2022年12月5日 厚生労働委員会質疑「だれのための障がい者政策?尊厳をかけて行動する当事者の声を届ける/障がい者関連束ね法案」
○委員長(山田宏君)
障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の皆様からご意見を伺います。
この際、参考人の皆様に一言ご挨拶申し上げます。
本日は、ご多忙のところご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚ないご意見を賜りまして、今後の審査の参考にしていきたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、辻本参考人、藤井参考人、若尾参考人、長谷川参考人の順にお一人15分以内でご意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、ご発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、ご承知おきください。
なお、ご発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず辻本参考人からお願いいたします。辻本参考人。
○参考人(辻本哲士君)
本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
辻本哲士と申します。全国精神保健福祉センター長会の会長をしております。法改正に全体として賛成の立場から意見を述べます。
まず、私自身についてです。
滋賀県立精神保健福祉センター所長として勤務しています。精神保健福祉センター、以下精保センターと略します、は現行の精神保健福祉法第6条に規定された精神保健福祉に関する中核的総合技術センターです。
企画立案、技術指導、教育研修、普及啓発、調査研究、資料提供、精神保健福祉相談、組織育成、自立支援医療、精神障がい者保健福祉手帳判定と後述する精神医療審査会の審査に関する事務等を業務としています。
最近では、統一教会やコロナ禍の心の相談窓口、コロナ感染症施設等の患者、支援者のメンタルヘルス対応など、地域の実情に応じ、精神保健福祉分野の技術的中枢として必要な活動をしています。
精保センター以外に、県立の精神科病院、小児科病院、総合病院で外来当直その他をし、県庁では技監の立場にあります。
今回、行政機関の精保センター所長、医療機関の一臨床精神科医、さらに令和3年10月に設置された地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会、以下検討会と略します、の構成員の1人として、今回の改正案に関して8点お話しさせていただきます。
1点目、精神保健医療福祉と地域包括ケアシステムについてです。
実は、私は、平成29年の改正案提出時の参議院厚生労働委員会でも参考人として発言しております。
その場でも、法改正が進まなくても、精神障がい者にも対応した地域包括ケアシステムの構築、地域共生社会の実現、いい町づくりをしていく、精神障がい者の孤立を防ぐ、退院後支援は続けていく旨お話ししました。
このときの改正案は廃案になりましたが、確実に地域包括ケアシステムは進んでいます。入院患者の地域移行、地域定着に資する継続的、包括的な支援のイメージが医療、保健福祉機関の間に広がり、精神科措置入院退院支援加算等、診療報酬によるインセンティブもあり、多職種、多機関による共同指導、相談指導は包括的支援マネジメントとして実践されています。
今回の法改正の大きな意義の1つとして、都道府県だけでなく市町村を中心に、地域で保健、医療、福祉、住まい、就労等の包括的支援を確保する旨の責務が明記された点が挙げられます。
市町村は、自殺や介護、生活困窮者対策等で既に責任主体となっています。
精神障がい者は心の病のみで困っているわけではありません。
精神障がい者の多くが自殺や生活困窮に困っています。
その他、引きこもりや依存、感染症を含めた災害弱者としても困っているのです。
現状、市町村はサービス利用等の窓口にはなっていますが、法令上、精神保健に関する相談業務の規定がなく、専門職が配置されていないところもあります。
実際は、自殺や生活困窮者対策として精神障がい者と関わりを持っているのですから、今回の法改正で責務が明文化することにより、より適切で包括的な支援体制が確保できます。
専門的な技術支援バックアップのあり方、人材、財政的な裏付け等の課題に対しては、技術支援や人材育成などの精保センター、保健所等の業務の明確化、人員配置や予算措置などの手当て、診療報酬改定等が必要です。
さらに、対象を精神障がい者のほか、精神保健に課題を抱える者と広げているので、医療にかかる前のより早期の支援が実践できます。今回の法改正で、更に力強く、より早く精神障がい者の希望やニーズに応じた支援、心身の状態に応じた適切な包括的なアプローチが約束されます。
2点目、医療保護入院に関してです。
検討会では、医療保護入院の抜本的な見直し論から始まり、入院医療を最小、必要最小限にするための予防的取組の充実に関しては早期から合意されていました。
その上での医療保護入院のあり方検討として、精神障がいとしての判断能力、入院医療へのアクセス、人権擁護等、様々な課題、意見が出されました。現実的な落としどころから、医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度、支援の充実の具体的な方策の一つとして、医療保護入院の入院期間を定め、期間ごとに医療保護入院の要件の確認を行うとなりました。
今回の法改正は、医療保護入院の適正化につながると考えています。医療保護入院の在り方は、精保センターが事務局を持つ精神医療審査会にも大きく影響します。
3点目は、その精神医療審査会についてです。
初めにお話ししたように、精保センターは精神医療審査会、以降審査会と略します、事務局を担っています。全国69精保センターについてざっくり言うと、国民180万人に対し精神科医1人、保健師3人、精神保健福祉士1人、心理職2人、事務職4人、1センターあたり14人の人員で最初に説明した多種多様な業務をこなしています。
精保センター状況調査で、業務遂行に対応するために最も優先されるべきは人員体制の強化となっています。
滋賀県の審査会の年間審査状況について、これもざっくり言うと、医療保護入院者の入院時届出1800件、医療保護入院者の定期報告800件、退院請求30件、処遇改善請求10件です。
審査会は医療委員15名、法律家委員5名、有識者委員5名で、事務局正規担当職員1人、補助職員3名とともに審査いただいています。
審査会への合議体の出席は年6回、1回当たり書面審査約100件プラス再審査約30件で90分程度かかります。
退院請求、処遇改善請求等に関してです。
審査会事務局として、1、入院病院への担当者紹介と候補日の確保、2、各審査会委員と病院、家族等の面談日程調整、3、本人・病院・家族等の申請意見書受理、4、面談日程確定後、面接調査の実施通知書作成、郵送、5、調査に参加する委員会委員への資料郵送、6、面談日に面談同席、7、面談終了後、委員会委員と調査書作成、委員会へ送付、8、審査会の審査同席、9、審査結果の県庁、本人、病院、家族への通知と流れます。
審査会の退院請求等の調査は年間約6回、90分程度の面接で毎回審査会委員2人によって行われています。
1件当たり、精保センター職員の稼働時間は勤務日約1日分となります。
患者の権利擁護のためには、適切かつ迅速な審査会運営が求められます。
審査期間の短縮は命題で、日程調整に関しては各関係者に無理強いしながらも実施しています。
審査会委員は専従ではなく本来業務をこなしながらであり、日程調整は困難極まりない状態です。
医療委員は精神保健指定医になります。
私も指定医なので、本来業務と審査会業務、審査会委員業務のバランスの難しさは実感できます。
審査会委員の確保は喫緊の課題です。
今回の法律改正で、精保センター業務への影響についてです。定期病状報告書は廃止されますが、6か月以内に入院時の届出と同じ手続を踏むことになります。
1年以上の入院になると、単純に書類枚数として2倍になります。
審査においても、入院時と同等の審査をするため、審査会の開催時間も2倍になります。
措置入院も審査会での審査が求められ、医療保護入院以上に審議の時間を要することが想定されます。
審査会委員に多大な負担と労力をかけることが予測されます。
対応として、審査会委員の増員、予備委員の活用、事務局の体制強化等が考えられます。審査会委員確保に、より積極的な協力、協力いただける体制をお願いします。事務局体制の強化についても、人件費、事務費の予算措置は必須です。
4点目、家族が意思表示を行えない場合に、市町村長の判断により医療保護入院が可能になる点についてです。
DVや虐待疑い等、運用上課題が多かった家族等同意に関して、市町村長同意の方向性が更なる検討として報告書にも明示されました。
家族の精神的な負担や疎遠な状況などから、家族同意そのものを外してほしいという意見もあります。
精神科救急の現場では、医療的にも患者の権利擁護のためにも、一刻も早く治療を始めたいところです。
適切な医療が提供できるよう、家族等が同意、不同意の意思表示を行わない場合には、適切な運用を前提に市町村長の同意による医療保護入院を行うことを可能とすることが望まれます。
市町村として、次に話す入院者訪問支援事業を活用した患者への関わり、人員体制等の検討をお願いしたいです。
5点目、その入院者訪問支援事業についてです。
患者の退院促進、権利擁護に向けた体制整備や、最初にお話しした精神障がい者にも対応した地域包括ケアシステムの構築のおかげで進みつつあります。
精神科病院外部の人、空気が病院に入る機会が増えているのです。
このことは、患者、病院、地域支援機関、全てに良い影響を与えています。
個人、組織、全てにおいて、孤独、孤立感や自尊心の低下を防ぎ、地域づくりにも役立っています。
入院時からそのような効果を生むであろう入院者訪問支援事業に期待します。
しっかりとした体制整備をお願いします。
精神科病院に対する地域援助、事業者との連携義務化も同様です。
6点目、精神科病院における虐待防止のための取組についてです。
精神科病院における虐待防止のための取組を管理者のリーダーシップの下、組織全体で推進することは当然必要です。市町村長、都道府県等の指導、監視の強化も当然図られるべきです。実効的な制度となり、虐待防止に資することになると思います。
7点目、不適切な隔離、身体的拘束をゼロとする取組についてです。
不適切な行動制限が虐待の温床ともなるため、今回の法改正により虐待防止が確実に進むと考えています。必要な医療行為を行うための身体固定について、一定のルールの下行うこととすべき、精神病床以外の病床における身体拘束の現状や取扱いを含め幅広い観点で検討すべき、介護分野における取組を参考にするべき等の報告書意見も大事だと思います。
8点目、附則第8条についてです。
今回の法改正は、精神障がい者の権利擁護に向けた第一歩を踏み出すものと考えます。
更なる制度の改善に向けて、精神障がい者やその家族の意見を聞きながら、精神保健医療福祉に携わる幅広い関係者による議論の継続が重要です。
検討会では、様々な関係者が同じ場に集まり、昨今の重要課題について議論できたことは本当に有意義でした。
参加した構成員は、賛成、反対の意見はあるものの、良い議論をしようとする姿勢は共通しており、話合いを重ねる中で、地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に関し、おおむね同じ方向性を持てたように感じました。
毎回構成員のほぼ全員が発言するため、一人5分でも24人で2時間かかります。
十分に討議したとは言いづらいところはあります。
今回の法改正を含め、今後も幅広く熱意ある議論が続くことを望みます。
非同意入院について世界的に検討が進んでいると聞いております。
身体科では、従来から、薬剤や手術、検査等、海外の多くの知見を取り入れて発展してきました。
新型コロナ感染症対策も同様です。
精神科においても、薬物療法、心理療法に関しては海外の知見が蓄積されていますが、制度、仕組みといった分野についてはいまひとつだと感じてきました。
他国にも非同意入院が必要な精神病状態にある患者は必ずおられます。
精神科の様々な制度、仕組みについて、世界の状況、情報をもっと取り入れるべきです。
終わりに、検討会では、参考資料として全国精保センター長会から提言を出しました。
その中には、精保センターは行政機関において多職種を有する専門的機関であり、かつ保健所との重層的支援を行う役割を持つ機関、退院後支援及び地域生活支援、権利擁護について幅広い知識と経験を備えていると書かれています。
今回の法改正を通して、今後の地域精神保健福祉の機能の強化と精神保健指定医が福祉的な視点を持って精神医療を行えるよう、精神保健福祉指定医の人材育成と認定を望みます。
以上です。ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
ありがとうございました。
次に、藤井参考人にお願いいたします。藤井参考人。
○参考人(藤井克徳君)
「我が国幾10万の精神病者は実にこの病を受けたる不幸のほかに、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものと言うべし。」
これは精神病者私宅監置の実況及びその統計的観察の中の一節であります。
呉秀三らによってこの調査が行われました。
これは日本で最初の座敷牢に関する疫学調査でありました。
この有名なフレーズの後にこういう一文が付くことをご存じでしょうか。
「精神病者の救済と保護は実に人道問題にして、我が国目下の急務と言わざるべからず。」
この急務と言った時期から105年が経過しています。
まさに日本の社会は一体何をしてきたんでしょうか。
この105年間でどれくらい厚生大臣が替わったでしょうか。
厚労大臣、当時は内務大臣と言っていました。調べました。
加藤大臣も、今の加藤大臣の前までで言いますと、116人が大臣に就いています。
誰1人として真の改革に結び付いた者は私はいないと断じていいと思うんですね。
改めてそういう点でいうと、決して大臣だけの責任じゃありません。
政府全体の責任であり、また立法府も含めて大きな責任があろうかというふうに思います。
以下、お手元の発言要旨に従って簡潔に各論を述べてまいります。
今、精神障がい者の分野から話が始まりましたので、引き続き精神保健福祉法に関連して述べたいと思います。
少しデータでこの国の精神障がい者の実態を共有していこうと思います。
最も象徴的なのは平均在院日数だと思います。
厚労省の一番新しいデータによると、283.5日。283.5日、一般診療科といいますと16.4日、約17倍です。
海外と比較するとどうでしょう。
お手元にありますように、大半の国が30日以内であります。
ベルギー等は10日を割っています。
そして、こういうデータもあります。
5年以上の入院者がどれくらいいるか。
80786人、入院者全体の30.7%であります。
5年以上というのは特殊じゃないんですね、ほぼ一般化しているわけなんです。
これも海外とのデータを比べてみました。
本年の8月に調べてみました。
お手元の資料集の22ページをご覧ください。
これは、OECDのデータを取ってみました。今、OECD、いわゆる工業先進国と言ってもいいと思うんですけれども、この圏域の中に87万ベッドがあります。
このうち日本に、何と37.1%が日本に集中している。
まさに精神病大国、こう言ってもいいかと思います。
そのほか、身体拘束や監禁の問題、これは後で長谷川教授からありますんで、数字をここに紹介しておきました。
問題は、どうしてこういうふうなことが起こってくるかという背景です。
もういろんな背景があると思うんです。
今日は、2つのことを少し述べておこうと思います。
1つは、優生保護法との関係です。
お分かりのように、優生保護法というのは優生思想を公認してしまったわけですね。
そして、障がい者を不良というふうに呼称しました。
その2年後に公衆衛生法、今の精神保健福祉法の前身ですね、でき上がっています。
この関係をどういうふうに見るのかということ。優生保護法の大半は、精神障がい者と知的障がい者であります、影響を受けたのは。
またもう1つは、精神科特例。
現在、この制度名は消えています。
しかし、東京都の病院管理手引なんか見ると、精神科特例当時の計算式が使われています。
医師は入院患者に関しては半分でいい、看護は3分の2で構わない、薬剤師は半分で構わない、看護は3分の2ですね、医師は、薬剤師は半分で構わない。
こうした少ない陣容での精神科医療というのは、結局は治療処遇ということよりは収容処遇になってしまった。
そして、閉鎖的な形態になってしまって、結局、外部から分かりにくく、様々な非人道的な行為の温床になっているということであります。
こういうことを合わせて、精神保健福祉法、もちろん今度の法案、いろんな議論は必要だけれども、時には歴史を振り返って、構造的な問題をきちんと考えるべきじゃないでしょうか。
2つ目です。
これは、障害者総合支援法に関わってです。2つのことを強調します。
1つは65歳問題。介護保険優先原則の問題ですね。
障がい者の場合には、年齢によって様々な問題が起こってきます。
かつては、「6歳の春を泣かせるな」これは学校に入れなかったわけです。
その後、「18歳の春を悲しませるな」卒業後は行き場がない。
今、「65歳の誕生日を苦しませるな」ということ、こう言ってもいいと思うんですね。
やはり基本的には介護保険を選ぶのか、又は総合支援法、障害者総合支援法を選ぶのか、あるいは併用でいくのかということを本人の選択で決めるということを、これを制度化していただきたいというふうに思うわけです。
2つ目は、これも法案には今回入ってないんだけれども、非常に本質問題です。
いわゆる公費の支弁方式、報酬の支払方式ですね。
これが日払方式になっていることの矛盾です。
今般、コロナ問題で、あるいはコロナ問題以前から、風水害、台風等含めてですね、利用者が来た分だけお金が来るという方式に変わってしまったわけです、自立支援法以降ですね。
職員の給料は固定費です。家賃も固定費です。
やはり、この月額単位というふうな支払方式、まあ、それに加えて日払いということが、利用者の来た分だけということはあってもいいと思うんです。
月額払いと日払方式の2階建て構造、こんなことをきちんと展望すべきではないでしょうか。
3つ目は、雇用関係の問題です。
今般問われていたのは、福祉と雇用の一体的展開。
これは、この資料にもありますように、参議院で2019年に附帯決議で上がっています。具体的に言うと、障害者雇用促進法と障害者総合支援法の二つの法律の合体運用ということですね。
更に踏み込みますと、通勤時のいわゆる総合支援法での移動支援事業、また職場での介護でのヘルパーの支援と。
また、福祉的就労においては、B型事業等に対して、ヨーロッパの国が取っているように一部でも労働法規を適用するということ、これこそが福祉と雇用の一体展開ではないでしょうか。
加えて、今度の議論で少し抜けていますのは中央省庁の水増し雇用、一体この総括が立法府として行われたのでしょうか。その後、一体どうなっているのかということのチェック、これもきちんとやはり捉えていく必要がある。
また、最近広がっているのは雇用率代行ビジネスの問題、これについても当委員会としては評価をしていただきたい。
まさにこのカーボンプライシスではありませんけれども、二酸化炭素をお金で買い換えると。
しかし、こちらは人間です。
このまま行ったらヒューマンプライシス、雇用率を市場で売り買いするという妙な現象が起こりつつありますね。
こうして見てきますと、次のテーマは、この委員会の進め方、法案の審議の進め方についても意見を、希望を言わせていただきます。
私は、ここで2つのことを強調しておきますので。
私は実は全く目が見えません。
ちょっと委員長の了解を得て1文を読んでもらいますが、委員長、よろしゅうございますか。
○委員長(山田宏君)
はい、どうぞ。
○参考人(藤井克徳君)
代読いたします。
2、国、厚生労働省は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障がい者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担、定率負担の導入等を行ったことにより、障がい者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障がい者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らを始めとする障がい者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案、実施に当たる。以上です。
これは、その自立支援法問題のときの交わした締結書、基本合意文書なんです。
やはり、単にそうじゃなくて、普遍的に、障がい者関係の制度、法律を検討する場合の普遍的な姿勢を求めたわけですよね。
この点に立ってきちんと議論をしていただきたいというのが1つ。
もう1つは、この束ね法案の問題性です。
今回、厳密に言うと8つの法律を一括審議する、まあ極めて乱暴極まりない。
つまり、1つ1つの法律が障がい者の生命と人権と暮らしと、そして社会参加に影響する。
ある面ではやっぱりこれはもう少し丁寧にということ。
まあ現実的にはもうあしたから審議が始まるわけなので、そういかないかも分かりませんが、今後のやはり反省も含めて、この点については委員会等でもしかし深めておいてほしいということを強調しておきます。
最後に、国連の総括所見の件について触れたいと思います。
去る8月の22日、23日にジュネーブの国連欧州本部で障害者権利委員会による、そして障害者権利条約に基づく初の国際審査が行われました。
日本の障がい者政策が国際評価を受けるのは初めてのことで、極めて歴史的なことだったと思います。
私も傍聴に行ってまいりました。
この審査は、審査で終わるんじゃなくて、後にそれを文章で出すんです。
これを総括所見あるいは勧告文といいますが、これが出されました。
この内容は、75段落のうち63段落が懸念事項及び勧告ということで、そういうふうな構造になっております。
時間がありませんから、何がポイントだったかということと、どうこれに向かうべきかということを述べて終わっていこうと思います。
まず、何がポイントだったかということで、象徴的な文章があります。それは第7パラグラフ、第7段落です。
ここでも、じゃ、代読をしてもらいます。
代読いたします。
障がい者への父権主義的アプローチを伴うことにより、障がい関連の国内法及び政策が、条約に含まれる障がいの人権モデルと調和していないこと。
これで、パターナリズムを父権主義と訳すのがいいかどうかということは分かりません。まだ実は公定訳が出ていないんですね。したがって、これは機械翻訳を使っていますけれども、いずれにしても、パターナリズム、パターナシック、これが日本の障がい者政策の基調に座っていると、こういうふうに言っているんですね。
と同時に、人権モデルと調和をしていないというふうなことを言われました。
これは非常に大事なことで、つまり、このパターナリズムというのは、やっている方がよかれと思ってやっているけれども、的外れであるということですね。
あるいは、言い換えれば、障がい者を保護の対象として、同情的、温情的な視点からアプローチをすると。
やはり、権利の主体として位置付けるようにということを厳しく見抜いたわけです。
同じように、人権モデルとの不調和ということについても問題点を強調している。
2つ目は、この優生保護法問題の全面解決なども含めて、あるいはやまゆり園問題の真相究明を含めて、日本においては、優生思想又は健常者優先主義ということの視点がまだまだ残っているんじゃないかということですね。
3つ目は、分離処遇。
入所施設にしても、学校教育にしても、働く場にしても、まだまだ分離が多い、これへの警鐘。
これは、今後いろんな議論が要るところかも分かりません、現実的にどうするのかという議論も必要かも分かりません。
と同時に、これは、ある面では社会へのイエローカード、地域で受け入れてくれるんですか、普通学校は大丈夫ですか、働く場大丈夫ですかということですね。こういうふうに言っていること。
4つ目は、今度の法案審議でも大事な精神科医療問題です。
これは相当私腹を取っています。
厳しくこれは問うていますね。
是非、今日お手元に資料配りましたんで、特に第24パラグラフ、第34パラグラフ、ご覧ください。
さて、時間が参りましたんで、かつて国際障害者年時にこういうフレーズが国連から言われました、決議されました。
障がい者を締め出す社会は弱くもろい。
逆に言うと、障がい者をしっかりと大事にする社会というのは強靱でしなやか。
私は、それよりも、障がい者を大事にするっていう社会というのは尊敬される国だと思います。
参議院は、衆議院と違って大変任期が安定しています。
障がい者問題を是非、1回1回の国会ではなくて、中期的なそういうふうな議論を含めて、議論本当にしていただきたい。
このことを強調しまして、私の意見陳述を終わります。
ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
ありがとうございました。
次に、若尾参考人にお願いいたします。若尾参考人。
○参考人(若尾勝己君)
埼玉県東松山市にあります特定非営利活動法人東松山障害者就労支援センター代表理事の若尾です。
初めに、この度の厚生労働委員会におけるこのような貴重な意見陳述の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。
私ども特定非営利活動法人東松山障害者就労支援センターは、平成14年11月、法人化いたしました。
この11月でちょうど20年を迎える団体でございます。
団体の実施している主な事業活動は、障がい者就業・生活支援センター事業、訪問型職場適応援助者助成金事業、障がい福祉サービスにおける就労移行支援事業並びに自立訓練事業多機能型として、かつ就労定着支援事業も併せ、実施しているところでございます。
また、都道府県事業として、埼玉県障がい者雇用総合サポートセンター事業、県職業能力開発事業として、知識、技能習得コースや、精神障がい者等向け実践能力習得コースなどの障がい者委託訓練も実施しております。
そのほか、法人独自事業として、障がいのある方の就労アセスメントを提供する事業所を県内に2か所設置、運営をしているところです。
従業員数わずか30名程度の非常に小さな団体ではありますが、就労支援に関わる様々な事業を多角的に運営、実施をしてまいりました。
この度の総合支援法改正案に関しましては、そのような立場から、改正概要の2、障がい者の多様な就労ニーズに対する支援及び障がい者雇用の質の向上の推進に関する3点。1、就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等、2、短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満に対する実雇用率算定等)、3、障がい者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化等について、ご意見を述べさせていただきたいと存じます。
まず初めに、就労アセスメントの手法を活用した支援の制度等についてですが、見直し内容に示されている就労選択支援の創設につきまして、おおむね賛成でございます。
障がい福祉サービスの利用に際しましては、サービス等利用計画の策定に基づいた支給決定が必須となりますが、就労系障がい福祉サービス事業の利用決定プロセスにおいて、一般就労の経験のない障がいのある方の就労継続支援B型事業の利用には、就労移行支援事業所等による就労アセスメントにより、その利用の妥当性について検討することとなっております。
しかし、地域の様子を俯瞰してみると、非常に形骸化している現状があると感じております。
特に、特別支援学校卒業と同時に利用を希望する場合の就労アセスメントは利用を前提とした免罪符的なプロセスとなっており、ともすれば意中の就労継続支援B型事業の利用にストップがかけられてしまうことを危惧した担当する進路指導教員から、このプロセスは進路指導の妨げになっているんだと、そういうことを市町村行政へ意見するという場面も散見しておりました。
私どもが運営する障がい者就業・生活支援センターは、平成24年度から26年度に実施された国の障がい者就業・生活支援センターによる就労アセスメントのモデル事業に参画させていただいたところ、障がい者就業・生活支援センターが行う就労アセスメントを地域の協議会、これは障がい保健福祉圏域、自立支援協議会の就労支援連絡会議にあたるものなんですが、その中でそのアセスメントの結果を協議するモデルを実施いたしました。
地域における就労アセスメントの体制の構築にも貢献いたしました。
現在も一部その役割を残し、その妥当性を地域で検討することとしております。
このような経験から、就労アセスメントによる1つの結果を地域でしっかりとその妥当性について検討することや、仮に就労継続支援B型事業の利用が妥当であると判断されたとしても、継続的にその方の希望や可能性を完結させないための定点観測をすることを地域がしっかりと保障する、そんな仕組みづくりがとても重要であると考えております。
このような観点からも、新たに制度化を検討されているこの就労選択支援サービスには期待するところですが、一方で課題もあると感じております。
このサービスを行う事業者の該当基準はどのようになるのでしょうか。これまでも課題となっていた、自身の事業継続のためにあらゆる手で利用者獲得のための利益誘導をしようと考える事業者は少なくない中、新たに創設を検討されているこのサービスについても同様の利益誘導のために活用しようと考える事業者が出現するということを否めません。
そして、就労アセスメントの方法や、実施するアセスメントの基準となる指標や、共有のためのコンセンサスシートなど、様々に氾濫している現状の中で、何を基準としてどのように評価することが妥当性のあるアセスメントとなり得るのか。
また、従来の相談支援の仕組みと連動し、かつ就労支援の専門機関がその専門的な知見から障がいのある方の働く力やその可能性について、アセスメントを実施した結果を地域の様々な機関が共有し、そして活用できる地域の就労アセスメント体制の構築の必要性についても、この制度化と同時にしっかりとその方向性を示唆していただきたいと考えております。
次に、短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満に対する実雇用率算定等)についてですが、見直し内容に示されております、週所定労働時間が特に短い精神障がい者、重度身体障がい者及び重度知的障がい者について特例的な取扱いとして事業主が雇用した場合に雇用率に算定できるようにする、につきましては、おおむね賛成でございます。
最初にお伝えいたしましたが、私どもは30名程度の非常に小さな団体でありますが、身体障がい者2名、知的障がい者2名、精神障がい者2名の計6名を雇用しております。
この中で、身体障がい者2名については重度身体障がいのある方で、1名は筋ジストロフィーによる筋力低下の障がいをお持ちの方です。
現在は週平均労働時間25時間で就業していただいております。
採用から約6年が経過いたしましたが、採用時よりも機能低下が見られ、当初の週平均労働時間30時間から、ご自身の申出により、現在の週所定労働時間まで漸減いたしました。
もう1名は、脳性麻痺が主となる筋硬直の障がいをお持ちの方です。
現在は週平均労働時間9時間から12時間ですが、やはり採用当時からは体力的な低下が見られております。
特に最近では、終業後に筋硬直の度合いが高くなる日が多いことから、体調の維持のために就業と休暇を交互に確保していただいて、その休暇時には定期的にリハビリを利用する状況となっております。
このようなことから、現在の週平均労働時間数がぎりぎりの状況であるということも、ご本人やご家族からもお話をいただいているところです。
このように、お伝えした私どもの従業員の様子からも、雇用率該当の短時間労働者の基準が引き下げられることは、働く機会に恵まれる可能性のある重度身体障がいの方が、マイノリティーかもしれませんが、まだまだいらっしゃるのではないかというふうに考えております。
その他、重度知的障がいの方や精神障がいの方も同様で、新たに働きたいと考えている対象となる方にとっては、この要求される拘束時間が引き下げられ、かつ事業主の雇用率の算定に加えられることは、働くことへの不安や自信を失った方であってもスモールステップとなり得る可能性のあることが考えられます。
また、既に雇用されている障がいのある方にとっては、加齢や疾病による段階的な機能低下による障がいの重度化が、これまでの労働時間数を下回ってしまうことで継続的な雇用を諦め、雇用から福祉へと流れざるを得なかったのが現状です。
しかし、前述したとおり、障がいのある方の段階的な機能低下に合わせた段階的な労働時間数の引下げが可能となれば、少しでも長く働く場での活躍を維持することができる、そんな可能性があると期待しているところです。
しかしながら、一方で、課題も散見していると考えております。
週所定労働時間数が引き下げられ、その対象となるということは、大局的に見れば、労働という社会活動参加の時間数が漸減するということでもあり、先述させていただいた就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等における見直し内容に示されております、就労中の就労系障がい福祉サービスの一時利用に関連し、この労働者として確保される時間数と就労系福祉サービスの利用を通じた社会活動への参加の時間数の確保は、まさしく労働と福祉サービスの併用という観点であり、とても重要であると考えております。
特に、より障がいの重たい方々にとってこの障がいは固定されているものであり時間経過で軽減されるものではないという点からも、従来からある、働く障がいのある方の福祉サービス併用に関して、地方自治体の行政機関によってその対応が異ならないよう改めて事務処理に関する通達をお願いしたい、そして更なる柔軟な運用をお願いしたいと考えております。
また、特定の企業における雇用率ありきとする雇用機会に質が伴わないところでは、カウント確保の目的から、働く力が伴っているにもかかわらずあえて短時間による労働にとどまらせてしまう可能性について、最初に述べさせていただいた就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化等における見直し内容に示されております、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する新たなサービスを創設し、ハローワークはこの支援を受けた者に対して、アセスメント結果を参考に職業指導を実施するものとするに関連し、対象となる範囲であり、かつ短時間雇用である必要性をしっかりとアセスメントできる職業リハビリテーション機関や地域の就労支援機関等によって、短時間雇用が妥当であるという背景因子や障がい特性等のエビデンスに基づくことが重要であると考えています。
しっかりとその是非をフィルターにかけ、企業都合優先となる雇用にならぬよう具体的なプロセスを示唆していただきたいというふうに考えております。
3つ目になりますが、障がい者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化について、見直し内容に示されております、限られた財源を効果的に運用し、雇用の質の向上に向け、事業主による障がい者の職場定着等の取組に対する支援を充実させるため、当該超過人数分の調整金や報奨金の支給額の調整、事業主の取組支援のための助成金を新設につきまして、こちらもおおむね賛成でございます。
中小企業における障がい者雇用の促進はとても重要であると考えておりますが、私たちの地域を見渡していても、なかなか進んでいないのが現状です。
地域における中小企業の状況から見れば、中長期的な伴走型の支援が提供されることで障がい者雇用へシフトする企業も少なくありません。
助成金の措置とともに、中小企業の障がい者雇用促進のための具体的な仕組みづくりについても期待しているところです。
また、障がい者の納付金制度における調整金や報奨金の状況を鑑みると、規模の大きい企業に流用されている状況があることは需給バランスの観点から見ても是正が必要と考えております。
限りある財源の有効活用のためにも、雇用の質への助成という新たな局面について是非とも進めていただきたいと考えております。
最後に、これら障がい者の多様な就労ニーズに対する支援及び障がい者雇用の質の向上の推進には、良質な就労支援サービスを提供できる人材が必要不可欠と考えております。
雇用と福祉施策の連携強化においても議論されてきております。
雇用、福祉、横断的な就労支援専門人材の養成につきましては喫緊の課題であり、障がい者就業・生活支援センターの就業支援担当者、生活支援担当者、訪問型並びに企業在籍型職場適応援助者、就労系障がい福祉サービス事業所における就労支援員や就労定着支援員、その他障がいのある方の就労支援に関わる人材や、企業における職業生活相談員等のより専門的な就労支援、雇用支援スキルを付与する研修の体系化や実施の早期実現、並びに就労支援専門人材の一つでもありますジョブコーチの国家資格化へのロードマップの実現についても切にお願いしたいと考えております。
また、制度や施策を運用するのは人でございます。
現場では障がい福祉並びに障がい者就労支援に携わる人材の確保が大変困難になっております。
この障がい者の多様な就労ニーズに対する支援及び障がい者雇用の質の向上の推進に必要となる人材の確保や養成に関しても併せて力強く推進していただけることを期待しております。
以上、私の意見陳述について終了とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
ありがとうございました。
次に、長谷川参考人にお願いいたします。長谷川参考人。
○参考人(長谷川利夫君)
杏林大学の長谷川と申します。
本日はお招きいただき、ありがとうございます。私は、こちらのパワーポイントの配付資料を主に使いながらご説明いたします。
これ、1枚目の方に、私自身が精神科病院のベッドで身体拘束をされている写真が写っております。
2013年にこの2ページ目にある青い本を出しました。
身体拘束が徐々に増えているときでした。
しかし、それ以降、身体拘束は増え続け、このグラフにあるように10年で2倍になり、現在も1万人以上の方が身体拘束を受けています。
2017年5月に、ケリー・サベジさんという男性が神奈川県内の精神科病院で身体拘束を10日され続けた後に心肺停止になり、その後亡くなりました。
しばらくして、地震学者でニュージーランド在住の母と日本在住の兄が私の大学の部屋を訪ねてこられました。
確かに家では具合が悪かった、しかし病院に着くと、医師はケリーさんに診察室にあるベッドに歩いて横になるように命じ、横になるとすぐ看護師は身体拘束をしました。
兄のパットさんは、自分の足でベッドまで歩ける人をなぜ身体拘束するのかと思いながら従わざるを得ませんでした。
身体拘束を受けて10日後にケリーさんは心肺停止の状態で発見され、その後転送先の病院で亡くなりました。
その後、外国特派員協会でも会見が行われ、イギリスのガーディアンを始め国内外で広く報じられました。
このこともあり、当時、塩崎厚生労働大臣が身体拘束に関する調査を行うことを約束しました。
昨年2月に取りまとめられ、さきの10月27日にこちらの委員会で大臣が答弁なさっている調査はこの調査なのです。
このケリーさんの死をきっかけに、私は遺族と一緒に2017年に精神科医療の身体拘束を考える会を立ち上げ、私の携帯番号を全国に公開しました。
そうすると、精神科病院で行われている様々な相談を受けることになりました。
そのような中で、こちらに情報がもたらされたのが、石川の大畠一也さんの身体拘束死でした。
2016年に石川の精神科病院に大畠さんは入院しました。
2週間後に突然ご自宅に電話が入り、お母さんが電話を取ると、一也さんが亡くなりましたと言われ、病院に駆け付けると、そこで初めて身体拘束をしていたことを知らされます。
解剖の結果、肺血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群でした。
ご家族は実名で記者会見をして社会に訴えました。
そして、2審で原告の逆転勝訴。
そのときに、スライドにあるワシントンポストで大きく報じられています。
医師の裁量の逸脱を認め、身体拘束開始時からの違法性が全面的に認められました。
被告の上告受理申立てについて、最高裁は昨年の10月にそれを受理せず、判決は確定しました。
判決文では、生命の保護や重大な身体損傷を防ぐことに重点を置いたものだということを強調しています。
しかし、この判決が最高裁で確定した1か月後に、日本精神科病院協会は会長自らが記者会見をし、声明を発しました。
引用します。こちらに書いてあります。
このような非専門家による判断によって精神科医療に対して法的強制力を伴う制限を加えることは、患者に対する行動制限としての身体拘束の要否についての専門的判断は、精神保健指定医という格別の専門資格者しか行い得ないとされた精神保健福祉法の立法趣旨に正面から抵触するものであるとしました。
しかし、これは大きな勘違いをしていると言わざるを得ません。
専門家が専門性によって判断に一定の幅があるのは当然のことです。
しかし、それが無制限になされることはあり得ず、違法性が問われ、違法とされることもまた当然あり得ることです。
日本の1000以上ある精神科病院を取りまとめるアソシエーションがこのような主張をされているということは非常に恐ろしいことだと思います。
しかしながら、事もあろうに厚生労働省は、検討会の中で今年の3月に、身体拘束の大臣告示を30年以上ぶりに改変する、しかも今までには隔離にしか認められていなかった要件を加える提案をしてきました。
そこで、身体拘束の基準というのを見てみます。
これは10ページの下の方からです。
精神保健福祉法の37条では、処遇の基準を定めることができるとしています。
その中に、通信、面会、隔離、身体的拘束、任意入院の開放処遇の制限となっています。
11ページの上にあるように、第4、身体的拘束についてで、基本的な考え方として、やむを得ない処置として行われる、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないとなっています。
これは、下にあるように、非代替性、一時性を表します。
しかしながら、12ページの上にあるように、3月16日、厚生労働省は、検査及び処置等を行うことができない場合というふうに変えようとしてきました。
その後、赤字にあるような、議員会館で院内集会を3回開催しました。
そうすると、最終的には下にあるような、患者に対する治療が困難でありというところに取りまとめられたということです。
しかし、ここで注意しなければならないのは、13ページの上にあるように、石川の大畠さんの身体拘束を行った日のカルテです。
これは、医師は何と記入しているかというと、昨日もスタッフへの暴力があり、検温等関わりも難しい、抑制の上フォローするしかないと書いてあります。
これはまさに3月16日の厚生労働省案の検査及び処置等に該当します。
すなわち、もし3月16日の案で大臣告示が書き換えられていれば、このような身体拘束は適法化されてしまう可能性があります。
衆議院の附帯決議はどう書いてあるでしょうか。
「大臣告示の改正を速やかに進めること。」と書いてあります。
なぜ速やかに進めなければいけないんでしょうか。
もし、14ページの上にあるように、要件を狭めるならば、切迫性、非代替性、一時性の要件の三要件をそのまま書き込めばいいだけの話です。
あるいは、イ要件とウ要件を「かつ」でつなげる、そうすれば確実に狭くなります。
しかし、私は、その医師の裁量を広げる方向の改定には最大限の強い言葉をもって反対いたします。
そもそも、人身の自由に直接関わることを大臣告示で定めているのはいかがなものかというのは10月20日の予算委員会でも申し上げました。
そもそも、大臣告示には非常に問題があります。
14ページの下にあるように、常時の臨床的観察であるとか頻回に診察と書いてあります。
15ページに行きますと、常時の臨床的観察とはどのようなものなんでしょうか、頻回とは何回でしょうか。
これらは曖昧で、法律的に事実認定しにくいものとなっています。
治療が困難という言葉も同様です。
つまり、人権の問題が医療化してしまいます。
常時の臨床的観察は誰が判断するのか。医療者以外が客観的に見ることが極めて困難になりがちです。
医療者がそうだと言えばそうなってしまう、人を拘禁する要件として非常に問題が大きいと考えます。
しかも、厚生労働省は、今、10月から野村総研に研究を委託しています。
その事業実施計画書では、処遇基準の告示の見直しを含む要件の検討ということが書かれています。
なぜ人身の自由のことや人の拘禁に関わることを野村総研に委託してしまうんでしょうか。
これは濫用されないようにグリップを利かせなければならないはずです。
もっと議会に監視していただきたいと思っています。
16ページに行き、精神保健福祉法の内容に入ります。
先ほども話にありましたように、束ねている問題です。
なぜ束ねてはいけないのか。
精神保健福祉法は、人身の自由の問題を含みます。
総合支援法は、主にサービス、給付に関する法律です。
そもそも方向性の全く逆の内容を含みます。
17ページに行きます。
イギリスの政治哲学者のリンゼーは次のように述べています。
討論の目的は、互いに異なった見解の中から、正しい意味での統一された目標をつくり上げることである、民主政治においては、国家の目的を遂行するために強制力を必要とすること、しかもその強制力は共同社会の内での不一致とか対立というものを是が非でも法的、制度的な方法によって解決するためにこそあるということと述べています。
すなわち、討論というのは時間がかかるものです。
それを分かっていながら束ねて出すというのは、非常に良くないと思います。
次に、精神保健福祉法の改正案の第1条です。
「精神障害者の権利の擁護」という言葉が入ったことは、一定の評価ができると思います。
しかしながら、「その発生の予防」という言葉が残っています。この「その」というのは、その前段には精神障がい者と障がい者しかないことから、これは精神障がい者の発生の予防というふうに考えられます。
これは、18ページにあるように、障害者権利条約17条の心身がそのままの状態で尊重される権利を有する、これと真っ向から反する、合致しないと思います。
35条2、3の入院者訪問事業です。
ここでは、誠実かつ熱心に聞くというふうに書かれたり、精神科病院の協力を得てということが書かれています。
19ページに行きまして、私は病院に異なる風が入ること自体は期待したいと思いますが、精神科病院は26万人中約半数の13万人が医療保護入院という強制入院であり、拘禁する側と拘禁される側というのが根本的な関係です。
しっかりとしたリーガルな視点による解決が必要であるにもかかわらず、現状それが抜け落ちている、あるいはその考えが今後及ばなくなることを危惧します。
40条5では、虐待防止法が織り込まれました。
ここでは、通報があった場合に当該職員もしくはその指定する指定医が立ち入る、精神科病院に立ち入るということになっています。
20ページに行きます。
何年かにわたって、虐待防止によってこれは行われるべきだとの議論がありました。
しかし、結果として精神保健福祉法に盛り込まれたところ、虐待の通報があった際は、今述べたような当該職員もしくはその指定する指定医に立ち入らせることになってしまっています。指定医が前面に出れば同僚審査になってしまいます。
2020年3月に、神戸市にある神出病院で看護師6名が入院患者に対する準強制わいせつ、暴行、監禁等で逮捕される神出病院事件が起きました。
患者さんを裸にしてトイレで放水する、柵付きベッドを逆さにしてその下の狭い空間に患者を閉じ込める、床や患者の陰部にジャムを塗って他の患者になめさせるなどの行為を繰り返していました。
しかも、これは、内部からは全く話が漏れることはなく、犯人が外部で捕まったときに押収されたスマートフォンの中からこの動画が出てきて、職員同士でそれを回して楽しんでいたという状況でした。
このような虐待は、医療者でなくても外形的に見て虐待と判断できます。
むしろ、長期間の身体拘束などの行動制限について、指定医が立ち入ることで医療的に必要と判断され続けてしまうこともあるでしょう。虐待の判断においてイニシアチブを取るのは指定医ではないと思います。
それから、今日申し上げたいのは、精神保健福祉法詳解は誰が書いているのかという問題です。
こちらの本はご覧になったことがあるでしょうか。
私は何度か厚生労働委員会を傍聴したことがあって、そうすると、大臣席の後ろの方で厚生労働省の方はこの本をよく持っているのを見かけたことがあります。
これは精神保健福祉法のバイブルのような本で、いろんなところで引用されたりします。
しかし、これは一体誰が書いているんでしょうか。
これを見ると、精神保健福祉研究会監修としか書いてありません。
しかし、幾らインターネットで調べても、どう調べても何も分かりません。
このような誰が書いたのか分からないものをなぜ根拠に政策を立案したり決定したりできるんでしょうか。
これは一体誰が書いているんでしょうか。
学者でしょうか。官僚のOBでしょうか。
著者が分からなければ学問的検証も議論もできません。
まさしく魔術のようなものです。
私は、今後、この本を参照して物事の根拠にする場合は執筆者を明らかにしてほしいと思っています。
誰が書いたか分からないものを根拠に政策立案をされたのはたまらないからです。
私は真面目に言っています。
これは議論や討論の前提になることです。
次に、検討会、政策決定に関わる検討会の人選についての問題です。
代表性の問題と言ってもいいです。
厚生労働省の検討会の構成員は厚生労働省が選びます。
しかし、たとえば当事者といっても、あくまでも厚生労働省が一本釣りした当事者です。法律家が入っているといっても、それは厚生労働省の一本釣りです。
果たしてそれは公平公正なのでしょうか。
議会においては、国民の代表たる与野党の先生方の合意により、こうやって意見陳述をさせていただくことも可能です。
当事者なら当事者団体とか、法律家なら実務法律家団体に推薦を求める方が公平公正なあり方だと思います。
続いて、医療保護入院のことです。これは21ページの下の方です。
医療保護入院は、厚生労働省の検討会において、本年3月に、基本的には将来的に廃止も視野に縮小というふうに廃止の方向性が出ました。
しかし、4月には、将来的な継続を前提とせず縮減となり、そして、とうとう6月の最終報告書には、課題の整理に取り組み、具体的かつ実効的な方策を検討することが必要というふうに全く訳が分からないものになってしまいました。
もう大変な大後退です。
しかも、検討会の終盤では、日本精神科病院の会長が30分の予定のところを1時間15分話をするに及びました。
なぜ話を止めないんでしょうか。
もしもそれが許されるのならば、他の発言者や参考人にも認められるべきです。
極めて公平性や公正性に欠けた検討会だと思います。
これは、先ほどの精神保健指定医の行動に違法判断が下ったことに対しての声明が出たことと同様の態度だと思います。
22ページです。
社会学者のフリードソンが、「医療と専門家支配」ということで、こういうことを述べています。これは50年以上前の本です。
専門家にしても官僚にしても、決して悪意の人物ではない。
両者は他の人々と同じように自分自身の視点のとりことなっているが、これらの視点は、訓練や献身によって、そして仕事上での個人的な経験から学び取った教訓によって制約を受けている。
このような専門家の行為は簡単に矯正されるようなものではなく、社会生活の本性に由来するものであり、その矯正には、個々の専門家が善意を持つ以上に、専門家以外の視点によって専門家の視点を相殺することが必要であると述べています。
今求められているのは、行政に対する議会の民主的統制だと思います。
非常に政策決定のプロセスが不透明です。
法案がもうかなりでき上がってきて、厚生労働省の検討会でも方向性が出て、そして社会保障審議会でもうほぼほぼできてしまう。
そして、衆議院を通る。
そして、もう参議院に回ってきたときは附帯決議を少しいじるしかできないなんというのは、それはそもそもがおかしい話であって、討論を尽くすべきだと思います。
もう一度繰り返しますが、行政に対する議会の民主的統制を強めるように是非お願いしたいと思います。
私の発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
ありがとうございました。
以上で参考人のご意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次ご発言願います。
○こやり隆史君
自民党のこやり隆史でございます。
4名の参考人の先生方、本当に今日は貴重なお話を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
改正法案の審議にあたりまして、様々な視点、あるいは、特に現場の視点、先生方の目から少しご意見を頂戴できればというふうに思います。
まず、辻本参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
辻本参考人は、私のふるさとであります滋賀県におきまして、精神保健分野で様々現場の立場からいろいろ活動していただいております。また、何より私の高校の先輩でもございますので、忌憚のないご意見を頂戴できればというふうに思います。
まず、適切な精神医療、これを確保するための改正事項というのがこの法案には入っております。
先ほどのご説明の中にも、入院訪問支援事業の創設であるとか虐待防止の取組の推進であるとか様々、またその、それ以外にも、精神医療審査会での審査についての課題、そうしたものもお話を頂戴をいたしました。
こうした新たな取組であるとかこれまでの取組の改善、こうしたことを進めていく。
特に、参考人は、人員の体制の強化であるとかということについて言及をいただいております。
なかなか、事務局の体制を増強していくとか比較的容易に進めていける問題と、あと、専門性の高い人員をいかに確保していくかとか、様々できることから着実に進めていくことが大事なのかなと、ご意見を聞いて、拝聴して考えておりました。
この精神医療を、適切な精神医療を確保していく、その上で、今回の改正事項も含めて、人員の体制の強化以外にこれがやっぱり重要、新しい、たとえば入院訪問支援事業であるとか虐待防止、こうしたものについて特にこうしたことを強く政府として進めていってほしいということがありましたら教えていただければと思います。
○参考人(辻本哲士君)
ご質問どうもありがとうございます。
ちょっと妙な言い方になるかもしれないんですが、精神医療を特殊化、特別化しないことだと思います。
今日、皆さんのお話聞いていて、やはり、やっぱり精神科は特殊、特別なところがあるんかというところを感じたりはするんですが、私は日々の臨床の中で、同じ人というか、私もそう、具合悪いときもあったりするのでというところで、今回の法改正でも、精神保健に関する相談支援について、精神障がい者のほか精神保健に課題を抱える者も対象にできるようになっているわけですね。
これは、誰でも精神障がいになり得る、精神障がいは特殊、特別ではないという認識が広がることを非常に期待します。
コロナ禍とかでも、非常に追い詰められてうつになったり経済的な問題でうつになったりされる方を、精神障がいだからというのではなくて、それ以外のいろんな要因を踏まえて、その中で医療ができるところは医療がしていくと、で、社会がしていくことは社会がしていくということをちゃんと包括的にやっていく姿勢が大事だと考えております。
さらに、精神保健福祉法が今回、障害者総合支援法の1つの中に入ったというのを前向きに捉えていただいて、他の障がいと同様に考えていくと、そういうふうなスタンスも重要だと思っております。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
そういう意味では、今回、引き続き辻本参考人にお伺いをいたします。
今回の法案で、相談支援体制をしっかりとやっていく、特に、市町村の位置付けを明確にして、幅広い観点から相談支援を行っていくということが盛り込まれています。
法案にも、精神保健あるいは福祉が連携しながら対応していく体制をつくっていく、そうしたこともその精神に入っていると思うんですけども、私も、厚労省の政務官していたときに引きこもり対策の各省連携PTの座長をやっておりました。
様々な課題、これまさに、今回の法改正の分野だけではなくて、様々、生活の貧困の問題だとかいろんな問題で市町村を始めとして窓口ができていて、相談体制ができています。
入口は違うかもしれないけど、それが引きこもりにつながっていたりとか、そういう意味では、いろんな、入口は多様だけれども、それの根本を考えていくと、それをいかに総合して対応していくかということ、いけるかということが大事である。
他方で、それを一言で、言葉では簡単なんですけども、それを実際にやっていこうとすると、いろんなやっぱり組織の壁もありますし、情報の壁もありますし、いろんなその連絡体制がやっぱり弱いとかいろんな課題があって、総合的な支援を今つくっていこうとするけれども、なかなか現実的に難しいという面があると思います。
そういう意味で、まさに辻本参考人がこれまで取り組んでこられて、そうした相談体制をしっかりつくっていく、市町村中心につくっていくとした上で、やっぱりこれが一番今課題となっているというようなことがありましたら、教えていただければというふうに思います。
○参考人(辻本哲士君)
どうもありがとうございます。
私は一応県の職員ではあるんですが、もちろん市町の職員だとか民間だとかと一緒に現場で動いているわけですよね。
だから、現場ではそうやって動いても、やっぱり縦と横の軸がちゃんとしていかなければいけないというふうには思います。
今回、市町村の責務というのがしっかり書かれたことは非常に有り難いです。
その上で、都道府県の責務としては、市町村のバックアップ体制の充実になります。
すなわち、市町村による相談支援の体制の整備が適切かつ円滑に行われるような必要な助言、情報の提供、その他の援助を行うことがあります。
先ほども言いましたように、市町村はまだまだ専門職がいるとは限らないというところで、そこでも市町村の中にそういう専門職が入っていただくのとプラス、入ったからすぐ全部できるわけじゃないので、その辺を精神保健福祉センターとか保健所とかが市町村との共同によって、精神保健医療福祉のニーズや地域の課題、地域自体は市町村がよく知っていますんで、そういうところ、弱いところを把握した上で、障がい保健福祉圏域等の単位で、要するに精神科の医療機関が市町にない場合もあるわけですよね。
そして、より広域な視点で支援をしなけりゃいけないとしたら、やっぱり保健所とかほかの病院との兼ね合い等もあって、やっぱり医療機関としては保健所の方が関わりが強いので、そういうところを保健所がバックアップして、重層的な支援というところですね、だから、どこかにもう投げてしまうんじゃなくて、市町村もやりながら県もやりながら精神保健福祉センターもやっていくという重層的に継続的な支援を構築することが大事です。
それと、今回、市町村がやることになったことで、市町村の規模や資源によって支援のばらつきが生じないようになっていくように思います。
熱意のある市町村は頑張るけど、ほかのところはなかなかというところにならないように、人員体制を含む体制整備が求められるところであります。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
次に、若尾参考人にご質問させていただきたいと思います。
選択、就労選択支援のところで、参考人の方から、地域におけるアセスメントの仕組み、これを構築していくことが大事であるという趣旨のお話があったかというふうに思っています。
いろんな懸念点、客観性の確保であるとか様々な懸念点がありますし、またそれを地域として、全体として受け止めていく、そうしたことが大事であるのかなというふうに思っております。
そうした仕組みなりアセスメントの評価の体制を現実的につくっていかないといけないということだと思いますけれども、現実的につくっていく上で何が一番大事と考えておられるかというのを教えていただければと思います。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問いただきありがとうございます。
私の今の立場からお話をさせていただくとすれば、相談支援事業の仕組みづくりのところに非常に課題があるんではないかというふうには感じております。
従来の相談支援事業の役割は、一般相談とそれから特定相談というふうに分かれていると思います。
障がい福祉サービスの事業を利用していくプロセスというのはこの特定相談の方が役割としては担っているはずなんですが、これまでのやっぱり数の対応に追われていく相談支援事業所の様子を見ていますと、やはり当てはめにつながっているというふうに私自身は感じているところです。
それから、一般就労だけがやはり就労ではないというふうに私どもも思っていまして、働く可能性をどのぐらいの期間どういうふうにご本人の状態に合わせてつくっていけるかということ、ここに相談支援事業所、相談支援事業の仕組みがなかなか伴走ができていないというのも大きな原因だというふうには思っています。
それともう一点は、相談支援専門員の方々の就労支援の知見や経験のなさというのがひとえに大きいということも考えております。
この辺は、相談支援事業所の皆さんがそれを全て担えばいいということではなく、地域の中にある様々な機関が融合してここに関わっていくということが大事ではないかというふうに考えております。
ただ、その点に関しましても、先ほどお話のあった市町村の行政とどういうふうにこの相談支援事業の方、それから周辺の就労支援機関がコミットできるかということが非常に大きな課題ではないかというふうには考えております。
そういう意味で、この就労選択支援が入ったことによっての期待感というのはあるところです。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
今のお話にも関連をするんですけれども、今お話あったように、自治体もありますし、あと就労支援機関で一番大きなものとしてハローワークを始めとした就労支援機関というのも各地域に存在をします。多分、そうした連携をいかにスムーズに取っていくかということが大事であるというふうなご指摘だと思うんですけれども。
ちょっと地域によっても状況が違うのかもしれませんが、そうしたこの就労支援という観点でいうと、そうしたいろんな幾つかの機関がある中で、やっぱりどこかがリーダーシップを取りながらやっていかないと、まとめていく、あるいは情報の整理をしていくということが大事かなと思います。
そういう意味で、どうした機関が少し、もう更に強化をする、あるいは連携を強めることによってそうした受皿ができ、実際にできていくのか、誰にどういうところに期待をされているかということについて、教えていただければと思います。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問いただきありがとうございます。
地域のネットワークをつくっていくときに、私自身は大きく分けると3つあるというふうに考えています。マクロネットワーク、それからメゾネットワーク、ミクロネットワークという3つの階層構造があるというふうに考えています。
マクロネットワークにおいては、政策協議など大きな課題についてを検討していくようなときに参集していただくようなことになりますから、当然これは就労支援ということであればハローワークや職業センターのような国の機関が参集していただく、もしくは自治体の市町村が参集していただくということが大事だというふうに思っています。
ただ、ご本人の、障害者ご本人の就労の選択のようなところを考えていくのであれば、これはやっぱりメゾだったりミクロのネットワークが機能しなくてはならないというふうに思っていますので、障害のある方がどちらに駆け込んだのかによってそこのイニシアチブを取る役割というんですかね、これが変わってくるんだろうというふうに思っています。
そういう意味では、どこの機関もこのイニシアチブが取れるような、リーダーシップが発揮できるような機能というのをやっぱり持っていただくということが重要だというふうに考えていますので、これは就業・生活支援センターであろうが市町村独自の事業のところであろうが相談支援事業所であろうが、就労したい、働きたいというふうになった、その障がい者が来たときには、やっぱりそのステージにちゃんと上げられるようにしていくという地域の仕組みづくりが私は大切だというふうに思っております。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
ご説明の中でも、多分、だから、どこの窓口に来られたとしてもそれぞれがつなげていって必要な受皿をつくっていくということが大事だということだと思いますし、ご説明の中でも、人材育成、そうした人材が、そうしたことを担える人材をどう確保していくかということが大事だというふうなご指摘もあったと思います。
何というか、ジョブコーチの制度化とかいろいろなご説明の中でもご提案はあったと思いますけれども、こうした人材をしっかりと機能、何というか、育てていくために国として特にやるべきことについてお聞かせいただければと思います。
○委員長(山田宏君)
若尾参考人、挙手の上、お願いします。
○参考人(若尾勝己君)
はい。
ご質問いただき、ありがとうございます。
国の方からの支援としてどのようなことがっていう点でお答えさせていただければと思うんですが、前述のように機会提供の仕組みづくりを実現できるような検討の場というのを是非お願いしたいというふうには考えています。
これもやっぱり継続的にそういうことが検討できるような場がなかなかないので、こういうことが引き続き行っていけるような機会提供が必要だというふうに思っております。
それから、就労支援専門人材の養成の枠組みというのは、障がいのある方の側に立ったときに、これは労働か福祉かという観点ではないはずなので、今まさにお進めいただいているような労働と福祉の施策が連動していくような機能強化というのが私は必要だというふうに思っていますので、是非これもしっかり進めていただけたらなというふうに感じているところです。
それからもう1点は、障がい福祉、障がい就労支援の人材の交流制度というものもあってもよろしいんではないかというふうには感じています。
私も、実は福祉が出発点で約20年近くその福祉の業界にいたんですけれども、労働の業界に入ったときに、やっぱり目からうろこということを感じたことがありました。
そこの人事間の交流みたいなものも制度の中で少し検討していっていただけると私は非常に有り難いというふうには思っているところです。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
次に、藤井参考人にお伺いしたいと思います。
ご説明の最後に、障がい者を大事にする社会、こうしたものをつくっていく、我が国をそうしたものにしていかないといけないという旨、お話をいただきました。
参考資料を見ていただきますと、NHKのインタビューでしょうか、公共交通機関、特にたとえば鉄道の落下防止柵の問題であるとか、まあ様々幅広い活動をしていただいているというふうに理解をしています。
やっぱり、今回の改正法もそうですけれども、やっぱり社会全体がいろんな、いろんなところでですね、特にインフラが大事だとは思うんですけれども、そうした包摂ができるような工夫をやっぱり少しずつ積み重ねていくということが大事かなというふうに思っております。
そういう意味で、その落下防止柵のお話以外にも藤井参考人としてこうしたところを改善していくべきだという具体的なご提案がありましたら教えていただければというふうに思います。
○参考人(藤井克徳君)
どうもありがとうございました。
今先生のご指摘、大変大事なことで、これに先立って今一体日本にどれくらい障がい者がいるか考えてみたいと思うんです。
手帳所持者が約964万人、認知症、これは高齢社会白書ですね、602万人、推定値、谷間の障がい、これは弱視や難聴や難病や発達障がい等ですね、つまり日常生活に支障がある方たちが、関係学会や団体の数は積み重ねますとほぼ1000万人を超えています。
合計2500万人ぐらい、つまり人口の20%が障がいを持っているということ。
そうしますと決してマイノリティーではないし、あるいはここにいらっしゃる方たち全員が亡くなる寸前は障がい状態をくぐっていくっていう。
そういう点でいうと、やっぱり少しこう想像力を発揮するということもとっても大事なことではないかな。
そういう点で、まだまだですね、意識の面でも政策の面でも。
ただ、ヨーロッパが人権問題成功したのは政策が先、意識が後。
つまり、私はずっとこれ弱視で、放置自転車につまずきました、放置自転車にね。
で、このことを外国人に話をしますと、ミスター藤井、駄目だと。
先にちゃんと巡回警備員がいるか、駐輪場十分にあるか、駐車禁止がちゃんと書いてあるか、立札が。
これを見て人々がはっと気が付くんだ。
こういう点においては、私たちの国はまだまだ、この政策が先、意識は後ということを、これをもっともっと考えていくべき点じゃないかなと、こんなことを今伺いながら考えさせられました。
以上です。
○こやり隆史君
ありがとうございます。
長谷川参考人、ちょっと時間がなくて聞けなくて、大変申し訳ありませんでした。
時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。
ありがとうございます。
○川田龍平君
立憲民主党の川田龍平です。
今日は参考人の方々、今日は本当に貴重なお時間使っていただき発言していただきましたこと、陳述いただきましたこと、ありがとうございます。
私から、まず初めに、辻本参考人と長谷川参考人、それから最後藤井参考人、もし答えられたらで結構ですが、お願いします。
厚生労働省が6月に出されました地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会、検討会の最終報告について、参考人の評価をお聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(辻本哲士君)
最初、プレゼンのときに話したんですけど、まだ途中だとは思いながら、熱意あってみんなそれぞれの立場で様々な人が様々な意見を言えたというところは非常に有り難かったと思います。
なので、私非常にポジティブに、続くものだと思って信じております。
以上です。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
私もほとんど傍聴して、あといろんな当事者の方とかいろんな方とその後いろいろやり取りはしましたけれども、やっぱり期待が大きかっただけに非常に残念な結果だったなというふうに思っています。
というのは、やっぱり障害者権利条約が批准されての法改正なわけですから、それにのっとった内容でなければいけないわけですけれども、それがなかなかそうなっていない。
あと、私なんかがやっぱり注目していた身体拘束のことに関してなどは、最初は限りなく身体拘束をゼロにするというふうな、そういう言葉が言われていたわけですけれども、最後いろいろなってみたら、不適切な隔離、身体拘束をゼロにするというふうに言葉が変わってしまい、そうすると、不適切なものをゼロにするのは当たり前の話であって、しかももうこれ言葉がそう固まってしまうと、今回厚生労働委員会でも質疑行われていますけれども、不適切なのが何件ですかと聞いても分かりませんというようになってしまう。
もうこういうふうに固められてしまうと、もういかんせんどうしようもない部分があってですね、何とかしていかなきゃいけないんだけれども、なかなか厳しい状況だなというふうには思っています。
○参考人(藤井克徳君)
詳しく全部精査したわけではありませんけれども、私のこの法改正をめぐる視点はもうはっきりしています。
つまり、長期入院、長期在院がこれで減るんだろうかとか、あるいは身体拘束がこれで減るんだろうかということ。
もっと言うならば家族負担が減るんだろうかということ。
こう考えた場合、やはり決して合格点はあげられないというふうに思います。
今言われたように、権利条約が批准されて、そして総括所見が出されて初めての法案審議です。
残念ながら、あの総括所見では長期入院という言葉を使わずに無期限入院という言葉を使っていますね。
ある面ではこういうことから考えても、やっぱりそれに応えるという点では、非自発性の問題にしてもそういう点では決して十分じゃない。
さっきもありましたけども、5月9日の日精協の会長の発言でこの厚労省の元々の原案自体曲がってしまったってこと、こういう経過を見ても、今度の法案の問題というのはやっぱり残念ながら問題と言わざるを得ないと思います。
はい。以上です。
○川田龍平君
ありがとうございます。
先ほどの検討会の話とですね、それから今、野村総研に委託している調査研究というのが今進められているということですけれども、この野村総研に委託しているこの研究も含めて、その委員というか代表者にはどういう人が入るべきだと考えるべきか、これ辻本参考人と長谷川参考人、藤井参考人、もし、お聞かせいただければと思います。
○参考人(辻本哲士君)
今情報いただいた野村のその調査がどのようなものか、私自身がまだよく把握していないので。
ただ、今回の検討会を考えると、やはり幅広くいろんな人々、当事者さんも家族も医療も保健も福祉も入る方がいいとは思います。
ただ、余り入り過ぎると、今回の検討会の話もそうなんですけど、話が大きくなり過ぎてなかなか議論にならないところがあるので、その辺はバランスを考えていただきたいと思います。
以上です。
○参考人(長谷川利夫君)
そうですね、先ほども申し上げたように、たとえばやっぱり、何か推薦を求める、団体とかに推薦を求めるというのが比較的公平公正なのかなという感じは思います。
あと、たとえば今回、衆議院の附帯決議なんかの中でも、たとえば精神障がい者の意見を聴きながらというのがありますけれども、その障がい者の方が増えていくこと自体、私もずっと、以前から、25人の検討会で当事者の方が2人でおかしいということをずっと言い続けてきました。
ですので、増えることはとても喜ばしいことなんだけれども、その増えるっていうのは、全て厚生労働省の方が選んでいくと、まあ言葉は悪いですけれども、ご用当事者みたいな人がどんどん入ってきて、なかなか本当の意味での当事者の利益っていうのがそこで発言されることがないというふうになってしまうというふうに思っています。
○参考人(藤井克徳君)
私は、政策っていうのは、何をつくるかよりも誰がつくるか、これは極めて大事な観点だと思うんですね。
最近の傾向として、企業のシンクタンク等にこうした検証も含めて調査が委ねられていると。
全部悪いかどうかは別としても、やはりこういう人権問題に関わってくる問題についてはもう少しやっぱり政府がきちんと考えるべきではないか。
今言ったように、審議会や検討会、調査のありよう、もう一度この辺で考えていただきたい。
私は、障がい当事者にしても、当然これは一定の割合を占めるとか、いろんな配慮が要るかも分かりませんけれども、あえてやっぱり異論、違った意見を持つ者という辺りを大事にすることも、やっぱり強靱な政策をつくっていく、あるいは、政策ができ上がった後の政策の帰属意識、この制度を育てていこうというふうな点からいっても、いろんな人が入るべきじゃないかな、かように思っております。
○川田龍平君
ありがとうございます。
その点からいうと、この今、精神保健福祉法に関して、特に検討会などで入る人選としてですね、法律家の人選、特に日本弁護士連合会とか、そういったところの意見が聞く機会さえ設けられなかったということで、これは意見書も出されておりますが、これについていかがお考えか、長谷川参考人、お願いします。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
私は、何で入らないのかが不思議でした。
要は、実務法律家の団体というのは日弁連しかないので、実際にその法律を作ることをやっているのになぜ入らないのかっていうのが全く理解できないです。だから、何か、言葉は難しいですけれども、何か排除しているのかなというふうにすら感じていましたし、議論をすることによって次のステージに行くっていうんですかね、いうものだと思いますし、議論を深めるためにも、きちんとその実務法律家の意見を聞いたりとか、様々な立場の人が聞くと。
そして、ちょっと一つさっき言い忘れたんですけども、たとえば、意見が異なるとまとまらないからということを厚生労働省の方はよくおっしゃるんですよね。
まとまらないからじゃなくて、意見が異なるのは当たり前なので、きちんと誰が反対し、誰が賛成して、こういうことだったと、でも、結局最終的に決めなきゃいけないのでこうしましたよということが説明できるまで、説明できるところまで持ってこなければいけないと思いますし、そこをスルーしてやろうとするので、最初からうまくまとめてくれそうな人が入るということは、結局は政策が練られないし、それは最終的には公益に反するものじゃないかなというふうに考えています。
○川田龍平君
長谷川参考人にもう1つ。
今回の改正案で創設されることとされているこの入院者訪問支援事業について、この指定医の問題もありますけれども、その点についていかがお考えでしょうか。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
精神科病院は、閉鎖病棟があったりとか、更にその中に隔離室があったりとか、非常に閉鎖的なところなので、様々な外から人が入っていくということが非常に重要だと思います。
私も初め、新潟の精神科病院に勤務して、そのときに、もう就職してすぐに市民団体に入って、新潟県内の精神科病院を回り、それから病院協会の職員の立場でも回ったりとか、回りました。そうすると、やっぱりもう特に閉鎖的な空間なので、人が、違う人が入ってくる、職員以外の人が入ってくるということだけでも非常にプラスだとは感じました。
したがって、この制度が100%悪いとは思わないんですけども、ただ、先ほど述べたように、誠実に話を聞くとか、その精神科病院の協力を得てというのは、それはこの制度を入れるためにはしようがないということなんでしょうけども、何かむしろ私は、実際に亡くなっている方とかご遺族からとかから非常に直接電話をいただいたりとか、公開している携帯番号にいろんな当事者、入院されている方からお電話いただいているので、そういった方は、やっぱりきちんと法的に対処しなきゃいけない問題というのは非常にたくさんあると思うんですよね。
何かそれが抜け落ちていくというか、何か逆にそれが緩衝材になってしまって本当の法的な問題が置き去りにされてしまうということを危惧はしています。
○川田龍平君
じゃ、長谷川参考人にもう一つ。
衆議院の厚生労働委員会が精神科病院見学を実施するということで、私たちも、国会議員が精神科病院内の実態をもっと知るべきではないかと、精神科病院で勤務していた看護師の方もいますけれども、あちらに委員もいますけれども、是非実際知ることが大事ではないかと思うんですが、いかがですか。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思います。
まずは、百聞は一見にしかずで、中に入ってみる。
そうすると、まあまずにおいがどうなのかとか、何か、私なんか、最初銀行員をずっとやっていたんで、その後、精神科病院の閉鎖病棟入ったら、何か2時間ぐらいで髪がべたべたになっちゃったりとか、何かすごく何だろうと思ったりしたんですけども、そういうことを含めて、入るのはすごいいいことだと思います。
ただ、そのときに、やっぱり厚生労働省がアテンドするのかもしれないですけども、そうすると、もうそこで入っていくときっていうのは、もうこれ以上の準備はない準備をして迎え入れるということになるわけですね。
ですから、それを見て、ああ、これが精神病院なんだ、精神科病院なんだというふうに思われては実際は困ると思います、SOSの電話とか私のところに来ている本当の実態があったりするので。
そうすると、せんだっても加藤厚生労働大臣が、精神科病院に私も行って、何か職員の皆さんは一生懸命働いていますということを言われていて、何かそちらの方だけの話になってしまうとちょっと違うのかなと。
あと、やっぱり厚生労働省さんに近いところじゃなくて、本当にもっと地場でやっているいろんな病院がありますので、もしかしたら手分けして違うところに行って意見交換してみるなんていうのもいいかもしれないというふうに思いました。
○川田龍平君
じゃ、辻本参考人と長谷川参考人、またお聞きしたいと思うんですが、この精神科医療を考えるときに、精神科病院の従業者の水準を低く定めているいわゆる精神科特例、これについて、これへの医療への影響についてどう思いますか。
○参考人(辻本哲士君)
ご質問ありがとうございました。
現実的には、そこは解消されているというふうなところなんですが、現場ではやはりその辺は厳しいと感じてます。
元々、一般科は医政局にありまして、精神科のみ社会・援護局というところら辺の位置付けも、もうちょっと見直しというか考え方を、まあ一緒にやってくれはったらいいんですけど、その辺も関係しますし、現場ではやっぱり精神科と身体科の連携をまだまだ取りにくい状況があるので、そういうのを踏まえて広い視野でもうちょっと一緒にやれるようになっていただけると有り難いと思います。
経済的なところももちろんなかなか厳しいところは感じます。
以上です。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
今回の厚生労働省の検討会の報告書を見ると、精神科特例は廃止されているというふうに書かれているんですよね。
非常にこれはミスリードをするものであって、それはその、精神科特例は厚生事務次官通知なので、それはもちろん廃止されたのかもしれないけれども、医療法改正でその基準というのは医療法の施行規則の方に入っているので、水準はその施行規則の方に引き継がれているということなわけです。
実際に、海外などと比べても、メンタルヘルスの医療従事者の数というのは低いわけですし、医師の数も低いし、あと看護の水準も低いし、それから看護補助者を看護として一部見ていいという基準すらも今残っている。
しかしながら、報告書でその廃止されているということだけを言うのは非常にミスリードで、しかも、それを何かだんだん、その何か作業療法士とか、そのいろいろほかの職種の名前を挙げて報告書には書いてあって、それは看護とかでなければやらないケアなので、それは入れなきゃいけないので、極めて差別的な待遇だし、これはもう一刻の猶予もないというふうに思っています。
○参考人(辻本哲士君)
すみません、言い忘れました。
私は患者さんの話を聞くために精神科医になったんですが、現実的にゆっくり話を聞くというところが持てません。
だから、そういうところも検討いただける、精神科医が精神科医らしい仕事ができるような場が欲しいとは思っています。
以上です。
○参考人(長谷川利夫君)
すみません、1つ言い忘れました。
私が行った調査研究で、1407名の医療従事者に行ったアンケートで、今よりも医療従事者が多ければ隔離や身体拘束は減らせるかというふうに聞いたのがあります。
そうしましたら、6割以上のスタッフが減らせる方に回答しました。
ですから、これは実は精神科特例というのは、医療従事者が仕事がしんどいということのみならず、一番大事なその患者さんの方にしわ寄せが行っていて、日本に生まれてしまうと、海外に生まれていたら身体拘束されないのに、日本に生まれたら身体拘束されてしまうというふうなことすらも起こっているということで、人権上はもう極めて問題だというふうに考えています。
以上です。
○川田龍平君
藤井参考人からも先ほど参考人の発言の中でありましたが、本当にこの歴史的なやっぱりこの精神科における、精神医療におけるそういった問題点あるんだと思います。
私も、東京の小平市という萩山団地というところに住んでいたんですけど、隣が武蔵療養所と、今、精神・神経センターと言われていますけれども、本当にあの地域は非常に精神科病棟多いですので、精神科の医院が多いですので、非常に近くにはあったんですけれども、なかなか中にまでは入ることはもちろんできなかったですし、畑とかそういうようなところは遊び場になっているところもあるんですが、ただ、本当にそういう、近くにそういうのがありながら、やっぱりなかなかそこの中にまでは踏み込むことはできませんでしたので、是非いろいろとまた実際のところの現場をやっぱり見てみたいとは思っております。
それで、最後に、身体拘束、これを減らしていくためには何が一番大切と思われるか、長谷川参考人、辻本参考人、藤井参考人にお聞かせいただければと思います。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
もちろんいろいろあるんですけれども、まず、もう国が大方針をかける、作ることが第一です。
今回、その身体拘束を限りなくゼロにするという言葉が結局、不適切な身体拘束をゼロにするということで何もしないというふうなことになってしまった。
もうそのメッセージのマイナス要素はもう計り知れないものだと思います。
これはやっぱりニュージーランドなんかでもそうですけれども、やっぱり身体拘束を本当に減らしていった国というのは、まず国が減らすということです。
たとえば、都内のある病院で、ある病棟の看護師長さんがすごく頑張って、身体拘束をその病棟だけゼロにした病院があります。
ただ、その師長さんがほかの病棟に移ったら、そこの病棟、また身体拘束が復活しちゃったんですね。
これは何でかというと、病院がそういうなくすという大方針を立てていなかったからです。
だから、それはそのまま相似形の関係にあって、国がやっぱり大方針を立てない限り、現場はなかなか動かない。
まず、国がきちんと、先生方及びその厚生労働省が関与してきちんとそういう方針を立てるということが第一だと思います。
○参考人(辻本哲士君)
私は現場の臨床科医ですけど、みんな病院スタッフは頑張ってやっています。
一生懸命やっています。
患者さん思いにやっています。
なので、あっさり言うと、人とお金です。
そこをしっかりしていただきたいと思います。
以上です。
○参考人(藤井克徳君)
私は海外行くたびに精神科病院を見させてもらってきました。
答えは一つですね。
確かに、自傷他害等のときにどうするか。
取っている道はやっぱり人海戦術なんですね。
ぎゅっと抱き締める。手を握る。
私もずっとこの作業所をやってきまして、急性症状、病院に行く前に手をぐっと握っていると本当に、その代わり時間かかりますよ、もう空気が抜けていけるようにやっぱりそういうふうなあれは減っていくんですね、その急性症状。
やはり人が足りないから縛るということは、これは良くないし、何よりも本人がずっと覚えています。
やはり私は人手をきちんと確保することに尽きると、こう思います。
○川田龍平君
ありがとうございました。
若尾参考人、申し訳ありません。今日は質問の機会ちょっとできなくて、申し訳ありませんでした。
本当に精神科の方も是非、精神障がいの方にもやっぱりしっかり働く場をやっぱりしっかりつくっていくべきだということは、今回視察で、私たちの委員会の、当委員会の視察で銀座の無印良品でしたっけ、良品計画でしたっけ、良品計画に行ってきましたけれども、本当にその精神の人たちがしっかり働ける場をやっぱり確保していくこと、本当に大事だと思っております。
今日はちょっと質問の時間が終わってしまったこと、申し訳ありません。ありがとうございました。
皆さん、ありがとうございました。
○窪田哲也君
皆さん、こんにちは。公明党の窪田哲也でございます。
今日は、師走の忙しい中で4人の参考人の皆様に当委員会にお越しいただきまして、意見を伺うことができました。
大変にありがとうございました。
今後の障がい者施策にしっかり生かしてまいりたいと、そのように思っております。
初めに、辻本参考人に是非聞かせていただきたいと思うんですけれども、私は、医療とか福祉の専門家じゃございませんで、つい最近まで新聞記者をしておりまして、32年間、主に地方の記者をしておりました。障がい者の皆様の声もたくさん伺ってきましたけれども、その中で障がい者の問題で大きく感じたのが、やっぱり地域によって、自治体によって格差が非常にあるなということを実感しているんです。
その辺について、センター長会会長の立場として是非お聞かせいただければと思うんですが。
○参考人(辻本哲士君)
ご質問ありがとうございます。
確かに地域格差はある。
分かりやすいのは措置入院の患者さん数だとか、その辺もかなり自治体によってばらつきがあります。
それは地域によっての強さ弱さがあるので、ある程度国民がそれでちゃんとサポートされていたらいいと思うんですけど、それぞれで法律の使い方が違うというのはおかしいとは思います。
なので、そこはできるだけ均一化というか、たとえばうちだったら手帳だとかそういう審査会だとか全国共通になるように、かつ、精神保健福祉センターはみんな仲よくやっているので、今回のコロナのときでもメーリングリストを使うだとか、良い対応だとか難しい対応とかいった、活発に情報交換しています。その中でどの自治体も均一になるように、均一というのは同じというわけではなくて、みんなが幸せになれるようなところを地域の力量に合わせてつくるようにしている。その中でやっぱり精神保健福祉センターは中核的な役割を担っていると思うので、バランスよくやっているように感じております。
以上です。
○窪田哲也君
今回の改正で、1つが、この基幹相談支援センターの設置の、自治体が、市町村が努力義務を、義務化するということが大きなポイントだと思っています。
これまで一応置くということにはなっていましたけれども、なかなかこれが全国全市町村には行き届かずに約半数にとどまっているわけですけれども、その半数にとどまってきたその一番の大きい原因は何なんでしょう。
○参考人(辻本哲士君)
ありがとうございます。
相談事業所が基幹でやっていくというのはそれでいいと思うんですし、1つは、その市町、市町村等の窓口とそこの基幹のところをどういうバランスでやるかは1つの課題だと思います。
ただ、ある意味、民間さんがやっていくというところと公的なところがやられるというバランスだと思います。
なので、力のあってるそういう相談支援事業所はできますけど、なかなかどこでもそういう事業所があるとは限らないので、そこは行政がちゃんとサポートしていく必要があるんじゃないかなと考えております。
以上です。
○窪田哲也君
引き続き辻本参考人に是非お聞きしたいと思うんですけれども、今回、努力義務化されて、午前中の本会議では、厚労大臣の方から、我が党の三浦議員の質問に対して、全国の市町村に相談、基幹相談支援センターを設けていくという答弁もありましたけれども、これ、進めていく上で一番大事なポイントはやはり予算措置、人材の確保等になってくると思いますけれども、その辺についてポイントを教えていただければと思います。
○参考人(辻本哲士君)
重層的な支援というか、そこだけに丸投げするんじゃなくて、みんなでやっていくよと。
で、すぐにどこもできるはずがないので、期待持って良いところ伸ばして、だんだん任せていくだとかバランスを変えていくだとか、スタッフも違うので、つくって終わりじゃなくて継続的にみんなで顔を合わせて現場で関係性を持って鍛え合っていく、学び合っていく、そういう姿勢だと思います。
以上です。
○窪田哲也君
ありがとうございます。
さらに、辻本参考人に重ねてお伺いしたいと思いますけれども、滋賀の取組、私も読ませていただきましたけれども、最初に入院時カンファレンス、そしてアセスメントシートによる評価、そして3つ目の特徴としては退院前カンファレンスということで、この3つの段階が非常に大事だということで書かれておりましたけれども、この成果、その滋賀の成果で目立つものといいますか、その辺についてちょっとお伺いできればと思うんですが。
○参考人(辻本哲士君)
なぜ、医療が中断するのか、治療が中断するのかを考えると、やはり人と人との信頼性だと思うんですよ。
患者さんも、それだけ丁寧に入院とか途中とか退院のときに多くの人が関わってくれはったら、その病院だとか関係機関を信頼していくというか、困ったときには相談すりゃええということを身に付けていくと思うんですよ。
で、そういうのをしていくと、医療の中では、再発率というか、再入院が抑えられるようになります。あるいは、たとえ状態が悪くなって入院になっても、強制入院にならない、非同意入院にならずに、分かりました、ちょっと休みますわという形の入院になります。としたら、人権上にも問題ないわけなんで、ちゃんと地域の中で医療者と保健福祉関係者と患者さんが信頼関係を地域でつくっていくことだと。それがうまくいくと、いい町ができていって、患者さんも支援者もみんなハッピーになるんだと思っております。
以上です。
○窪田哲也君
引き続き辻本参考人に伺いたいと思います。
今回の改正案に対して賛成の立場から今日はご意見を伺いました。
その中でも特に入院者訪問支援事業について期待をされているということなんですけれども、私、この入院者訪問支援事業、この中で、都道府県知事等が行う研修を修了した入院者訪問支援員が、患者本人の希望により精神科病院を訪問し、本人の話を丁寧に聞くと。
患者本人の希望によりというふうになっているんですけれども、この希望と、本人の希望をきちんと捉えていくことができるかどうかというのが私は大事なポイントかなと感じるんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(辻本哲士君)
この入院事業、事業については検討会でもかなり議論がありました。
で、皆さん、案が変わっていってるやんというふうに言われますけど、案が変わることは、相談したらいろんな意見が出て変わってくるのは当然だと思うわけです。
より良い議論をするから変わるわけで、最初からそのままでいくんやったら議論しなければええと思うわけです。
その中で、いろいろ変わっている中での今回の落としどころとしては、会うということになりました。
背景には、やっぱりアドボカシーというところで患者の権利とかをもっとオープンに病院に伝えていくという案も出たり、いやいや、やっぱり風を通すだけでもまずは始めてみようかという案も出たり、それはいろいろなところで、現段階としたらまずは会うところから始めていこうと。
で、そういうところに落ち着く中で、先生おっしゃるとおりに、誰がそれを言うんやと、どの役目の人が、病院のスタッフやったらやっぱりそれはというところがあるので、そこの最初の説明は丁寧にやろうよと、指定医がちゃんと責任を持ってやろうよとか、その辺も含めて、今まで先進的にやられている自治体もあるので、そういうノウハウを得ながらまずはちゃんと始めていこうよということから今回は収まっているんだと思います。
以上です。
○窪田哲也君
その上で、引き続きお伺いしたいと思います。
入院者訪問支援員の適性というのは私大事だと思うんですけれども、今悩みも複雑化、多様化、多岐化していますけれども、これをきちんと捉えていく支援員、その育成についてちょっとご意見伺えればと思うんですが。
○参考人(辻本哲士君)
正直言って、滋賀県もこれからどうしていこうかというのは悩むところです。
ただ、基本は傾聴ですから、しっかり患者さんの立場に立って話を聞くという人が、まずその視点を持っている人です。
それと、やっぱり守秘義務をちゃんと持っているという方々をちゃんと研修して、患者さんの立場に立つなりできるような研修をすることが重要になってくると思うので、そこは先進地が幾つかありますから、そこを学びながら、全国でばらつきなくやっていければいいなと思っています。
以上です。
○窪田哲也君
ありがとうございました。
続きまして、藤井参考人に伺いたいと思います。
今日はありがとうございます。
藤井参考人の方からは、今回の法案の束ねであるというそのことに対しての懸念を伺いました。11月の10日の緊急声明でも、このことを声明で発表されておられます。
その中で、この声明の中で、評価できるものと課題の残る法案を束ねて提出している束ね法案、これには非常に危惧を持っていると、そういう趣旨のことを言われております。
評価できるものと課題の残るもの、このおっしゃっておられます評価できるものというのはどういった部分でしょうか、是非伺いたいと思うんですが。
○参考人(藤井克徳君)
こうして法案を見てきますと、全く全部おかしいとか全部いいということはなくて、それはそういうことはあると思うんですけれども、たとえば、今おっしゃったように、精神病院を訪問するということなんかは、私はどう考えてもそれは発展した形だと思うんです。
ただ、今、辻本参考人のことに加えて言うならば、訪問した後どうするのかということ、その結果につながるようなことになってくるのか、単なる形だけ訪問という形をつくったのか、あるいは本当にピアカウンセラー当事者が一緒にそういうところに行けるのかどうか。
私は、かつての検討、実践の中で、当事者が病院を訪問すると本当に患者さんは勇気が付けられるんですよ、私も働こうと。
そういう点でいうと、形は、この今の問題だけでも形は1歩前進。
ただ、この国というのは1歩前進2歩後退というのは結構少なくない。
そういう点でいうと、本当にこのことだけでももっともっと深めるべきであったり。
もちろん、その就労のアセスメント、これもいろんな面で検討会経て考えてきたその方法で、やはりこれも、若尾さんおっしゃるように、大事なことかと思います。
そういう点でいうと、評価というか発展をしているなという点では、それはそう私も思います。
○窪田哲也君
大変にありがとうございます。参考になりました。
続きまして、若尾参考人に伺いたいと思います。
コロナの中でジョブコーチの役割も非常に大変だと思うんですけれども、特にここコロナ禍の中でのジョブコーチの役割の変化ということについて教えていただければと思います。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問ありがとうございます。
ジョブコーチの支援そのものは、職場に訪問して、その障がいのある方の適応状況を調整していくということが基本的には役割となっております。
私どもが言っているそのジョブコーチは助成金の制度に起因するジョブコーチというふうに考えておりまして、そうしますと、この助成金に適応しているこのジョブコーチは、職場外での支援は全く費用負担、これ持ち出しという形になっておりました。
このコロナの状況下の中で、自宅待機になっていた障害のある方が非常に多かったですね。
ところが、安定的にこの生活を維持していくためには、職場にいないから支援をしないというわけにはいかなかったのが現状なんです。
そういう意味では、ジョブコーチも、家庭に訪問したり、それから家庭に連絡を取ったりと、助成金の対象にならない事業をやっていたというのは事実です。
ただ、途中から運用上の変更ということで、コロナの範囲の中であればそういう支援についても助成金の対象にしていただけるということになったので、その以降についてはそういう活用をさせていただいたところでした。
職場外の支援についても、やはり職場に定着していくための支援としては課題として残っているんではないかと。
そういう意味では、ジョブコーチ以外の制度なんかを少し広げていっていただくことは私は必要ではないかなというふうに感じているところです。
○窪田哲也君
参考人は、引き続き若尾参考人、ジョブコーチの国家資格化ということを先ほど言及されましたけれども、もう少し具体的にイメージを湧くように教えていただければと思うんですが。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問ありがとうございます。
今は、その助成金の活用をするために、1つの要件として職場適応援助者養成研修を修了するということが必須になっております。
ただ、今のその助成金を活用したジョブコーチの利活用状況は、これはもう本当に減少の一途をたどっていて、なんですが、実は職場の中で適応援助する役割というのは非常にニーズとしては高まっているのが現状ではあるんですね。
そういう意味では、この国家資格化を、長い道のりかもしれないんですが、国家資格化を目指すことで、実はその就労支援やジョブコーチを目指そうという人材を多く輩出していっていただけるような仕組みというのが、私はその国家資格化の必要性だというふうに思っているところです。
以上です。
○窪田哲也君
ありがとうございました。
長谷川参考人に伺いたいと思います。
身体拘束の問題で、読ませていただきますと、ちょっと私、興味持ちましたのは、この身体拘束が行われている東西格差ということについて書かれておりました。どちらかというと東の方が拘束率が高くて、西の方が低いということで書かれておりましたけれども、その要因というのはどういったところにあるんでしょう。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
そこのところは非常に分析が難しくて、本当、こうじゃないかというふうに推測するしかないんですよね。
私の実感としては、割と東日本の方は、割とその精神科救急という病棟で、かなり、入院したら結構最初にまず身体拘束をして、そして徐々に解除していくというやり方が結構広まったなという感じを持っていて、比較的その考えが東日本の方に多くあるんじゃないかなというふうな感じはしています。
あと、これ、いろんな話があって、いや、西日本は軽い人が多いんだと、病床数が多いので、そういうふうなことを言う方もいるんですけれども、それはデータ上は必ずしもそうじゃないと思っています。
あと、もしかしたら、職員と患者さんのその距離みたいなところとか、割と関西の人の方が結構比較的物を言うとか、西日本の方が結構言いやすいとか、何かそういうことがあるんじゃないか。
いろいろあるんですが、ただ、これは本当、すみません、あくまでも推測の域を出ないんですが、ただ、本当にきれいに東日本と西日本で身体拘束率の差が出ていて、まあ十倍、年によっては20倍ぐらいの差が出ているので、逆に言うと、東日本はもう少し減らせる部分があるんじゃないかなという見方もできるんじゃないかというふうには思っています。
○窪田哲也君
今おっしゃいました東の方が減らせるんじゃないかということなんですけれども、この現状、東と西でそのような違いがあるということは、東の方が減らしていくことができるという、どのようにやっていけばというか、なかなか原因がつかめていないんですね、原因が、原因がつかめていないんで。
○参考人(長谷川利夫君)
そうですね。
ですから、原因が特定できないので、東日本を減らすためにこの策がいいというところも出てはこないんです。
だから、総体的に、全体的にやっぱり縮減を目指すというところがあった方がいいと思います。
そのときにやっぱり注意しなきゃいけないのは、身体拘束は治療なんだというふうに言われる場合があるということです。
それは、ただ、少なくとも、精神保健福祉法の考え方とか、これはたとえば37条1項基準という130号の大臣告示は、これは処遇の基準として定めているので、身体拘束は治療ではないというふうに言っていいと思います。
しかしながら、たとえば東日本のある思春期の人を預かっている病棟なんかでは、やっぱり非常に、この間も中学3年生の14歳の女性が77日間身体拘束をされて、摂食障害でされて、それで裁判になって、一審は原告勝訴ですけれども、二審、控訴審でちょっと敗訴したというのがありまして、そういう何かまた思春期の方に対しての身体拘束というのは、これはある説によると何か育て直しというふうな言葉もあるらしく、身体拘束を治療的に用いて、そしてある意味ちょっと支配に近いような、それはちょっと行動療法的な意味合いがあるらしいですけれども、そういうふうに身体拘束を治療的に利用、使うんだというふうな考え方も間々あったりとかして、それはもう許されない状況なのではないかなというふうには考えています。
○窪田哲也君
大変参考になりました。ありがとうございました。
○東徹君
日本維新の会の東徹でございます。
まず最初に、藤井参考人からお聞かせいただければと思います。
私もかねがね問題だなと思っているのが、この精神科病院のことであります。改めてその状況をお示しをいただきました。
平均在院日数が、まあ精神科が283.5日ということで、海外との日数を比べても非常に圧倒的に多いであるとか、入院期間が5年以上に及ぶ方が80786人、そしてまた、精神科病院の病床数ですけれども、322011床あると、こういうことで、OECDの加盟国の占める日本の割合は37.1%というふうなお話でありました。
このお話の中で、構造改革をすべきではないのかというふうなお話があったかと思うんですが、その構造改革のどういった改革をやっぱりやるべきだというふうにお思いなのか、あれば教えていただければと思います。
○参考人(藤井克徳君)
私は、やはりこの精神科医療だけが特殊な道を歩んでいる、医政局で、つまり医政局との関係で、やはり一般医療に準ずるということね。そうしますと、私は、医療法にやっぱり位置付けると、基本的には。
医療法に位置付けて、一般医療全体の中にきちんとベースをつくる。
その上に専門的な精神科医療ということが、まあ言わば2階建て構造ですね。
したがって、精神保健福祉法完結ということは、やっぱり独自の道を強めていくんじゃないかな。
1つは、そういうふうな意味での構造的という問題が1つです。
差し当たっては、繰り返し言っていますけれども、この精神科特例ですね。
これは、差別医療だけじゃなくて、少ない陣容で見ると、どうしても薬を多く使ったり、閉鎖性が強くなっていくってこと、なるわけなんで、やはり人権って問題から含めると、まずはこの精神科特例を、制度面は消えたけども実態は残っているわけですから、これを変えていくってこと。
そして、今おっしゃっていただいた、322011床という一番新しいデータですけども、これ一体いつの水準でしょうか。
1982年が320068床なんです。40年間1度も32万を割っていないんですよね。
ずっとこう同じ位置を保ってきてしまったってこと。
最後に、今の精神科病院の病床は32万ベッドだけども、利用率はとうとう82.4%まで下がりました。
そして、80%割っている都道府県が、12府県で80%割っちゃったんですね。
このまま行ったら自然衰退、恐らくそうなるでしょう。
私は、決してこれは悪い数字じゃないと思うんだけども、ただ自然衰退で行くんじゃなくて、やっぱり意図的に、政策的にきちんとけじめを付けるという点で言うならば、ああ、待っていれば減っていくんだなってことではいけない。
そういう点で、ただ減っていくことを見るんじゃなくて、明らかにこれはやっぱり誤っていたんだということも含めてきちんと政策上のやはり減少、減っていくんだってことを、こんなことも申し加えておきたいと思います。
以上です。
○東徹君
ありがとうございます。
辻本参考人は、この病床数、日本が突出して大きいということについてどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
○参考人(辻本哲士君)
質問ありがとうございます。
医者の感覚からしたら、精神障がい者が世界でそんな違う国がたくさん入っている、日本だけにおいてはあり得ないと思うので、同じ比率があるとしても、やっぱりその人の支援というあり方というのは国によってやっぱり違うと思うんですよ。
だから、今回いろいろ病床数のこともありますけど、それは多いにしても、そういう、ほかのところは少ないなりに何か工夫しているとは思うんですわ。
その辺の工夫をちゃんともうちょっと、私も最初のプレゼンで、取り入れて、どういう工夫をしたらいいのか、そういうのを考えていっていただきたいなと思います。
これは、日本の国内でも精神科の病床数だとか病院数はばらばらです。
どっちかというと西日本の方が多くてというところも、それも何で精神患者さんがそっちだけ多いということはあり得へんので、それはそれで、それが絶対あかんとは思わない、国民が、その県民がそれで幸せになってハッピーなら正しい病院の使い方したらいいとは思うわけですよ。
だから、そこら辺をもうちょっと分析する必要が、必要じゃないかなと思います。
まあある意味、本体で言ったんですけど、薬物療法だとか心理療法とかは海外行って学んで帰ってくるんですけど、こういうふうな情報というのはなかなか取りにいけないし、まあ言うと、医療としてもうからないとか実務にならない、行政的なところは学びが多いけど、なかなかそこをやってくれる研究機関だとか大学とかはないので、そういう情報を持っていただいて、全国、全世界のグローバルスタンダード、どういうふうにやっているのか、入院しないけど家にいはんのかとか、法律に関しても法律家はちゃんと入っているのか入っていないのかとか、そういうのはもうリサーチをもうちょっとちゃんとしていただきたいと思います。
以上です。
○東徹君
ありがとうございました。
長谷川参考人にもお聞かせをいただきたいと思います。
先ほどから厚労省の検討会のお話がありました。
本当に、私も見て非常に残念だなという思いをいたしておりますし、長谷川参考人のおっしゃるとおり、国会の審議というのは本当に、特に参議院なんてこの非常に今、会期末前ということでタイトな中で今審議をしているというような状況もあって、本当に国会というところは機能しているのかというふうに言われても仕方がないなと、こういうふうに思ったりも私もしておるところでございますが、長谷川参考人にその検討会のあり方、もう一度やっぱりこういうふうに変えてほしいというところをご説明いただければ有り難いなと思います。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
若干、すみません、重複してしまうかもしれませんが、チェックが利いていないんですよね。
だから、まあ私一本釣りってちょっとストレートに言っちゃいましたけれども、一本釣りで、そして行われて、それで、その検討会の進め方というのも、その文書がちょっとずつできて、その文書を各団体が持って帰って、その厚生労働省の人が個別に会って、どうですかどうですかって。
そのときに、あっちの団体はこう言ってますからこうしないと駄目ですよって、こっちの方にはあっちの団体がこう言っているからこうしないと駄目ですよって言って、情報がそれぞれ閉ざされた中で、結局みんな情報分かんないから、もう厚労省の思い描いたとおりにいっちゃうわけですよね。
だから、そういうところを、いや、もっと議会が叱っていいんじゃないですかね。
何かそういう、いや、それでいいのかということを言わないと、結局、いや、もちろん、すごく当然この人は入らなきゃいけないとか、これは当然入らなきゃいけない団体というのはありますよ。
それは当然私も否定しません。
でも、そうでないような、何でこの人入っているんだろうというのが、まあ過去なんかも結構何度もありまして、なぜこの人が入っているのって。
で、何かその人は、何かずっと発言を続けて、何か障がい当事者の利益を毀損するようなことばかりをたとえば言っていたような方もいたし、そういうことをだからそもそも許しちゃいけないはずだと思うんですね。
だから、そういう人選しかり、あと、その報告書をただ厚労省が持ち回って、思い描いた、当初から描いているゴールに持っていくというんじゃなくて、そこについてももっと開示しろと。
あと、検討会もそうなんですけれども、先ほどの野村総研の研究とかでもそうですけれども、結局いつの間にかお金が付いて、そしてそういう一定の方向に導くための研究が立ち上がっていたりとか。
私なんかは、とにかく実際こういう人が亡くなったりしている話を直接聞いて動いているので、もう本当おっかなくてしようがないんですよ。
だから、そこにやっぱり議会がちゃんとチェックしていく、定期的に。
そういう、聞くだけでもいいと思うんですね、まずは。
そういうのがすごい大切なんじゃないかなというふうに考えています。
○東徹君
ありがとうございました。
時間ですので終わらせていただきます。
○松野明美君
日本維新の会の松野明美と申します。
本日は、大変お忙しい中、ありがとうございます。
多分お一人になるかもしれませんが、藤井参考人にお尋ねをいたします。
先ほどご説明をいただきました中に、障がい者雇用代行ビジネスというお言葉がありました。
やはり、代行ビジネスは法定雇用率を達成することがやはり目的になってしまいまして、特に大企業が、代わりに障がい者の、他社に雇用とか全部を、全般を任せて、そのところが対価を得ているというところで、まあ私の障がい者雇用の姿とは全く違うんですが、国にも言いましたところ、違法ではないと。
ただ、実態調査はやっているらしくて、ただ、国は何もできないような今状況にあります。
私が、実際にあるのが、水耕栽培をやっていらっしゃって、障がい者がいろんなところから集まって仕事をされていました。
どうして何もおっしゃらないのかなと思いましたら、1か月の給料って一般就労ですから、1か月の給料が17万円いただいているということで、ああ、そういうことで何もおっしゃらないんだなと思ったんですが。
この辺り、私は、違法ではないけれども、やはり障がいがあってもなくてもその大企業の中で一緒に働くことが啓発にもつながっていく、共生社会にもつながっていくと思いますが、その辺りどのようにお考えでしょうか。
○参考人(藤井克徳君)
今度の衆議院のこの本法、今回の法律の審議の中で附帯決議が出まして、その第12項目めにこの障がい者雇用率、代行ビジネスについては懸念を示していると。
それから、国連の今度の総括所見と一緒に出されました労働及び雇用の一般的意見の第43パラグラフにも、これについては厳しく意見を言っています。
これ、大変これは難しい問題というふうに言われていますけれども、おっしゃるとおり、違法ではない、でも脱法であるというふうな、そういうふうな評価もあります。
やっぱり基本的には障がい者の雇用というのは本体事業できちんと位置付く、これがインクルーシブ雇用の基本であって、ぽおんと預けちゃって、一切本社には出社しないと、そしてビニールハウスで何やってもいいんですと、でも給料出します、で、会社としては、納付金は格好悪いからうちで雇っている形になっているということ。
これはどう考えても、これは国連が言っている、先ほど言った一般的意見の中で、フェイクエンプロイメント、つまり偽装雇用と、こう言っているんですね。
なぜそう起こるかというと、やっぱりこの国は、まあこれはこれで意味があったかもしれません、一定の時期はね、やっぱり雇用率至上主義、とにかく雇用率を上げるんだと。
この国、ずうっと1977年からそうなってきたんだけれども、たとえば途中で重い障がい者はダブルカウントとか、いろんな形でやってきたという結果があるわけなんです。
改めて、この雇用率至上主義からやっぱり雇用の質の問題、クオリティーですね、やっぱりここにもう一回光を当て直すということを含めて、単に、私は、この問題というのは、現象的な代行ビジネスだけじゃなくて、この国の障がい者雇用促進法全体をもう一度立ち止まって考えるという警鐘じゃないかな、こんなふうに考えております。
○松野明美君
ありがとうございます。
本当に雇用は、雇用率は進んでいるような感じがしますが、やはり法定雇用率を達成しているところというのは大概大企業で、中小企業は1人も雇用していない、障がい者を雇用していないところが全国でも32000件以上あるということで、なかなかやっぱり中小企業は体力がないとおっしゃるんですね。
雇用したくてもなかなかその障がい者を雇用するまでの体力がありませんとおっしゃるんですが、その辺り、やはり共生社会に向けてはやっぱり中小企業が頑張っていただきたいなと思うんですが、その辺り、何かありますでしょうか。
○参考人(藤井克徳君)
今、障がい者の労働年齢人口は378万人います。このうち就業している者、これは雇用促進法、それからA型、B型含めてですね、133万人、34.4%、就業率。
一般の国民は78.7%。やっぱり異様に低いんですね。
こういう中でどうするかという点でいうならば、やっぱり委員もおっしゃったように、1つは、まさに中小零細企業等も含めて、やっぱりそこへのやはり特別な政策上の後押しがやっぱり要るんではないかなと。
今日、具体的にはまだ案を申し上げられないけれども、障がい者の雇用率、就業率は異常に低いんだということをまず知っておいてもらう。
したがって、今おっしゃるとおり、そこの部分はどうするのかと同時に、知的障がい者の正規雇用率は2割切っています。
働いてもみんな非正規なんです。
このことも含めてその率を上げていくという問題と、先ほど、繰り返しになりますけれども、雇用の質の問題ですね、正規職員への道も含めて。
それから、B型事業なんかでは、ヨーロッパの一部がやっているのは賃金補填ということも含めて考えている。
つまり、B型が低いんだから、代行ビジネスはまだましでしょという論法。
それをやはり乗り越えていくという政策上の後押しも要るということを付言しておきます。
はい、以上です。
○松野明美君
すみません、最後になります。
もうお一人です、藤井参考人。もう一問だけお願いいたします。
いただきました資料の22ページに、障害者権利条約の初めての、スイスのジュネーブで障害者権利条約に基づきまして初めて審査を、日本の審査が行われたということなんですが、本当に、ここに代表談話というページを読ませていただきまして、本当にそうだなと思いました。
日本は、やっぱりほかの他国に比べると、障がい者のその共生社会に比べてはもう40年も50年も遅れているというような感じがしますが、その辺り、これから私たちが訴えていくためにはどのような形で訴えていったらいいのかなと思っております。よろしくお願いいたします。
○参考人(藤井克徳君)
そうですね、いろんな点で考えなくちゃいけないし、たとえば、今回のジュネーブは、政府からも28人の代表団を送って、もちろん政府も意見を述べたわけですよね。
しかし、残念ながら、権利委員会からはかなり厳しいジャッジメントを下される。
今こうしてもうぱっと答えられるのは、2つ述べておきます。
1つは、家族依存からの脱却ということ。
お分かりのように、日本の民法のこの家族制度、何と明治31年に家族制度でき上がっています。
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。
障がい持っていなければ、最初、親がこう、いずれ子供が親をという扶養循環になるんだけれども、障がいを持った場合にはほとんどが、親が最後までと、この子よりも一秒遅く死にたいと、やっぱりこのことをどうするのかと。
このことは、なかんずく結果が公的責任を曖昧にする温床になっているということで、ここのやはりところをみんなで考えていくということが1つ。
もう1つは、何といっても、自立の基本はやはり経済基盤なんですね。
これは、企業でも団体でも自治体でも国家でもそうです。
障がい者の場合には所得保障が極めて少ない。
可処分所得見てきました、今、127万円。
障がい者の多くがこの可処分所得、相対的貧困線ですね、相対的貧困線、127万円、この中にほとんど、以下に全部閉じ込められているという点でいうと、私は、この家族の扶養義務の重さと、そして本人の経済活動が営める所得保障問題、これはとっても基本じゃないかなと、このように思っております。
○松野明美君
大変ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
この際、委員の異動についてご報告いたします。
本日、石田昌宏君が委員を辞任され、その補欠として若林洋平君が選任されました。
○芳賀道也君
本日は、障がい者の福祉や就労、特に就労、特に精神障がいをご専門の方々にご出席いただき、ご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
まず最初に、辻本先生に伺います。
辻本先生は、長年にわたり精神科医療や精神保健福祉分野にご尽力されてきたと伺っておりまして、これまでの活動に敬意を表させていただきたいと思います。
先日、全国精神保健福祉会連合会、みんなねっとの岡田理事長と小幡事務局長にお話を伺いに参りました。精神科病院の長期入院が高止まりしている背景の一つに、認知症の患者も精神疾患によって精神科病院に入院している患者も一緒にカウントされている問題もあるという指摘もいただきました。
いわゆる精神疾患と呼ばれてきたものと認知症とは分けて考えるべきではないのではないでしょうか。
長期入院の集計も、認知症患者といわゆる精神疾患に分けてカウントし、法体系も認知症対策は精神保健福祉法とは別にすべきだというご意見もあるのですけれども、これについて辻本先生のご見解、いかがでしょうか。
○参考人(辻本哲士君)
認知症対策は大きな課題だと思います。
今のところ、医療計画等では認知症は精神のところに入っているんですけど、実際、支援の中で介護保険の中でも結構おられるわけなんで、精神科が診るか、一般科で診ていくか、それ両方の道があると思います。
ただ、逆に認知症の場合は、認知の問題だけじゃなくて身体の問題も、不調もあるので、身体の方はやっぱり身体科の方が得意だし、認知症に伴ういわゆる幻覚、妄想状態とか、うつというのは精神科が診るべきでしょうから、それはその人の、患者さん自身の個別のところがあるかなとは思います。
どっちにしても、その患者さん自身がハッピーでないと意味がないので、どっちに入れるかというのはまあ政治判断だと思うんですが、今後必ず課題になってくるので、高齢者のそういう身体と精神のことをどうトータルで見ていくかは皆さんで考えていただきたいというところなんですが、実際上は、最初にどっちに行ったかというところから始まって、これも言葉は悪いんですが、やっぱり精神科はハードルがあるというか、はっきり言うと偏見があったりするので、皆さん行きたがらないところと、身体科の方が多いかなと思います。で、そのうちにやっぱり、いろんな集団生活ができないということで精神科に回ってきておられるところもあるので、それはそれでまた人権の問題もあると思うので、今後トータルに考えていく必要があるというふうに考えております。
以上です。
○芳賀道也君
是非トータルで考えていけるようにご意見を生かしたいと思います。
もう一問、辻本先生に伺います。
先ほど、早期治療、早期支援が必要なんだと、精神の病はということでしたけれども、同じく、全国精神保健福祉会の方々からお話を伺った際に、精神疾患の知識をほとんどの人が持っていないゆえに、専門家から見ると、本人が精神科の治療を受けるべき状態になっていても、本人もその家族もそれに気付かず放置してしまうことが多くて、本当に深刻な状態になってからようやく本人も家族も精神病院に連れていく例が多いと。それから、医師に診てもらった方がいいかなと思って病院に電話をしても、病院側は、患者さんを病院に連れてきてくれるなら診ますという場合がほとんどで、なかなか本人も精神科への通院に応じてくれないということで、結局、実際に診察が遅れてしまう。保健所からも同じことを言われていることが多いと聞いていますが、このため、発症したと思われる時期から精神科医療を受けられるときまでのタイムラグが一年ある、1年以上あるというケースもあると聞きました。
ご本人が精神的に深刻な状態に陥る前に医師が訪問診療できるように、精神科の訪問医療に診療報酬の点数を加点するなどして、発症前にも予防しやすい体制などをつくるべきではないかと思うんですが、辻本先生のご見解はいかがでしょうか。
○参考人(辻本哲士君)
ありがとうございます。
まず、やっぱり精神科に対する偏見、スティグマがあるので、精神科に行くのは恥ずかしいだとか情けないとかいうふうなものはやっぱり早く取り除いていくと。
先ほども言いましたように、誰でもなり得るものなんですから、困ったら相談すりゃいいじゃんというふうに思うわけですよね。
それがまだまだスティグマが続いているので、そこは何とかしたいというところで、既に、心のサポーター事業といいまして、多くの国民の皆さんに心の健康とか疾患だとか在り方を広めていこうという取組が始まっているので、草の根的にそういう人々が増えたら偏見は減っていくだろうなと一つは思います。
それと、確かに早期発見、早期治療というのは大事なんですけど、本人さんが全く望んでいないのにずかずか行くのもどうかとは思うので、やはり今でも、保健所さんが入って家族と相談して、やっぱりこれ、何とか医療続ける、導入するのが必要なものに関しては私も行ったりしてケース検討したりとかするわけなんで、それはこちらからアウトリーチ的に行くケースもありますが、やっぱり正しい意味での敷居を下げると。
困ったらちゃんと相談しに行ける、それは別に精神科医でなければいけないとは思わないわけですよね。
近くに困っている人いたらみんなが相談する仕組みを地域の中でつくったらいいと思うんですよ。
だから、それはそちらの相談支援事業所だとか、そこで収まってくることもあるので、私ら精神科医が抱えるのはごく一部だと思っています、診断付けるだとか書類書くだとか。だから、その辺の役割分担を正しく地域でつくっていくことが大事かなと思っています。
以上です。
○芳賀道也君
ありがとうございます。
次に、藤井代表にお伺いします。
藤井代表は認定NPO法人日本障害者協議会の代表も務めていらっしゃいますが、そこで藤井代表に伺います。
障害者権利条約からすれば、国会で、手話、点字もそうですけれども、手話を公用語、言語と位置付けて、国会が出す全ての文書を点字にして、聴覚障がい者にも視覚障がい者にも全ての国会情報が理解できるようにすべきということになると思います。
また、精神障がいや知的障がいの方にも分かりやすい文書も出さなければならないということになると思うんですが、国会で様々な障がい者が誰も分かりやすい文書、そのほかの方法において告知する、そうしたものの作成について、藤井代表のご見解を伺えますでしょうか。
○参考人(藤井克徳君)
まず、手話に関して言うならば、もう先生方は釈迦に説法かもしれませんけれども、日本語とは違うんですね、文法体系から。
やっぱり今、あれは、手話の場合には、日本語手話という一つの文法体系なんですね。
したがって、これを公認してほしいと、すなわち手話言語法をつくってほしいということ、これが言われております。
また、難聴者の場合は、単にUD、字幕をずっと話したまま載っけるのは見にくいんです。
要約筆記という道を考えていただきたいというのが当事者団体からの要望であります。
もちろん知的障がい者に関しては、今おっしゃったように、分かりやすい版。
私たちはかつて、内閣府の障がい者制度改革推進会議で実践をしてまいりました。
そこでは、いろんな文書が出ると、基本的には分かりやすい版を作ろうという努力をしてきたんですね。
したがって、障がい者にとっての大きな1つの障害というのは、移動障がいもあります。
もう1つは、情報障がいなんです。
この点を将来の種別に、しかし一遍にということは難しいわけなんで、漸進的に、私は、この特に手話については深刻であるので、手話言語法の制定と同じように、手話をきちんと言語として公認すると。
そして、知的障がい者等の分かりやすさを解消する。
視覚障がい者についてはデータで出す、今は音声パソコンでかなり聞けますのでね。
こういったことを考えてもらって、同時にこのことは、単に国会だけじゃなくて、自治体もそれをまた模倣しますし、裁判所も、あるいは選挙に関しても、是非国会で率先してほしいというふうに強く要望します。
○芳賀道也君
ありがとうございます。
藤井代表に重ねてお伺いしたいと思うんですが、私も、精神を病んでいらっしゃる家族の方からやはりお話を伺って、ああ、そういう面もあるのかと思ったんですけれども、本人の同意がない場合の入院について家族の同意というのが求められますが、家族の方からは、どんなことがあっても最後まで家族は味方でなければ駄目なんだと、だけれども、その同意を求められることによってその後家族との関係が悪くなってしまうと、そういったことも訴えられて、是非家族の同意をなくしてほしいと、そういった声も伺いました。
その一方で、家族の同意がなくても市町村の同意で入院ができるという制度もありますが、この制度をめぐっては、医療保護入院をめぐって医師と病院に損害賠償を訴えた例で、先月、11月16日、東京地裁判決では、入院時に原告が精神疾患を有していたとは認められず、精神障がい者に当たらないなど、医療保護入院に求められる要件を欠いていたという判断もありました。
家族等の同意がない場合の市町村による同意の場合、この裁判になったような要件を欠いた医療保護入院を繰り返してはなりませんし、その一方で、家族の思い、家族の同意をなくしてほしいと、専門家による、複数の専門家に判断を委ねての、家族の同意がなくても入院というようなことがいいのか、そういったことも含めて、こうしたことをより良くするにはどうしたらいいのか、藤井代表、いかがでしょう。
○参考人(藤井克徳君)
私は、かつて、精神障がい者のこの共同作業所を40年前につくってまいりました。
今は精神保健福祉士でもあります。
こういう観点から考えたときに、これは非常に難しい問題なんですね。
ただ、1つはっきり言えることは、今は余りにも家族の負担過重であると。
結局、退院後に家族とご本人との関係が非常におかしくなってしまうというケースはたくさん見てきました。
じゃ、市町村かというと、市町村がどれくらい専門的力量があるかという点。
公的責任では意味があるんだけど、専門性、そういう点でいうと、家族と専門家と市町村、この関係で考えていくこと。
同時に、状態にもよります。
家族と話し合う中で、じゃ、いっとき入院しましょう、しようかということで同意していくこともあるわけなので、全部家族の同意を外すということは必要ないと思うんです。
逆に、家族との信頼関係を保つためにも一緒に考えていくということがあってもいいし、問題が非常に厳しい困難な場合には、今言われた、先生おっしゃったように、私は専門家も入っていくということで考えていくべきじゃないかなと。
いずれにしても、現在の家族負担の過重な状況は一刻も早く改善し、何も、まあ言ってみれば、家族に責任を押し付けている現状だと思うんですね。
これについてはまずは介助していくということを考えていただきたいなと思います。
以上です。
○芳賀道也君
ありがとうございます。
家族の負担が余りにも大きいということを我々も理解して、専門家の先生方とも相談をし、より良い制度をつくっていけたらと思います。ありがとうございます。
次に、長谷川先生に伺いますが、長谷川先生は身体拘束の問題について積極的にご発言されております。
障害者権利条約からしても、精神障がい者を精神科病院で身体拘束することは速やかにやめなければならないと思いますが、この法改正案から身体拘束ゼロに至るまでのロードマップがやはり必要だと思います。
長谷川先生のお考えでは、身体拘束ゼロに至るロードマップ、どのようにお考えなのか、その概略を教えていただけますでしょうか。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
ロードマップは、絶対的に必要なのはやっぱり数値目標だと思います。まずそれですね。
で、よくいろんな議論で、たとえば何とかストラテジーという方法があるとか身体拘束を減らすためにはこういう方法があるとか、確かにあるはあるんですね、そういう海外の研究とかもあるはあるんですけれども。
ただ、あんまりそれにとらわれ過ぎちゃうと、それに乗らなきゃ駄目というふうになったりとかしますし、もちろん海外とかでそういう一つのストラテジーでやっているような国でうまくいっている国もありますけれども、ただ、それは日本のやっぱりやり方に合った形でやらないといけないんですね。
だから、ちょっと小難しいことを言ってしまって申し訳ないんですが、あんまり構築主義的にやらない方がいいと思っています。
たとえば、やっぱりすぐ、何だろう、ロードマップというと、もう日程を設定して、目標を設定して、数値を設定してということで、やり方はこうだというその単線だとまずいと思うんですよ。
実際に、たとえば身体拘束を本当にやっていない病院とかもあるわけです。
たとえば岡山のまきび病院というのは全く身体拘束やっていないです。
あと、沖縄のオリブ山病院というのもやっていない。
さんざん厚生労働省の方にはこの2つの病院のことは私は申し上げていますけれども、なかなか取り上げてくれないんですよね。
だから、どうしても、まあこれは職業的良心なのかもしれないですけれども、こういうやり方をつくってそれに乗ったらうまくいったというのが1つのその成果みたいに見えてしまうのかもしれないんですけれども、でも、実際のところは、身体拘束をしていないそういう病院というのは、お邪魔すると、たとえばこの間亡くなった精神科医の中井久夫先生が亡くなったときの記事をぽっと貼ってあったりとか、あと、まきび病院なんていうのは、院長だろうと普通のお医者さんだろうと、全く入口入っても院長とも何とも書いていないんですよね。
非常にフラットな関係でやっているんですよ。
だから、すごく根っこにそういうことがあって、しかも身体拘束を減らそうとすら思っていない。
だから、根本的には開放医療とか開放という考え方があって、それに基づいてやっていればそもそもやらないんですよね。
だけど、もう何かそういうことは見ないで、こういうストラテジーでやりましょうというやり方だけでやると、たとえば精神科救急学会の、何だ、マニュアルにもそのいろんなストラテジーとか書いてありますけれども、まあそれがどこまで実効性あるものかは分かりませんし、複数の道をつくっていくということと同時に、目標は作る、その前提としては、さっき申し上げた国としてまず大方針を立てるということが大事なんじゃないかなというふうに考えています。
○芳賀道也君
ありがとうございます。
続いて、若尾参考人にお伺いします。
先ほど、就労支援サービス、特に就労アセスメントなどに懸念がおありだということでしたけれども、その懸念をなくする、解消するための第一歩とか、ここをやっぱりやっていかなきゃということがありましたら教えていただけますか。
○参考人(若尾勝己君)
質問ありがとうございます。
就労選択支援のサービスが導入されることによって、まず既存の障害福祉サービスの支給決定をされているところの点検が私は同時に行っていく必要があるというふうに思っています。
私が今いる東松山市も、平成30年度のときに、全障がい福祉サービス利用者のサービス等利用計画作成を完了するということでかなり一生懸命動いていた時期があったんですけれども、結局それを経過した後については、ほぼ今ご自身が計画を立てるセルフプランに移行してしまっているんです。
実はその実態も、先日、東松山市の行政の担当者の方とお話をして明らかになったところだったんですね。
これは、ご本人が本当に自分の合った方向性を考えて選択されて計画を立てられた結果であればそれでよろしいんだというふうに思うんですけれども、非常に情報量が少ない中で、ご本人が選択したものが本当にそれで正しかったのかどうかであるとか、もしくは、違った選択肢もご本人には必要なんじゃないかということをもうちょっと広い範囲で見れる、そういう意味では、既存のものに対して、その就労選択支援のアセスメントの構築できるような人たちが関わっていくということは見直しにつながってくるんだというように感じています。
あともう1つは、この事業がやっぱり就労支援の専門機関に是非私も担っていただきたいというふうに感じているところです。
これは、本人がどこの事業所を利用するかということを決めていくことではなくて、本人の将来の可能性をどういうふうに考えていくかということにつなげていくべきではないかというふうに思っていますので、短時間の雇用の枠組みとやっぱり連動していくことも僕は必要だというふうに思うし、そこだけが広がればいいということではなくて、もっといろんなその政策と組合せをつくっていきながら広げていっていただけると、そこに期待を今しているところです。
○芳賀道也君
長谷川参考人に伺います。
身体拘束に関する大臣告示に書いてある、不穏、多動の場合を削除してほしいと、これは、全国「精神病」者集団の桐原代表からご要望がありました。
これについて、ちょっと時間もなくなりましたので、できるだけ簡潔に長谷川先生にご見解をいただけますでしょうか。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
不穏、多動が削除の、それはいい要件なんですけれども、それが削除できるにこしたことはないです。
ですから、桐原参考人が言われたことは別に間違っているとかそういうことは全く思わないです。
ただし、現実として、私がやった調査研究でも、隔離とか身体拘束の最大の実施理由が、不穏、その次が多動、もうこれが1位、2位なんですよ。
ですから、実際やるときは、不穏、多動というのを丸付けてやっているんですね。
だから、これをそのまま削除するというのはなかなかそれはできないんだろうなと思います。
ですから、いかにその要件を狭めていくことが重要で、それをそのまま削除というのはなかなか現実的に厳しいのかなという気はしています。
○芳賀道也君
ありがとうございます。
○倉林明子君
日本共産党の倉林明子です。
今日は4人の参考人の皆さん、本当に貴重なご意見ありがとうございました。
質問は、まず藤井参考人にお願いしたいと思います。
先ほどの意見陳述で、最後の部分で、レジュメには総括所見から見えてくる課題ということで4点挙げてあるんですけれども、時間がちょっと足りなくなって、そこの部分がちょっと割愛されたように受け止めたので、その部分についてまず補足的に意見表明をいただければと思います。
○参考人(藤井克徳君)
ありがとうございます。
まずは、総括所見、初めての国際評価ですね、これに照らして、日本の主要な政策を一遍総点検をしてみようじゃないか、これは是非、私は立法府なんかにもこれについては考えていただきたいと思います。
で、2つ目にやはり、ややかぶるんですけれども、先ほどから出ているこの政策審議システム、本当の意味で、私たち抜きに私たちのことを決めないでというあの権利条約の制定過程で繰り返されたフレーズですね、これを含めて考えてもらう。
さらには、実態把握ですね。
残念ながら、この国では障がい者の状況というのは基幹統計にほとんどというか、今まで皆無でした。
やっと今年度、社会生活基本統計で一部入ってきました。
来年は国民生活基礎調査で入ってきます。
基幹統計、たしか50何本あるはずです。
障がいを持っている者と持たない者が比較できるような、そういうふうなデータをちゃんと取るということが3点目。
そして、国内人権機関、権利条約の第33条ですね、政府から独立した、パリ原則ですね、国内人権機関。これについては、子どもの権利条約や女性差別撤廃条約、他の条約体とのやはり共同作業でやっていくということを含めて考えていく。
最後にです、私が思うのは、今の障がい者、今の障がい関連の行政組織、機構がこれでいいんだろうかということ。
つまり、様々な分野がまたがっています。
で、こども庁ならぬ、将来、障がい者庁などのようなことが展望すべきなのか、いや、まずは厚労省の縦割りを消していくために、障がい者関係の障がい者支援局をつくる。
実は、1997年に障害保健福祉部が官房長直轄ででき上がったときに、いずれ場合によっては局という話もあったんです。改めて、この障がい者支援局なんか考えていくということも考える。
こんなことが総括所見から読み取れる大きな絵柄かと思います。
○倉林明子君
藤井参考人に引き続きお伺いしたいと思います。
国連障害者権利委員会の初の日本審査、傍聴もされたということで伺いました。
特にその中で日本政府の対応について残念なところがということを先ほど少し触れられましたけれども、率直な感想をお聞かせいただければと思います。
○参考人(藤井克徳君)
残念ながら、政府、さっき言った28人、6つの省庁から参加して答弁してもらったんですけれども、率直に感じて3点ありました。
1つは、非常に言い訳に終始してしまったという。
あれもやっている、これもやっていると言うんだけれども、もう権利委員はそれを見破っているんですね。
そういう点でいうと、何となく私たち傍聴団も恥ずかしい思いをしたというのが第1点目。
たとえば、障害者基本法の目的条項だけ読んで、これやっていますと言うんだけれども、目的条項はとっても立派なんです。
そういう点でいうと、そういうこともあったし、たとえば優生保護法問題でいうと、裁判の結果、官房長官がこういう談話を述べた、反省していますと言ったと言うけれども、上告したという事実は言わないわけですね。
そういう点でいうと、多くの委員は、ああ、官房長官まで反省した、すごいなという話になってしまうわけで、やっぱりある面でいうとそこが大変気になった。
2つ目、やっぱり、この権利条約の本旨、本質をもう少し政府はやはり知ってほしい。
たとえば人権モデルどうかと問われると、いや、人権教育やっていますと言うんだけれども、これ随分内容は違うんですね。
そんな一幕があったり。
最後に、3つ目は、かつて国際障害者年、このときは官僚が物すごく頑張ったんです、追い風にしよう、大蔵省説得しようということで。そういう点でいうと、この今の厚生省を中心に見ていくと、何か障がい者政策を変えていこうという気迫が今度の建設的対話からは感じられなかった、こんなことを大きく感じたわけです。
○倉林明子君
ありがとうございます。
続けて、藤井参考人にお聞きします。
今も少し紹介ありました優生保護法との絡みなんですけれども、この全面解決に向けて、政府、国会に望むことを簡潔にご紹介いただきたいのと、一時金支給法の延長線上には被害者の尊厳回復はないとご指摘もいただいております。
ご要望をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(藤井克徳君)
私は、優生保護法は終わったけれど、優生保護法問題は終わっていないということを言っています。
すなわち、被害者が、強制不妊手術を受けた者だけでも25000人近い、あるいは人工妊娠中絶、知的障がい、精神障がい者ですね、家族同意なしで受けさせられた58972人と。
こういうこともありますし、もう一方で、障がい者関係の立法の最初に生まれた法律が優生保護法なんです。
これ、どういうふうに障がい者を呼称したかというと、不良と書いたんですね、不良と。
そういう点でいうと、これが他の立法にどう影響したのかということ。
また、優生思想というものが、言わば公認したわけですから、高校の保健体育の教科書を含めて、これがもう蔓延してしまったわけです。
そういう面から優生保護法問題終わっていないと、こう言っているわけですが。
やっぱり、こういった点というのはやはり検証を、残念ながら、国会ではあの一時金支給法の、ごめんなさい、優生保護法の優生条項撤廃、96年でしたね。
また、今度の一時金支給法の創設、これが2019年でした。
2回とも超党派での全会一致で委員長提案であったために、逆に質疑がなかった。
つまり、総括がないまま、この戦後最大の障がい分野の未決着問題がすうっと通ってしまった。
改めて、今せっかく超党派での議員連盟があるわけですから、全党、もっと与党も野党も含めて、今言ったように、最大の未決着問題、障がい者問題では、これ是非とも、特に良識の府の参議院においては真摯に向き合ってほしいということを要望しておきます。
○倉林明子君
本当に、優生保護法の問題で不良という提起が、その後の精神でも、先ほど紹介ありましたスティグマにつながっていると。
やっぱり、この精神保健福祉医療を本当に考える上でも、この問題について真摯にやっぱり向き合っていくということが我々に求められていると深く自覚して取り組んでいきたいと改めて思いました。
そこで、長谷川参考人にお聞きしたいと思います。
最初に、身体拘束の問題で発信をたくさんしていただいて本当に感謝しているんですが、2004年の行動制限の最小化委員会が設置されました。2004年なんですね。
で、医療保護入院等の診療料ということでこれ加算、診療報酬上の評価も付けて促進したはずなのに、その後、拘束件数というのは逆に増えるということになりました。
10年で2倍という数字、今日、本会議でも紹介したんですけれども、減らそうということで導入したものが結果としては増えることに、つながったのかどうかというのは別としまして、そういうことになっているということで、これ急増して、長期化しているということだと思うんですね。
これ、減少しない、本当は減らそうとしたのに減少しないと。
制度上の問題について、先生、お考えをお聞かせいただければと思います。
○参考人(長谷川利夫君)
ありがとうございます。
これは、すみません、私、余り口が良くないのであれなんですけれども、税金泥棒だと、税金泥棒というか、保険料泥棒かな、何か、いや、というか、あと、その政策の評価というのがそもそもなされていないですよね。
だから、これは、行動制限最小化委員会が実は設けられたのは犀潟(さいがた)病院事件がきっかけです。
新潟県にある犀潟病院で1986年に、50歳代の女性が、医師の診察ないまま看護師が身体拘束をして、そして喉に物を詰まらせて亡くなった。
そのときは国立療養所でした。
ですから、国会でも議論され、そして厚生科学研究が組まれ、そして内部審査機関を設けるということが提案され、そしてできたのが行動制限最小化委員会です。
元々の発端というのはそこなんですね。
ところが、いつの間にか、月に1回研修会やっているとか、あとは一覧性台帳を設けているとか、そういう形式をやっていれば報酬が入ってくるというふうな形になってしまっていて、私も幾つかのところからお話はお伺いしていますけれども、極めて形骸化しています。
それは、とりわけ日本の医療の世界というのはやっぱり医師を頂点としたヒエラルキーが非常にやっぱり強いので、なかなかその中で医師が精神保健指定医が出した決定についてみんなでフラットに検討し合うということが非常にしにくいと感じています。
私もオブザーバーで出たこともありますけれども、大体、司会の方が各病棟にどうですかと言って件数だけ報告させて終わっていたりとか、本当に減らすための検討をやっているという感じではなかったです、私の知る限りでは。
むしろ、ちゃんと本当に減らすという検討をやっていればこうはなっていないわけで、あと、外部の人がやっぱり入らない。
だから、それもやっぱり同僚審査、内部審査になってしまっていて、別にそれは医療的な視点で見なくてもいいわけですよね。
いや、普通の感覚でいったら、これだけ長くやっているのはおかしいんじゃないのというふうな一言は発してくれている、くれるという視点が大事だと思うんですね。
さっき言った、私が言った、フリードソンが言った、専門家以外の者で相殺するという視点が僕は大事だと思うんですけれども、でも、そうでなくて、専門家同士で集まって、そして一定の結論が出て終わってしまっているというのが行動制限最小化委員会ということで、これはだから、その政策の失敗というのはなかなか認めたくないんだと思うんですけれども、これはきちんとやっぱり総括して別の方法をきちんと模索するとかしないといけないのではないかなというふうには思っています。
○倉林明子君
ありがとうございます。
総括所見、先ほど来話題になっていますけれども、との関わりで、今回の身体拘束に関わる要件緩和の問題を、先ほどご紹介もありました、要は、総括所見から見て今度の要件緩和というのはどうお考えになるかということを1点と。
もう1点お聞きしますが、身体拘束に関して、電話番号も公開して、多くの相談が寄せられているということです。
深刻なケース大変多いんじゃないかと。
寄せられるSOSもあるということです。
具体的な事例で、まあプライバシーの問題ありましょうから、ご紹介していただけるところを紹介していただいて、是非共有したいと思います。お願いします。
○参考人(長谷川利夫君)
まず、総括所見の関係でいえば、身体的拘束とか、あと強制治療とかですね、それから医療観察法とか、あと、そもそも精神保健福祉法というもの自体が非常に重大な懸念を持って観察しなければいけないということになっているので、そもそもが強制的にそういう措置をするということ自体が非常に良くないということでもう言われていますので、まあ何というんですかね、ちょっと日本の現状からすると、本当にある意味先を、先を行っているので、何かすごい距離を感じてしまうというかですね、日本は不適切な身体拘束をゼロにするというふうにしている今レベルなので、余りにも落差が大きいなというふうなことを感じています。
それから、身体拘束では本当に実際多くの方が亡くなっていて、先週もお電話をいただいて相談しています。今週忙しいので来週お会いしましょうということでしているんですけれども、たとえばですね、これはご遺族の方から、地方とかお名前は言わないけれども、どうぞ広げてくださいと言われている例ですけれども、ある地方で、地域で暮らしていた統合失調症の男性の方がいらっしゃいました。
それで、そのとき、あるときアパートを出て交番に行って、お巡りさんに、そのときちょうど安倍政権のときで、安倍さんがどうのこうのということをちょっと言ったと。
そうしたら、もうすぐにもう精神科病院に連れていかれて緊急措置入院になってしまい、そして、あなたは統合失調症スペクトラムに罹患しておりという紙を渡され、私も全部、カルテも全部読んでいるんですけれども、それで、でもその人は薬は飲んでいなかったんですけれども、薬を飲みなさいと言われて、いや、私は飲みません、飲みなさい、その押し問答で、最終的に身体拘束をして強制投与、点滴で薬を入れるという形になりました。そして、その方は亡くなっています。
それはエコノミークラス症候群でもう確定診断が、肺血栓でもう亡くなっています。
ただ、何でこういう話が、じゃ、メディアに出てこないかというと、これも最終的に和解なんですよね。
だから、秘匿条項が付いているのでしゃべれないということで、私の場合は、弁護士の方から最初相談があったんで、実際、ご遺族と直接その地方に行ってお会いして、話の内容だけは伝えてもいいかということで了承を取っているので、こういうふうな強制治療による身体拘束、精神保健福祉法は強制治療を認めているとは思いませんけれども、そういうことすら起きているということを知っていただきたいと思います。
○倉林明子君
最後になるかと思いますけれども、長谷川参考人にもう一つだけお聞きしたいと思うんです。
さっきのご紹介あった例は和解になったのでということでしたが、石川県の大畠一也さんが身体拘束を受けて、やっぱりエコノミー症候群で亡くなったと。
最高裁判例が確定したということになっているわけですが、これ、違法性が認められたということの意味をどう受け止めていらっしゃるか。
そして、医療現場や精神科医療、福祉に関わる法制度にどんなふうに波及していってほしいかと。
現場が変わるというために何が必要とお考えか。
余り時間ありませんが、すみません。
○参考人(長谷川利夫君)
今日、資料に「精神看護」という雑誌の連載を入れさせていただいておりまして、現場にまずこのことを知っていただくということがまず大事だと思います。
やっぱり、身体拘束の実施の違法性が正面から争われた裁判というのは非常に少なくて、今回はそれがメーンの争点で、パーフェクトに勝訴をしているということで、身体拘束というのは非常に限定的に行われるんだということを明確に述べているんですね。
ですから、ただ、現場の人は余り知らないし、日本精神科病院協会は先ほどのような声明を出している状況なので、もうこれは広げていくしかないんですけれども。
ただ、私は看護の方々とかにはある意味希望を持っていて、看護の方々は指示を受けて実際にする立場なので、また医師の方と違う悩みを持っています。
ですから、非常に苦悩、また別の意味の苦悩があって、そこには、でも、私は、光がないとは言えない、あるんじゃないかなと思っているので、看護の方々ともまた一緒に手を携えていろいろ一緒に考えていく。
たとえば、暴力というものをどう考えるか、暴力は、何か症状でただするんじゃなくて、人と人の関わりでなるというふうな、そういう考えとか、いろんなその発想がありますので、やっぱり看護の方々とかとも一緒にいろいろできればなと思っています。
○倉林明子君
ありがとうございます。まとめていただいてありがとうございます。
今までのお話の中でも、やっぱり総括所見との関係でいうと、日本の精神科医療の遅れというのは、先ほど藤井参考人からもご紹介あったとおり、100年以上の開きがあると、これが私も実感です。
やっぱり、この総括所見をどうやって力にしていくのかということが、非常に法、法審議に当たっても重要だと受け止めています。
今日は、辻本参考人、若尾参考人、現場で金と人が決め手だというようなご発言もいただきました。そうしたご意見も含めて参考にしながら審議に臨みたいと思います。
ありがとうございました。
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。代読お願いします。
代読いたします。
参考人の皆様、本日はありがとうございます。
まず、藤井参考人に伺います。
今年8月、国連障害者権利委員会を傍聴するために、スイス・ジュネーブの国連本部を訪問されたと伺いました。
どのような方たちと、どのような目的を持って海を渡られたのか、お聞かせください。
○参考人(藤井克徳君)
先ほど申しましたように、初めての日本の障がい者政策の国際基準からの評価ということ、とっても歴史的な局面であって、私たち、国内では様々要望をしてきたけれども、なかなかブレークスルーできなかった、これを一体世界的な、国際的な専門家はどう見ているのかという点で大変興味もあり、そして期待もして行ってきました。
で、どういう人が行ったかということなんですけれども、今回、傍聴団は100名を超えました。
かつての各国を見ていきますと、最高が韓国の60名でしたから、大幅に今回上回ったんですね。
日本では、日本障害フォーラム、これは日本の障がい当事者団体、様々団体が加わっている団体です、ここから70名、日弁連から9名、そのほか、普通学校に子どもを行かしたいという、たとえば、障がい児の権利を国連に届ける会なんていう会があったり、あるいはインクルーシブ教育情報室という会があったり、こういった、お母さん、研究者中心の会なんですけれども、こういった面々で行ってまいりました。
○天畠大輔君
代読いたします。
ありがとうございます。
続けて、また藤井参考人に伺います。
この対日審査の前に、日本障害者協議会も所属されている日本障害フォーラムが国連の障害者権利委員会へパラレルレポートを提出されています。
パラレルレポートの策定にあたりご苦労された点や、今回の法案審議に関わり置き去りにしてはならない様々な課題は何か、お聞かせください。
○参考人(藤井克徳君)
そうですね、日本障害フォーラムでは、日本政府がこれを批准したのが2014年でした。
そして、この2年後に、政府報告書を国連は義務付けていますね、政府に出すように。
この国連の条約の仕組みがすごいのは、政府報告書に対して民間からの意見も聞きたいということで、これ両方並べて議論をしたいということで、それをパラレルレポートというふうに言うんですけれども、この準備は2017年から始めました。
そして、団体を超えながら2018年から本格的にパラレル特別委員会をつくってずっと議論をし、今回、ちょうど対日審査前まで60回議論を重ねて、パラレルレポートを3回更新して持っていったと。
一番苦労したのは、様々なやっぱり分野によって団体の意見が違うことがあります。
たとえば、普通学校に全員行かせようという意見もあれば、いや、障がい児学校、特別支援学校が必要だという意見もあれば、あるいは、直ちにやはり入所施設はやめようという意見もあれば、いや、そうあっても現実的に、ただ、そういったことを議論していきながら、じゃ、将来はこういう方向だね、当面はこれで行きましょうということを、時間軸を置いたり、そんなような議論を重ねながらこのパラレルレポートを作っていった。
1回目のパラレルレポートは120ページほどありまして、それをよく権利委員のメンバーは丹念に読み込んで意見を述べられたという感じがいたします。
以上です。
○天畠大輔君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、藤井参考人、長谷川参考人に伺います。
今回の精神保健福祉法改正案第1条には、「発生の予防」という文言が残っています。
この文言が残ることの問題点について、どのように捉えられておられますか。
○参考人(藤井克徳君)
発生予防という問題は、一般的に言えば、けがとか病気ってない方がいいわけでね、ということ。
ただし、今の日本のこの障がい、精神障がい者が置かれている状況とあわせ見た場合に、発生予防ということは障がいじゃない方がいいということですから。
そうすると、現在の非人道的な状況に置かれている人たちは、何か、発生予防と聞きますと自分たちはこれ駄目な人間みたいに感じてしまう、自分たちはどうもあるべき存在ではないんじゃないかということを感じてしまう。
非常にデリカシーな問題を含んでいるわけですね。
したがって、私は、日本のこの非人道的な状況を解決する強い姿勢を示さなければ、多分この言葉は当事者からは受け入れられないと思います。
ちなみに、障害者権利条約の中では、先ほども紹介ありましたけれども、第17条に、「その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」という一言を置きながら、発生予防という言葉は使われていません。
そういう点で言うと、非常にこれは全体的な遅れということとあわせて見ていく言葉じゃないかな、こんなふうに感じております。
○参考人(長谷川利夫君)
私はその、この「発生の予防」という言葉が入っていることが、心身がそのままの状態で尊重されるというその障害者権利条約17条のその考え、精神というものが浸透していくのを妨害するというふうに考えています。
これ、変な話なんですけれども、若い人と特に話していると、すごくこの辺が入っていかないなと感じるときが結構あって、たとえば、精神科の患者さんで妄想がある。
そうすると、妄想というのは病気ですよね、それ、取った方がいいですね、取らなきゃいけないですよねというふうに結構安易に言っちゃうんですよね。
いやいやいや違うよというふうに言うんですけれども、それはその妄想とかが仮にあったとしても、妄想で苦しんでいれば、苦しんでいた本人がそれを望んでいれば取るけれども、でも、その妄想があって、妄想と共に生きている人もいるし、いろんな妄想もあるし、妄想がその本人のアイデンティティーの一部になっているなんということはすごくよくあるわけですよね。
だけれども、病理的な、医学モデル的なものだけで見ると、病気だから悪いもの、その外科手術のようにそれを取るみたいな発想で言ってしまう。
だから、17条のその心身がそのままの状態で尊重されるというのは、この「発生の予防」というこの文言が入っていることによって、そっちに、その思想を広めなきゃいけないのにむしろ阻害する方の要因に行ってしまうということを感じています。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
「発生の予防」という言葉を聞いて、私は障がい当事者として存在を否定されたと感じました。
即時撤廃すべきだと思いますが、藤井参考人、長谷川参考人のご意見をお聞かせください。
○参考人(藤井克徳君)
発生予防、先ほど言いましたけれども、発生した者がどう思うかということですよね。
発生した者が、やはりさっきも言ったように、自分は本来存在すべきじゃないということを思わせるようなことですね。
したがって、今のような非人道的な様々な問題があるということの状況を一方で置いておいて、そして発生予防を置いたときに、この4文字というのは、少なくとも当事者からは、あるいは発生してしまった、私も全盲であります、とてもこれは非常につらい響きがあるということで、そういった点でのこういう問題というのは感じる方に分があるんですよね。
是非、この辺は、審議でも、明日からの審議でも考えてほしい、こう思います。
○参考人(長谷川利夫君)
私も、結論的に言うと、「発生の予防」というのはもう即時でもいいので取った方がいいと考えています。
それで、これは、「発生の予防」というのは、元々は精神衛生法の時代から使われている言葉がそのまま残っている言葉だと思うんですね。
そのときというのは、今よりもっと公衆衛生の考え方に基づいてこういう言葉が出てきているんだと思います。
なおかつ、そもそも発生というのは、人が発生するということはないわけで、虫が発生するとかそういうんだったらあるけれども、そもそもが非常にもうおかしいので、やっぱり非常に侮蔑的だし、私は正直言ってあり得ないという感覚ですね。
ですから、これがこのまま、障害者権利条約批准した日本において、こういった文言のあるものが残ってしまうというのは甚だ残念でしかありませんけれども、たとえば、もう次回改正のときには必ずこれは取るんだということをきちんと議会として意思を示すだとか、そういったことはあってもいいんじゃないかというふうには思っています。
以上です。
○天畠大輔君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、若尾参考人に伺います。
先ほど筋ジストロフィーや脳性麻痺の方の例をお話しされていたと思いますが、就労中に重度訪問介護や同行援護、行動援護などヘルパー制度が利用できないといった問題もあるかと思います。
就労支援に関わる中で、この課題について何かご意見がありましたら、お願いいたします。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、私どもの今働いている従業員は、なかなか障がい福祉サービスと併用していろんなものを活用しているような状況ではございません。
ただ、東松山市に今在住をしている筋硬直がどうしても先行してしまう障がいの方については、同行援護について、私どもの事業所の前にある木を見に行きたいということをご本人が行政の方に訴えを出して、それに同行援護を付けてもらうということで、事業所の近くまで来てもらっています。
私たちの社員たちは近くまで来たその本人を迎えに出るというようなやり方で、今通勤の支援のところもさせていただいているところです。
ただ、これは非常にマイノリティーで、私たちの、行政、直下の行政の皆さんが協力してくれた上で成り立っているようなところでありますので、こういう問題が解決されていくと、外に働きに出に行ける方もまだいるんだということについては是非検討していただきたいというふうに思っているところです。
以上です。
○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。
○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。
○天畠大輔君
今お話しされていた同行援護の方の件について、もう少し詳しく教えてください。
もう1点が、先ほどお話に上がっていた筋ジスの方の就労中の介助のことについても、もう少し詳しくお聞かせください。
○参考人(若尾勝己君)
ご質問ありがとうございます。
もう1人の筋ジスの社員の方については、ご自宅から当初は通勤、公共交通機関、電車を使って来られていたんですけども、機能低下に伴って交通機関が使えなくなったということになりました。
本来は退社を申し出ていたんですけども、私どもの方で、ご家族の送迎に関しては是非継続できないだろうかという相談をさせてもらいました。
これ、ご家族の協力が得られることになって、今その筋ジスの方は通勤をしているところです。
ただ、時間数も含めて低減させているところが現状です。
それから、先ほどの同行援護、すみません、私のコメントが少し違っていたかもしれないんですが、移送サービスを使って近くまで来るということでした。
すみません、同行援護という言葉を使ってしまったんですが。
なかなかその方はご自身で移動ができないので、その移送サービスを使って事業所のところまで来ると。
本来はこれ使えないということで行政の方からも言われていたんですけれども、ご本人の状態をしっかり見ていただける行政機関の方たちの協力を得て、今そのサービスを使っているという状況です。
以上です。
○天畠大輔君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、藤井参考人に伺います。
藤井参考人は、民間で初めて精神疾患を持つ人々のための作業所を開設されました。
医療保護入院の拡大強化ではなく、地域社会的療養を拡大していくためには、どのような取組や事業が必要だとお考えでしょうか。
○参考人(藤井克徳君)
山手線を想像してください。
山手線というのはぐるっと一周回っています。
たとえば、今から言う4つ、5つの政策、たとえば東京駅は家族負担の軽減、品川駅は所得保障、あるいは新宿駅は地域の社会支援の充実、そして池袋駅は病院の経営問題ですね。
さらに、次の上野駅辺りは病院の職員の行き場の問題。
こういったことを同時にしなかったら、なかなかこの問題というのは、社会的に問題というのは解決していかない。
と同時に、今言った医療保護にも関係してきます。
したがって、改めてこの問題というのは、本当にロードマップを作って考えていく、そんなことで、たとえば今言った病院の経営問題でいうならば、通院医療にシフトしてもペイできるような仕組みをつくってあげるということですね。
こういうことをしなければやはりいけないんじゃないか。
家族扶養でいえば、さっきも言いましたけれども、余りにもこの家族負担が重いということ。
恐らく今のままいけば、家族の方は本音としては厳しいという意見が出ざるを得ないと思うんですね。
こんなことも是非分かっていただきながら、今言ったことを同時に、しかし、まあ山手線も実は最初は部分開通なんですね。
やっぱり厳しい部分から解決を図っていくということ。
そういう点では、展望があれば私たち、皆さん方も、家族も、本人も元気が出るわけで、展望を示して、今言った5つ、6つの政策を考えていく。
以上であります。
○天畠大輔君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、藤井参考人、長谷川参考人に伺います。
政府は、強制入院や身体拘束に関わる死亡事案の件数を把握していないばかりか、調査にも独立機関を立てるのにも後ろ向きです。
本法案の立案過程においては、精神疾患を持つ人々が受けている不当な扱いや虐待など被害実態を調査、解明するプロセスを踏んでいません。
当事者抜きの議論ではなく、医療機関や施設入所者の方々への実態調査の必要性について、両参考人のお考えをお聞かせください。
○参考人(藤井克徳君)
今度の総括所見では、日本の状況を見事に見破って、たとえばパラグラフの第24では、死亡退院の、精神科病院での死亡退院、この内容をきちっとつまびらかに調査するように、同時に、この医療、今の強制入院での、あるいは虐待等も含めて状況を把握すべき。
このときにこの総括所見が繰り返し言っているのは、第三者性ということですね。
あるいは、当事者団体の代表を加えるということ。
したがって、ただ調査をするんじゃなくて、誰がするかということ、これまで踏み込んで総括所見は述べていますので、今言った何を調査するか、誰が調査するか、これをセットに考えていくことが肝要かと思います。
以上です。
○参考人(長谷川利夫君)
日本の場合だと、要は、障害者権利条約のモニタリング機関というのは一応内閣府の障害者政策委員会というふうな位置付けになっていると思うんですけれども、でも、それはあくまでも内閣府の中にあるので、独立したものにはなっていないわけですね。
本当、現状がそういうところにあるということですね。
残念ながら、そういう人権のことを言うと、どうしても何か、まあイデオロギーまではいかないですけれども、何か攻撃されているように感じられてしまってなかなか受け入れてもらえないという現状があります。
ただ、それに、これについては、もう障害者権利条約はもう我が国が批准しているものですし、憲法上もその条約の遵守義務があるわけですから、これはもう本当、冗談抜きで、与野党の枠組みを超えて、当然これはやるんだということで、議会の立場で強く手を携えてやっていただきたいというのが心からの願いです。
○天畠大輔君
参考人の皆様、ありがとうございました。
○委員長(山田宏君)
以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の皆様に一言御礼申し上げます。
今般は、長時間にわたりまして大変貴重なご意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
本日はこれにて散会いたします。