【2024年通常国会ハイライト⑤】優生保護法問題の全面解決を、あらゆる機会に訴えました

最高裁大法廷は7月3日、旧優生保護法に基づく強制不妊手術(優生手術)に関する5件の訴訟すべてにおいて、原告勝訴の判決を出しました。「旧優生保護法は違憲」と明確に示し、「手術から20年という『除斥期間』が経過しているため損害賠償請求権は消滅している」という国の主張を斥けました。原告側の全面勝訴でした。

優生保護法問題については、昨年の通常国会で重点的に取り上げました。7月3日の最高裁判決後、補償のための政策が一気に動き出しましたが、6月23日までが会期の2024年通常国会では、一時金支給法の請求期限延長以外は、十分な前進はありませんでした。今回の記事では、あらゆる機会を捉えて「全面解決」を訴えた2024年通常国会の活動をお知らせします。

【2023年通常国会ハイライト①】過去に国が障がい者らに行った強制不妊手術への謝罪・補償・再発防止を大きく取り上げました

原告と総理の面会求める 優生保護法(1948年成立)という法律のもと、遺伝性疾患のある人、ハンセン病患者、障がいのある人々などが、不妊手術や人工妊娠中絶の被害に遭っ…

総理に改めて「全面解決」促す


一時金支給法があるのなら、それで良いのではないか?と思われる方もいるかもしれません。しかし旧優生保護法の問題は「全面解決」、すなわち国(政府、国会)からの明確な謝罪と過去の過ちの継承、再発防止のための継続的な施策がセットでなければなりません。国の政策による凄惨な人権侵害にはもう一つ、ハンセン病問題があります。この問題にも取り組む徳田靖之弁護士の昨年の国会陳述を改めて掲載します。

徳田靖之弁護士:私は、今何よりも必要とされているのは、一日も早く訴訟手続を終結させるために政府が原告団、弁護団と基本合意書を締結し、訴訟手続を終結し、全面解決への話合いを開始することだと思います。そのために何よりも必要だと思うのは、是非、岸田総理に原告の皆さんと直接会っていただきたいんです。ハンセン病問題のときには、当時の小泉総理と安倍総理が被害を受けられた原告と直接面談をし、謝罪をし、そして全面解決に道を開いてくださいました。

いろんな問題があるということは承知をしております。しかし、何よりも大事なことは、政府の責任者として総理が被害者の声に直接耳を傾けて、そして先ほど述べられた政府としての謝罪の意思を被害者に伝えていただくことではないか、それを踏まえて政府と原告団、弁護団との間で全面解決に向けての協議を開始していただくことではないかと私は思います。

2023年3月6日参議院予算委員会質疑

しかし、最高裁判決まで国は判断を引き延ばしました。今国会終盤の6月18日、総理にこの問題への対応を迫りました。

天畠:(前略)岸田総理、もう一つ、政府・与党が「人間の尊厳」を大きく傷つけているのが、旧優生保護法下における強制不妊手術問題です。7月3日には、最高裁が5件の訴訟について判決を出します。私も大いに注目しています。総理、あなたは、被害当事者に会う、会い方について検討をすると昨年3月、5月、11月に3回も国会で私の質問に対して同じ答弁を繰り返していますが、いまだにその約束を果たしていません。総理、その後検討はどうなっていますか。


岸田文雄総理大臣:ご指摘の関係者のお話を聞くということの重要性について、私自身も答弁の中でお会いする方法等について検討するということを申し上げてきました。この具体的な方法について、検討を行います。

天畠:終わります。

2024年6月18日参議院政治改革特別委員会質疑

実質的な国会閉会日の6月21日、れいわ新選組控室に会期末挨拶で訪れた岸田総理に、優生保護法裁判原告との面談、そして全面解決への着手を総理に改めて求めました。5月29日に最高裁大法廷で行われた弁論の要旨集もお渡ししました。

最高裁で原告が全面勝訴!全面解決へアクセルを踏むべき

7月3日の最高裁前で、兵庫弁護団の藤原弁護士と天畠。藤原弁護士は、勝訴判決を聞かないまま高齢で亡くなった、原告の小林喜美子さんの遺影を抱えている

最高裁前で、支援者に拍手で迎えられる原告の北三郎さん(活動名)

手話通訳者(左側の2人)を通して、報道陣に思いを伝える原告の小林寳二さん

7月3日の最高裁判決で原告が全面勝訴したことを踏まえ、国会の議員連盟も、政府も動き出しました。今こそ、全面解決に向けてアクセルを踏むべき時です。7月4日にはさっそく、原告と弁護団の皆さんが各国会議員事務所を回られ、木村英子議員、舩後靖彦議員、天畠も合同で要望を受けました。二度と過ちを繰り返さない責任を負う若い世代として、議連での議論をはじめ、引き続き力を尽くします。


7月3日の最高裁判決では、傍聴者に対する手話通訳者の手配と費用を最高裁が負担し、聴覚障がいのある方も傍聴ができました。原告団や支援する障がい当事者らが働きかけた結果です。ただ、原告や代理人(弁護士)が着座する席への手話通訳は、同じようにはいきませんでした。民事訴訟においては、通訳が必要な場合は手配も費用も敗訴側負担との現行の運用方針が変わらなかったためです。結果として国が敗訴したため国が負担することにはなりますが、合理的配慮という視点では、まだ課題が残ります。優生保護法問題の全面解決はもちろん、だれにでも開かれた裁判、傍聴の実現にも注目していきたいと思います。(文責:秘書 篠田恵)