2024年6月11日 厚生労働委員会質疑(ハンセン病家族補償法改正案採決)「国立ハンセン病療養所は、国家公務員定員削減計画の対象外にすべきです」

〇天畠大輔君

代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。ハンセン病家族補償法に関連して質問します。

まず、本法の制定や、らい予防法廃止、またハンセン病基本法などの議員立法に尽力されたすべての方に敬意を表します。私も、先日、議員懇談会に入会し、会派を代表して、今後、各法について議論をするプロジェクトチームの一員となる予定です。家族補償法の制定時には想定できず、被害があったのに補償の対象外となってしまっている方々もおられます。これらの方々の思いを受け止め、議論に力を尽くしたいと思います。

質問に移ります。国立ハンセン病療養所13園の職員体制に対する厚労省のご認識をお願いします。

〇政府参考人(浅沼一成君)

お答えいたします。国立ハンセン病療養所の入所者の平均年齢は約88歳と高齢化が進んでおり、ハンセン病の後遺症に加えまして生活習慣病等を発症するなど、医療・介護の必要性と多様性が増している状況にあると承知しております。

療養所の職員数につきましては、療養所の立地や業務の内容の特殊性から職員の確保が困難である中におきましても一定の職員数を確保し続けているところではございますが、定員に対して欠員が生じていると認識しております。

〇天畠大輔君

代読します。入所者減も相まって、確かにデータ上では入所者1人当たりの職員数は増えています。しかし、答弁にもあったように、医療・介護の必要性と多様性が増しています。入所者の立場に立てば、十分な人員配置ではないと私は思います。

先日、療養所に暮らす方からヒアリングをしました。室内清掃が週2回、入浴回数が週3回のところもある。夜間勤務が組めないために、新たな入居棟の建設と全員の転居が既に進んでいる。視覚障がいのある人は、夜間トイレに行きたいときは職員を呼ぶが、いなければおむつで辛抱する、こういった事例を聞いています。

療養所の入所者は、国の強制隔離政策によって長期間にわたって社会から隔絶された生活を送ってきて、療養所を終の棲家(ついのすみか)とすることを余儀なくされている方々です。この事情を私たちはもっと深刻に捉えるべきです。

次に、同性介助について伺います。全国の療養所13園で、入浴、トイレ、一部の服薬といった同性介助が求められる場面で、特に女性の同性介助は守られていますか。


〇政府参考人(浅沼一成君)

お答えいたします。入所者一人ひとりのご意向を尊重した生活支援体制の構築は重要であると認識しております。国立ハンセン病療養所におきましては、各勤務時間帯において女性職員が配置されるよう勤務体制を組んでおり、やむを得ず男性職員のみの配置となる場合には、ほかの配置場所から女性職員の応援体制を組むなどの対応を行っているところでございます。また、やむを得ず異性による介助をお願いする場合であっても、入所者のご意向を第一に考え対応することが大切だと考えており、入所者に丁寧な説明を行いながら実施する必要があると考えております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

ご本人が我慢して異性介助を受けることもあるということですね。再答弁お願いします。

〇政府参考人(浅沼一成君)

お答えいたします。国立ハンセン病療養所におきましては、各勤務時間帯におきまして、女性職員が配置されるような勤務体制は組んでおります。ただ、どうしてもやむを得ない、男性職員、やむを得ず男性職員のみの配置となる場合はほかの配置場所の女性職員の応援体制を組むことがございます。

例えば、やむを得ず異性介助となる場合というのであるのは、入所者の身体的なケア、入浴介助を複数人で対応すること、こういったことがございます。この場合、男性職員のみで対応することがないように配慮しています。ただ、男性職員と女性職員がペアとなって対応していることがあるということでございます。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

やむを得ない異性介助はやはりあるのですね。大臣、それで十分な配置と呼べますか。

〇国務大臣(武見敬三君)

できる限りの人員の中で、やはりこうした同性介助ということのあり方については、できる限りそれを着実に実現するよう努力してみたいと思います。

〇天畠大輔君

代読します。ある全盲の女性入所者は、痛みを緩和するため、夜に座薬を入れています。しかし、これまで2名いた準夜勤務の看護師が1名に減り、男性だけの日が発生しました。そういう日は、痛みを我慢しながら深夜勤務の女性看護師を午前1時まで起きて待たなくてはいけないと聞いています。

特に、女性障がい者にとって、トイレや入浴などの異性介助は、プライバシーの侵害、時には性暴力につながります。DPI女性障害者ネットワークによる実態調査では、当事者の声を通じて、現在でも望まない異性介助が存在する事実が示されています。

障がい者の施設収容が当たり前だった時代には顧みられなかった同性介助の原則は、介護を受ける人の尊厳と安全を守るための要です。今年度の障害福祉サービスの報酬改定においても、本人の意思に反する異性介助がなされないよう、施設や事業所は本人の意向を踏まえた体制確保に努めるべき旨が明確化されました。しかし、現実には人手不足を理由に我慢を強いられている方々が多くいます。

入所者の方々は、国の誤った施策によって、ありとあらゆる人権侵害を受け続けてきました。国は、その深い反省の上に立って入所者の方々の人権を守る責務があります。尊厳を守れる介助員に必要なときに介助を受けられない例が一例でもあるのですから、国はもっとできることがあるはずです。

そこで、厚労省に伺います。直近3年間の職種別の定員、現員数の推移を見ると、介護員や看護職といった日々入所者のケアを担う職種の定員が大きく減っています。また、療養所は離島など都市から離れた立地であり、求人に対し応募されにくい事情があります。努力すべきは人手の確保であって、定員は減らしてよいものではありません。過去には議員立法で医師の兼業を可能にしたり、また、今年度からは厚労省が療養所の医師確保のための専門官を設置するなどしています。

看護師や介護員の人員確保については、厚労省はこれまでどのような支援をしてきましたか。また、これからどのような取組をしますか。

〇政府参考人(浅沼一成君)

お答えいたします。厚生労働省といたしましては、看護師や介護員の確保が円滑に行われるよう、療養所で求められている役割、処遇、キャリアパス、ワーク・ライフ・バランスなど、療養所での勤務をイメージしやすいパンフレットを作成し、大学などへ配布するとともに、介護職員や介護員が専門的な資格を取得するための支援や処遇改善を図るための関係機関との調整などの取組を行ってまいりました。引き続き、療養所と連携しながら、入所者の療養生活の充実のために必要となる看護師、看護員の確保に努めてまいりたいと考えております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

少なくともそれは進めてください。代読お願いします。

先ほど来のご答弁にもあるように、入所者のご意向が大事であることは論をまちませんが、本人意向は、ケア人員の人数や関係性など周囲の状況に左右されます。人が足りていないと感じる環境では自由な意向は言えません。政府と国会がそんな環境をつくってはいけないと思います。

2019年のハンセン病基本法改正を経て、第11条には、「国は、医師、看護師及び介護員の確保等国立ハンセン病療養所における医療及び介護に関する体制の整備及び充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする」と、「充実」という文言が加わりました。

この「充実」に魂を込めるためには、やはり国の姿勢として、2025年度からの国家公務員の定員合理化計画の対象外とすべきと考えます。政府の見解はいかがですか。内閣人事局、厚労大臣の順にお答えください。

〇政府参考人(阪本克彦君)

お答え申し上げます。国の行政組織におきましては、すべての機関がその体制の計画的な見直しに不断に取り組み、それによって可能となった定員の合理化分を新たな行政需要や業務量の増に対応するための増員の原資としてきております。

国立ハンセン病療養所におきましても、厚生労働省の機関としてこれまでこうした取組にご協力いただく一方、委員のご質問にもございました医療あるいは介護体制の充実のための増員措置、そういったものも行ってきたところでございます。今後とも、厚生労働省とよく協議をいたしまして適切に対応してまいりたいと思います。

〇国務大臣(武見敬三君)

この入所者の方々の高齢化の進展によって、職員の看護・介護が必要となる方々も増えております。入所者の皆様が良好で平穏な生活を営めるよう、療養環境を充実させていくことは重要な課題であると認識をしています。

現在の定員合理化計画においては国立ハンセン病療養所の定員も対象となっており、入所者の減少に合わせて今後も一定の合理化を求められていくものと考えられますが、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」の趣旨をも踏まえ、高齢化等にも伴う入所者の実情に応じて充実した療養体制の確保に取り組んでまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

定員合理化計画の対象外にすべきと強く要望し、次に行きます。代読お願いします。

先日、多磨全生園の食堂を訪れ、運営者の方とお話ができました。食堂は、近隣の障がい当事者たちの集まる場にもなっている地域に開かれた場だと分かりました。同園の敷地内では、「人権の森構想」の一環である花さき保育園も運営されています。知識を授けるだけが人権教育ではありません。入所者や地域の障がい者、子供たちが交流することもインクルーシブな共生社会につながります。

本件に関しては、国は土地利用について財務省との調整など行ったと聞いています。ただ、現在は将来構想の立案や実行について法的根拠はなく、各療養所と立地自治体が協力して行っている状態です。今後、国はどのように取り組むか、政府の意気込みを、武見大臣、お願いいたします。

〇国務大臣(武見敬三君)

このハンセン病療養所において保育所の誘致など地域開放の取組を行うことは、入所者が孤立せず、良好な生活環境の確保を図る観点から重要でございます。

多磨全生園においては保育所の誘致などの取組を行っており、このような取組は、近隣住民の方々や保育所の子供たちとの交流によりハンセン病の歴史に対し交流を通じて向き合うこともできるため、人権教育にも資するものと考えます。

このような地域開放を含む療養所の将来構想については、各療養所と地元自治体が協力をし、入所者の皆様のご意向などをお伺いしながら進めておりますが、引き続き、厚生労働省職員も直接現地に出向き、地元自治体に対して積極的な協力を求めるなどの取組を進めてまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

厚労省は、将来構想について入所者の方々と十分コミュニケーションを取ってきたか、そして今後も取り続けるのか、政府の認識をお聞かせください。

〇国務大臣(武見敬三君)

厚生労働省としても、引き続き、こうしたハンセン病の元患者及び家族の皆様方との意見の交換の場を持ち、ご意見を伺うことを考えていきたいと思っております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

時間が過ぎておりますので、おまとめください。

〇天畠大輔君 まとめます。1年間、将来構想に特化した意見交換会が開かれなかったと聞いています。それは遺憾です。行政も立法も将来構想に本腰を入れるべきと強く申し上げ、質疑を終わります。