2023年3月20日 予算委員会質疑「精神科病院での虐待を繰り返さないために」
○天畠大輔君
代読いたします。
れいわ新選組の天畠大輔です。今年、東京都八王子市の精神科「滝山病院」の看護師が、患者への暴行容疑で逮捕、略式起訴されました。滝山病院をはじめ精神科病院においては、医療行為の中で、これまでも幾度となく虐待事件が起きています。しかし、バットや素手で殴られた患者が死亡、不適切もしくは過剰な医療で患者が死亡といった事件は、虐待という言葉では済まされません。精神疾患を持つ障がい者の虐待死は殺人行為、暴行・虐待は殺人未遂行為にもなり得ます。このような事態を二度と繰り返さない視点から質問します。
まず、平成10年に厚労省が出した通知で、精神科病院に対する実地指導についてどのように定めているか、厚労省、お答えください。
○政府参考人(辺見聡君)
お答え申し上げます。
平成10年の都道府県知事等宛ての通知、精神科病院に対する指導監督等の徹底については、精神保健福祉法等に基づき、入院患者の行動制限、面会、信書、電話、金銭管理等に係る処遇が適切に行われ、社会復帰に向けた様々な環境推進を進めていく必要があることから、都道府県知事等から精神科医療機関に対して指導の徹底を図ることを求めたものでございます。当該通知におきましては、実地指導の方法等について定めており、数次の改正を経て、現行におきましては、原則として1施設につき年1回行うこととするが、法律上適正を欠くなどの疑いのある精神科病院については数度にわたる実地指導を行うこと、予告期間をもって行うこととするが、入院中の者に対する虐待が強く疑われる緊急性が高い場合などは予告期間なしに実施できることなどについて規定しているところでございます。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
規定はされていても機能していませんね。代読お願いします。
滝山病院では、長年、死亡退院率の異様な高さが指摘されていたにもかかわらず、定期の実地指導では虐待を発見できませんでした。また、東京都は、予告期間なしの実地指導、つまり抜き打ちの検査も行わず放置してきました。虐待やその兆候を早期に発見できる仕組みが必要です。
2001年、大阪の箕面ケ丘病院で違法な身体拘束と虐待が発見されました。これは大阪府の抜き打ち検査によって発覚したものです。虐待が疑われる場合に、確実に抜き打ちの実地指導が行える仕組み、また、定期的に抜き打ちの実地指導を行うことで虐待のサインを見付けるなどの仕組みを、せめてまずはつくるべきではありませんか。加藤厚生労働大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君)
精神保健福祉法の規定で、都道府県知事は、必要があると認めるときは精神科病院の管理者等に対し報告徴収などを求めることができるとされており、実施指導はこの規定に基づいて都道府県知事の判断で行われております。
先ほどご説明させていただいたように、平成10年の通知の中でお示ししている実施指導の方法の中には、虐待が疑われる事案も含めて、人権の保護に関する聞き取り調査を病院職員や入院患者に対して適宜行うようにすること、また、入院者の、入院中の者に対する虐待が行われている事案等がないかについて確認することと併せ、予告なしに実施指導できることを明確にお示しをしました。その上で、令和2年の兵庫県での虐待事案の発生を受け、虐待行為の早期発見、再発防止に向けて、令和3年には、虐待が強く疑われる緊急性が高い場合等に、予告期間なしに実施指導を実施できることを明確化いたしました。また、先月17日には、虐待が強く疑われる緊急性が高い場合等は予告期間なしに、ちゅうちょなく速やかに指導監督を行うよう、改めて都道府県に周知したところでございます。さらに、改正精神保健福祉法に基づいて、令和6年4月から、虐待を発見した者には都道府県に通報する義務を生ずることとなっております。
こうしたことを踏まえ、虐待の防止、早期発見、再発防止を図るよう、必要な体制を都道府県ともよく連携しながら講じていきたいと考えております。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
虐待は必ず起こるものとして認識してください。代読お願いします。
日本の精神科病院は、町から離れ、閉鎖病棟が多く、外部から隔離されています。また、強制入院の制度が精神保健福祉法に定められ、本人の同意によらない入院患者が全体の半数近くを占めています。外出、面会、通信の自由が制限されることも多く、社会的にも外部から閉ざされています。このような場所では、患者と医療側の力の差が大きくなり、虐待が非常に生まれやすいのです。施設という似た環境に私もいたので、よく分かります。虐待は必ず起こるものと想定した対策が必要です。
一方で、精神科病院での虐待事件では、病院への行政処分にだけ焦点が当たりがちです。虐待を受けた当事者やほかの患者たちに対する退院支援、回復のケア、謝罪などを定めた仕組みは、国にも自治体にもありません。この課題に対して国はどのように取り組むのか、加藤大臣のお考えをお聞かせください。
○国務大臣(加藤勝信君)
精神科病院の医療、これはまさに患者のために行われるわけでありますから、患者の尊厳、人権が確保されることは何よりも重要であります。また加えて、精神科病院における入院患者に対しては、地域の事業者やピアサポーターを含む当事者の方々の関わりにより退院や地域での生活移行が進められるべきであり、厚生労働省としてもこうした取組を支援してきたところであります。
昨年の精神保健福祉法の改正で、家族との音信がない患者等に対し、本人の希望に応じ、外部の支援員が精神科病院を訪れ、患者の話を丁寧に聞き、生活相談に応じる等の事業を創設をいたしました。また、精神科病院は、医療保護入院者等の患者に、少なくとも半年に1回、退院支援委員会を開催して地域生活への移行等について検討し、必要がある場合には相談支援事業者等を紹介しなければならないことを義務化したところであります。こうした取組により、様々な支援者が関わり、退院や地域での生活移行の推進を図っていきたいと考えております。また、虐待を受けた場合の個別の当事者のケアについて、これらについては適切な対応が図られるよう、都道府県とよく連携して対応していきたいと考えております。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
当事者主体の権利擁護の視点をもっと持ってください。代読お願いします。
虐待を未然に防ぐためにも、そもそも強制入院を可能としている日本の精神科医療の構造改革が必要です。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という理念に基づく障害者権利条約の視点を重要視すべきです。国連は昨年、この条約に基づき、強制入院によって自由を奪う全ての法的規定を廃止するよう日本政府に勧告しました。国は今、この国連勧告に対して、どのように取り組んでいますか。加藤大臣、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
まず、精神保健福祉法では、入院医療について、患者本人の同意に基づいて入院が行われるよう努めなければならない旨の規定をさせていただいております。そして、本人の同意がない場合の入院制度のあり方などについては、昨年の改正法の附則第3条に検討規定を設けており、昨年9月の国連の勧告の趣旨も踏まえながら、現行の医療保護入院についての課題の整理などを進め、精神障がい者の方々などのご意見も聞きつつ速やかな検討に着手していきたいと考えており、来月から有識者による研究班を立ち上げ、課題の整理等に着手する予定であります。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
国連勧告をもっと真摯に受け止めてください。代読お願いします。
ほかにも、一般病院に比べて少ない医療職の配置基準や、海外と比べて病床数が非常に多いことなど、取り組むべき構造的な課題はたくさんあります。当事者が参画する抜本的な見直しを早急にすべきだと考えますが、加藤大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君)
今申し上げましたように、本人の同意がない場合の入院制度のあり方などについて、昨年の改正法の附則第3条の検討を踏まえて、精神障がい者の皆さん方の声も聞きつつ速やかな検討を行っていきたいというふうに考えております。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
改めて伺います。加藤大臣は、今回の滝山病院事件をどのように受け止めていますか。
○国務大臣(加藤勝信君)
精神病院でこうした事態があったこと、大変遺憾に思っております。これについて、現在、東京都において調査等が進んでおりますので、その調査結果を見てしっかりと対応していきたいと考えています。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
今回のような事件を二度と繰り返さないための視点を持ってください。質疑を終わります。