2023年3月17日 厚生労働委員会質疑「旧優生保護法の責任は“除斥”では免れない」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。本日は、優生保護法問題と除斥期間について質問します。本日は、原告の北三郎さんがいらっしゃっています。代読お願いします。

本日は、昨年3月に東京高裁で勝利判決を勝ち取った北三郎さん、仮名です、傍聴席におられます。優生保護法国家賠償請求原告団の代表です。また、全国弁護団の方々もいらっしゃっています。

資料1をご覧ください。
旧優生保護法訴訟において、国は昨日、札幌高裁でも敗訴しました。3つの高裁、3つの地裁がこの法律の優生条項を違憲と断じ、国に対して損害賠償の支払を命じています。しかし、国は上訴の方針を変えていません。許せません。上訴を直ちに断念するべきです。大臣、上訴の理由を簡潔に述べてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
旧優生保護法に基づき、あるいはこの法律の存在を背景として、多くの方が特定の疾病や障がいを理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことに対し、政府としてまず真摯に反省し、心から深くおわびを申し上げる次第であります。そのような方々については、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律が成立した平成31年4月24日、平成31年4月24日に内閣総理大臣及び厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心からのおわびを表明をしております。政府のこうした立場は今も変わるものではありません。政府としては、引き続き、立法府の総意により制定していただいたこの法律に基づき、一時金を円滑かつ確実に支給し、その責務を果たしてまいりたいと考えております。

係属中の個別の訴訟について、それぞれの具体的事情も異なることから、法律の解釈、適用を含めて個々に検討し、事案の内容に応じて一つ一つ丁寧に対応しているところであります。そのような観点から内容を精査したところ、除斥期間の法律上の解釈、適用に関して、いずれも優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいることなどから上訴せざるを得ないと判断に至ったものでございます。

○天畠大輔君
重大な問題とは何ですか。大臣、具体的にお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
先ほど法律上の重大な問題を含んでいること等を申し上げましたが、1つは、旧優生保護法に関する保健事案だけでなく、除斥期間が問題となる訴訟全般について多大な影響を及ぼすこと、また、東京高裁判決、大阪高裁判決及び熊本地裁判決には、除斥期間の適用を制限する根拠と範囲に大きな食い違いがあることなどであります。

○天畠大輔君
20年以上経過するような事件のほとんどは、加害者が国で被害者が市民です。国は、旧優生保護法下における強制不妊手術等についても、手術を受けたときから20年以上がたったとして、除斥期間を理由に賠償を請求する権利は消滅したと主張しています。
ただ、今の答弁で、除斥期間が公権力側に圧倒的に有利に働く責任回避システムであることが明らかになりました。ハンセン病差別と並び戦後最悪の人権侵害と言われる優生保護法問題において、上訴を繰り返す政府の姿勢こそ重大な問題です。

資料2をご覧ください。「ハンセン病問題の早期かつ全面的解決に向けての内閣総理大臣談話」です。大臣、あらかじめ通告してある一文を読み上げてください。

○国務大臣(加藤勝信君)
委員からご指摘をいただきました文章の該当部分を読み上げさせていただきます。

政府としては、本判決の法律上の問題点について政府の立場を明らかにする政府声明を発表し、本判決についての控訴は行わず、本件原告の方々のみならず、また各地の訴訟への参加・不参加を問わず、全国の患者、元患者の方々全員を対象とした、以下のような統一的な対応を行うことにより、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図ることといたしました。以上です。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
優生保護法問題も同じです。ハンセン病問題の取組を生かし、早期に解決すべきです。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
先ほど申し上げましたが、係属中の個別の訴訟については、具体的な事情も異なることから、法律の解釈、適用を含めて個々に検討し、事案の内容に応じて対応する必要があると考えております。また、この優生保護法、優生保護一時金については、令和4年6月に、当時の判決も踏まえて、超党派の優生保護法下における強制不妊手術についての考える議員連盟が開催され、厚労省から一時金の支給状況等について報告を行うとともに、今後の対応のあり方について検討をお願いしたところであります。

政府としては、国会のご議論に可能な限り協力をさせていただくとともに、先ほど申し上げましたが、一時金を円滑かつ確実に支給することでその責務を果たしていきたいというふうに考えております。政府としては、全ての国民が疾病や障がいの有無によって分け隔てることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、引き続き努力をしてまいります。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
立法府の責任はもちろんあります。一方で、政府は上訴の取下げと謝罪を直ちにすべきです。代読お願いします。

国が主張する除斥期間について質問します。
資料3をご覧ください。
まず、「時効」と「除斥期間」の違いを確認します。時間の経過によって権利が失われるという意味では同じですが、「時効」においてはあたかも時計の針がリセットされてゼロに戻る「更新」や、針が一時ストップする「完成猶予」が起こる場合があるのに対し、「除斥期間」には基本的にリセットもストップもありません。そのため、除斥期間は、被害を受けてその救済を求める側にとって、より厳しい規定です。
さて、「旧民法724条後段」では、「不法行為から20年間たつと損害賠償の請求権が消滅する」と規定していますが、この規定が「除斥期間」を意味するのか、「時効」を意味するのか、長年にわたる論争が続きました。この規定に関して最高裁は、平成元年12月21日の判決文の中で、「除斥期間を定めたものと解するのが相当である」という言葉を使ってはいます。しかし一方で、政府は、「旧民法724条後段は除斥期間である」という解釈を確定させてはいません。

資料4をご覧ください。
平成29年4月25日の参議院法務委員会において、小川秀樹法務省民事局長はこう答弁しています。
現行法、これは旧民法のことですが、724条後段の20年の長期の権利消滅期間の法的性質が除斥期間であるということを法的に確定させる性質のものではもとよりございません。
事実、旧民法下でも、最高裁自らが、除斥期間であれば適用されないはずの「時効の停止」の法意によって、予防接種による後遺症事件や殺人行為の隠蔽に関わる事件の判決を出しています。元最高裁判事の滝井繁男氏も、「20年期間を除斥期間とする判例は自壊しつつある」と明言しました。

法務省に再確認します。「旧民法724条後段は除斥期間である」という解釈を政府は確定させていませんね。

○政府参考人(松井信憲君)
お答え申し上げます。

ご指摘のとおり、平成29年改正前の民法第724条後段の長期の権利消滅期間につき、最高裁判所平成元年12月21日判決はその法的性質を除斥期間であるとしていたが、これと異なる解釈も存在していたところです。
平成29年改正では、民法第724条後段の長期の権利消滅期間の法的性質が消滅時効期間であることが明記されましたが、これによって改正前民法第724条後段の長期の権利消滅期間の法的性質が除斥期間であると法的に確定されたものではありません。

したがって、改正前民法第724条後段の長期の権利消滅期間の法的性質についてはなお様々な解釈があり得るのであり、改正前民法が適用される事案については、先ほど述べた判例を踏まえつつ、その事案の個別の事情に応じて適切に判断をされるべきものであると考えられます。

○天畠大輔君
代読します。そうです。政府は、「旧民法724条後段は除斥期間である」とは確定してこなかったのです。そして、民法は平成29年に改正され、724条は除斥期間ではなく時効であることが確定しました。法務省、このときの立法事実を簡潔に述べてください。

○政府参考人(松井信憲君)
お答え申し上げます。
平成29年改正前の民法第724条後段の長期の権利消滅期間の法的性質について、最高裁判所の判例は除斥期間を定めたものとしておりましたが、そうすると、長期間にわたって加害者に対する損害賠償請求をしなかったことに真にやむを得ない事情があると認められる事案においても被害者の救済を図ることができないおそれがあると考えられたところです。
そこで、平成29年改正では、被害者の救済を図る観点から、不法行為による損害賠償の請求権は不法行為のときから20年間行使しないときは時効によって消滅する旨規定され、法的性質が消滅時効期間であることが明記されたものでございます。

○天畠大輔君
代読します。
そうです。政府は、被害者の救済を図る観点から、旧民法を改正して724条後段を除斥期間ではなく時効だと明示したのです。そうであるならば、旧優生保護法訴訟においても、被害者の救済を図る観点から国は当然除斥期間の主張を放棄すべきです。さらに、旧優生保護法訴訟において国の敗訴を言い渡した6つの判決全てが、「除斥期間が過ぎたから責任なし」などという国の主張を退け、損害賠償を命じています。

すなわち、除斥期間をめぐる一連の流れをまとめますと、1、元々旧民法724条は除斥期間か時効かはっきりしておらず、政府も確定させてこなかった、2、最高裁も除斥期間の厳格適用から逸脱するような判例を出していた、3、このような混乱を収めるべく民法を改正し時効に確定した、4、今般の裁判でも除斥期間の適用を厳しく否定する判決によって国の敗訴が相次いでいるという状況なのです。

被害者は高齢化しています。最高裁まで長引かせるのは許せません。代読お願いします。

全国弁護団は3月6日の声明でこう言っています。国は、本判決を重く受け止め、優生保護法に基づく重大な人権侵害の実態、被害回復の必要性について真摯に向き合い、控訴することなく、岸田文雄総理大臣が率先して本件の政治的解決に向けて被害者らと即時面談すべきである。全国弁護団は、この声明を3月9日に厚労省に渡しています。大臣は読まれましたか。はいかいいえでお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
いや、読んでおりません。もらっていないので、読んでおりません。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
直ちに声明を確認し、総理に被害者との面談を強く進言すべきではありませんか。原告の方も後ろで聞いています。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
今確認したら、厚労省は課長宛てに頂戴をしているということでございます。
その上で、現在訴訟が係属中であります。そうした中ではありますが、これまでも、旧優生保護法に基づき優生手術を受けた方々などや弁護団とは、担当部局が個別に面会などをさせていただいているところでございます。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
厚生労働大臣としての職務を果たすべきです。課長宛ての声明を読むべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
後日、課長からまたその話を聞かせていただき、また、先ほど申し上げましたけれども、これまでも、優生保護法に基づき優生手術を受けた方々や弁護団と個別に面会をさせていただいております。その内容も報告を受け、しっかりと対応させていただきたいと思います。

○天畠大輔君
面談を強く要望して、質疑を終わります。