2023年5月25日 厚生労働委員会質疑(国立健康危機管理研究機構法案審議)「『官邸が司令塔』にだまされるな!日本版CDC」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
国立健康危機管理研究機構という「飛行機」には操縦桿が2つ付いています。代読お願いします。

今国会で「新型インフル特措法及び内閣法改正法」が成立し、「内閣感染症危機管理統括庁」が発足する見込みです。資料1はそのポンチ絵ですが、ご覧のとおり、この内閣感染症危機管理統括庁が司令塔となって、国立病院など指定公共機関、本法案で審議される国立健康危機管理研究機構、厚労省、指定行政機関、都道府県知事の5者を「強力に統括する」仕組みになっています。国立健康危機管理研究機構は厚労省と横並びで、ともに内閣感染症危機管理統括庁という上位の組織から「統括される」側になっています。

ところが、資料2をご覧ください。本法案において、国立健康危機管理研究機構は、「内閣感染症危機管理統括庁」と「厚労省感染症対策部」の双方に対して科学的知見を提供し、所管上も厚労大臣の「直接的監督」を受けるというのです。国立健康危機管理研究機構を監督するのは厚労大臣です。2つの法案において全く異なる組織関係が示されているのです。いわば一機の飛行機に2つの異なる操縦桿が付いているようなものであり、墜落するのは確実です。「司令塔」の内閣官房、「監督」の厚労大臣、この矛盾をどう説明しますか。内閣府鈴木政務官、加藤厚労大臣、それぞれ端的にご答弁ください。

○大臣政務官(鈴木英敬君)
それでは、お答え申し上げます。
内閣感染症危機管理統括庁は、感染症危機への対応に係る政府全体の司令塔組織として内閣官房に設置されるものであり、その役割は、政府全体の見地から各省より一段高い立場で政府の感染症対応の基本的方針の立案など、感染症危機への対応の総合調整にあたるものであります。次の感染症危機においては、統括庁において司令塔機能を十分に発揮し、迅速、的確に対応できるよう、平時から有事を見据えてしっかりと取り組み、次の感染症危機への備えに万全を期してまいりたいと考えております。

○国務大臣(加藤勝信君)
今、内閣感染症危機管理統括庁については鈴木政務官から答弁があったとおりでございます。その総合調整の下で、厚生労働省感染症対策部は、感染症対応能力の強化するために設置をされたものであり、まさに感染症対応の実務の中核を担うこととなります。
また、国立健康危機管理研究機構は、統括庁による総合調整の下、直接的には厚生労働大臣が監督することとしており、統括庁や厚生労働省に対しその政策立案に資する科学的知見を提供するということで、組織体系としておっしゃるような矛盾は生じないものと承知をしております。

○天畠大輔君
その答弁では、矛盾は全然解消されませんね。代読お願いします。

国立健康危機管理研究機構は、官邸と厚労省のどちらの指揮命令に従うのでしょうか。実は、新型コロナ感染症への対応においても官邸と厚労省のいがみ合いは、目を覆うばかりのものでした。
資料3をご覧ください。安倍晋三当時の総理は、アビガンの早期承認を執拗に主張しましたが、この薬を開発した富士フイルムの古森重隆会長と安倍総理はじっこんの仲であり、資料4にあるとおり、総理在職中に2人が会った回数は会食やゴルフなど全部で28回に及びます。政府がこれまでに購入したアビガンの総量、何錠、何人分か、その金額、何人分が使われ、現在何人分残っているのか、加藤大臣、簡潔に答えてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
まず、アビガンは新型インフルエンザ治療薬として当初必要量を購入したところでありますが、その際には、新型インフルエンザ治療薬として使う場合には、1人当たり40錠が必要となっています。他方で、新型コロナ治療薬としては1人当たり122錠が必要となっております。その上で、アビガンの購入量については、新型コロナの流行前には新型インフルエンザ対策として200万人分を約68億円で確保いたしました。
その後、新型コロナの流行に伴い、新型コロナ治療薬の候補として200万人分を確保することにいたしました。この際、既に新型インフルエンザ対策として備蓄していた分、先ほど申し上げた換算に直しますと約70万人分でありますから、それに加えて130万人分を追加で、約159億円で確保したところでございます。
これまでに購入したアビガンの総量は約2億4400万錠となっております。このうち、新型コロナ治療薬としての観察研究を行うため、約5万人にアビガンを投与いたしましたが、途中で投与を中止したケース等があるため、実際の使用量としては約3万人分を使用したこととなります。で、結果的にアビガンの製造企業が新型コロナ治療薬として開発を中止したことから、現在は新型インフルエンザ治療薬として約600万人分を備蓄しているということとなっています。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
モリカケ、桜と同じく、お友達びいきがコロナ対応でも行われたということですね。大臣、アビガンが今日まで承認されていない理由を述べてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
今の指摘は根本的に違っておりまして、やっぱり当時の認識の中で、やっぱりこれに、コロナに効く薬は何かないか、多くの皆さんのニーズがある中で、むしろそれが分かってから購入していたんではもう後繰りになるわけでありますので、そこは一定のリスクの中で先にそうした治療薬を購入する、これはワクチンもそうでありますし、ほかの治療薬もそうであります。それはまさに国民を守るための行為でありますので、今のご発言は全く受け入れ難いものだというふうに認識をしております。

その上で、アビガン、今日に至るまで承認されていない理由ということでありますが、アビガンについては、藤田医科大学を中心に実施された特定臨床研究、富士フイルム富山化学社が実施した複数の国内第三相試験のいずれにおいても有効性が確認されなかったものであります。PMDAの審査や薬事・食品衛生審議会における審議の結果、承認可能との判断には至らなかったところでございます。

○天畠大輔君
代読します。
内閣府鈴木政務官にお尋ねします。西村康稔当時の経済再生担当大臣は、2020年7月24日の記者会見で、十分な感染対策を取らずに感染者が発生した場合は、感染症法16条に基づき店舗名を公表する方針を示しましたが、なぜ感染症法を所掌する厚労大臣ではなく内閣府特命大臣である西村氏が発表したのですか。

○大臣政務官(鈴木英敬君)
お答え申し上げます。
議員ご指摘の会見につきましては、当時、飲食店等においてクラスターが多数発生をしていたことを踏まえまして、関係業界団体に対し、業種別ガイドラインの遵守の徹底に関する協力を求めることなど、飲食関連のクラスター対策の強化に関する内容を新型コロナ対策の担当大臣として発表しておりまして、その一環として、議員ご指摘の感染症法に基づく措置についても一体的に発表したものでございます。

○天畠大輔君
代読します。
厚労大臣、これまでに公表された店舗の総数、店舗名、場所、公表の理由を答えてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
厚生労働省においては、感染症法第16条を踏まえ、自治体における新型コロナ患者が発生した場合の住民に対する情報提供の参考となるよう基本方針をお示しし、適切な情報の公表に努めていただくようお願いをしてまいりました。
基本方針等においては、感染者に接触した可能性がある者を把握できていない場合に感染者と接触した可能性のある者を把握するため、また、感染症を蔓延させないための適切な行動等を個人が取れるようにするため、不特定多数と接する場所の名称、他者に感染させ得る行動、接触の有無等を公表することなどや、その公表に当たっては、場所の名称を公表する場合を含め、関係者の同意を必要とするものでないこと等もお示しをしていたところでございます。
その上で、個々のクラスターが発生した場所の名称の公表について厚労省で網羅的な把握は行っておりませんが、各自治体において適切に対応されているものと承知をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
内閣官房がアドバルーンを上げ、厚労省はデータすらしっかりと集めていない。機能不全そのものです。代読お願いします。

こうした機能不全は、国立健康危機管理研究機構ができた後も繰り返されること、確実です。それだけではありません。国立感染症研究所が現在行っているワクチンの全ロット試験について、八神政府参考人は、5月17日の衆議院厚生労働委員会において、書面のみで審査が可能である品目の評価を着実に進める旨答弁し、現在の実地検査中心を改める方向を示しました。また、米国などでは全ロットでの実地試験を実施していないとも発言しましたが、極めて誤解を招く説明です。

資料5をご覧ください。世界標準は全ロット検査です。ヨーロッパでは、EDQM、欧州評議会医薬品品質部門が個別の薬ごとに詳しいガイドラインをホームページで公表して全ロット試験を行っていますし、米国も、いつ、どれだけの数量を検査するかメーカー側に伏せたまま抜き打ちの検査を行っています。書類審査への安易な移行は薬害発生の危険性を増すため、やめるべきと考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
その前に、機能不全とおっしゃいましたけど、我々は、別途メディアで報道された集団感染事例の件数、これはしっかり把握をし、公表させていただいていることをまず申し上げておきたいと思います。

その上で、国家検定の書類審査への安易な、書類審査への移行に関してご質問がございました。ワクチンなど高度な製造技術や品質管理が必要な医薬品などについては国家検定を実施してきたところでありますが、近年、医薬品メーカーの品質管理、技術試験、試験技術が大幅に向上しており、企業の自家試験に加えて、国の機関により重ねて実施試験を実施せずとも品質の確認、確保ができるようになってきたところでございます。
そのような品質管理技術の進展を受けて、国立感染所研究所とも連携し、国家検定の実施方法の見直しを進めてきたところであります。国立健康危機管理研究機構の設立後は、書面で審査できると評価した製品の検定から順次、PMDA、医薬品医療機器総合機構に移管することとしているところでございます。
一方、引き続き、実地試験などが必要な製品や、製品の品質や安全性が疑われる場合には、実地試験部分を国立健康危機管理研究機構に委託して実施する予定であり、ワクチン等の安全性について重層的な確認ができる体制を確保することとしております。
加えて、PMDAは医薬品の審査、安全対策を実施しており、専門性を有する機関であるとともに、移管によりワクチンの副反応疑い報告データと検定結果との関連性を一貫して評価できるようになるため、ワクチン等の安全対策の一層の向上が期待されるものと考えております。

○天畠大輔君
代読します。
資料6をご覧ください。先ほど倉林委員も指摘したとおり、現在、国立感染症研究所における研究は、国費から出る基盤的研究費1億円に対して、研究員が自力で出資者に申請してもぎ取った競争的研究費32億円という比率です。

政府は、本法案において、疫学的調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を供給できる体制の強化を図る、国際的に卓越した能力を有する人材を確保するとまで言っています。ならば、せめてこの研究者に対して資金確保を押し付けている「競争的研究費」分を全額国費で賄うべきではありませんか。加藤大臣、お願いします。

○国務大臣(加藤勝信君)
国立感染研究所では、感染症に関する情報収集、解析及び基礎研究、また感染症危機時における検査対応や疫学調査などを行っており、これらの研究業務を遂行するために必要な予算を措置してきたところであります。
ここには基盤的研究費が出ておりますが、これは国立感染症研究所に予算計上をされている研究費の一部、内数でありまして、それ以外も含めた研究費は、たとえば令和5年度でいえば31億円計上されているところでございます。それと競争的研究費を比較して遜色のない水準とも言えるというふうに認識をしております。また、競争的研究費を自ら獲得することは、研究者にとって研究内容の自由度の拡大をもたらすとともに、独創的な研究成果の創出に貢献するという利点もございます。そうしたことを踏まえ、こうした資金も引き続き活用していくことは有効と考えております。
国立健康危機管理研究機構の創設後においても、同機構が期待される役割を果たせるよう必要な予算の確保には努めていきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
本法案による国立健康危機管理研究機構は明らかな設計ミスであると改めて申し上げ、質疑を終わります。