2022年10月20日 予算委員会質疑「上から目線の物価高対策、施し目線の障がい者政策。」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。日本で最も障がいの重い研究者です。代読お願いします。
私は、14歳のときの医療ミスが原因で、今は発話障がい、四肢麻痺、視覚障がい、嚥下障がいがあります。介助者とともに独り暮らしをしながら、博士号を取りました。現在も研究員をしています。
今日は、物価高における経済対策と国連勧告を無視した障害者政策について伺います。
まず、総理、障害者権利条約はどのようなものか、そして合理的配慮とは何か、簡潔にお答えください。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
障害者権利条約は、障がい者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障がい者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、必要な措置等について定める条約です。同条約が規定する合理的、すみません、質問は条約についての御質問でした。答弁は以上です。あっ、ごめんなさい。
そして、同条約が規定する合理的配慮とは、障がい者に対する様々な配慮のうち、障がい者の人権、基本的自由を確保する上で必要かつ適当なものであって、障がい者が置かれた個別の状況に応じたものであり、配慮を行う側にとって過度の負担とならないものを指すと理解しております。
以上、2点でよろしいでしょうか。
○天畠大輔君
わかりやすく言い換えると、資料1のとおり、合理的配慮は、段差にスロープを設置するなど、障がい者が生活する上でのバリアを取り除くために、必要な対応や工夫をすることです。国会議員の皆さん、質疑をご覧の皆さんに、ぜひこの考え方を知っていただきたいです。
さて、今年、日本政府の障害者施策がこの条約に沿っているか、国連が審査を行いました。先月には政府への勧告を出しました。
総理、国連勧告のうち最も重要なポイントはどこだと思われますか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
ご指摘の総括所見のうち勧告の主な内容としては、地域社会での自立した生活、インクルーシブ教育、精神障がい者の入院等、多岐にわたる事項が含まれております。
この総括所見は法的拘束力を有するものではありませんが、今般示された委員会からの勧告等については、関係府省庁において内容を十分に検討していきたいと考えております。
○天畠大輔君
日本の障害者政策は、パターナリズムです。代読お願いします。
私は、今回の国連勧告の最も重要な懸念点は、日本の障害者施策がパターナリスティック、つまりは温情主義的だというところだと思っています。
資料2をご覧ください。
温情主義とは、つまり、上の立場の者からの施しです。たとえば、私のような重度障がい者は、通勤通学や仕事中は、原則、公的な介助費用が出ません。職場介助者を配置する助成金はありますが、実態は職場に頭を下げてお願いしないといけない。国が介助保障するべきだと考えますが、現在は非常に温情主義的な制度になっています。
温情主義的なのは国会も同じです。本当の意味での合理的配慮を理解されていません。
私の発話は時間がかかります。だから、国会質疑では予定原稿は代読を入れます。そして、答弁に対して更に質問したいときには持ち時間のカウントダウンを止めていただいています。しかし、カウントダウンを止めるか否かの判断は、最終的には委員長の個人裁量に委ねられます。発言の権利がいつでも保障される仕組みは整っていません。健常者議員と同じ土俵に立てないのです。本来なら質疑時間自体を延ばす対応が必要ですが、なされません。
総理ではなく岸田議員としてお聞きします。合理的配慮の欠如と思われませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
温情主義ということについてお話がありました。それに基づいて合理的配慮が欠如している、こういったご指摘がありました。
国会に関わる者全てが、そうした指摘を重く受け止めなければならないと思います。この国会の、この制度の中で、どれだけご指摘の点に応えられるか、皆で考えていきたいと思います。
○天畠大輔君
見えにくい差別をなくしたいです。代読お願いします。
私は、自分の意思を無視される経験を嫌というほどしてきました。だから、同じように言葉を奪われてきた人たちの思いを背負って、国会から見えにくい差別をなくしていきたい。引き続き、合理的配慮を求めていきます。
今の経済政策も温情主義的です。代読お願いします。
政府は、国会での予算審議もせず、3か月半国民を放置。やっと出された政策も施し、お恵みという温情主義的なものでした。たとえば、5万円の現金給付、非課税世帯にほぼ限定した形で行われます。困っている、とうるさいから最低限はやってやる、という温情的給付です。
日本は、25年間にわたる不況の中、コロナが広がり、現在、戦争影響で物価高という三重苦の真っただ中、まさに非常事態です。もちろん非課税世帯は生活困窮していますから絶対的に給付が必要ですが、それ以外の人々にも必要です。現金給付の幅を今よりも拡大してください。総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
政策が温情主義に基づくものであるという指摘については、しっかり受け止めたいと思います。
ご指摘の5万円の給付につきまして、非課税世帯に対する支援ということで、この政策自体は意味があると感じておりますが、それ以外の方々に対する支援が必要であるという御指摘はそのとおりであります。
実際、政府は、こうした給付金だけではなくして、物価高騰対策として、この子育て世帯をはじめ様々な世帯に裨益するような政策を重層的に用意する対策を総合経済対策として準備を進めています。これまでの経済対策についても同様です。
ぜひ、あらゆる立場の方々がこの厳しい状況の中で生活や事業を守れるように、政策を重層的に用意することで国民の皆さんの期待に応えていきたいと思っております。
○天畠大輔君
総理、厚労省の大規模調査で生活が苦しいと答えた割合を教えてください。
○国務大臣(加藤勝信君)
厚労省の調査なんで、私の方から説明をさせていただきます。
2019年、国民生活基礎調査でありますが、生活意識が苦しいと答えた割合は、全世帯で54.4%、母子世帯では86.7%となっております。
○天畠大輔君
総理、内閣府の調べでは、所得の中央値は25年間でいくら下がっていますか。
○国務大臣(山際大志郎君)
お答えいたします。
1994年から2019年にかけての全世帯の所得の分布の変化でございますが、これは、この間に相対的に所得が低い高齢者世帯や単身世帯の割合が増加するなど世帯構造が変化する中という条件ではございますけれども、中央値につきましては、再分配後に131万円低下したという結果が示されております。その表のとおりでございます。
○天畠大輔君
資料3、所得の中央値が131万円も下がっています。賃金が下がる一方で、物価は上がっていく。資料4が示すとおり、生活が楽になるはずもありません。少なくとも物価が上がる分は全て国が吸収する必要があります。
現金給付は、悪い物価高が収まるまで、季節ごとに一律10万円給付するべきと考えます。日本の経済を再生すると豪語された総理、1人ひとりの購買力を上げて、需要を喚起、景気回復を促す政策として、まずは消費税減税と一律現金給付をあわせてやるべきと考えます。
総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
国民の所得を引き上げ、購買力を上昇させ、そして経済のこの好循環を実現していくことは重要であると認識をしています。
その手法についてご指摘がありました。消費税の引下げということについては、この社会保障の財源という観点から、政府としては政策として取ることは考えておりませんが、所得の引上げ、様々な形で実現することによって購買力を引き上げていく、こうした観点から、その様々な政策を用意していきたいと思います。賃上げ政策あるいはこの企業の価格転嫁、そして構造的な賃上げなど、この所得の引上げの観点から、政策を政府として経済対策の中に盛り込んでいきたいと考えています。
○天畠大輔君
委員長、配慮をお願いします。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
残念です。消費税減税も一律現金給付もしない。温情主義から脱せないのですね。
質疑時間がもったいないので、次に行きます。代読お願いします。
さて、政府は、障がい者の命に関わる複数の法案を束ねて、今国会に提出しようとしています。
政府は似たようなことを、過去に何度もしています。たとえば、3年前の健康保険法等改正案。2年前の社会福祉法等改正案。「問題点を束ね法案で隠そうとしているのでは」と国会議員が指摘しています。
今回も同じではないでしょうか。資料5のとおり、障害者総合支援法、精神保健福祉法、障害者雇用促進法、難病法、児童福祉法など、複数の法案を束ねています。
この中にある精神保健福祉法改正案、どんな改正か、ポイントを教えてください。
○国務大臣(加藤勝信君)
今回の法案は、精神障がいを有する方が、必要なサービスを切れ目なく受けながら地域で安心して暮らせるようにするため、必要な体制の構築を図るものであります。
具体的には、精神保健福祉法について、医療保護入院の手続を見直し、入院期間に6か月の上限を定める、精神科病院を訪問し、患者の体験や気持ちを傾聴する取組を都道府県の事業として位置付ける、精神科病院における虐待防止のため、従業者への研修や普及啓発に加え、従事者による虐待を発見した場合に都道府県に通報する仕組みを整備するなどの改正を行うこととしております。
今回の法案には、地域生活や就労の支援の強化等により、障がいのある方の希望する生活を実現するため、障害者総合支援法と一体的に改正を行うものであります。
○天畠大輔君
この束ね法案のタイトル、障害者総合支援法。今回の精神保健福祉法の改正内容は、人々の権利の制約に直接関わるものであり、障がい者への給付に関する法律である障害者総合支援法との関連性は低いと考えます。
では、なぜ束ねられたのか。この法案に毒が含まれているからではないでしょうか。
今日は、精神科病院での身体拘束問題を調査してきた長谷川教授に来ていただいています。強制入院の現状を教えてください。
○参考人(長谷川利夫君)
2021年現在、国内の精神病床には約26万人が入院しています。うち、約13万人が医療保護入院、つまり入院患者の約半数が自分の意思によらない強制入院です。
精神保健福祉法においても、精神障がいを持つ人は、権利を尊重される人というよりも保護の対象です。法律の条文には「発生を予防」という言葉すらいまだ残っています。
医療保護入院は、自傷・他害のおそれがなくても強制入院させる制度です。しかも、「家族」の同意で入院させる、世界でもまれに見るおかしな制度です。
○天畠大輔君
ありがとうございます。
今回の法改正では、患者に家族がいない場合に加えて、家族が意思表示をしない場合も市町村長の同意によって医療保護入院が可能になろうとしています。国連勧告では、「障害者の強制入院による自由の剥奪を認める全ての法的規定を廃止すること」と、強く勧告しています。今回の法改正は、勧告に逆行しているのではないでしょうか。
また、法改正の先にあるのは身体拘束要件の問題です。
資料6をご覧ください。そもそも身体拘束とは、一定の要件のもと、身体の自由を奪うものです。資料7のグラフが示すとおり、この件数、2003年から10年間で倍になりました。
長谷川教授、身体拘束要件の問題点を教えてください。
○参考人(長谷川利夫君)
精神科病院の中では身体拘束により多くの方が亡くなってきており、裁判も全国で行われています。昨年10月には、石川県の40歳の男性が身体拘束後に亡くなった裁判で、身体拘束開始時からの違法性が最高裁で確定しました。
身体拘束の実施要件は、厚生労働大臣告示において、自殺企図又は自傷行為の著しい切迫、多動・不穏が顕著、生命の危機などに限定されています。しかし今、この告示を30年以上ぶりに改変し、「治療が困難」という言葉を加えようとしています。現行にない、「治療」が困難というその要素を加えることは、今までよりも医師の裁量を広げることになります。
そもそも人身の自由、人権を制限する行為の要件が国会の審議を経ずに告示で定められていること自体が極めておかしいことです。
○天畠大輔君
ありがとうございます。
今、人の自由を奪う行為の要件が国会審議を経ずに告示で定められていると伺えました。
総理、これは人権の観点からおかしくないですか。
○委員長(末松信介君)
質問ですね。岸田内閣総理大臣。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
精神保健福祉法においては、精神科病院に入院中の者の処遇については、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いた上で必要な基準を定めることができるとされています。
また、身体的拘束等の行動制限については、同法において、医療又は保護に欠くことができない限度においてのみ行うことができるとされており、厚生労働大臣が告示、告示に定める基準についても、法律の趣旨に基づき定められるべきものであると考えております。
○天畠大輔君
委員長、配慮願います。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
身体拘束が10年で2倍に増えています。これは、欠くことのできない限度が2倍に増えたということですか。総理、お答えください。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
身体拘束が2倍に増えたというご指摘でありますが、その実態について今一度確認するとともに、その意味の分析について厚労大臣ともその確認をさせていただきたいと思います。
○天畠大輔君
委員長、配慮願います。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
「聞く力」というのであれば、私たち当事者の声を聞く機会をつくってください。
総理、私たち当事者と会っていただけるのか、いただけないのか、二択でお答えください。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
会う具体的な会い方について検討をいたします。是非お話を聞かせていただきたいと思います。
○天畠大輔君
委員長、配慮願います。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
ありがとうございます。そこは温情主義から脱せたのですね。
私たちが出した総理宛ての束ね法案提出反対の要望書はご覧になりましたか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君)
反対のこのご意見について、私自身、現物は拝見しておりませんが、こうした束ねに反対するというご意見があるということについては伺っております。
今回の法案では、たとえば精神科病院の長期入院を見直していくための医療面での見直しや退院後の生活面での支援強化、また、難病患者の福祉や就労面での連携強化など、障がい者の生活を総合的に支援することを目指す、こうした内容になっておることから、関係法案の一体的な見直しが必要であるという判断に立っていると承知をしております。
この点についてもご理解をいただきたいと思っております。
○天畠大輔君
まとめます。委員長、配慮願います。
○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、しばらくお待ちください。
○天畠大輔君
今度会って意見交換をしましょう。質疑を終わります。