2023年4月25日 厚生労働委員会質疑(全世代型社会保障法案審議)「受診に医療・看護・介助のすべてが必要な人もいます!」


○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。医療と介護の複合ニーズへの対応について質問します。代読お願いします。

日常的に介助を必要とする障がい者が入院する際、その医療機関で介助者の付添いが可能か否かという情報はとても重要です。少し長くなりますが、昨年、私に届いた、当事者からの切実な声をご紹介します。脊髄性筋萎縮症という進行性の難病で、日常的に介助を必要とする方です。

読み上げます。
「介助者の付添いがない入院」の場合は、そのことによって助からないのではないかという思いが強く、とても恐ろしくて、「この病院ならば介助者の付添いを認める」という病院の場所を知る術があればと思いました。病院により圧倒的な差があり、「あそこの病院なら助かるけど、あっちの病院に行ったら丁寧に対応してもらえないから死んじゃうよ!!」など、実際に障がい特性に対する対応差で亡くなった方があるなどの声を聞き、1日も早く必要な人に対する介助者の付添い入院を認めることの徹底をと、当事者として切に願っています。それらのことが改善されることなく、「もともと基礎疾患があったのだから死んでも致し方ないよね」と、それだけで片付けられてしまうとしたら、死んでも死に切れないだろうと感じます。「日常の少しの足りない部分をお手伝い、お世話すること」が介助ではない。介助って全てと言っても過言ではないくらい、私たちの「人権そのもの」なんだ、ということを医療や介助の現場の方々に解ってほしい。介助保障は私たちの命そのものだから。医療と介助とで連携をして一緒に助かりましょう!と動いてくださる、医療・介助の現場が、少しでも、少しでも増えてほしい、この声が届くように、届きますようにと、切に願うばかりです。

以上が手紙の内容になります。大臣、いかがでしょうか。基礎疾患や慢性疾患のある重度障がい者は、国公立の医療機関が「かかりつけ」である場合があります。今回の法改正では、「国民・患者が、そのニーズに応じて、かかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択するための情報提供の強化」とうたっています。しかし、重度障がい者の場合、日常的な診療、疾病の重症化予防のためにかかっている医療機関でさえ、完全看護体制や感染対策を理由に、入院・療養の際に介助者の付添いを断られる事例があります。これまでも厚労省は入院時の介助者の付添いが可能である旨の事務連絡を出していますが、現実には断られるケースが相次いでいます。
今回の法改正では、かかりつけ医機能を持つ医療機関が、「夜間対応」「地域包括ケアシステム等との連携」など、国民に向けた情報提供をすることになっています。大臣、この情報提供項目の中に、「入院時の介助者の付添い」が可能か否かの項目を加えるべきではないでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今後、複数の慢性疾患、また、医療、介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の更なる増加が見込まれるなどの中で、在宅を中心に入退院を繰り返し、最期はみとりを要する高齢者を支えるため、身近な地域における医療機関において、在宅医療や介護との連携に加えて、入退院の支援の機能を地域において確保していくことが重要であります。こうした観点から、日常的に介助を必要とする障がい者の方々が入院する際には、特別なコミュニケーション支援が必要な場合の対応も含め、その方の障がい特性や必要な配慮を踏まえた受入れ医療機関の対応に関する情報が必要になる場合もあると考えております。
具体的には、病院のスタッフなどでは障がい特性に合わせた介助が十分にできないような場合には、介助者の付添いが可能であるかどうかといった情報がそうした事例に該当すると考えております。この点、今般の改正についてご議論いただいた社会保障審議会医療部会の意見の中でも、情報提供項目のイメージとして、高齢者、障がい者、こどもなど、対象者別に項目を整理することについて提案がなされたところであります。法案が成立し、医療機能情報提供制度において、法案が成立すれば、医療提供、医療機能情報提供制度において報告を求める具体的な項目などについては有識者などの意見などを踏まえ検討させていただくこととなりますが、こうした医療部会からの提案も踏まえつつ、さらに今ご指摘のありました入院時の介助者の付添い対応の可否を情報提供項目とする必要があるかどうか、こういった点も含めて議論を進めていきたいと考えております。

○天畠大輔君
是非進めてください。しかし、それだけでは解決しません。代読お願いします。

介助者の付添いを断る病院側の意識は正しいと言えるでしょうか。障がい者、特に重度の人が必要とするケアの個別性の高さは、理解や体得に一定の時間がかかります。
医師の養成課程では、現在、国の方針として障がい福祉実習は義務付けられていません。日常的に介助を必要とする人と接した経験や、想像力をもつ医師を増やしていくことも必要です。また、現場の看護を取り仕切る看護師の養成課程で、高齢者向けのマニュアルにのっとった介護は学んでも、障がい者の介助や制度について学ぶ機会が余りにも限られていることも、危惧しています。
現在、私の介助者として、作業療法士の養成課程で学ぶ学生さんが働いてくれています。患者を「治す」医療から、「治し、支える」医療の担い手として、病院などの施設実習だけでは得られない生きた学びを経験されています。医療と福祉の連携をスムーズにすることが疾病の重症化や医療ミスを防ぐことにもつながります。「入院時の介助者の付添い」を情報提供項目に入れるだけではなく、幅広い検討をしていただくよう求めます。

次に、現在、医療機関で設置されている地域連携室の医療ソーシャルワーカーについて伺います。
資料1をご覧ください。
入院・療養や在宅医療への移行、介護サービスとの連携など、その役割がますます求められる医療ソーシャルワーカーですが、その地位は不安定です。かかりつけ医機能をより良く発揮するために、医療提供項目に医療ソーシャルワーカーの在籍の有無も加えるべきと考えます。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
医療ソーシャルワーカーは、病院等の医療現場において、患者の方に対し、心理的、社会的、経済的な問題の解決に向けた援助のほか、退院や社会復帰に向けた援助を行っております。疾病を有する患者の方が地域や家庭で自立した生活が送ることができるよう、社会福祉の立場から援助を行う役割を担っているところであります。
この法案の内容について議論した中で、社会保障審議会医療部会から、入退院時の支援など、他の医療機関との連携の具体的な内容などについて、情報項目として整理するよう提案がなされているところであります。そうした点も踏まえ、今後、有識者の意見を踏まえながら、検討する医療機能提供、医療機能情報提供制度における報告を求める具体的な項目として医療ソーシャルワーカーの在籍の有無を入れる必要があるかどうか、こういった点についても議論していきたいと考えております。

○天畠大輔君
代読いたします。是非検討を進めてください。

次に、今回の法改正では、これまで支払基金や国保連が行ってきた診療報酬請求書審査を、医療費適正化も目的にするとの条文改正があります。これに関連して伺います。
虐待による逮捕者が出た、東京都八王子市の精神科・滝山病院についてのNHKドキュメンタリーでは、この病院の院長が過去に診療報酬の不正請求をしていた朝倉病院の院長と同一人物であること、かつ現在も多額の理事長報酬があると示唆されています。政府参考人から、医療法人における診療報酬の不正請求等はどのように明らかになるのか、教えてください。

○政府参考人(伊原和人君)
お答えいたします。
健康保険法に基づく指導監査に関しまして、個別事案についてのお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、患者や保険者、医療機関の従事者などから地方厚生局に対して保険医療機関等による不正、不当な診療報酬請求の疑いに関する情報提供があった場合などは、その内容を精査の上、必要があると認めた場合には個別指導を実施することとしております。また、個別指導の結果、不正などが疑われる場合には、監査により事実関係を把握し、関係法令にのっとって厳正に対処することになると考えてございます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
情報提供中心の今の仕組みのもと、滝山病院のような事件が繰り返されてきました。事件を教訓とするならば、診療報酬のチェックについても制度改善を検討しませんか。大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(伊原和人君)
お答えいたします。
私の方から、一般論としまして、具体的なこの指導監査に入るきっかけとして、不正、不当な診療報酬の請求の疑いに関する情報提供があった場合と、こういう事例を申し上げましたが、それ以外にも我々の方として必要があると認める場合には今までも調査等は行っております。そういった意味で、できるだけしっかりと必要な対応ができるよう今後とも不断に見直していく必要があると、このように考えてございます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
身寄りのない人や立場の弱い人がひどい目に遭わされています。あらゆる分野でそれを防ぐ視点を持ってください。代読お願いします。

さて、今回の法改正案では、「介護現場の生産性の向上」という文言が出てきます。昨年5月に財務省が作成した「歴史の転換点における財政運営」の中では、介護・障害福祉領域における「業務の効率化と経営の大規模化・協働化」の章において生産性の向上という言葉は使用されていません。一方、厚生労働省の老健局高齢者支援課には、すでに介護業務効率化・生産性向上推進室という生産性の向上という名前の付いた部署が設置されています。介護分野における生産性向上とはどのようなことを指し、また、それらを促進するに当たって、いつ、どのような協議会の下で議論、検討が進められてきたのでしょうか。

○政府参考人(大西証史君)
お答えいたします。
生産性の向上についてのお問いかけでございます。まず、介護分野におきましてもサービスの需要が一層高まってまいります。他方、生産年齢人口が急速に減少していくわけでございまして、見込まれるわけでございまして、介護人材の確保がこれが喫緊の課題とされております。そうした中で、介護ロボットなどのテクノロジーをたとえば活用した形で介護現場の生産性向上を一層推進していく必要がございます。この介護現場における生産性向上とは、たとえば介護ロボットなどのテクノロジーを活用する形で業務の改善や効率化などを進めることによりまして、職員の皆さんの業務負担の軽減を図っていくとともに、業務の改善や効率化により新たな時間が生み出されるわけではありますけれども、それをより直接的な介護ケアの業務に充て、利用者の方々と職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の向上にもつなげていくことなどを考えております。

分かりやすくというご要請もございましたので、たとえばということで例示させていただきますと、たとえば、見守り機器の活用によりまして、夜間の定時の巡回を、利用者の方の状況に応じて、その必要なときだけお部屋に伺うという形に変更することによりまして、巡回に掛けます職員の方の負担軽減、また、頻回にお部屋をお訪ねすることによります利用者さんの目が覚めてしまう、覚醒を回避すること、そういった形で、よりほかの利用、あっ、そういうことで、更にほかの利用者さんへの対応に時間を掛けることもできるといったような効果が、たとえばということですけれども、期待できるものであります。もう一つ、生産性向上のこうしたことについての議論、検討の経緯についてお尋ねがありました。介護分野の生産性向上の議論につきましては、平成27年に官民が協力して立ち上げましたサービス業の生産性向上協議会というものがございます。その場におきまして、様々、小売業など、ほかの様々な分野とともに介護分野が取り上げられたところから議論、検討が本格化したものと承知をしております。それ以降、厚生労働省の介護保険部会を中心に、生産性向上、先ほどのような趣旨でございますけれども、それをテーマとして議論してきたところでございまして、昨年12月にお取りまとめいただいた同部会でも、介護現場の生産性向上の取組を一層普及するために必要な方策について検討を行っていただいたところでございます。

こうした議論などを踏まえまして、本法案におきましても、都道府県に対しまして、介護現場の生産性の向上に資する取組を促進する努力義務を課しますとともに、お願いしますとともに、令和5年度予算におきまして、生産性向上に資する様々な支援メニューを一括して取り扱い、適切な支援におつなぎするワンストップ型の事業者相談窓口を各都道府県に設置するための予算、これを計上するなどの取組を講じることとしたところでございます。なお、財政審とのですね、建議との整合性についてもおただしがございましたけれども、昨年5月の財政審の建議では、委員ご指摘のとおり、生産性向上という用語は直接使われているわけではございませんが、ロボット等を活用いたしました、テクノロジーを活用した介護現場の負担軽減、業務効率化の必要性等についての言及はございました。また同じ年の11月に別途建議がされておりますけれども、その中では、用語といたしましてもこの生産性の向上という用語が使われているものと認識しているところでございます。ちょっと長くなってしまいましたが、以上でございます。

○天畠大輔君
代読いたします。
公を担う政府が、市場経済の分野で使われてきた生産性という用語を法律の条文として使うことには、最大限慎重であるべきではないでしょうか。介護現場の疲弊や処遇問題は、事業者の生産性や経営努力不足が原因ではなく、介護サービスの報酬単価が低額なことや介護業界の人手不足がそもそもの課題です。コロナ禍と物価の上昇も重なり、介護事業所の経営難や倒産事例が増加、また、一部では高齢者への虐待も増えていると聞きます。それなのに、十分な報酬改善や人材確保、物価高対策をせず、都道府県に介護現場での生産性向上を求めることは問題であると考えます。また、今回の法改正で、政府は地域包括支援センターの業務見直しを行います。センター職員の負担軽減のため、介護予防ケアプランの作成主体として市町村から直接、居宅介護支援事業所を指定できるとしています。
これまで地域包括支援センターの役割として重要であった、介護を必要とする当事者やその家族への権利擁護機能の質は担保をされるのでしょうか、簡潔にお答えください。

○政府参考人(大西証史君)
お答えいたします。
地域包括支援センターは、介護予防支援業務のほか、ご指摘のように、総合相談支援業務、権利擁護業務など、地域の拠点として重要な役割を担っていただいておりますが、高齢化の進展に伴いまして介護予防支援を受ける高齢者が増加するとともに、求められる機能が多様化、複雑化しております。このような中、センターの業務負担軽減を図り、その機能をより発揮いただけるように、指定居宅介護支援事業所が市町村から直接指定を受けて介護予防支援を行うことを可能にする規定を本法案に盛り込んだところであります。
この規定に基づき、居宅介護支援事業所が介護予防支援を行う場合におきましても、地域包括支援センターが行う包括的、継続的ケアマネジメント支援業務、これに介護予防サービス計画の検証を追加いたしまして、居宅介護支援事業所が作成した介護予防サービス計画のチェックを行うことができることといたします。また、検証の際は、介護予防支援を行う居宅介護支援事業者から必要な情報を求めることができることとする、こういった措置を併せて講じる、講じ、地域包括支援センターが引き続き居宅介護支援事業所と連携を図っていくこととしております。
ご指摘のように、こういうことで高齢者やそのご家族との関係が途切れたり、権利擁護の質が低下することにはならないと考えております。また、地域包括支援センターの介護予防支援の業務負担、これは相当大きなものがあるとアンケート調査などで分かっておりますが、こうしたものが軽減することによりまして、センターの職員は権利擁護業務などにより多くの時間を充てることができるようにもなりますことから、センターの機能が強化されるようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
権利擁護は地域包括ケアの要です。その業務を担う人材育成などは考えられているのでしょうか。代読お願いします。

地域包括支援センターでは、主任ケアマネジャーなどの専門職が不足しています。地域包括支援センターの配置基準には、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーという3職種の配置が義務付けられており、主任ケアマネジャーについては資格とともに5年の経験年数を必要とし、その確保が難しい状況が続いています。
国が進める介護事業所等の経営の大規模化・協働化に即し、介護事業所と病院とを併設している大規模な法人については配置基準を辛うじてクリアできますが、小規模の法人についてはセンター運営とともに職員の募集等の管理業務に追われています。地方によっては、エリアを担う法人が確保できない、若しくは確保できても3職種のうちいずれかの職員については市町村からの出向職員によりその体制が確保されているところもあります。

資料2をご覧ください。
そこで、厚労省に伺います。中山間地域に属する小さな規模の法人であっても地域包括ケアの担い手としてその役割を継続的に担っていけるように、たとえば、常勤の看護師や保健師の配置が確保できない場合は、地域看護を担う「コミュニティーナース」などの複数配置や「主任ケアマネジャーに準ずる者」の要件を緩和、拡充するなどの手だてが必要と考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(大西証史君)
お答えいたします。
地域包括支援センターの職員につきましては、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護などの包括的支援業務を適切に実施いたしますために、保健師、社会福祉士、そして主任介護支援専門員の3職種を配置することとしております。他方、厚生労働省といたしましても、地域包括支援センターに配置が求められる3職種につきまして、中山間地域など、地域によってはその確保が困難な場合があると、先生おっしゃられますとおり、認識をしているところであります。そこで、昨年12月の社会保障審議会介護保険部会の意見におきましても、3職種の配置は原則としつつ、センターの支援の質が担保されるよう留意した上で、例えば複数拠点で合算して3職種を配置することや、主任介護支援専門員その他これに準ずる者の準ずる者の範囲の適切な設定など、柔軟な職員配置を進めることが適当とされており、このご意見書を踏まえまして、意見書を踏まえまして検討を進めていくこととしております。なお、ご指摘いただきました、ご紹介いただきましたコミュニティーナースでございますが、様々な定義はあるようでございますが、たとえば、地域に溶け込み、住民の皆さんの暮らしに寄り添いながら地域づくりを進めていただいている保健師さん、看護師さんの皆様といったような方々と承知をしております。こうした方々の活用も含めまして、人材維持のあり方について検討してまいりたいと考えております。さらに、各都道府県におきます主任介護支援専門員研修の受講要件、これにつきましても、都道府県によりましてばらつきがあるといったようなご指摘もございますので、調査を行い明確化するなど、質の高い主任介護支援専門員の養成も推進するため、環境整備についてしっかり検討してまいりたいと考えております。

○天畠大輔君
質疑を終わります。