2023年4月13日 厚生労働委員会質疑「旧優生保護法の過ちを繰り返さないためにⅢ」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
被害者が裁判に勝っても国は動かないのでしょうか。代読お願いします。
旧優生保護法による不妊手術を憲法違反とし、損害賠償を命じた大阪高裁判決を不服として、国は先週上告しました。この判決は、現時点で全ての被害者に対し救済の道を開く画期的なものでした。一人の障がい当事者として憤りと悔しさでいっぱいです。
資料1をご覧ください。国は、上告の理由に、「除斥期間が問題となる訴訟全般について多大な影響を及ぼすこと」を挙げています。しかし、優生保護法被害は、過去にも未来にも、ほかに同種あるいは類似の被害を想定し得ない、極めて特殊な事案ではないでしょうか。判決でも違憲性が明白と言われています。ここまで非人道的な法律は、日本国憲法下でほかに存在しないはずですから、多大な影響も何もないのではと思います。政府も旧優生保護法はほかに類を見ないものだと思いませんか。
○大臣政務官(自見はなこ君)
お答えいたします。
旧優生保護法に基づきまして、あるいはこの法律の存在を背景といたしまして、多くの方が特定の疾病や障がいを理由に、生殖を不能にする手術等を受けられることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、政府として真摯に反省し、心から深くおわびを申し上げる次第であります。
その上で、係争中の個別の訴訟につきましては、それぞれの具体的事情も異なることから、法律の解釈、運用を含めて個々に検討し、事案の内容に応じて1つ1つ丁寧に対応しているところであります。そのような観点から内容を精査いたしましたところ、除斥期間の法律上の解釈、運用に関しましても、いずれも旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいることなどから、上告せざるを得ないとの判断に至ったものであります。
一方、こうした方々に対しましては、超党派の優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟が立ち上がり、既にご高齢であること等を踏まえ、できる限り早期に法律案がまとめられ、国会において全会一致により一時金を支給するための法律が定められました。また、昨年2月の大阪の高裁判決、3月の東京高裁判決に続き、3つの地裁判決、今年3月の札幌高裁判決及び大阪高裁判決におきまして、一時金の金額を超える金額というものが示されたことを非常に重く受け止めております。一時金支給法が全会一致で制定されたという経緯も踏まえまして、今後の対応のあり方につきましては、国会にご相談をしているところでございます。政府といたしましては、引き続き、国会でのご議論の進展に向けて最大限協力させていただきますとともに、ご議論の結果を踏まえて対応を検討してまいりたいと思ってございます。
○天畠大輔君
1人の小児科医としての自見さんに伺います。代読お願いします。
優生保護法被害全国原告団共同代表の北さんは、14歳で優生手術の被害に遭いました。手術を受けさせたのは親だったと誤解し、64年もの間、恨み、避け続けていました。
資料2は、その北さんについての新聞記事です。上告に抗議する記者会見では、北さんはこのようにおっしゃっていました。「国がこんな悪さをやるとは思っていなかったんです。それを救済もしない、闇の中に葬る、それが国なのかという気持ちで今現在おります。」
さて、自見政務官は小児科医としてお仕事されてきたと伺っています。釈迦に説法ですが、医師法第1条にはこうあります。「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」。医師法と同じ年、1948年に成立した優生保護法の下で、14歳の若者が優生手術の被害を受けるという医師法の理念に反することが起きていました。自見政務官は、政府の一員である前に1人の小児科医として、このことをどのようにお考えになりますか。通告なしですが、お答えください。
○大臣政務官(自見はなこ君)
ご質問ありがとうございます。
私も、政務官になる前の、超党派の優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟にも参加をしておりましたので、大変思いを深くしておるところでございます。なお、今私自身は政府の立場ということをいただいておりますので個別の事案について申し上げることはできませんが、ただ、政府の立場といたしましても、本件に関しましては、真摯に皆様と国会でのご議論の進展に向けて、政府としてしっかり最大限の協力をさせていただきますし、その結果を踏まえて対応を検討してまいります。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
でしたら、解決に向けてもっと汗をかいてください。政府は当事者に会うべきです。自見政務官、いかがですか。
○大臣政務官(自見はなこ君)
旧優生保護法に基づきまして、多くの方々の心身に多大な苦痛を受けてきたということに関しまして、政府として真摯に反省し、心から深く改めておわびを申し上げる次第でもございます。
その上ででありますけれども、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関する法律が成立をいたしました平成31年4月24日に、内閣総理大臣及び厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心からのおわびを表明してございまして、政府の立場は今も全く変わってございません。
それぞれが個別でございまして、また係争中の案件でございますが、これまでも旧優生保護法に基づき優生手術を受けた方々等への弁護団とは当局部会が個別に面会等させていただいているところであります。いずれにいたしましても、こども家庭庁といたしまして、しっかりと真摯に取り扱い、また対応してまいりたいと思います。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
もう一度お伺いします。政府が当事者に会うべきだと思われますか。
○大臣政務官(自見はなこ君)
お答え申し上げます。
繰り返しになって恐縮でございますが、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関する法律が成立をいたしました平成31年4月24日に、内閣総理大臣及び厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心からのおわびを表明しており、政府のこうした立場は今も全く変わってございません。
私も先ほど来から繰り返しご答弁させていただきましたが、係争中のものでございますので、これまでも旧優生保護法に基づき優生手術を受けた方々や弁護団とは、当局の部局が個別に面会をさせていただいているところでございます。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
改めて早期の全面解決を求めて、次に行きます。代読お願いします。
次に、精神保健福祉施策における当事者参画について質問します。
精神障がい者に関する政策は、途中から福祉の視点が入ったものの、当初は医療の視点のみでした。当事者の視点、権利擁護の観点を入れることを常に意識していないと、どうしても医師の管理しやすいように、力の強い方の意見が強くなっていってしまうと思うのです。
さらに、障害者権利条約4条3には、障がい当事者の参加についてこうあります。「締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において、障害者を代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる。」。
これらの観点から伺います。厚労省は、令和5年度、現在の医療保護入院について課題の整理をするための学術研究を行います。厚生労働科学研究と呼ばれるものの1つです。昨年に公募がありましたが、1件だけ応募があり、採択されたと伺っています。採択されたのは、東大や京大の医学教授の方々のチームです。
一方で、この研究事業の採択条件には、研究分担者又は研究協力者として、精神保健福祉に関する当事者を参画させることとあります。厚労省は、公募を審査するに当たって、当事者参画のどのような点を審査基準、ポイントとしていますか。
○政府参考人(辺見聡君)
厚生労働科学研究の採否に当たりましては、採択条件を満たしているかどうかを含めまして事前評価委員会において評価し、採否を検討しているところでございます。
ご指摘いただきました当該研究におきましては、研究分担者又は研究協力者として、精神保健福祉に関する当事者を参画させることを採択条件にしているところでございますが、採択条件としていること以外の基準とかポイントを設定しているということではなくて、採択条件に関する評価を行う、ポイントを設定して評価を行うということではなくて、あくまで採択条件に示された内容を満たしているかどうかという点について評価が行われたところでございます。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
明確な規定はないということですね。代読お願いします。
当然ですが、当事者にも様々な立場、意見の人がいます。ひとくくりにせず、幅広い団体、個人の意見、経験を聞くことが重要です。この4月から研究は始まりますので、研究の中で、できるだけ幅広い当事者や団体の意見を聞く機会を設けるのはいかがでしょうか。厚労大臣、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
今ご質問がありました研究は、昨年の精神保健福祉法等の改正法の附則第3条に基づく検討のため、本人の同意がない場合の入院医療のあり方について、今後の対応方針の論点整理、対象患者の実態把握、海外の入院医療のあり方などの必要な調査を行うものであります。
こうした検討を行うにあたっては当事者等の意見を聞くことが重要であるということで、先ほどご説明させていただいた採択条件に、研究分担者又は研究協力者として、精神医療保健法、精神医療保健福祉に関する当事者を参加させることを採択条件としたところであります。こうした採択条件に沿って採用されたわけでございますから、その点を踏まえながら、かつ具体的な研究の進め方については研究班で検討していただくことになるというふうに考えております。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
政府の都合のいいように当事者を使わないように念押しして、質疑を終わります。