2024年6月4日 法務委員会・厚生労働委員会連合審査(入管法等改正案審議)「障がいのある在住外国人のこと、考えたことありますか?」
〇天畠大輔君
代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。制度のはざまに焦点を当てて質問します。
障がいのある外国人が非正規滞在の場合、命や権利が守られないことがあります。まず、事例を2つ紹介します。
もともと、就労を条件とする在留資格を持っていた方が体調を崩して働けなくなりました。その後、在留資格喪失とともに健康保険資格も失い、医療機関を受診できないうちに人工透析が必要な状態に陥りました。日本では、身体障害者手帳取得を要件とする「更生医療」によって人工透析などへの医療補助が受けられます。しかし、この方は非正規滞在のため身体障害者手帳が取れず、それも使えません。
もうお一人の事例です。本国に帰ると命の危険にさらされるため、仮放免の状態で在留特別許可を求め、10年以上国内に居住していますが、いまだに在留資格は認められていません。その間にHIVが進行しましたが、健康保険も更生医療も使えません。
このお二人は結果的に無料低額診療事業を行う医療機関につながるなどして何とか命をつなぎました。しかし、無料低額診療を行っているのは、全国に18万ある医療機関のうち700程度にすぎません。無料低額診療にもつながらず、制度のはざまで命を落としている方がいると想像します。
厚労省はこれらの事例を把握していますか。把握の有無のみ、大臣からお答えください。
〇国務大臣(武見敬三君)
把握しておりません。
〇天畠大輔君
代読します。在留資格がない方の更生医療利用については国会でも25年ほど前から問題提起が続いています。それにもかかわらず、厚労省が把握をしていないのは残念です。
これらのケースは決して珍しいものではありません。例えば、就労に基づく在留資格の保持者が失業したり人権侵害で職場を離れた場合、必ずしもすぐに在留資格取消しとはならなくても、うまく次の在留資格につながらず、非正規滞在となることが多々あります。非正規滞在者は、国民国家において「もっとも脆弱な人」との指摘もあります。入管法上では退去強制の対象であっても、労働法制上では現実の労働に着目して保護の対象とし、非正規滞在者であっても労災が適用されるなどの政策変更はこれまでもありました。
人道的見地、また、内外人平等の観点から、緊急性が高く、更生医療利用対象になるような医療を非正規滞在者が受けるにあたって何かしらの方策を取れるよう検討を始めるべきではないでしょうか。厚労大臣、いかがですか。
〇国務大臣(武見敬三君)
在留資格がない外国人をテーマにご指摘を受けているわけでありますけれども、障害者総合支援法に基づく更生医療というのは、身体障害者手帳の交付を受けた身体障がい者が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療について、その所得に応じ医療費の自己負担の一部を補助する仕組みでございまして、同制度は、社会連帯と相互扶助の理念に基づくものでございますから、この在留資格がない外国人にはこれ適用ができません。
こうした障害者総合支援法に基づく更生医療というのは、身体障がい者が自立した日常生活、社会生活を営むことができるようにするため、一定の場合に医療費の負担の軽減を図るために公的な助成も行います。この制度は、社会連帯と相互扶助の理念に基づいて、身体障害者手帳の交付を受けた身体障がい者の社会経済活動への参加の促進を図るために講じている制度でございますから、不法滞在の外国人を対象とするというのは困難だと思います。
〇委員長(佐々木さやか君)
計測を止めてください。天畠さんが発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
残念です。見殺しにするのですね。法務大臣、厚労省と連携して方策を考えませんか。
〇国務大臣(小泉龍司君)
大変申し訳ないことですが、更生医療は入管庁の所管外であり、そのあり方についてお答えすることは困難であるということを是非ご理解をいただきたいと思います。
〇委員長(佐々木さやか君)
計測を止めてください。天畠さんが発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
制度が改善しないと適切な対応ができません。厚労省と法務省共に考えてください。代読お願いします。
次に、障がい児の権利について伺います。難民申請をしている仮放免中の方に知的障がいの子がいます。この子は、親の在留資格が変わったために、もとは使えていた放課後等デイサービスの利用を理不尽にも止められてしまいました。日本も批准している子どもの権利条約23条に照らせば、子どものための障がい児支援について、親の在留資格の適法性を条件にするのは不適切ではないでしょうか。障がい児支援を定める児童福祉法第1条にも、「こどもの権利条約の理念にのっとり」とあります。
工藤副大臣に伺います。改善の検討を始めるべきではないでしょうか。
〇副大臣(工藤彰三君)
お答え申し上げます。放課後等デイサービスを始めとした障害児通所支援は、障がい児に対して、日常生活における基本的な動作及び知識、技能の習得のための支援、生活能力の向上のための必要な支援などのサービスを障がい児の発達段階に沿って提供するものであり、基本的には、地域に居住している障がい児が継続的に支援を受けることを想定しております。
また、障害児通所支援も含めた各種の福祉サービスが、サービスを受給する者も含めた支え合いの中で成り立っていることも踏まえれば、国内に適法に居住していない外国人に対して障害児通所支援が提供されることは通常想定していないところでございます。
一方、適法に居住しているか否かにかかわらず、こども家庭庁では、外国人の障害児通所支援の利用実態について把握していないところであります。外国人の在留や出入国管理については、まずは制度を所管する法務省において適切に対応していただくことを前提とした上で、例えば、外国人が適法に国内に居住していない期間内に障害児通所支援がどうしても必要となる事例などがあれば、当事者の声や状況も含め、その事態を法務省から情報提供していただくなど、必要に応じて連携を図ってまいりたいと考えております。
〇委員長(佐々木さやか君)
計測を止めてください。天畠さんが発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
是非、当事者から話を聞いてください。代読お願いします。
次に、今回の改正案について伺います。「故意に公租公課の支払をしないこと」といった永住資格の取消し事由拡大にあたって、政府は、在住外国人当事者、また、そのうち複合的な課題を抱える女性や障がい者に見解を聞いたり、検討の議論に参画してもらいましたか。法務大臣、お願いいたします。
〇国務大臣(小泉龍司君)
永住許可制度の適正化の検討過程において当事者の方から直接見解を伺ったことはありませんが、例えば第7次出入国管理政策懇談会などの場においては、当事者の方々の意見を代弁する有識者の方々、例えば外国人の方あるいは弁護士の方、そういった方々から詳しくご意見を伺ってきたところであります。
そうしたご意見をしっかり踏まえた上で法務省としては検討を行い、一部の悪質な場合についての公租公課の滞納ですね、取消しができるものとしますが、しかし、在留資格、これをあくまで変更するという形にしまして、定着性に十分配慮したところでございます。
〇委員長(佐々木さやか君)
計測を止めてください。天畠さんが発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
複合マイノリティーの方が抱える課題も把握すべきです。代読お願いします。
永住資格が取り消され、在留期限のある定住者になれば、例えば不動産の賃貸契約が結びにくくなるなど、社会経済生活上の不安定さは確実に増します。障がいのある外国人だったらなおさらです。私もアパートを探すにあたり何度も差別を経験してきました。
また、障がい福祉サービスを利用する外国人は、日本人と同様に、利用時間数の行政交渉、ヘルパーなどとの関係構築など、相当な調整が必要です。永住者だった障がい者が期限のある在留資格へ変更になった場合、それまでと全く同じようには生活を組み立てられないでしょう。障がい者の立場から強く懸念します。
そのような人たちの実情を聞かずして今回の法改正を決め、さらに、「定住性に配慮している」などと強弁するのは、慎重とは程遠い姿勢です。まずは、定住資格取消し事由の拡大は取り下げるべきです。法務大臣、いかがですか。
〇国務大臣(小泉龍司君)
今申し上げた懇談会の場におきましては、外国人の方々あるいは弁護士の方々が様々なその当事者の方々の意見を踏まえてご意見を出していただきました。そういったご意見を踏まえる中で、法務省としては、ごく一部の悪質な場合に限って、限定をしてそういう対処をしようということでございまして、多くの、多くの普通に納税をしていただいている方々には何の影響もこれは及びません。ごく一部の悪質な、悪質な納税滞納をしている方には是正を求めていきますけれども、そうでない方々には何の措置もとることはありませんので、その辺をよくしっかりと我々も広報していかなければならない、ご理解を求めていかなければならないと思っております。
〇天畠大輔君
代読します。まとめます。それでは改正案には賛成できません。悪質性云々とおっしゃいますが、これまでの国会審議で指摘されたように、入管の裁量が大きすぎます。真面目に暮らす永住者や日本国民の不公平「感」を助長するので共生社会のために必要な措置だなどと国会で説明し、分断を先導していることにも抗議します。この法案に賛成する国会議員もまた共犯者です。永住資格取消し事由の拡大の取下げを重ねて求め、質疑を終わります。