけがのリスクが生じます。
また、私のようにコミュニケーション支援が必要な障がい者にとっては、慣れた介助者の通訳がなければ医師や看護師と適切なコミュニケーションが取れず、医療ミスにもつながります。介助者が常にそばにいて適切な介助を受けながら安心して療養するためには、自宅療養しか選択肢がありませんでした。

しかし、もしも重症化していれば入院せざるを得なかったでしょう。そのときに、介助者が付き添わない状態で果たして適切な医療を受けられていたのか、想像しただけで恐ろしくなります。常に介助が必要な障がい者は、このような不安と恐怖に日々向き合っています。
入院時の付添い可否がまさに命に関わる問題であることは、これまでも指摘し続けてきました。コロナ禍においては、「感染拡大防止」の名の下に、多くの障がい者たちがきわめて深刻なレベルでの不利益を被りました。コロナ感染でいったんは入院したものの、介助者の付添いが認められず、肺炎を起こしかけていたのに退院せざるを得なかった方、介助者を伴う入院を希望したものの、医療機関側が受け入れず、自宅療養を余儀なくされた挙げ句亡くなられた方、ほかにも障がい者の入院にまつわる困難の事例は後を絶ちません。健常者と障がい者の間には明確な医療格差があると言えるのではないでしょうか。

感染症が起きた場合、人それぞれが被っている「格差」が、まさに生死を分ける決定要因となります。このコロナ問題において、障がい者がどのような感染実態、症例、入退院状況だったか、厚労省は把握していますか。簡潔にお答えください。

○政府参考人(佐原康之君)
お答えいたします。
新型コロナにおきましては、国立国際医療研究センターを中心に、新型コロナの入院患者の臨床情報を深掘りして分析するためレジストリー研究を実施しておりまして、その中で、麻痺の有無や認知症、先天性心疾患、先天性染色体異常といった併存疾患の有無や、発症前のADL、日常生活動作の状態等について把握をしてまいりました。
本研究におきましては、併存疾患やADL、日常生活動作の状態等が患者の重症化に与える影響等を分析しておりまして、オミクロン株流行期においても、ADLの低下した例で重症化するリスクが高いことなどについて厚労省の専門家会議でも公表してまいりました。
ただし、新型コロナの患者の全てについて、重症化に寄与しない障がいの有無等も含めまして、網羅的に障がいの有無についての把握は行っていないところでございます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
コロナ禍では、障がい者は文字どおり「置き去り」になっています。今後、把握していく考えはあるのでしょうか。

○政府参考人(佐原康之君)
お答えいたします。
感染症対策の政策立案に当たりましては、障がい者に関する状況についても適切に把握し、考慮することは大切であると認識をしております。
そのため、新型コロナの5類への位置付け変更後も、障がい者施設等において集団的な新型コロナの発生があった場合には、保健所に連絡していただき、保健所においては積極的疫学調査や指導等、引き続き必要な対応を行っていただくことをお願いしているところでございます。
また、新型コロナの症例の臨床情報の収集を行うレジストリー研究におきまして、一部の障がいの有無などの患者の状態も加味した情報収集を行っておりまして、引き続きこれは実施していくこととしております。

○天畠大輔君
代読します。
在宅障がい者の実態をきちんと把握してください。質問を1つ飛ばして、次に行きます。

厚労省はどのような感染拡大防止策を講じれば介助者・通訳同伴の入院体制が確立されるとお考えでしょうか。お答えください。

○政府参考人(榎本健太郎君)
お答え申し上げます。
障がい児者が入院中に本人の状態を熟知した介助者や支援者が付き添い、その支援を受けられるということは重要であると考えております。その際、入院時の看護の原則、すなわち入院時の看護というのは看護要員のみによって行われるものであって、患者の負担による付添い、付添い看護が行われてはならないということを原則としながら、その周知を行ってきたところでございます。支援が必要な障がい児者の入院時に支援者が付き添う際の院内感染対策につきましては、医療機関へのヒアリングによりますと、体調チェックの実施や手指衛生等、マスクの装着の徹底、それから新型コロナの検査について流行状況や費用負担等を考慮した上で必要に応じて実施するなど、医療機関ごとに対応されていると承知しているところでございます。
私ども厚生労働省におきましては、これまでもこのような現場の好事例を都道府県等を通じて医療機関に周知を図るとともに、あわせて、より一層の周知を図るために、特に特別なコミュニケーション支援を要する障がい児者の介助者や支援者の付添いを受け入れるということにつきまして、医療機関や医療従事者向けのチラシの作成でありますとか、厚生労働省の公式ツイッターを活用した周知などの取組を行いまして、医療機関に協力を促してきているというところでございます。医療機関におけます付添い者の受入れの判断につきましては、患者の状態のみならず、入院病室の構造や地域の感染状況なども踏まえて医療機関において判断されるということになってまいりますが、厚生労働省といたしましても、引き続き、医療機関に対して、支援を要する障がい児者の入院時に本人の状態を熟知した介助者や支援者が付き添うということをできるだけ受け入れていただきますように促していきたいと考えているところでございます。

○天畠大輔君
代読します。
介助や通訳は医療に付随する2次的なサービスなどではなく、障がい者にとって命綱そのものです。健常者が自分の意思を伝えたり身体的自由権を行使したりするのが当たり前と考えられているように、障がい者にとってもそれらを保障するのは当たり前だという「障がいの主流化」という視点・思想を是非持ってください。
厚労省は、先ほどの答弁にもありましたように、事務連絡において各自治体や医療関係団体を通じて介助者の付添いが可能であることを医療機関に周知するよう働きかけてはいます。しかし、付添い可否を最終判断するのは医療機関であり、医療機関の理解や受入れ体制の整備が急務です。政府にできることは周知だけではないはずです。
国立健康危機管理研究機構は国立国際医療研究センターの病院も引き継ぎますので、米国CDCにはない病床機能も有することになります。そのような特徴を生かして、介助者・通訳同伴の入院体制の確立や向上に向けて、データ収集や知見の集積に努めるべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
国立健康危機、国立健康危機管理研究機構においては、感染症の予防や感染拡大の防止などのため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、基礎から臨床までの一体的な研究基盤等により獲得した質の高い科学的知見を内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に迅速に提供し、その政策決定に役立てることとしています。
これまでも、国立感染症研究所においては、病院での感染症発生事例を調査し、患者の個々の行動特性などに応じた専門的な支援が効果的であることを示す研究などを行うとともに、国立国際医療研究センターの病院においては、障がいを持つ患者の受入れにあたり、介助者や通訳者の受入れも可能な限り行ってきたところであります。
機構発足後においても、病床機能を有するという特徴も生かし、こうしたこと、そうしたご指摘の点も含め、科学的知見の獲得に取り組んでいきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
是非、取り組んでください。そして、格差の視点を持つことも重要です。代読お願いします。

資料をご覧ください。米国CDCの組織図には、トップである「所長局」に直属する部署として、「格差管理公平雇用局」と「健康格差局」が置かれており、エスニックマイノリティや貧困層の感染症リスクについて知見を集め、政策につなげています。国立健康危機管理研究機構においても、そのような部分は大いに見習い、研究メニューの中に積極的に取り入れるべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)                     
国立健康危機管理研究機構と米国CDC、様々な点が異なっておりますが、感染症の予防や感染拡大の防止などのため、基礎から臨床までの一体的な研究基盤等により獲得した質の高い科学知見を危機管理統括庁、そして厚労省に提供し、そして政策決定に役立てるとしているわけであります。感染症の発症リスクや重症化リスクとしては、年齢や基礎疾患などの要因のほか、ご指摘のような社会的な要因も考えられることから、必要に応じて、研究内容や方法等について社会学等の専門家やアカデミアとも連携した検討がなされていくものと考えております。

○天畠大輔君
代読します。
たとえば、米国CDCは、もしも家賃を払えなくなった賃借人が強制退去をされた場合、新型コロナウイルスに感染するリスクが高いと判断したうえで、立ち退きを猶予する措置を提言し、政府がこれを立法化したりしています。国立健康危機管理研究機構においても、このような政策ニーズに沿った科学的知見を、内閣感染症危機管理統括庁や厚労省感染症対策部に対して積極的に提供していくべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
まず、先ほど申し上げましたが、機構が感染症の予防や感染拡大の防止等のため、政策ニーズに沿ったその時々の状況に応じて必要とされる科学的知見を内閣府感染症危機管理統括庁や厚生労働省に提供することは重要であります。この法案では、機構は、感染症に関する情報収集、分析を行い、質の高い科学的知見を統括庁に提供するなど定めるところでございます。機構が得た科学的知見は、統括庁や厚生労働省において積極的に提供していきたいと考えております。

○天畠大輔君
格差解消こそ感染症への正しい処方箋だと申し上げて、質疑を終わります。

〈反対討論〉
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。会派を代表して、反対討論を行います。代読お願いします。

私は、れいわ新選組を代表し、「国立健康危機管理研究機構法案」ならびに「同法施行に伴う整備法案」に対して、反対の立場から討論を行います。

反対理由の第1は、岸田総理が「司令塔」を演出したいだけの法案だからです。「司令塔」には、現場を熟知したうえでの総合的判断が求められます。ところが、日本の新型コロナ対策はどうだったでしょうか。安倍晋三、当時の総理が富士フイルムのアビガン早期承認を執拗に主張しましたが、その効果はいまだ確認されないままです。その反省もなく「司令塔」を語る資格はないと考えます。

反対理由の第2は、「司令塔」は内閣官房、「監督」は厚労省という「二頭体制」になっているという点です。新型コロナ問題であらわになった閣内のごたごたが、今後も繰り返されること確実です。英国やドイツなどの例に学び、感染症対策の司令塔は、厚労省が一貫して担うべきです。

反対理由の第3は、ワクチン検査の一部書類審査化が打ち出されたことです。加藤大臣は、5月25日の当委員会において、「近年、医療品メーカーの試験技術が大幅に向上しており、国の機関により重ねて試験を実施せずとも品質の確認ができる」旨答弁しましたが、きわめて危険な発想です。医薬品メーカーは、国家検定によって全ロット試験が行われることを前提にして緊張感を持って生産しているのであり、それでもなお1,000件に1件程度の不合格があると言われています。検査体制の後退によって薬害が起きたら、国はどう責任を取るのでしょうか。

反対理由の最後は、政府が「感染症対策は格差対策である」という大原則に立っていないということです。米国CDCは、新型コロナの影響で貧困層が家賃を払えずに立ち退きを受けた場合、更に深刻な感染拡大が起きるとして、立ち退きを猶予する法案を作りました。感染症対策に限らず、日本政府に最も欠けている姿勢です。私たち障がい者もまた、感染症を前にして真っ先に命の危機にさらされる存在です。障がい者が入院する際、介助者や支援者が当たり前に受け入れられるための体制づくりや感染拡大防止策についても、もっと積極的に取り組むべきです。

本法案の国立健康危機管理研究機構では、すべての人々の命と健康を守れない、と申し上げ、反対討論といたします。