発話障がいのある議員が、自分の意思疎通方法で発言する権利、一歩前進!

発話障がいのある議員が、自分の意思疎通方法で発言する権利、一歩前進です!これまで参議院厚生労働委員会では、天畠の「あ、か、さ、た、な話法」中、ネット中継の音声が止まっていました。天畠の質疑持ち時間が減らないよう、既存の「速記止め」というオフレコ扱いを適用していたためです。今臨時国会(第212回国会)からは、音声が流れ続けます。様々な協議、調整をいただいた国会議員の皆さま、関係者の皆さまに改めて御礼申し上げます。

今まで厚労委では【「あ、か、さ、た、な話法」は速記止め】ルール=オフレコ扱い

発話ができない天畠が、介助者の手を引いて合図を送り、1文字1文字確認しながら言葉を紡いでいく「あ、か、さ、た、な話法」。質疑のすべてをこの方法で行うと、長時間かかってしまいます。そのため必ず、予め天畠自身が原稿を用意し、秘書が代読する必要があります。しかし一方で、質疑のすべてを代読で行うと、天畠本人の発言、質疑だということが、国民に対してきわめて分かりにくくなってしまいますし、政府答弁に対する議員からの打ち返しや更問いがそもそもできなくなってしまいます。

そこで、2022年臨時国会(第210回国会)の厚生労働委員会質疑では、【質疑時間の延長】を求めました。しかし、委員会を運営する参議院議員の方々との協議の中で、【質疑時間の延長】ではなく【「あ、か、さ、た、な話法」は速記止め】のルールで暫定的に質疑することになりました。具体的にはこうです。

・事前原稿があるところは秘書が代読

・政府答弁に対して天畠がその場で再質問やコメント返しをする箇所では、速記を止めて「あ、か、さ、た、な話法」で通訳介助者が読み取り、代理で発言。

速記が止まっている間は、天畠の持ち時間も減らないため、質疑時間をきちんと確保するという点はクリアできました。しかし速記止めは本来、議事進行が円滑でない時に使うもの。速記を止めると映像と音声も止まり、中継を見ている人は、何が起きているか分からない、オフレコ扱いなのです。

テロップも「ただいま速記を中止しておりますので、音声は放送しておりません」と出るだけで、視聴者は何が起きているか分かりません。天畠自身が意思表明している事実がなかったことなってしまう。「私自身、あとから映像を見ると、深い水の中に潜っているような感覚になります。世の中から存在が消されたような、と言えば伝わりやすいでしょうか」と訴えてきました。

また厚生労働委員会のインターネット中継を見た障がい当事者から、メールもいただきました。「障がい者を隔離し、見ないように蓋をしてきた社会」と速記止めの映像が重なり、差別を浴びせられた気持ちになったということでした。

予算委員会でだけ「時間計測止め」

【速記止め】ではインターネット中継の映像や音声が止まり、議員個人の意思表明が伝わらない。そして速記を止めるかどうかは委員長の権限であることから、発言の権利保障とは言えない。やはり【速記止め】では他議員との平等が確保されない。そこで昨年10月に予算委員会で質疑をするにあたっては、改めて【質疑時間の延長】を求めました。

【質疑時間の延長】は認められませんでしたが、【速記止め】ではなく、【時間計測止め】という方法を採っていただき、「あ、か、さ、た、な話法」での発言がTV中継映像と音声で流れ、NHKの解説アナウンスも付きました。

以降、予算委員会では【時間計測止め】、厚労委員会など他の委員会では【速記止め】の対応が定着していました。

引き続き「合理的配慮を継続的に協議する場」の確立を求めます

そこで2023年通常国会(第211回国会)からは、まずは厚労委員会など他委員会でも予算委員会と同じ【時間計測止め】対応をするよう、求めました。すぐには実現しませんでしたが、今臨時国会(第212回国会)では、厚生労働委員会で【時間計測止め】が認められ、「あ、か、さ、た、な話法」での発言の音声が、インターネット中継でも流れ続けます。

天畠の質疑方法に関しては一歩進展ですが、そもそも質疑方法の合理的配慮を話し合う先は、委員会を運営する議員の方々だったり、国会日程などを協議する「国対」と呼ばれるところだったり、参議院全体を運営する「議会運営委員会」だったりと安定していません。今夏、「障害のある議員に対する合理的配慮について、継続的に国会議員が議論、協議する組織を国会内に設ける」要望を木村英子参議院議員、舩後靖彦参議院議員とともに出しましたが、こちらはまだ実現していません。

今後登場する障がい当事者の国会議員のためにも、「合理的配慮を継続的に協議する場」の確立を、引き続き求めていきます。また【質疑時間の延長】など、天畠の質疑への合理的配慮も求めていきます。