2023年4月20日 厚生労働委員会質疑(全世代型社会保障法案審議)「異次元の少子化対策には、子育てのリアルがない!」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。育児のリアリティが欠如した「異次元の少子化対策」について質問します。代読お願いします。

こども家庭庁の長官就任を知らせる新聞記事の中で、長官が、「異次元の少子化対策」の試案を作成するにあたり、国連人権委員会の委員長として世界人権宣言を起草したエレノア・ルーズベルト氏の言葉を心の中で唱えておられたとの紹介がありました。
自見政務官に伺います。「異次元の少子化対策」にも、世界人権宣言に掲げられているあらゆる人の権利を守る観点は引き継がれているのでしょうか。

○大臣政務官(自見はなこ君)
お答えいたします。
本年4月に施行されましたこども基本法では、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとりまして、全てのこどもが、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指すことが掲げられております。また、加えまして、こども政策の基本理念といたしまして、こども基本法の中に、全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすることが掲げられております。こども基本法に基づきまして、少子化対策を含みますこども政策を着実に実行してまいりたいと存じます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
こども家庭庁の意識と政権の意識に随分違いがありますね。代読お願いします。

全世代型社会保障法案、そして少子化対策を議論するにあたり、まず現政権の女性や障がい者、同性愛者など社会的マイノリティーへの偏った意識を改める必要があります。こどもの誕生や女性の出産を社会の生産性を向上させるための1つの行為や労働力のコマとしか捉えていない政治家や官僚の差別発言は後を絶ちません。そうした意識を変革することから始めなければならない日本の現状を非常に残念に思います。
男女が「結婚しないこと」を少子化の諸悪の根源のように捉え、そこに社会の中に根強く存在する性的マイノリティへの偏見を利用して同性婚の法制化を阻む、それだけでは飽き足らず、「同性愛者には生産性がない」「隣に住むのも嫌だ」という発言を行い、1人1人の人間の存在を根本から否定する差別を岸田政権は扇動してきました。
女性や障がい者、同性愛者などの人権を擁護する法的義務は国にあります。社会的マイノリティの権利をないがしろにする差別意識のはびこる国では、安心して子供を産み育てることはできません。性的マイノリティに対する差別意識にとどまらず、現在もなお優生手術裁判への上告をし続ける国の姿勢等は、障がいを持つこどもの誕生を歓迎する国ではないことを裏付ける象徴的な事象です。

「異次元の少子化対策」を講ずるにあたっては、社会的マイノリティの存在や日常のリアリティが置き去りになってはいけません。たとえば、高度な医療的ケアを必要とする赤ちゃんの在宅ケアや保護者への産後ケアなどの支援プログラムは「異次元の少子化対策」にメニューとして組み込まれていますか。自見政務官、お答えください。

○大臣政務官(自見はなこ君)
ありがとうございます。
障がい児や医療的ケアを必要とする乳児への在宅ケアにつきましては、居宅訪問型児童発達支援によりまして、障がい児の居宅を訪問いたしまして、日常生活における基本的な動作の支援や知識技能の付与、その他必要な支援というものを行っているところであります。また一方で、産後ケア事業におきましては、出産後の産婦に対する保健指導や育児指導等を行うものでありまして、産後ケアを通じて医療的ケア児を必要とする児を把握した場合には、子育て世代包括支援センター等の関係機関と適切に連携し、支援をつなげているところであります。また、産後ケア事業では、宿泊やデイサービスのほか、居宅に訪問して支援を行うことも可能となっておりまして、医療的ケアを必要とする乳児の母親が産後ケアの利用を希望する場合には、妊婦、産婦や乳児の状況に応じまして柔軟に実施をされているところでもあります。
3月末にお示しをいたしました試案におきましては、産後ケア事業の実施体制の強化等を行うといたしておりますが、引き続き、障がい児や医療的ケア児の母親、お母様たちも含めまして、検討をしっかりと進めてまいります。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
確実に進めてください。家事支援などの充実も必要です。代読お願いします。

通告なしになりますが、自見政務官に伺います。資料をご覧ください。
レスパイトケアの制度化や、資料にあるチャイルド・ケモ・ハウスのような病院と在宅の中間施設など、高度な医療的ケアを必要とする赤ちゃんやこどもを育てる保護者とその家族が安心して療養できる環境整備が必要です。また、ワンオペ育児や交代なき付添いへの支援にも着目すべきです。医療的ケアを必要とするこどもと家族が安心して療養や療育を受けることができる事業への助成拡充が今後必要だと思います。是非ご検討いただけないでしょうか。自見政務官、お答えください。

○大臣政務官(自見はなこ君)
ご質問ありがとうございます。
こども政策の新たな推進体制に関する基本方針におきまして、関係省庁と連携しながら、小児がん患児等が家族や友人等と安心して過ごすことができる環境の整備について検討を進めるとされたことを踏まえまして、内閣官房こども家庭庁設立準備室の段階から、我々は、こどもホスピスの検討に関する関係省庁の連絡会議というものを設置をいたしまして、検討を今までも進めてまいりました。
この連絡会議におきましては、現地の視察や関係者のヒアリングなども踏まえまして、先月になりますが、こどもホスピスやそれに関連した支援についての実態や課題を整理した中間取りまとめを行ったところでもございます。
4月以降になりますが、こども家庭庁ができましてからはその取組を引き継いでおりまして、今年度より、こどもホスピスに関する実態調査を踏まえた類型整理等を行う調査研究を開始することとしているところであります。
重たい疾患を持つこどもや家族や友人などと安心して過ごせることができる環境の整備は非常に重要であると考えておりまして、こうした環境整備は、福祉や保健のほか、医療、教育など様々な分野にまたがる検討が必要であることから、引き続き、厚生労働省、文部科学省など関係省庁とも緊密に連携しながら、こども家庭庁でリーダーシップを取ってしっかりと検討を進めてまいりたいと存じます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
是非進めてください。代読お願いします。

さて、今月から出産育児支援一時金が42万円から50万円に増額されています。通常、一部の出産方法を除き、出産に関わる費用は医療保険の適用がされておらず、自費診療です。請求金額は各産院で自由に定められています。出産に係る費用が最も高額な東京都の平均請求額は、平成28年でも約62万円です。一時金で8万円の増額がなされたとしても、12万以上の自己負担が家計に強いられています。
そもそも、出産育児支援一時金は、産前産後の出産と育児に関わる費用を公費でフォローする目的があります。にもかかわらず、実際には、一時金の総額が出産費用として産院へ支払われるため、現実的には産後の育児に係る費用は残りません。わずか8万円の増額では、産前産後の家計の負担を軽減する目的は果たせていません。
通告なしになりますが、加藤大臣に伺います。出産費用以外に、産後すぐの育児に必要なものにはどのようなものがありますか。

○国務大臣(加藤勝信君)
様々、出産直後ということでお話がありましたから、まさに産着や、そのこどもが着たり、あるいはおむつとか、あるいは哺乳瓶とかいろんなこども用の必要な、何といいますか、器具というんでしょうか、そういったものも必要だと思いますし、また場合によっては、出産されたお母さんが少し休むためのレスパイトにかかる費用等、様々な費用が必要なんだろうというふうに考えております。先ほど出産一時金の話ありましたが、当初、おっしゃるように出産一時金の、出産育児一時金でありましたけれども、この議論、ずっとこれを引き上げる中においては、現時点では出産費用、これを踏まえてこの金額を算定させていただいているところでございます。

○天畠大輔君
ありがとうございます。産後すぐの育児に備え、多くの家庭が赤ちゃんが生まれる前に、おっしゃられていたように、産着におむつ、搾乳器、母乳パッド、授乳クッションにベビー布団、ベビーカーなどたくさんの物品を用意されます。
こちらも通告なしになりますが、大臣、赤ちゃんが生まれ、産院からの退院時に使用しなければならない新生児用のチャイルドシートの価格をご存じでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
申し訳ございません。もう2、30年前になりますのであまり記憶にないですけど、ただ数万円単位以上のものだったというふうに記憶をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
育児のリアリティをきちんと踏まえてください。代読お願いします。

新生児用のチャイルドシートは一般的には2万円から7万円はします。外出時のベビーカー、乗車時のチャイルドシートは体の成長に合わせて買い換える必要があり、新生児用、乳幼児用、ジュニアシートと、最低でも3台必要となります。どれも赤ちゃんやこどもの生命維持に欠かすことのできない必需品です。それらを踏まえると、出産育児支援一時金を大幅に拡充し、産前から既に始まっている育児の準備や産後の育児に安心して使っていただけるよう施策を講ずる必要があると考えますが、大臣の考えをお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
先ほどもご説明しましたように、現在の出産育児一時金は、基本的に出産の費用を充当するという考え方にのっとって、今般も平均的な標準費用を全て賄えるという、こうした判断で42万円を50万円に引き上げたところでございます。先ほどから、今委員からお話がありました、出産にむけてあるいは出産後に必要な費用等々については、今はこども家庭庁ということになりますけれども、それぞれ、妊娠の段階そして出産の段階で一時金が支給され、一時金ないしそれに類似した対応がなされていくと、そういったものも活用していただけるというふうに承知をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
出産費用は全額公費で賄い、一時金は育児に特化すべきです。代読お願いします。

また、この法案では、出産費用の保険適用はされません。それどころか、「出産育児支援一時金」の一部を75歳以上の後期高齢者が負担し支出する建付けです。
ところが、政府は、統一地方選挙が告示されるタイミングの3月31日に、「少子化対策」の試案として、「こども・子育て政策の強化について」を発表しました。その中で、突如として出産費用の保険適用導入をにおわす発言を始め、衆議院の質疑においても、「令和8年度を目途に検討を進める」と答弁されています。これは一体どういうことでしょうか。
後期高齢者へ負担を強いる法案を出しながら、一方では保険適用、財政支出するかのような情報をリークさせる。これは、この法案自体の不備を露呈するものであり、この法案は問題のある法案であると政府自らが言っているのと同じです。国民生活の根本に関わる社会保障の問題、ましてや、後期高齢者からの一部保険料の徴収など、税負担に関わる問題を選挙の道具に使うことは国民を愚弄するものです。
大臣に伺います。そもそもなぜ出産はこれまで保険適用されてこなかったのか、そして、今後どのように検討を進めていくのか、簡潔に教えてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
健康保険法上、出産は疾病、負傷とは別の保険事項として位置付けられております。出産育児一時金として現金給付が行われてまいりました。これまでも幾度となく、出産を保険適用し現物給付とすることについて議論は行われてきたわけでありますが、関係者間での合意には至らず、現在に至っているところであります。

昨年秋、今回の医療保険制度改革に関し社会保障審議会医療保険部会において議論が行われた際には出産の保険適用に関する議論もあった中で、昨年末に取りまとめられた議論の整理では、出産費用については、年々上昇しており地域差もあることから、引き続き、こうした状況を踏まえたより詳細な出産費用の分析を行うとともに、出産費用の見える化の効果などを踏まえ、引上げ後3年を目途に、出産育児一時金のあり方について検討するべきとされておりました。
さらに、年頭に総理から、「異次元の少子化対策」に挑戦し、大胆に検討を進めるとの表明があり、また、国会審議などにおいて保険適用を検討すべきとのご指摘もいただいたことも踏まえ、出産費用の見える化を進め、その効果の検証を行った上で、次の段階の取組として、先般のたたき台、試案において、出産費用の保険適用の導入を含め出産に関する支援等のあり方について検討を行う旨を盛り込んだところであります。

○天畠大輔君
代読いたします。
現在、多くの出産は病院で取り扱われています。出産は疾病やけがではありませんが、輸液や心拍、血圧の管理など、医療行為の下で安全な出産環境が確保されています。これまでに出産が保険適用にならなかった歴史は、産婆さんや女性たちに伝承されてきた日本のお産文化への軽視、女性が行う助産行為や女性たちを医学の担い手として認めてこなかった歴史と通ずるものであり、大学の医学部入試における女性差別問題の根源のような気がしてなりません。
産前産後、育児の支援拡充と出産費用の抜本的な負担軽減は少子化対策の両輪として推進しなければならない最も基本的な内容です。そこには、十分な財政措置を政府が講ずる必要があります。しかし、この法案では、国ではなく後期高齢者に財政支出を求めています。これは全く異次元な発想ではないでしょうか。
出産費用の保険適用の検討を進めるのであれば、出産育児支援一時金の一部負担について、年収153万円以上の後期高齢者に負担を強いるのではなく、政府が財政出動し、補うべきです。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
出産費用については、従前から、健康保険法において、疾病、負傷、死亡と並び、医療保険の保険事故として規定され、医療保険において出産育児一時金として現金給付が行われてきたところでございます。こうした経緯を踏まえて、今回の措置においても、もちろん通常の医療保険のみならず、さらに、こうした少子化が進む中で幅広く負担をお願いをする、また、過去において、後期高齢者医療制度が始まる前においては、医療保険制度の中で後期、今でいう後期高齢者の皆さん方にもご負担をいただいた、こうしたことも踏まえて、その一部については後期高齢者医療制度でご負担をいただいているわけであります。ただ、全ての後期高齢者ではなくて、一定の所得のある方に対してお願いをし、またその負担についても激変緩和を図ったところでございます。
そして、今後、保険の適用の議論、先ほど申し上げた、進んでいくわけでありますけれども、これまでの経緯を踏まえれば、仮に保険適用を行ったとしても、引き続き保険料で賄っていくことが基本と考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
大臣、1か月12万円弱で生活している後期高齢者の生活を想像して検討されたのですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今回の改革により、均等割保険料のみが付加される年収153万円以下の約六割の低所得の方々には制度改正に伴う負担の増加が生じないようにするとともに、さらに、その上の年収の約12%の方々についても、令和6年度は制度改正に伴う負担の増加が生じないようにしております。平成30年の家計調査の個票データを用いて、年収155万円より上位の所得者について分析した収支の状況、これも踏まえた上で、負担能力に応じた負担をお願いするという観点から、年収153万円以上の方を対象に今回の制度改正に伴う負担をお願いすることとしたところであります。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
答えになっていません。一部のお金持ちの政治家や官僚の着想は要りません。代読お願いします。

次に、この法案では、国民健康保険料の産前産後期間における減免措置が提案されていますが、その対象が出産をした女性に限定されています。出産、育児は女性に限定される行為ではなく、パートナーである多くの男性などとの共同行為です。にもかかわらず、「異次元の少子化対策」では、出産をした者のパートナーや男性の姿がかき消されていることも大きな問題です。
女性の生きにくさ、男性の生きづらさ、子供の産みがたさや育児のリアリティに即し、あらゆるカップルが対等に出産、育児に関わることができるように、こどもの父親や保護者についても保険料の減免措置を講じるべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
こどもが安心して産み育てることができる環境を整備していくことは重要な課題とし、本法案では、来年1月から、国民健康保険料の保険料について、出産する被保険者の産前産後期間に相当する4か月分の均等割保険料と所得割保険料を免除するとともに、その免除相当額を公費で支援することにより、子育て世帯の経済的負担の軽減や次世代育成支援を図ることとしております。
国保の産前産後の保険料免除については、出産する被保険者は産前産後期間に働くことができなくなり直接家計に与える影響が大きいこと、国保には自営業の方や無職の方など様々な職、就業形態の方が加入しており、出産しない被保険者の産前産後期間の休業状況の把握が困難であること、既に産前産後の保険料免除制度を設けている被用者保険や国民年金においても出産する被保険者個人を免除の対象としていること、これを踏まえて出産する被保険者の均等割保険料と所得割保険料を対象としたところであり、免除の対象者を拡大するということは考えてはおりません。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
全世代はおろか、全世帯にも対応できない法案ですね。育児のリアリティを無視せず検討をしてください。質疑を終わります。