2022年10月27日 厚生労働委員会質疑「精神科病院と国連勧告・マスク着用できない人への合理的配慮とは? 」

○天畠大輔君 

れいわ新選組の天畠大輔です。まず、質疑の合理的配慮について述べます。代読お願いします。

代読します。
今日の質疑では、予定外の発言が必要になったときには、配慮として速記を止めていただきます。つまり、私の持ち時間は減りません。ただ、皆さんに訴えたいのは、速記を止めるのはあくまで委員長の権限だということです。もちろん、配慮には感謝していますが、発言の権利がいつでも保障される仕組みは整っていません。
私は、健常者議員と同じ土俵には立っていません。国民は見ています。国会が変わることで発話障がいを持つ人への合理的配慮が社会に広がることを期待しています。引き続き、福祉に明るい厚労委員会の皆様とこそ、私の質疑方法について協議を深めていきたいと考えています。
続いて、マスク着用の合理的配慮について質疑します。代読お願いします。

代読します。
私は、筋緊張により顎が外れ、呼吸ができなくなるリスクがあります。また、不随意運動によりマスクが外れてしまうことがあるため、マスクを着けずに感染症対策をするのが望ましいとの医師の診断を受けています。
さて、私は今年、都内のある美術館で入館を拒否されてしまいました。マスクは着けられないけれど、万が一せき込むことがあればタオルなどで即座に口元を押さえる準備はできていることも説明しました。しかし、「マウスシールドを次善の策として着けても入場は許可できない」「マスクを着けていないことを気にされるほかのお客様もいる」の一点張りでした。
まず、内閣府にお伺いします。障害者差別解消法に基づけば、一般的に障がいなど特別なニーズを持つ人が配慮を求めている場合、求められた事業者などはどのように対応しなければなりませんか。


○政府参考人(滝澤幹滋君) 

お答え申し上げます。
障害者差別解消法においては、行政機関等及び事業者に対し、障がい者が日常生活又は社会生活において受ける様々な制限をもたらす原因となっております社会的障壁を取り除くため、その実施に伴う負担が過重でない場合に、個別の状況に応じた合理的配慮の提供を求めております。
その一例としましては、具体的な場面、状況によりますが、例えば物理的環境や意思疎通への配慮、ルールの変更等が考えられますところ、事業者等が合理的配慮を提供する際には、当該障がい者が現に置かれている個別の状況を踏まえ、双方の建設的対話による相互理解を通じて柔軟に対応する必要があるところでございます。


○天畠大輔君 

代読します。

ありがとうございます。
今回のように私が美術館に入れなかったことは、明らかに合理的配慮を欠いた対応です。マスクを着けられない人は、私のような重度身体障がい者以外にもたくさんいると思います。ほかにはどんな方々が障がいや病気を理由にマスクの着用が難しいと国は把握していますか。


○政府参考人(佐原康之君) 

お答えいたします。
病気や障がいによりマスク等の着用が困難な方については、個人の症状や障がい特性が様々であることが考えられるため一概にお答えすることは困難ではありますが、例えば皮膚や呼吸器の疾患がある方などについてはマスクなどの着用が困難な場合があるものと考えられます。また、触覚、嗅覚等について非常に敏感になっている状態の発達障がいのある方についてもマスク等の着用が困難な場合があるものと承知しております。


○天畠大輔君

ほかの人たちに私と同じ思いをしてほしくありません。代読お願いします。

代読します。
答弁のとおり、様々な事情でマスクを着用できない人がいます。
例えば、2年前、京都府での事例です。自閉症スペクトラムで重度知的障がいの当事者が日帰り温泉施設の売店や休憩所の利用を断られました。マスクを着けられないからです。地元紙でも取り上げられました。
私のような思いをする人を減らすために、国に対応を求めたいと思います。
新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、各業界団体は所管の官庁と連携し、業種別の感染症対策ガイドラインを定めています。現場の方たちが参考にするものです。
今回、私の入館拒否事例を文化庁に共有したところ、全国公立文化施設協会のガイドラインが改正されました。具体的には、病気や障がいによりマスクの着用等が困難な来館者に対しては、差別等が生じないよう十分に配慮するとの文言が追加されました。
文化庁、この経過について教えてください。


○政府参考人(中原裕彦君) 

委員からお伺いした事例も踏まえ、関係団体に対しまして文化施設における感染拡大予防ガイドラインの点検を促しました。その際、全国公立文化施設協会のガイドラインにおいて、マスクの着用が困難な場合に合理的配慮を行うべきことが明示的には読み取れなかったことから、文言を追記する形でガイドラインが改正されたところでございます。


○天畠大輔君 

代読します。
ありがとうございます。
業種別ガイドラインは、全部で196もあります。ガイドラインを作る皆さんに広く合理的配慮を周知する必要があるのではないでしょうか。ガイドライン全体を俯瞰している内閣官房ではどのような取組をしていますか。


○政府参考人(大西友弘君) 

お答えいたします。
ただいまご指摘いただきました業種別ガイドラインでございますけれども、これは、各業界団体におきまして、それぞれの各業態を踏まえた適切な感染防止対策を自主的に取りまとめていただき、これまでも各業界におきまして適宜見直されて、見直していただいておりますけれども、まだ一部にとどまっているというような実態がございます。
このため、内閣官房といたしまして、各業界団体における適時適切な見直しを支援するため、感染対策に関する最新の知見等を基に見直しのポイントを取りまとめまして、10月17日付けで関係省庁に事務連絡を発出しまして、各業界団体への周知をお願いしたところでございます。
今委員からご指摘ございましたその障がいや病気などへの特別な配慮ということにつきましても、この事務連絡の中におきまして、見直しのポイントの一つとして、病気や障がい等でマスク着用が困難な場合には、個別の事情に鑑み、差別等が生じないよう十分配慮するとともに、適切な感染対策を講じるということを明記をいたしまして、これに基づいて各業界団体における適切な見直しを促進してまいりたいと考えております。


○天畠大輔君 

代読します。
ありがとうございます。全業界に対してガイドラインの見直しポイントを解説した資料が国から出ているとのことでした。
さて、入館を拒否されるのではと当事者が恐れるのは美術館だけではありません。例えば、先日、私が飛行機に搭乗したときには、マウスシールドを必ず着けるよう求められました。日常で使う公共交通機関や飛行機の業種別ガイドラインでは、マスクが着用できない人に配慮するといったような記述はありません。
先ほど答弁にあった業種別ガイドラインの見直しのためのポイントに基づき、各業界にガイドラインの改定を働きかけていただきたいと考えます。国交省の考えをお聞かせください。


○副大臣(石井浩郎君) 

お答えいたします。
10月17日、内閣官房から業種別ガイドライン見直しのためのポイントが示されたことを受けまして、国土交通省からも所管業界に対しガイドラインの見直しについて依頼を行ったところでございます。委員のご指摘を踏まえまして、国土交通省といたしましては、ガイドライン見直しのためのポイントがしっかり反映されるよう、改めて関係業態に働きかけてまいります。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。

○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

ありがとうございます。業界との積極的な協議をお願いします。代読お願いします。

代読します。
各業界での対応がまちまちになってしまう要因の一つは、マスク着用できない人に関する周知の不足ではないでしょうか。
厚労省のホームページに、マスクの着用についてというページがあります。ただ、マスク着用が難しい人への言及は、発達障がい者に関するものに限られます。とても重要な周知ですが、発達障がいにのみ焦点を当てることで、様々なケースがあることが見えにくくもなっていると思います。
病気や障がいなど様々な理由でマスク着用できない人がいるという幅広な書き方に変えるなど、改善はできないでしょうか。厚労大臣、お答えください。


○国務大臣(加藤勝信君) 

障がいの特性などによってマスク等の着用が困難な場合があること、また、そういう困難な方がいらっしゃること、これを国民の皆さんに理解いただくことが必要であります。
そのため、厚労省のホームページにおいては、こうしたマスク等の着用が困難な場合があることを周知しようということで、例えばということで、今ご指摘のあった発達障がいのある方は、触覚、嗅覚等の感覚過敏といった障がい特性によりマスク等の着用が困難であると、そうしたことの記述を述べさせていただきましたが、今委員からのご指摘もございまして、発達障がい以外の方においてもマスク等の着用が困難な方がいること、これを明確に分かるようにお示しをすべく、ホームページの見直しを速やかに行いたいと考えております。


○天畠大輔君 

代読します。
次に、予算委員会質疑の続きを伺います。
マスクに関する答弁のみの政府参考人の方はご退席いただいて結構です。


○委員長(山田宏君) どうぞ退席してください。


○天畠大輔君 

では、まず資料一をご覧ください。精神科病院における身体拘束とは、一定の要件の下、身体の自由が制限されるものです。
次に、資料二をご覧ください。この身体拘束ですが、十年で二倍に増えていることはデータからも明らかです。
先日の予算委員会でその理由を総理に伺ったところ、厚労大臣と確認するとのことでした。大臣、改めて、身体拘束が二倍になった背景について答弁をお願いします。


○国務大臣(加藤勝信君) 

精神科病院での毎年の調査日における身体拘束件数は、平成16年から平成26年の10年間で約2倍に増加しており、その後はおおむね横ばいで推移をしております。
身体的拘束件数の増加の要因については、令和元年度の厚生労働科学研究において実態調査を行ったところであります。その結果によりますと、精神科病院に入院する高齢の患者が増加する中で、高齢者の身体疾患への対応のために身体的拘束が増加している可能性が示唆されているところであります。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。

○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

可能性が示唆されているという言いぶりでした。
大臣、つまり明確な理由は分からないということですか。


○国務大臣(加藤勝信君) 

あくまでも、その結果を、先ほど申し上げた、ごめんなさい、厚生労働科学研究ということで実態調査をして分析をしたということで、そこから出てきた一つの分析の結果であって、そこにおいてはそういう可能性が示唆されたということであります。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。

○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

結局、よく分からないということですね。代読お願いします。

代読します。
さて、今年6月に厚労省が報告書を出しました。地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会の成果物です。その中に、「不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組」という項目があります。不適切な隔離、身体拘束の件数を教えてください。


○大臣政務官(畦元将吾君) 

お答えいたします。
今年、行動制限は、精神保健福祉法上、代替方法によることが困難な場合に必要最小限度の範囲でのみ行われるものであり、その判断は、精神科実務経験を有し、法律などに関する研修を修了した精神保健指定医の専門的知見に基づき、個別の事情に照らし合わせて行われることとされております。そのため、不適切な行動制限に当たるか否かを一律に判断することはできず、その件数を把握することは困難です。
そもそも、行動制限につきましては、常に患者さんの命、生命を一番に考えて対応しておりますことを付け加えさせていただきます。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。

○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

大臣、現状が分からないものをどうやって減らすのですか。


○委員長(山田宏君) どなたですか。答弁。


○国務大臣(加藤勝信君) 

ちょっとそのお答えに返す前に、先ほどのその分析結果が全然分かっていない、判明していないというお話でありましたけれども、この報告書では、隔離、身体拘束の該当要件の内訳を見た中で、生命に危険が及ぶ緊急性、切迫性の高い該当要件は他の該当要件よりも少ないことが明らかとなったとした上で、身体的拘束の該当要件ではその他というのがあるんですが、については65歳以上でその比率が高くなる傾向が認められた。その内訳を見ると、ほとんどが転倒、転落、点滴等の自己抜去の防止、身体管理のためとされており、その上で高齢者の身体合併症管理のための拘束が多くなっている可能性が示唆されたということですから、分析をした上でそうした結論を得ているということは申し上げておかなきゃいけないというふうに思います。

その上で、不適切な隔離、身体拘束というよりは、まさにこの身体拘束そのものをどう減らしていくのかということであります、今我々が取り組むべきところはですね。その中において不適切なもの、件数としてはなかなか把握できないところでありますけれども、逆に言えば、適正な形でこの身体拘束を、失礼、しかも最小限の、失礼しました、最小限の形でそれを、行動制限を最小化するためにどうすればいいのか、あるいはその行動制限を最小化を普及するためにはどうすればいいのか、まずそういったことについてしっかり議論をしていきたいというふうに考えているわけであります。


○天畠大輔君 

代読します。
今年9月に出た国連勧告は、日本政府の精神科病院の政策に強い懸念を示しました。具体的にはこう言っています。精神科病院での死亡の原因や状況についての統計や独立した調査が行われていないことを懸念している。さらに、具体的な勧告もしています。精神科病院での死亡事例の原因や状況について徹底的かつ独立した調査を実施する。
大臣、厚労省から独立した調査機関を設けることを検討しませんか。


○国務大臣(加藤勝信君) 

精神病床においては1か月に約2000名の方がお亡くなりになっておりますが、入院患者のうち75歳以上の高齢者が36.5%を占めており、精神疾患だけではなくて身体疾患の治療も併せて行われているというのが実情であります。
こうした状況の中で、ご指摘のような精神科病院における死亡事例全般に関する調査を行うことについては、調査の実施体制はもとより、調査の目的や対象、手法等を含めて慎重な検討が必要ではないかということと考えております。

また、厚生労働省としては、先ほど申し上げましたが、精神障がい者の一層の権利擁護の確保に向けて、本年9月に公表された勧告の内容や関係者の意見も踏まえながら引き続き取り組んでいくこととし、令和4年度の障害者総合福祉支援事業、精神科医療における行動制限の最小化に関する調査研究において、精神科医療における行動制限の最小化に関する検討会を開催し、先ほど申し上げたような論点を中心に議論を行わせていただいているところでございます。


○天畠大輔君 

代読します。
政府は、精神科病院での死亡事例の調査をしておらず、実態はよく分からない。むしろ民間が調査しています。2019年には、読売新聞は、身体拘束が原因で死亡した可能性がある患者が3年間で少なくとも47人に上るとの記事を出しました。政府は、身体拘束を減らす方針は立てるけれど、調査にも独立機関を立てるのにも後ろ向きだと、ことです。
それならば、せめて身体拘束を減らすために数値目標を立てませんか。


○国務大臣(加藤勝信君) 

行動制限は、精神保健福祉法上、医療又は保護に欠くことができない限度において、代替方法によることが困難な場合に必要最小限度の範囲でのみ行われるものとされており、可能な限り最小化に取り組む必要があると考えております。
行動制限の可能な限りの最小化に向けては、関係者が広く目指すべき姿を共有することが大事であると考え、身体的拘束は患者一人一人の状態等を踏まえ、精神保健指定医が判断を行うものでありますので、一律に数値目標を設定することは慎重に検討する必要があると考えております。
精神障がいの当事者の方々始め、広く御意見を聞きながら、代替方法の充実等による可能な限りの身体拘束の最小化に引き続き努力をさせていただきたいというふうに思っておりますし、そうした中で、先ほどの検討会等々における議論も進めさせていただきたいと考えているところでございます。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。

○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

今日は時間が足りませんが、身体拘束の件は引き続き質疑で追及してまいります。代読お願いします。

代読します。
最後に、束ね法案について申し上げます。
障がい者に関する複数の改正法案が、束ねられたまま昨日国会に提出されました。国連勧告という世界からの警鐘を無視し、問題のある精神保健福祉法改正案を隠して、ほかの障がい者関係の法案と束ねて国会に出すのであれば、政府は極めて不誠実だと言わざるを得ません。束ね法案の提出には改めて抗議します。


○委員長(山田宏君) 速記を止めてください。
   
○委員長(山田宏君) 速記を起こしてください。


○天畠大輔君 

無視して隠して束ねて出す。政府の姿勢には憤りを感じています。質疑を終わります。