2022年11月24日 厚生労働委員会質疑「感染症法等改正案審議 総理質疑・対政府質疑・反対討論」

<総理質疑>
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。代読お願いします。

代読いたします。
今年9月、国連の障害者権利委員会が、日本政府に対する総括所見を出しました。その中の勧告の一つに、このような項目があります。資料をご覧ください。
要約しますと、「公的な意思決定プロセスにおいて、コミュニケーション支援や合理的配慮をきちんとしたうえで、多様な障害者団体との積極的かつ有意義で、効果的な協議の場を確保すること」とあります。
今回の感染症法の改正案では、都道府県の予防計画をつくるための公的な意思決定の場として、都道府県連携協議会が設置されます。その構成員には、感染症指定医療機関、診療に関する学識経験者の団体、消防機関、そのほかの関係機関が想定されています。

一方で、障がい当事者や難病患者をはじめ、患者の人権を守る視点を担う機関や組織は明示されていません。
皆さまご存じのように、医療現場では、どうしても医療者側の力が強く、患者の力は弱くなりがちです。特に、私のように意思表示が難しい患者は、暴言を吐かれたり、適切なケアをしてもらえなかったりと、人権が守られないことが多くあります。
先日の予算委員会で木村英子議員が指摘したような、コロナ禍の入院で介助者付添いが断られてしまう事態も、当事者が予防計画の策定にかかわっていれば、事前に対策できていたかもしれません。

国連勧告をきちんと受け止めるならば、連携協議会構成員のバランスを取るべきです。具体的には、患者の人権を守る、とくに、当事者の視点を持つ機関や組織を含むべきではないでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
今回の改正法案において、都道府県連携協議会は、都道府県、保健所を設置する市又は特別区、感染症指定医療機関、診療に関する学識経験者の団体及び消防機関その他の関係機関により構成されるものと規定をされています。
構成員については、規定上に例示する関係機関に限定するものではなく、その目的や協議する内容等に応じて、都道府県において適切に判断されるものであると考えております。
この感染症法には、地方公共団体や国民の責務として、感染症患者に対する人権の尊重、これが規定されております。連携協議会における協議においても、感染症患者等の人権に配慮しながら協議が行われるべきものであると認識をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
医療審議会にも当事者を入れてください。代読お願いします。

今回の感染症法改正案では、都道府県と医療機関が医療提供体制の協定を結ぶにあたり、合意に至らない場合には、各都道府県に設置された医療審議会の意見を聴くことになっています。この審議会の委員には、「医療を受ける立場にある者」を含むと医療法の条文で規定されています。しかし、現在、障がい者、認知症患者とその家族、難病患者等の権利擁護団体が参画しているのは、47都道府県中5つだけです。条文で規定しても、障がい当事者は、公的な意思決定の場に入りにくいのです。連携協議会のように条文に明示がなければなおさらです。
総理、連携協議会や医療審議会の構成員に、障がい当事者や患者の権利を守る機関が参画できるよう、都道府県に対して働きかけていただけませんか。お答えください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
連携協議会、また医療審議会の構成員については、いずれもその目的や協議する内容等に応じて、設置主体である都道府県において適切に判断すべきものだと考えておりますが、その上で、これらの会議においては、当然、感染症法における人権尊重の理念を踏まえつつ、障がい者を含む要配慮者にも配慮した議論や検討が求められるものであります。こうした考え方について、今後、施行に向けて、都道府県に対して周知徹底を図ってまいりたいと思います。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
障害者権利条約の合い言葉である、「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という言葉を忘れずに感染症対策を進めてください。総理、政府としての決意をお聞かせください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
連携協議会、医療協議会の構成員については、都道府県において適切に判断すべきものでありますが、委員の今のご指摘、さらにはこの法律における人権尊重の理念、これを踏まえて対応しなければなりません。
政府としても、その点について周知徹底を都道府県に対して図ってまいりたいと思います。

○天畠大輔君
ありがとうございます。質疑を終わります。

(中略)

<対政府質疑>

○天畠大輔君
まず、大臣にお尋ねします。代読お願いします。
私が今もし新型コロナウイルス感染症にかかり、入院が必要になった場合、入院についてどのような問題が生じると思われますか、お答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
ちょっと全てのことが私からはちょっと想定はできませんけれども、これまで、前回の木村議員ともご議論させていただいた内容について言えば、たとえば、必要な付添い者が、入院した場合にですね、何といいますか、一緒に付き添っていただくことができない。それによって、今受けておられるような様々な支援、あるいはまた、その病院の中における様々な対応において病院のスタッフだけでは対応し切れない、そういったものに対する対応、こういったことに支障が生じるということはあり得るというふうに考えております。

○天畠大輔君
そうです。これまでお話ししてきたとおり、私は介助者がいつもそばにいなければ生きていけません。それは入院時でも同じだと大臣に改めて認識していただきたいと思います。なぜなら、介助を必要とする者が入院する際に、介助者や家族の付添いが認められないケースが全国各地で報告されているからです。たとえば私の場合、心身の状態や意思を正確に伝えるためには「あ、か、さ、た、な話法」による通訳が必要です。また、頻繁に顎が外れてしまうので、呼吸困難に陥らないよう、呼吸の状態の素早い判断と適切な対処が求められます。そのためには、常に私のそばにいてくれる介助者が必要不可欠です。

木村英子議員が予算委員会で取り上げた事例を覚えていらっしゃいますでしょうか。文字盤を使って目で意思疎通するALSの方が、入院時に介助者や家族の付添いを断られました。医師はその方とコミュニケーションが取れず、様々な薬を使った結果、患者の目はほとんど見えなくなり、唯一のコミュニケーション手段を奪われました。つまり、介助者が付き添えないと、障がい当事者のその後の人生が変わってしまうかもしれない、それほど大きな問題なのです。

一方で、医療機関にとっても、介助者の付添いがなければ障がい者との円滑な意思疎通ができず、医療ミス、医療事故を未然に防ぐためのリソースを断ち切ることになってしまいます。さきの厚労委員会の質疑において木村議員が大臣に、自治体と医療機関で結ばれる協定に、支援者が付き添って入院できる体制整備を盛り込むように求めました。

大臣は「都道府県や医療機関等に対して考え方をお示しをする」と答弁されましたが、都道府県や医療機関へ具体的にどのような働きかけを行うのか、明確にお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
これまでも入院時の支援者の付添いに配慮がなされるよう都道府県等に依頼をしてきたところでありますが、今般の改正法の施行に当たっては、その際お示しする通知などにおいて、支援者は障がい児者が医療従事者と意思疎通する上で極めて重要な役割を担っており、障がい児者の受入れ医療機関の設定に際して特別なコミュニケーション支援が必要な場合も考慮すること、また、コミュニケーション支援が必要な場合は、院内の感染対策に配慮しつつ、可能な限り支援者の付添いを受け入れていただきたいことなどについて、都道府県や医療機関等に更にお示しをしていきたいと考えております。

○天畠大輔君
積極的に働きかけてください。代読お願いします。

一方で、都道府県や医療機関だけに責任を押し付けるのではなく、国が率先し、入院時の支援者付添いの理解促進や財政支援の策を講じてください。

さて、感染症法改正案が成立した場合、施行は一年半後です。しかし、既に第8波が来ています。介助を必要とする障がい者がコロナにかかり、入院を断られる事態が必ず起きます。
木村議員は大臣に、現在のコロナ対応の中で作られている保健・医療提供体制確保計画の中にも、支援者の付添いについて盛り込むよう求めました。大臣、その後の進捗はいかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君)
まず、11月21日に、この保健・医療提供体制確保計画、これ事務連絡に基づいて各都道府県に作成を依頼しているわけでありますが、その保健・医療提供体制確保計画の点検、強化を求める事務連絡を発出したところであります。

この事務連絡の中で、障がい児者が入院中も支援者の付添いによるコミュニケーション支援を受けられるよう、制度の内容や医療機関における対応例を示したこれまでの事務連絡も明記した上で、都道府県に対し、障がい児者の受入れ医療機関の設定に際して、特別なコミュニケーション支援が必要な場合も含めた必要な配慮を行うこと、また都道府県から医療機関に対して付添いの受入れに関する積極的な検討を促すこと、こうしたことを求める内容を盛り込んでおります。医療提供体制確保計画の点検、強化の中で、各都道府県における取組を促していきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
ありがとうございます。
通知を出して終わりではなく、引き続き働きかけてください。代読お願いします。

平時の入院でも問題があります。入院中に重度訪問介護を利用できるのは、現在は最重度の障害支援区分6の人のみとなっており、区分5及び4の人は利用できません。障がい者が入院する際、病気の症状によって意思疎通が困難になることもあり、従来の障害支援区分で介助者の付添いの必要性をはかることはできません。入院中の重度訪問介護の利用可否を、障害支援区分で判断するのはあまりにも理不尽です。介助を必要とする障がい者が安心して入院できるように、区分5及び4への対象拡大について早急な検討をお願いしたいと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
入院中の重度訪問介護の支援の対象となる障害支援区分について、現在は利用者ごとに異なる特殊な介護方法について医療従事者などに的確に伝達し、適切な対応につなげる必要があることなどから、障害者区分6の最重度の障がい者のコミュニケーション支援について、平成30年度からの重度訪問介護の対象となっているところであります。

その上で、本年6月の社会保障審議会障害者部会の報告書において、それを拡充について検討すべきとされております。特別なコミュニケーションが必要な障がい者が支援者の付添いにより安心して入院できるよう、こうした報告書の指摘も踏まえ、支援が必要な状態像や支援ニーズの整理を行いながら、支援対象者の在り方について次期報酬改定に向け必要な検討を進めていきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
早急な改善を切に求めます。引き続き注視していきます。
質疑を終わります。


(中略)


<反対討論>

○天畠大輔君
れいわ新選組を代表し、反対を表明します。代読お願いします。

私は、れいわ新選組を代表し、感染症法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。感染症法は、感染症患者の人権を尊重するものでなければなりません。

今回の改正案は、第1に、過去のハンセン病患者や新型コロナウイルス感染症等、疾病を抱える患者や家族に対するいわれのない差別や偏見がいまだに教訓とされていない内容と言わざるを得ません。感染のおそれのある人に対し、水際対策において自宅待機指示や情報提供を怠っただけで懲役刑、罰金刑が科され、その対象には14歳以上の未成年が含まれるという内容になっています。これは、特段の配慮を必要とする人や、子どもの人権を大きく制約する内容です。刑罰を科すだけでは感染症のまん延は防げないと考えます。

第2に、新たな感染症のまん延に備える医療提供体制の確保は、平時の医療と福祉、介護現場の実態に即した包括的な支援体制の基盤なくして成し遂げることができません。新たな協定などで都道府県や医療機関に縛りをかけ、医療提供体制確保の責任を都道府県と医療機関に押し付けるやり方は、有事における国の責務を放棄していることにほかなりません。

最後に、改正案は、妊娠されている方や高齢者、難病患者、重度の障がい者など、入院、療養に特段の配慮を必要とする患者のみならず、広く患者の権利を守る側面が弱いと考えます。たとえば、新設される都道府県連携協議会や既存の医療審議会の構成を見ても、広く患者の権利や経験が生かされる仕組みが抜け落ちています。

感染症対策として、患者の権利や障がい者の存在を無視した政策決定や予防計画が策定されることは、防げるはずの医療事故や不本意な身体拘束などの人権侵害事象や、入院付添いができないなどの障がい者差別が政府の過失によって見過ごされることになると指摘し、反対討論を終わります。