2025年12月4日 厚生労働委員会質疑(医療法改正案審議)「いろんな当事者による地域医療構想の策定を!」


〈質疑〉
〇天畠大輔君
代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。
まず「障害年金の不支給増加問題」について、通告した質問は最後にまわしたうえで、1点だけ申し上げます。一昨日の大臣の答弁には強烈な違和感を覚えました。大臣は、障害年金の不支給事案のうち、審査請求が行われた案件は総点検の対象としない理由として「原処分庁が審査請求の決定を待たずに自ら処分を変更することもあり、その件数は直近3年間で、平均で100件程度、これらを加えれば容認率は総点検と変わらない」と強弁しました。

不服申立てをした人が、審査庁の審査で貴重な時間と手間を増やす前に、原処分庁自らが間違いを認めて申請者の利益に結び付くのなら、それ自体は否定するものではありません。しかし、こちらの意見に対する反論として、軽々と「年間100件くらい間違い発見してます」とおっしゃったことは看過できません。原処分のずさんさを大臣自らお認めになったということでしょうか。障害年金の認定一件一件に人の人生、命がかかっています。いったんは不支給となった年間100名もの人が、その間どんな大変な思いをしたか、きちんと想像して答弁をしてください。原処分のずさんさを見るにつけ、やはり、審査請求・再審査請求が行われたものについても、総点検の趣旨を理解したチームで改めて見直すべきです。大臣、ぜひ年金申請者一人一人の生活を想像したうえで、ご判断いただきたいと強く申し上げまして、本題の医療法の質疑に入ります。

「医療法」の名の下、実際に進んでいるのは「医療崩壊」です。その崩壊のスピードをさらに加速する修正案が、自民、維新、公明、立憲、国民の与野党5党共同で強行されました。この5党修正案、衆議院厚労委員会での委員会質疑時間は何とゼロ分です。趣旨説明の後、質疑なしですぐさま討論・採決が行われたからです。つまり、衆議院厚労委員会の段階では、5党修正案の内容について委員からの質問とその答弁がまったくないまま、参議院に送付されてきています。いわゆる「登壇もの」である本法案及びその修正案の質疑日程とは、到底思えません。

本日は、伊東信久衆議院議員が修正案提出者としておこしです。伊東先生は椎間板ヘルニアの専門医でもあります。体じゅうに広がる痛みとしびれによって「歩けない」「眠れない」と苦しむたくさんの患者さんたちを救ってきたことと思います。一人の医師としてこの法案を見つめた時、いち与党議員とは全く違った形と中身を実感なさっているのではないでしょうか。本日は是非その視点もしっかりと含め、よろしくご答弁をください。

さて、修正案における「都道府県は医療計画において定める基準病床数を削減する」という条文の意味、背景、立法事実等について事前に質問したところ、衆議院法制局より以下の回答がありました。
今般の病床数の削減を支援する事業等に関する修正は、自民・公明・維新の3党における社会保障改革に関する協議の合意文書において、「社会保障改革による国民負担の軽減を実現するため」「人口減少等により不要となると推定される、約11万床の病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図ること」とされたことを踏まえ、修正案に盛り込まれたものである。この「不可逆的な措置」について、修正案においては「医療計画において定める基準病床数を削減する」となっています。
こういう内容でした。厚労省の「医療施設動態調査」によると日本の病院の総病床数は本年9月末時点で145万322床です。11万床減らすということは7.6%の削減です。

まず、伊東信久衆議院議員に3点伺います。
1点目、2年後の日本の病床状況、全国の病床数が134万床余りにまで減った姿を、都道府県・市区町村ごと、一次・二次・三次医療圏ごと、また診療科ごとにその試算を把握しているのですか。
2点目、「3党合意文書」には、この11万床削減で年間5千億円の財政適正化があると試算しています。日本の医療費を2024年度時点の概算で約48兆円。つまり年間5千億円、約1%の削減効果が出て、日本の医療費が47.5兆円に「適正化」すると考えているのですか。
3点目、「不可逆的な措置」とは、元に戻したり増床したり決してしないということですか。
以上3点について簡潔にお答えください。

衆議院議員(伊東信久君)
お答えいたします。ご指摘の11万床のことなんですけれども、11万床と申しますと、一般病床5万8,000床、精神病床5万3,000床で10万9,000床で、約11万床というところなんですけれども、ご指摘どおり、都道府県であったり、市町村であったり、一次、二次、三次の医療圏とあるわけなんですけれども、政府においてこの都道府県を通じるわけなんですね。だから、都道府県を通じて、医療機関ごとに削減する予定の病床数や、COVID―19にもありましたように、この新興感染症、まだ見ぬ新興感染症に係る病床数を確保せにゃいけないという、こういったところも調査しての話だと承知しておるのが一点目のご質問に対するお答えでございます。

2点目の、1%の削減効果で47.5兆円の適正化ということを目指しているという理解ですかというご質問なんですけれども、日本維新の会が行いました一定の合理性のある試算というのがあるんですけれども、その当該削減が実現した際は、この試算に基づけば大体約1兆円の医療費削減効果と期待、計算されるなど、一定規模の入院医療費の削減効果が期待できるというものです。

3点目のご質問のこの不可逆的という意味についてお尋ねされたと思うんですけれども、これ、先ほどの3党合意がございまして、そこの中に、2年後に新たに地域医療構想というのがございます。だから、これに向けて不可逆的な措置を講ずるという、こういった文言があるんですけれども、これは調査を踏まえて次の医療構想までに削減を図るということでして、衆議院での修正部分において、病床数の削減する事業において病床数を削減したときに、医療機関において基準病床数を削減するわけなんですね。この具体的な内容というのは、成立後に基準病床数のこの趣旨というものと整合性も確保して、そして政府において適切に検討していただくと、そう理解しております。

〇委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしております。お待ちください。

〇天畠大輔君
不可逆的な措置という時点で、基準病床数の趣旨との整合性が取れていません。代読お願いします。

「基準病床数」について厚労省に問い合わせたところ、基準病床数制度は、6年の計画期間中における病床の整備について、病床過剰地域から非過剰地域へ誘導することを通じて、病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保することを目的としています。そのため、基準病床数の算定は、各医療圏の人口、性・年齢階級別人口、病床利用率、平均在院日数、患者の流出入などのデータに基づき、全国統一の算定式によって行われているのです。

引き続き、伊東信久衆議院議員に伺います。修正案成立後の「都道府県が行う基準病床数削減」は、この「現行の基準病床数」と比べ、位置づけ、目的、算式などにおいて、どこが同じでどこが違いますか。また、自・公・維合意の11万床削減は、修正案成立後の基準病床数に反映されますか、されませんか。

〇衆議院議員(伊東信久君)
先ほどのご答弁と重なってちょっと恐縮なんですけれども、内容に関しては政府に基づいて検討いたしております。そのうえで、私、大阪なんですけど、大阪でも過疎地域が4つございまして、それぞれの過疎地域におきまして、例えば精神病院、療養型しかないような病床もありまして、そこを平均的にならすというよりは、そこの国民の皆さん、患者様が、例えば救急のときには救急搬送もしなければいけない、そういう地域の事情を踏まえるというところで、ご質問のご趣旨とは合致しているとは思っております。

〇天畠大輔君
代読します。
少なくとも建前としては、過剰地域から、そうでない地域への誘導策を講じて偏在を是正し、そのことを通じて医療レベルを全国的に一定水準に保とうとしているわけです。ところが、本修正案においては、その前段の自・公・維3党合意文書の「不可逆的な措置」として病床削減が位置付けられ、それを受けて今回の「削減」のみが盛り込まれています。

この点について、改めて伊東衆議院議員はどう受け止めていますか。

〇衆議院議員(伊東信久君)
ご質問ありがとうございます。答弁としては、恐縮なんですけれども、政府において適切に検討していただくものということなんですけれども、各病院というのがありまして、例えば過疎地域であれば、それだけやはり人口減少もございまして、ますますその人口減少をこれはまた政府において検討していただくわけなんですけれども、やっぱり患者さんの数というのは減ってきています。そうなると、病院自体の経営、まあ大体7割ぐらい、8割ぐらいの病床を持っている経営状態の赤字状態であるというのは、私も医療機関を通じて周知の事実でございます。つまり、医療を守るために、患者さんを守るために、こういった政府において今適切な検討をしていて病床数を削減するという、そういった趣旨でございます。

〇委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
医療費が増えているのは「命を助けている証」です。代読お願いします。

日本社会の高齢化と医療費増大が進む中「人口減少で不要になる病床が11万床」という試算を、本法案賛成者は最大限利用しました。そして現下の地域医療構想の下で進む「病床削減」をさらに加速させ、医療費削減効果を演出し、この傾向がもはや逆戻りさせることは絶対に不可能だと、人々の心に深く植え付けようとしています。

命を助けている医療費を削るのは、命を削ることに等しいにも関わらず、反対の声はここ国会にどれだけ届いているでしょうか。少数派の代表は議員定数削減で消し去られようとしています。人々の命と健康を削る刃の方向は微動だにせず、1ミリたりとて後退しません。この修正内容は改悪と言わざるを得ません。

伊東信久衆議院議員への質問は以上です。退出して結構ですので、委員長、お取り計らいのほどお願いいたします。

〇委員長(小川克巳君)
伊東君はご退室いただいて結構です。ありがとうございました。

〇天畠大輔君
代読します。次に、厚労省に伺います。

「現行の基準病床数」の算出においては、入院に著しい困難を抱えた人、入院をあきらめた人、やむなく他の方法を選んだ人、意に反した退院をせざるを得なかった人などの数やその理由は反映されていますか。反映されていないとすれば、今後反映していくべきではありませんか。

政府参考人(森光敬子君)
お答え申し上げます。基準病床数は、病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保することを目的としており、その算出に当たっては、直近の入院患者の動向等を踏まえることとしております。現に、入院していない方々について必ずしも基準病床数の値に直接反映されるわけではございませんが、算定式から求められる入院患者数をそのまま病床数として設定するのではなく、病床数が不足することのないよう、入院患者数の見込みに対して病床利用率を考慮することとしておりまして、例えば一般病床については、これまで見込まれる患者数から3割程度余裕を持った病床数を算定しているなど、委員のご懸念にも一定程度対応するものとなっていると考えております。

〇天畠大輔君
代読します。
病床利用率を考慮したとしても、入院できないケースは現実にあります。「不可逆的な措置」によって削減された基準病床数のもとでは、入院できない患者さんがさらに増えるのではないでしょうか。やはり、入院困難者の数字も考慮すべきです。

これまで、今回の医療法改正による病床数削減の問題に焦点を置いて議論してまいりましたが、将来に向けて地域の医療体制を維持、向上させていくためには、各都道府県において、適正な基準病床数を設定することとあわせて、入院だけではない外来診療や訪問診療の在り方など、様々な問題について、それぞれの地域の実状を踏まえて、真剣に検討し、取り組んでいく必要があると考えます。

たとえば、令和5年11月の高知県地域医療構想調整会議において田村耕平議長、当時の須崎くろしお病院院長はこう発言しています。
「高幡圏域には中核となる公的病院がない。医師不足を非常に切実にいつも思っている。高知大学大学病院自体の医師派遣機能がどんどん低下している。2000年の初期臨床研修制度で、地域医療が崩壊した。」

また、埼玉県の秩父地域医療構想調整会議では令和6年の第2回会議において、同年9月から10月にかけて139病院、49有床診療所から集めたアンケート調査の結果が報告されました。秩父地域においては、精神疾患をもつ患者が経済的な困難や家族関係の問題に直面し、地域移行がなかなか進まない現状が報告されました。地域住民の理解を深める普及啓発の必要性と、行政のサポートの抜本的強化を求める声が紹介されました。

このように、現場からはまさに地域医療構築への貴重な意見がたくさん出てきています。そして、医療を受けながら、地域での暮らしを継続していくうえで、生活の実態や困りごとを最も理解しているのは、医療を受ける「当事者」です。社会の中の様々な問題に取り組もうとする時、その課題の本質を最も理解し、解決策のアイディアを持っています。

ここで、大臣に伺います。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」は、きわめて本質的な世界共通基盤です。地域医療構想調整会議に、障がい者、高齢者、子ども、女性などの諸団体から代表者として入っていただき、闊達に意見交換する仕組みをつくることについて、大臣のお考えをお聞かせください。

国務大臣(上野賢一郎君)
お答えいたします。現在の地域医療構想におきましても、地域医療構想調整会議の参加者について、例えば医療を受ける立場にある住民代表の方を加えるなど、都道府県において柔軟に選定できる旨を策定ガイドラインにおいてお示しをしております。これまでも、実際に地域医療構想調整会議に住民や患者団体等が参加をされているものと承知をしています。一方で、今後の新たな地域医療構想では、外来、在宅医療等にその対象が広がることとなりますので、より一層住民等の関係者の意見を十分にお伺いをしながら検討を行うことが更に重要になると考えております。ご指摘のような患者の皆さんや障がい者の皆さんなど住民の皆さんに地域の協議への参加が促されるように、今後、参加者の考え方についてガイドラインにおいて明確化することを検討していきたいと考えています。

委員長(小川克巳君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

ガイドライン策定の段階から当事者を参画させませんか、大臣。

政府参考人(森光敬子君)
お答え申し上げます。繰り返しになりますけれども、今後の新たな地域医療構想では、外来、在宅医療等にその対象が広がることになりまして、住民等の関係者の意見を十分に聞きながら検討を行うということが重要になります。住民等の参加者の、関係者の参加については、実効的な運営、会議運営になるよう、会議ルールのあり方について引き続き関係者の意見を十分に聞きながらガイドラインについて検討を行っていきたいと考えております。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
代読します。医療崩壊を食い止める最大のポイントは当事者参画だと思いますので、是非、大臣、ご検討をお願いいたします。

質問が少し戻りまして、基準、入院困難者の点についてもう1点質問いたします。仮に病床が足りていても入院できないケースもあります。例えば私のような重度障がい者は、入院時に慣れたヘルパーの付添いを病院から断られ、入院を諦めるケースが少なくありません。昨日の参考人質疑では、日本医師会常任理事の城守国斗参考人、久英会理事長の中尾一久参考人より、入院時のヘルパーの付添いを後押しする力強いお言葉をいただきました。

そこで大臣に伺います。国は病床削減にお金を出す余裕があるのであれば、障がい者が入院する際、例えばヘルパーの付添いを受け入れる体制整備にもお金を使うことが十分可能かと考えますが、大臣のご見解をお聞かせください。

国務大臣(上野賢一郎君)
障害福祉サービスの重度訪問介護を利用されている重度障がい者につきましては、入院中も引き続き重度訪問介護を利用して、本人の状態を熟知した支援者の方による支援を受けることを可能としております。直近の令和6年度障害福祉サービス等報酬の改定においても、当該支援の対象となる支援区分の拡大や入院前の事前調整に係る費用の新設を行うなど、支援の充実を進めているところでありまして、いずれも重要な取組だと考えておりますので、今後とも必要な取組をしっかりと進めていきたいと考えています。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
私が申しているのは、患者や病院を直接支援するということです。代読お願いします。

ヘルパー派遣事業所に対して加算する、現行の財政支援は現時点であります。私が今日ここで申し上げたいのは、たとえばヘルパーの付き添いを受け入れるにあたっての個室代に対して国が補助を出したり、通訳を利用したい患者さんの自己負担を軽減したりする支援策になります。当事者が直接実感できる熱のこもった支援にお金を使ってほしいと考えているんですけれども、大臣、再度前向きな答弁をお願いいたします。

政府参考人(森光敬子君)

まず、その病院等に対しての支援ということでございますが、基本的には、それを言い換えますと、障がい者が入院する際の差額ベッド代についての自己負担を軽減若しくはなくすべきということになるかと思います。基本的には、患者ご本人の方の治療上の必要性等によってそのような特別療養環境室に入院させるような場合については、病院については差額ベッド代を徴収してはならないというふうになっております。そのような障がい者であることをもって一律に特例的な対応がされるというものではありませんけれども、今後とも医療現場で適切に運用がなされるように指導していきたいというふうに考えております。

天畠大輔君
大臣に伺っています。是非大臣からお願いします。

国務大臣(上野賢一郎君)
局長から今答弁があったとおりでございますが、もし患者本人の方に治療上の必要があれば差額ベッド代を徴収してはならないというふうになっております。一律に特例的な対応がなされているわけではありませんが、今後とも医療現場で適切な運用がなされるように努めていきたいと考えています。

天畠大輔君
代読します。まとめます。差額ベッド代については、病院への支援策として提案をしていることは1点申し付け加えさせていただきます。質問を終わります。


〈討論〉
天畠大輔君
医療法はもはや「医療破壊法」です。代読お願いします。

私は、れいわ新選組を代表して「医療法等の一部を改正する法律案」に反対の立場から討論を行います。

11月21日夜、立民、国民の2党合同修正案が示されましたが、この時点ですでに「最初の自・公・維3党修正案と合体するだろう」という情報が流れていました。連休明けの11月25日、2つの修正案の趣旨説明が衆議院厚労委員会で行われましたが、両修正案についての質疑はなく、その日は参考人質疑のみで終了。翌26日は、閣法と2つの修正案の質疑が行われ、委員長の「質疑終局宣言」後、両修正案の提出者全員が撤回を申し出ました。ただちに5党相乗り修正案の趣旨説明が行われ、質疑なしですぐさま討論・採決。このような審議の進め方は断じて許せません。

そもそも参議院には、衆議院の段階では議論し尽くせなかった論点での再チェックという大きな存在意義がありますが、今回のやり方はそれを完全に損なうものです。修正案に相乗りした5党に対して断固抗議します。

そもそも内閣提出の原案は、この法律の名前「医療法」とは名ばかりで、実際には「医療崩壊法」として全国各地で医療資源の縮減のエンジン役となっていることに対する反省と方向転換がまったく盛り込まれていません。この一点だけで、もはや評価にあたいしません。

次に、衆議院で修正された部分について述べます。

反対理由の第1は、都道府県が医療計画において基準病床数をさらに削減する旨明記されている点です。そもそも現行の「基準病床数」は、「病床過剰地域から非過剰地域へ誘導することを通じて、病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保すること」が目的とされています。であるならば、削減のみならず、必要に応じて拡充する方向性もセットで明記しなければ「はじめに削減ありき」そのものです。結局、「基準病床数」とは名ばかりで「病床削減」を進めるための圧力として利用されており、今回の修正でもそれがさらに強化されていることが明らかになりました。

反対理由の第2は、2030年12月31日までに電子カルテの普及率100%を達成するとしている点です。これにも大きな批判が寄せられています。日本医師会は、導入義務化に「断固反対」と言っています。今年4月から5月に行った調査では、過半数の診療所が「導入不可能」と回答しています。「費用負担が重い」「操作が複雑で診察時間が削られる」ためです。

政府には医療DXを遂行する意思も能力もありません。「マイナ保険証」導入をめぐる迷走ぶりを見てください。多くの人々の納得を獲得しながら丁寧に物事を進めることができない。医療法に限らず、高市政権全体を覆う致命的欠点がここにあります。人びとの命と健康を取り戻す時です。反対討論を終わります。