2023年3月6日 予算委員会質疑「旧優生保護法の過ちを繰り返さないためにⅡ」

○天畠大輔君 
れいわ新選組の天畠大輔です。
先日に引き続き、優生保護法問題について総理に伺います。代読お願いします。

戦後の生産性向上の理想へと社会が進む中で、優秀な者が残り、劣る者は消えるべきという優生思想に基づく旧優生保護法は議員立法として法制化され、強制不妊手術の合法化がなされていました。日本の歴史上恥ずべきこの法律により、多くの障がい者や障がいがあるとみなされた人たちの生殖器やその機能、胎児の命が奪われ、生涯に及ぶ甚大な被害をもたらしました。この法律の施行から75年を迎える今年。分かっているだけで2万4991名の方が強制的な不妊手術や人工妊娠中絶に追い込まれた事実に、私は改めて圧倒されています。

高齢となられた被害者の方々が全国で国の賠償責任を問う訴訟を起こしておられます。資料をご覧ください。昨年から、大阪高裁、東京高裁、熊本地裁、静岡地裁で国に対し賠償を命じる判決が相次ぎ出されています。そして、今日、先ほど、仙台地裁でも原告が勝訴しました。国は直近の5つの裁判で全て敗訴しています。熊本地方裁判所の判決では、旧優生保護法が助長、固定化した差別、偏見によって優生手術の被害者らが長年声を上げられなかったことがただされ、除斥期間の適用によって原告の請求権は消滅しているなどと主張する国の責任逃れの姿勢を退け、旧優生保護法の優生条項は明確に憲法違反であるという判決を下しています。

総理に伺います。熊本の男性被害者の当時のご年齢をご存じですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
まず、旧優生保護法に基づき、あるいはこの法律の存在を背景として、多くの方が特定の疾病や障がいを理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、政府として真摯に反省をし、心から深くおわびを申し上げる次第です。
ご指摘のとおり、旧優生保護法に基づく強制不妊手術について、本年1月23日、熊本地方裁判所、2月24日に静岡地方裁判所において、国の責任の一部を認める判決が言い渡されたことは承知しておりますが、係争中の訴訟に関する事項であり、また個人に関する情報であるからして、お答えは差し控えさせていただきます。

○委員長(末松信介君) 
計測を止めてください。天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
わずか10歳ごろのことでした。総理は、被害者の証言を真摯に受け止めてください。代読お願いします。

5つの判決と、障がい者や障がいがあるとみなされた幼い子供たちの生涯にわたる苦痛を、障がい当事者として、また一国会議員として重く受け止めています。人道上の問題とも言えるこの問題の解決を進めるために、国会での早急な審議が必要だと考えます。

本日は、ハンセン病や薬害エイズ訴訟で当事者とともに長年闘い、旧優生保護法被害大分弁護団呼びかけ人でもある徳田靖之弁護士を参考人としてお呼びしました。

徳田参考人に伺います。被害者の方々の切実な思いや、優生保護法問題の全面的かつ早急な解決のためにはどのような体制の整備が必要でしょうか。

○参考人(徳田靖之君) 
私は、優生保護法問題の解決はハンセン病問題の先例に倣うべきだと思います。
ご承知のとおり、旧優生保護法はらい予防法とともに戦後間もなく制定され、1996年に時同じくして廃止されました。戦後の私たちの国の憲政史上2大汚点と言われる悪法であります。非人道的な内容であり、憲法違反であることが明らかであります。
そのハンセン病問題に関しましては、平成13年に熊本地裁判決がありました。この判決を受けて、国会は両議院の本会議で謝罪決議を行っています。議員立法によってハンセン病補償法を制定し、さらに、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律を制定してハンセン病問題の全面解決を図る上でどのような枠組みが必要であるのかという法的整備を行いました。

国会には、現在も、森山裕先生と金子恭之先生を会長とする2つの超党派の国会議員懇談会が存在をしていまして、ハンセン病に関するあらゆる問題を検討していただいています。また、政府は、熊本地裁判決を受けてハンセン病問題検証会議を設置し、国会や政府がどうしてこのような過ちを犯したのか、このようなことが二度と繰り返さないために何が必要であるのかという検証作業を行いました。現在も、厚生労働省では、ハンセン病に係る偏見差別解消のための施策検討会というのを設置しまして、偏見、差別を解消するために政府としてどのような施策を行うべきかという提言をまとめているところです。

こうしたハンセン病問題と対比しますと、優生保護法問題は、一時金支給法を制定した以外にほとんど国会も政府も対応らしい対応をしていません。これほどの憲政史上の汚点と言われているような悪法であると裁判所が指摘している問題について、最高裁判所の判決が出るまで解決を引き延ばすという現在の国会や政府の対応は、1日も早く見直すべきではないかと私は考えます。以上です。

○天畠大輔君 
代読いたします。ありがとうございました。一刻も早い被害者救済と全面解決に向けて、法制度の抜本的な見直しも含め、国会は今すぐに動き出さなければなりません。それは政府も同じです。

総理に伺います。一時金支給法制定を受けた当時の総理談話では、「政府としての謝罪と国がこの問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚する」とあります。総理談話及び一時金支給法、3つの地裁と2つの高裁の判決における国の敗訴をもっても国は優生手術裁判への上訴を続けるおつもりですか。被害者の方々の名誉を回復するつもりはあるのですか。

○委員長(末松信介君) 
計測を止めてください。天畠君が追加の発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
総理、全国の優生手術裁判への上訴をやめて、被害者の訴えに聞く耳を持ってください。いかがですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
旧優生保護法に基づき、あるいはこの法律の存在を背景として、特定の疾病や障がいを理由に生殖を不能にする手術を受けることを強いられた方々については、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律が成立した平成31年4月24日に、内閣総理大臣及び厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心からのおわびを表明しており、政府のこうした立場は今も変わりはありません。

こうした方々に対しては、平成31年、議員立法により一時金を支給するための法律が定められる、定められたところ、政府としては、引き続き、立法府の総意により制定していただいたこの法律に基づき、一時金を円滑かつ確実に支給し、その責務を果たしてまいりたいと考えています。

その上で、係争中の個別の訴訟については、それぞれの具体的事情も異なることから、法律の解釈、適用を含めて個々に検討し、事案の内容に応じて一つ一つ丁寧に対応しているところであり、そのような観点から内容を精査したところ、除斥期間の法律上の解釈、適用に関して、いずれも旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいること等から、上訴せざるを得ないとの判断に至ったものであります。

いずれにせよ、政府としては、全ての国民が疾病や障がいの有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、引き続き努力をしてまいります。

○委員長(末松信介君) 
計測を止めてください。天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
今すべきことは上訴ではありません。代読お願いします。

国としての上訴は、ご高齢の被害者の訴えを葬り去る行為です。既にお亡くなりになった多くの被害者への冒涜でもあります。安倍総理の談話が一時的なパフォーマンスにすぎなかったことを岸田総理自ら証明したことになります。非常に残念に思います。
これらの問題の全面的解決へ向けて政府と国会が取るべき行動は何なのか、改めて徳田参考人のご意見をお聞かせください。

○参考人(徳田靖之君)
私は、一時金支給法を制定していただいた国会議員の皆様のご苦労には、この場をお借りして敬意を表したいと思います。

しかし、この法律とこの法律を制定した際の内閣総理大臣談話は、責任の所在が極めて曖昧です。これだけの人権侵害を侵していた、この問題に対する謝罪としては余りにも不十分だと私には思えます。例えば、この一時金の額です。各裁判所が損害賠償として認めた額の約五分の一です。これで果たしてこれほどの非人道的な憲法違反の被害に値する補償と言えるんでしょうか。

私は、今何よりも必要とされているのは、一日も早く訴訟手続を終結させるために政府が原告団、弁護団と基本合意書を締結し、訴訟手続を終結し、全面解決への話合いを開始することだと思います。そのために何よりも必要だと思うのは、是非、岸田総理に原告の皆さんと直接会っていただきたいんです。ハンセン病問題のときには、当時の小泉総理と安倍総理が被害を受けられた原告と直接面談をし、謝罪をし、そして全面解決に道を開いてくださいました。

いろんな問題があるということは承知をしております。しかし、何よりも大事なことは、政府の責任者として総理が被害者の声に直接耳を傾けて、そして先ほど述べられた政府としての謝罪の意思を被害者に伝えていただくことではないか、それを踏まえて政府と原告団、弁護団との間で全面解決に向けての協議を開始していただくことではないかと私は思います。

その上で、国会の先生方にお願いしたいのは、先ほど申し上げましたハンセン病問題に倣って、旧優生保護法被害補償法、あるいは旧優生保護法問題の解決の促進に関する法律を制定していただく。この被害はどのような補償金の額が相当であるのかということを各裁判所の判決を見ていただいた上で決めていただき、優生保護法問題、なかんずく優生思想を私たちの国から一掃していくために国として何をやらなければいけないのかという解決の道筋を法律に示していただきたいと思います。

最後に、生意気なことばかり申し上げましたけれど、憲政史上汚点と言われているような悪法を作ってしまったというこの事実を踏まえて、国会として、何よりも、どうしてこのような法律を作ってしまったのか、どうしてこのような法律をこんなに長く放置してしまったのか、一時金支給法の中にも書いてありますけれども、その検証作業を1日も早く開始していただきたい。そのことをお願いいたしまして、今日は本当にこういう機会を与えていただいたこと、ありがとうございました。行き過ぎた発言をしたことはおわびしたいと思いますが、総理、是非ともご検討のほどお願いいたします。以上です。

○委員長(末松信介君) 
計測を止めてください。天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
ありがとうございます。国会議員として重く受け止めます。政府も真摯に受け止め、即行動してください。代読お願いします。

先週、3日の質疑で総理は、優生手術被害者の方々に会う方法を検討すると答弁されました。一方、昨年10月の予算委で私たち障がい当事者に面会するとおっしゃいましたが、今日に至るまでお会いできていません。総理の実行力は大丈夫でしょうか。全面解決へ向けて、被害者の方々との面会を確実に進めていただけますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 
優生手術等を受けた方々の声は大切であると考えております。優生手術等を受けた方々との面会については、訴訟が係争中でもあり、その方法等は検討したいと思います。

○委員長(末松信介君) 
計測を止めてください。申合せの時間が来ております。天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君 
だから、上訴をやめるように言っているんです。国会での約束は国民との約束です。総理、うそ偽りのない謝罪と面会を強く求めて、質疑を終わります。

質疑当日(2023年3月6日)に仙台地方裁判所で勝訴判決が出たため、旧優生保護法の違憲判決は5つとなった