【2023年通常国会ハイライト①】過去に国が障がい者らに行った強制不妊手術への謝罪・補償・再発防止を大きく取り上げました

原告と総理の面会求める

優生保護法(1948年成立)という法律のもと、遺伝性疾患のある人、ハンセン病患者、障がいのある人々などが、不妊手術や人工妊娠中絶の被害に遭ったことをご存知でしょうか。50年近く続いたこの法律による、不妊手術の被害者は、分かっているだけで約25,000人にのぼります。

1996年、この法律は「母体保護法」へと改正され、強制不妊手術は行われなくなりました。しかし、被害者らが2018年に国家賠償請求訴訟を起こし、翌年の2019年に一時金支給法が制定されるまで、被害者への謝罪や補償はなかったのです。

天畠は国会議員になる前は、優生保護法問題に活動として取り組んだことはありませんでした。しかし2023年1月、全国2例目の原告勝訴判決(熊本地裁)に対し、国が控訴。原告の高齢化が進む中で、今すぐにでも政治解決すべきなのに逆行する動きです。そこで2023年通常国会(第211回国会)では、優生保護法問題に力を入れて取り組みました。

天畠:被害者の声に耳を傾ける意思はありますか、二択でお答えください。

岸田総理:もちろん、被害者の方々、大変な苦しみを経験された方々の声には丁寧に耳を傾けていかなければならないと考えます。

天畠:被害者の方と面会はされないのですか。

岸田総理:被害者の皆さんの声は大事にしなければならない、先ほど申し上げたとおりです。具体的にお会いするということになりますと、どなたにどういった形でお会いするか、これを考えなければなりません。この適切な方法を検討したいと思います。

天畠:引き続き、質疑で追及します。

2023年3月3日 予算委員会質疑「旧優生保護法の過ちを繰り返さないために」

3月3日の予算委員会では、被害者の回復支援や啓発の観点から、被害当事者や弁護団との継続的な協議の場づくりや、人権教育・啓発に関する基本計画や第6次男女共同参画基本計画への記載などを政府に求めました。また相次ぐ原告勝訴に対する国の上訴を取り下げるよう求めましたが、やり取りの中でやはり政治を動かす総理や担当大臣が、被害者の人生の苦しみを聴くべきだと強く感じられたので、総理に面会を迫りました。

さらに3月6日の予算委では、ハンセン病や薬害エイズ訴訟で当事者とともに長年闘い、旧優生保護法被害大分弁護団呼びかけ人でもある徳田靖之弁護士を参考人としてお呼びしました。徳田弁護士は、優生保護法問題の解決はハンセン病問題の先例に倣うべきであること、最高裁判所の判決が出るまで解決を引き延ばすという現在の国会や政府の対応は一日も早く見直すべきであること、一時金支給法と当時の内閣総理大臣談話は責任の所在が極めて曖昧であることなどを、総理の目の前で訴えてくださいました。

2023年3月6日の参議院予算委員会で参考人として発言する徳田弁護士

徳田靖之弁護士:私は、今何よりも必要とされているのは、一日も早く訴訟手続を終結させるために政府が原告団、弁護団と基本合意書を締結し、訴訟手続を終結し、全面解決への話合いを開始することだと思います。そのために何よりも必要だと思うのは、是非、岸田総理に原告の皆さんと直接会っていただきたいんです。ハンセン病問題のときには、当時の小泉総理と安倍総理が被害を受けられた原告と直接面談をし、謝罪をし、そして全面解決に道を開いてくださいました。

いろんな問題があるということは承知をしております。しかし、何よりも大事なことは、政府の責任者として総理が被害者の声に直接耳を傾けて、そして先ほど述べられた政府としての謝罪の意思を被害者に伝えていただくことではないか、それを踏まえて政府と原告団、弁護団との間で全面解決に向けての協議を開始していただくことではないかと私は思います。

その上で、国会の先生方にお願いしたいのは、先ほど申し上げましたハンセン病問題に倣って、旧優生保護法被害補償法、あるいは旧優生保護法問題の解決の促進に関する法律を制定していただく。この被害はどのような補償金の額が相当であるのかということを各裁判所の判決を見ていただいた上で決めていただき、優生保護法問題、なかんずく優生思想を私たちの国から一掃していくために国として何をやらなければいけないのかという解決の道筋を法律に示していただきたいと思います。

最後に、生意気なことばかり申し上げましたけれど、憲政史上汚点と言われているような悪法を作ってしまったというこの事実を踏まえて、国会として、何よりも、どうしてこのような法律を作ってしまったのか、どうしてこのような法律をこんなに長く放置してしまったのか、一時金支給法の中にも書いてありますけれども、その検証作業を一日も早く開始していただきたい。

2023年3月6日 予算委員会質疑「旧優生保護法の過ちを繰り返さないためにⅡ」

除斥期間適用はやはりおかしい

その後、弁護団からの助言をいただきながら、厚労委員会で除斥期間適用について取り上げました。質疑当日には、原告の北三郎さん(仮名)や弁護団の新里弁護士、関谷弁護士が傍聴に駆けつけてくださり、力づけられました。

2023年3月17日の参議院厚生労働委員会での質疑。奥の傍聴席には、左から弁護団の関谷弁護士、原告の北三郎さん(仮名)、新里弁護士

天畠: 除斥期間をめぐる一連の流れをまとめると、1、元々旧民法724条は除斥期間か時効かはっきりしておらず、政府も確定させてこなかった、2、最高裁も除斥期間の厳格適用から逸脱するような判例を出していた、3、このような混乱を収めるべく民法を改正し時効に確定した、4、今般の裁判でも除斥期間の適用を厳しく否定する判決によって国の敗訴が相次いでいる。(中略)直ちに(全国弁護団による)声明を確認し、総理に被害者との面談を強く進言すべきです。原告の方も後ろで聞いています。大臣、いかがですか。

加藤大臣:今確認したら、厚労省は課長宛てに(声明を)頂戴をしているということでございます。その上で、現在訴訟が係属中であります。そうした中ではありますが、これまでも、旧優生保護法に基づき優生手術を受けた方々などや弁護団とは、担当部局が個別に面会などをさせていただいているところでございます。

天畠:厚生労働大臣としての職務を果たすべきです。課長宛ての声明を読むべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤大臣:後日、課長からまたその話を聞かせていただき、また、先ほど申し上げましたけれども、これまでも、(担当部局が)優生保護法に基づき優生手術を受けた方々や弁護団と個別に面会をさせていただいております。その内容も報告を受け、しっかりと対応させていただきたいと思います。

天畠:(大臣と原告、弁護団の)面談を強く要望して、質疑を終わります。

2023年3月17日 厚生労働委員会質疑「旧優生保護法の責任は“除斥”では免れない」

障がい当事者の国会議員として

国会質疑以外では、れいわ新選組として、優生保護法問題の全面的解決に向けた声明を提案し、発出しました。また優生保護法問題の政治解決を求める院内集会や記者会見にも出席し、原告や弁護団、支援者の皆さんにメッセージを送りました。

2023年3月28日の院内集会でのスピーチ

優生保護法のもとでは高校の保健体育の教科書で、たとえば、「この法律は悪い遺伝性の病気を持った人が生まれるのを防ぎ、健康で明るい社会をつくるために大切」などと表記がされていました。兵庫県から全国に「不幸な子どもが生まれない運動」が広がりました。

今でも、事例を挙げるまでもなく、形を変えながら、障がい者を劣ったもの、厄介者、消えるべき存在とする心性(しんせい)と制度が残っています。(中略)障がい当事者による障がい者差別との闘いは、まさに優生思想との闘いでしたし、これからもそうでしょう。私たち次の世代が引き受けていかなければならない、深く大きな課題です。

優生保護法問題の早期・全面解決を求める3.28院内集会に参加(2023年3月28日)

優生保護法問題は、高齢の障がい者の、かわいそうな人たちだけに関すること、と思っている人はたくさんいるだろうと思います。でも、それは違います。すべての人に関わることなのです。

旧優生保護法による手術の運用は、かなりずさんでした。あとから検査を受けたら遺伝性の障がいではなかった人、素行(そこう)が悪いなどとして施設に入れられた人なども、強制的に不妊手術を受けさせられた事実があります。

私たちは、旧優生保護法のようなお墨付きをひとたび手にした結果、「厄介だな」「近くにいてほしくないな」「面倒くさいな」と思われている人達に、取り返しのつかない人生被害を与えてしまいました。暴力の範囲を、自分たちの手で、広げていったのです。「現在の日本社会ではそんなことは起こらない」と、だれが自信を持って言えるでしょうか。

忘れられた歴史は繰り返します。ですから、旧優生保護法の誤りを、国が率先して正す姿勢を示さなければなりません。

優生保護法被害兵庫訴訟の大阪高裁判決への上告に抗議する記者会見に同席(2023年4月5日)

2019年に一時金支給法を制定した議員連盟へ、昨年の当選後に天畠も加入しました。優生保護法のような法律を二度と生み出さない社会、そして優生思想からの脱却に向けた道筋をつけるのはこれからです。今後も立法府の一員として、障がい当事者の視点から、力を尽くしていきます。

(文責:秘書 篠田恵)

※優生保護法問題の詳細や被害については以下を参照ください。

優生保護法とは何か――荒井裕樹『障害者差別を問いなおす』

歴史から学ぶハンセン病とは?

つらかった、悲しかった、苦しかった64年間。国は間違った手術だったと認めてほしい

16歳で知らずに受けた不妊手術。強制した国に謝罪を求め、声を上げ続ける

旧優生保護法 対象外でも行われた不妊手術の実態