2022年11月15日 厚生労働委員会質疑「感染症法等改正案審議」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
今日は、水際対策における人権への配慮について質問します。代読お願いします。
代読いたします。
検疫法の一部改正案は、日本入国時の新たな水際対策を定めています。具体的には、感染のおそれのある入国者の自宅などからの外出指示や情報提出の協力を検疫所長が求められるようになっています。
水際対策には第一義的に病原体の国内流入を防ぐという大きな目的もありますが、これまで、自宅待機などの外出制限は各都道府県の政令で求めてきました。しかしながら、今回、検疫所長、つまり政府からの自宅等での待機や指示等が出される内容になっています。
しかも、今回の法改正では、情報提出の求めに対し、虚偽の情報を提出したり、どこにいるのかの所在の報告をしなかった場合、刑事罰の対象となる内容です。具体的には、待機の指示や報告を怠った場合には、罰則として6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金を科すとあるわけです。
大臣、感染のおそれのある人に対して罰則を設ける理由は何ですか。
○国務大臣(加藤勝信君)
今般の改正案では、検疫所長は、新型インフルエンザ等感染症の病原体に感染したおそれがあるにもかかわらず、居宅等から外出しないことの協力の求めに応じない者等に対し、外出しないことの指示やその履行状況の報告を求めることができることとするとともに、報告の求めに応じない場合等の罰則を設けることとしているところであります。
検疫法の措置は、新たな感染症が発生した場合において、国内に常在しない感染症が国内に流入し、国民の生命、健康が危機にさらされるような事態を確実に防止するためのものであります。
水際対策においては、医療機関や待機施設がひっぱくするおそれもあり、居宅等での待機の実効性をより高めるために厳格な対応が必要となることも想定されること、また刑事罰には違反行為への抑止力もあることを踏まえ、刑事罰による担保が必要と考え、今回の改正案を提案させていただいたところでございます。
○天畠大輔君
代読いたします。
これまでに、検疫所長の指示に従わない、居宅での待機指示をしても在宅していなかった国民の方は何名ぐらいいらっしゃったのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(佐々木昌弘君)
お答えいたします。
新型コロナウイルス感染症に対する水際対策の具体的な運用については、現在、感染のおそれのある者に対し、今ご指摘のあった居宅等での待機を要請しているところでございます。
これまでに居宅等での待機に応じなかった事例については、数字を網羅的に把握しているわけではございませんが、待機状況の報告を求めてもこれに応じない入国者が一定数存在したところでございます。このため、水際対策の第一線を担っている検疫所において、対応に苦慮する実態があったところでございます。
○天畠大輔君
代読いたします。
日本における新型コロナウイルス感染症に対する予防対策は、これまで、感染したとみなされる人や、ウイルスに罹患、感染した人を対象に罰則を与えるという方針は採用していません。人権制約をできるだけ最小限にし、持ちこたえてきました。
ここに来て、検疫法を改正し、罰則対象を拡大する議論背景に何があったのか、大臣、お聞かせください。
○国務大臣(加藤勝信君)
新型コロナに対する政府の対応について意見を求めるため、内閣官房に有識者会議が設置をされ、本年6月に、次の感染症危機にむけた中長期的な課題が取りまとめられたところでございます。
この取りまとめにおいては、入国後一定期間の待機への協力要請に従わずに不要不急の外出を行う入国者等が見られたことから、水際対策の実効性を高めるための仕組みづくりが必要であるとの指摘がなされました。
こうした指摘も踏まえ、待機への協力要請の実効性を確保する観点から、今般、新たに罰則を設けることとしたものであります。
○天畠大輔君
罰則をつける前にもっとやるべきことがあるのではないでしょうか。代読お願いします。
日本を行き交う人や国民への罰則を付ける前に、移動制限や情報提供に対して説明を尽くしたり、一人ひとりの事情への配慮をしたりすることが必要ではないでしょうか。
この3年間を思い起こしてみると、諸外国では、首脳自らが先頭に立ち、感染症対策のため、国民の自発的な協力を得る努力を尽くしてきました。
ひるがえって、日本の感染症対策は、協力要請に必要な真摯さが、なかなか見えませんでした。今もあまり見えません。
たとえば最近の例でいえば、ビジット・ジャパン・ウェブ(Visit Japan Web)というアプリを通して、日本入国時の検疫手続の事前審査が推奨されました。入国前の手続がスムーズになるシステムということですが、たとえば、私のように視覚障がいがある人に対して、どのようにシステムの案内をされていますか。また、音声読み上げなどの合理的配慮はなされていますか。
さらに、障がいがある人もない人も感染症罹患をめぐる不安は誰もが抱えます。ですから、平時より、不安障がいや発達障がい、精神障がいを抱える方にとっては、その不安が増し、症状が深刻になることも考えられます。そのような個別調整を必要とする内容について、アプリを通して、検疫官に事前に相談できる支援体制は整備されているのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(佐々木昌弘君)
お答えいたします。
まず、このご質問の前段にありました、罰則を科す前にもっとできることがあるのではないかという点につきましては、先ほど川田委員からのご質問にもあったとおり、検疫の体制そのものを充実させることによって検疫の場面でスムースに様々なことが運ぶようにしたいと思います。
その上で、ビジット・ジャパン・ウエブについてのご指摘についてお答えいたします。
このビジット・ジャパン・ウエブ、よくVJWと略しますが、このVJWは、入国に際して必要となる入国審査及び税関申告の手続をウエブ上で行うためのシステムとして、昨年12月から運用されております。
一方、検疫の手続につきましては、本年の2月からファストトラックというシステムを導入しております。このファストトラックは、日本入国前にウエブ上でワクチン接種証明書等の検疫手続に必要な情報を事前に登録し、確認を済ませておくことで到着時の検疫手続を簡素化するためのものでございます。
今月、11月の1日から、このファストトラックとビジット・ジャパン・ウエブ、VJWを統合いたしまして、VJW、ビジット・ジャパン・ウエブを通じて、先ほど検疫のシステムでご紹介しましたファストトラックが利用できるようになりました。
現状では、ビジット・ジャパン・ウエブを通じた検疫の事前手続機能であるファストトラックは、音声読み上げ機能に対応できておりません。ただし、新型コロナウイルス感染症に係る検疫手続においては、その検疫の場面においては幅広い相談を受けつけるコールセンターを設置しております。あわせて、ファストトラックにおいては、問合せのウエブフォームを設けるなど、到着前からの相談支援体制を整えております。加えて、空港に到着された際には、たとえば成田空港や羽田空港など多くの利用者がいらっしゃる検疫所においては、障がいをお持ちの方や高齢者の方などが、そういった配慮を要する方々に対して検疫手続の優先レーンを設けるという取組をしております。さらに、航空会社等関係者の協力も得ながら、個別の事情に応じた対応を行うことで可能な限りの配慮を行っているところでございます。
○天畠大輔君
代読いたします。
音声読み上げ等への対応はなし、検疫所、その場に行けば対応はしてもらえるけれど、事前対応が可能なこの入国審査アプリの中では、障がいを持つ人は想定されていないことがわかりました。
水際対策のための移動制限や情報提供に協力してもらうために、一人ひとりの事情に配慮する姿勢が弱い政府だということが表れているのではないでしょうか。罰則をつける前に、まずはこのような対応を強化し得たのではと思います。
大臣、そもそも新型コロナウイルス感染症等に感染したおそれのある人や感染、罹患した人は人権への配慮を必要とする対象ではありませんか、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
まず、先ほど天畠委員からその海外との比較がありましたが、どちらかというと、海外は強制規定を用いながらかなり厳しい姿勢をしていたのに対して、日本はそれぞれの自主性をお願いするという対応でやらせてきていただいたというふうに私は認識をさせていただいておりますが、ただ、政府からの発信が適切かどうかだったという、こうしたご批判には真摯、を受け止めて対応していきたいと思っております。
その上で、今のご質問でありますが、感染症法においては、過去の感染症患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在した事実を重く受け止め、教育として今後に生かすことを前文に掲げた上で、国及び地方公共団体や国民の責務として感染症の患者等に対する人権の尊重を規定しているところであります。
このため、たとえば感染症の患者の方等に対して入院勧告措置などの人権を制約するような措置を講ずる場合には、必要最小限度のものでなければならないとされており、また、入院が身体の拘束を行う、伴う行為であり、人権尊重の観点から手厚い手続保障を設ける必要があるため、当該勧告を受ける者に対し書面で通知を行うことなどの手続が定められているところであります。
新型コロナ対応においても、こうした感染症法の基本的な考え方を踏まえて、新型コロナの患者等の人権に配慮しながら対応を行ってきているところでありまして、引き続き、そうした姿勢で対応させていただきたいと思っております。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
人権に配慮をしながら対応を行うというならば、水際対策に必要なのは一人ひとりにもっと配慮する政府の姿勢です。代読お願いします。
最後に、待機指示に従わない場合の罰則の対象者には、14歳以上の未成年の子どもが含まれる点についてもお聞かせください。
水際対策として未成年の子どもへ罰則を与えることは、子どもの権利や児童の最善の利益に反することではないでしょうか。大臣、お答えください。
○国務大臣(加藤勝信君)
まず、その前の、先ほどのビジット・ジャパン・ウエブ、またその中のファストトラックのことで一言説明をさせていただきたいと思います。
今もご指摘がありましたように、入国に際しての検疫手続についても誰もが利用しやすい環境を整えていくことは当然なことであります。
ビジット・ジャパン・ウエブについては音声読み上げ機能が対応しているんでありますが、ビジット・ジャパン・ウエブを通じた検疫の手続機能であるファストトラックは、音声読み上げ機能に対応できていないというのが今の実態であります。ファストトラックでページを読み上げるソフトを利用できるようにすること、またフォントサイズを変更できるようにすることなど、こうした措置を、関係省庁とも連携して、障がいを持つ方にも利用していただきやすいような手続になるよう、早急に対処していきたいと考えております。
その上で、今般の改正案では、居宅等での待機状況の報告を行わない場合等について、既に検疫法で規定されている他の罰則との均衡の観点を踏まえ、6か月以下の懲役又は50万以下の罰金の対象としております。懲役や罰金刑といった検疫法の罰則については当然に刑法総則の適用があり、未成年であっても14歳以上の場合には刑事責任が問われることがあり得るものと承知をしております。
ただ、児童への配慮の観点から、被疑者が20歳未満である場合、少年法が適用され、家庭裁判所の判断によって保護処分に付されることもあることから、必ずしも処罰されるものではないものと認識をしております。
いずれにしても、改正案が成立し施行された場合には、検疫法の施行が適切に行われるよう努力をしていきたいと考えております。
○天畠大輔君
代読いたします。
罰則の対象ではあるが、検疫所長の判断だけでただちに罰則の対象となることはないということはわかりました。
そもそも、障がい者と同様に、多くの子どもは配慮を必要とする存在でもあります。十分な配慮をせずに刑法の規定を当てはめるのは問題ではないでしょうか。
国際的には、国内における外出などの行動制限に違反した未成年に対し、高額な罰金や労働義務を科す事例は存在しますが、親子間に緊張関係をもたらし、将来にわたる貧困と悪影響をもたらす行いであるため、子どもの権利条約に違反するとの批判もされています。なかには、行動制限に従いにくい知的障がいを持つ子どもに対し高額な罰金を科した事例も海外で報告されています。日本においても、感染症対策の陰に隠れた、水際対策における障がい者差別や冤罪が懸念されます。未然に防止するべきであると考えます。
感染症法第3条には、「国及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権を尊重しなければならない。」とあります。それにもかかわらず、感染症法等改正案に束ねられた検疫法一部改正では、水際対策における障がい児者や子どもへの配慮は手薄で、人権の制約につながりかねません。
待機指示のなかで、隔離されている場所から逃げ出したいという不安や、意識の混乱、錯乱が生じる人たちもいます。また、知的障がいや精神障がいに限らず、待機や隔離の環境下では様々な不安が生じます。そういった精神的ニーズも含め、安心して待機、療養できる体制を水際対策として講じる必要があると考えます。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
配慮が必要な人へのフォローを総合的に検討していただきたいと思いますが、加藤大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君)
今、この水際対策のみならず、政策全般にわたって、障がいのある方あるいは様々な事情を抱えている方々、そうした事情も踏まえながら、それぞれの政策を適切に、また、そうした立場の方々にしっかり寄り添って、これからも政策を推進させていただきたいというふうに考えております。
○天畠大輔君
今後も政府の取組を確認していきます。
質疑を終わります。