2025年3月31日 厚生労働委員会質疑(戦没者遺族特別弔慰金支給法改正案審議)「元日本兵のPTSDで今も苦しむ家族に支援を」

〇天畠大輔君
代読いたします。れいわ新選組の天畠大輔です。
私は今月3日、ニューヨークで開かれた核兵器禁止条約非締結国の国会議員会合に参加いたしました。わが党の代表としてだけでなく、ひとたび戦争が起きれば真っ先に見捨てられる、ひとりの障がい者としても参加しました。
障がい者を取り巻く社会的障壁の問題も、核問題も、最も重要なのは「対話」です。「核なき世界」への国家間の対話、そして何よりもまず被爆者との真摯な対話が必要不可欠です。
ノーベル平和賞を昨年受賞した被団協・日本原水爆被害者団体協議会の代表は「日本政府に是非来てほしかった」と、とても残念がっていました。オブザーバー参加すら拒むとは何事ですか。ちょうど1週間前の3月24日、読売歌壇に次のような歌が掲載されました。
「唯一の戦争被爆国と言い、戦争使用国に従う」
日本政府の立場は、世界中で核廃絶を求める人々に対する挑戦であり、広島、長崎の被爆者に対する許し難い裏切りです。核保有国に追従するのはやめるべきです。宮路外務副大臣、「核兵器禁止条約の批准に向けて取り組む」と今日ここで明言してください。
〇副大臣(宮路拓馬君)
お答え申し上げます。わが国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、核兵器国、非核兵器国双方と連携しながら国際社会の取り組みを主導していく決意です。
ご指摘の核兵器禁止条約については、かねてから述べているとおり、核兵器のない世界への出口ともなり得る重要な条約ですが、同条約への対応は、国際社会の情勢を見極めつつ、わが国の安全保障の確保と核軍縮の実質的な進展のために何が真に効果的かという観点から考えるべきものであります。
政府としては、国際的な核軍縮は、核兵器国を交えず進めることは難しく、核兵器国と非核兵器国が広く参加する核兵器のない世界に向けた唯一の普遍的な枠組みであるNPT体制の下で進めることが引き続きより望ましいと考えており、NPT体制の下で核兵器のない世界に向けた現実的かつ実践的な取り組みを推進してまいります。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
日本は、第3の戦争被爆地の発生を許す気ですか。せめてオブザーバー参加を検討すべきです。代読お願いします。
次に行きます。さきの大戦では、帰還兵を夫や父に持つ妻や子どもたちもまた、癒やし難い深い傷を負いました。核兵器、通常兵器のいかんにかかわらず、ひとたび戦争が起これば多くの市民が世代を超えて長期間にわたって筆舌に尽くし難い苦しみを味わいます。
福岡厚労大臣、元日本兵、軍属、準軍属のPTSD・心的外傷後ストレス障がいとその家族への影響に関する現状把握はどうなっていますか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
心の傷を負われた元兵士やそのご家族の実態を語り継ぐことは、戦傷病者とそのご家族が戦中戦後に体験されたご労苦を次の世代に伝えていくためにも大変重要であると認識をしております。
このため、昨年、2024年の「しょうけい館運営有識者会議」におきまして、心の傷を負われた兵士の展示に関してご議論をいただきました。令和6年4月からは、しょうけい館において展示に向けた調査を今進めておりまして、その調査の中で、ご家族も含めた体験記等を収集しているところでございます。心の傷に関する症状の種類やその人数も含め、文献等の中で把握したデータにつきましても、来年度中を目途に公開を目指している展示に向けて準備を進めてまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
戦火を直接経験しなかった女性や子どももまた、心に深い傷を負います。代読お願いします。
本日は「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」から黒井さち子さんらお三方が、本委員会の傍聴にお見えです。
資料1をご覧ください。藤岡美千代さんは、元日本兵の父親から筆舌に尽くし難い虐待を受けて育ちました。その背後には、もちろん戦争によるPTSDがあります。彼女が9歳のとき父親は47歳で自死しましたが、藤岡さんは「あんなやつ、死んでくれてありがとう」とさえ思ったそうです。ところが、戦争前の父親を知る親戚から「戦争に行くまでは本当に良い人だった」と聞かされ、大きなショックを受けます。
藤岡さんは、今も怖くて父親の写真が見られないそうです。虐待の記憶がからだの痛みとなって現れるからです。藤岡さんは、父親のことをいつか「そんな人じゃなかったんや」「お父ちゃんって言いたい」「写真を見られるようになりたい」と願っています。このような記憶と経験を抱えながら生きている元日本兵の妻や子どもたちが、日本社会には実にたくさんいるのです。
おととい、私はしょうけい館を視察しました。しかし、元日本兵のPTSDによって家族が被った被害に関する情報は残念ながら何もありませんでした。元日本兵の家族への影響を早急に調査すべきです。いかがですか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
まず、しょうけい館、実際にご視察いただいたということで、ありがとうございます。しょうけい館における展示に向けた調査については、令和6年4月から実施しているところでございます。
これまでのしょうけい館の展示におきましては、戦地で身体に傷を負われた方に関する展示が中心となってございまして、心の傷を負った元兵士であったりそのご家族のご労苦の展示が行われることは大変少のうございましたが、調査結果を踏まえまして、本年夏に期間限定のパネル展示を行うとともに、来年2月を目途に、常設展示を見直すなど、心の傷に関する新たな展示を行うことを目指し、対応を進めていきたいと考えております。
また、これまでも公務に起因または勤務に関連して傷病にかかった軍人軍属等に対しまして、戦傷病者特別援護法の規定に基づき、精神疾患を含めた公務傷病等について療養を受ける場合は療養費を公費負担する等、必要な支援を行ってきているところでございます。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
殺した側が一生背負う怖さが理解できますか。福岡大臣、藤岡さん親子にどんな言葉をかけますか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
ご家族の方も含めまして筆舌に尽くし難い苦しみを遭われた方々が多数いらっしゃるというふうに承知をしております。そういった方々の心情にも寄り添いながら、引き続き援護施策しっかりと進めてまいりたいと思います。
〇委員長(柘植芳文君)
天畠君が発言の準備をいたしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
もっと血の通った対応をすべきです。代読お願いします。
資料2をご覧ください。英国では、陸軍軍人の家族の生活の質的向上を目的とした「アーミー・ファミリーズ・フェデレーション」という第三者機関を設置し、個人が特定されることなく相談できる体制を整えています。
また、カナダでは、軍人とその家族に対する包括プランとして、24時間、年中無休で電話ないし面談で秘密保持のうえで相談できるサービス、全国的なピアサポートネットワーク、給付金、リハビリ、教育支援などを展開しています。このような取り組みについて、日本も学び取り、施策化すべきではないですか。
〇国務大臣(福岡資麿君)
英国であったりカナダについての取り組みについてはご紹介いただきました。概要等については、ホームページ上等に載っていることについては承知していますが、なかなか、各国の個別の事例についての詳細というか把握がなかなかできておりませんが、各国の施策につきましては、それぞれの事情に応じて異なるものと考えます。
わが国におきましては、公務等により傷病にかかった軍人軍属等に対しましては「戦傷病者特別援護法」に基づき、精神疾患を含め、公務等により生じた傷病等について療養を受ける場合には、その費用を公費負担するなどの必要な支援を行っているところでございます。
戦傷病者とそのご家族への支援につきましては、昭和40年から戦傷病者相談員制度を設けまして「戦傷病者特別援護法」による援護に関する事項や生活上の問題などの相談に幅広く応じてきてまいりましたほか、昭和41年からは「戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法」に基づき、さきの大戦で障がいを負われた夫の介助、看護や家庭の維持等のため長年にわたり大きな負担に耐えてこられた精神的な苦痛に対し、国として特別の慰藉を行うために特別給付金を支給しているところでございます。
なお、精神保健医療福祉施策におきましては、原因にかかわらず、精神疾患を有する方に対する支援も行っているところでございまして、こういった施策も含めて引き続き適切に対応してまいりたいと思います。
〇天畠大輔君
政府が元日本兵とその家族に対する実態把握と支援にしっかり取り組むよう要求し、質疑を終わります。
〈配布資料〉



