2024年5月7日 厚生労働委員会質疑(雇用保険法等改正案審議 参考人質疑)「働く障がい者のセーフティネット、雇用保険の充実を!」
〇天畠大輔君
代読いたします。れいわ新選組の天畠大輔です。参考人の皆さま、本日は貴重なお話をありがとうございます。
まず、房安参考人に伺います。
今般の改正法案に盛り込まれている「就業手当」の廃止と「就業促進手当」の減額について、どう評価されていますか。
〇参考人(房安強君)
私個人の意見となりますが、述べます。
就業手当は、再就職手当の対象、これが1年を超える雇用の確実性がある就職、自立可能と職安が認定した事業の開始、これには該当しない就職、事業開始が対象でありまして、厚労省の説明では、現在の政策目標として、不安定な就職等は促進対象とならないことから、就職促進給付の対象から就業手当を外すということです。
就業手当の現状の支給規模は小さいことから、廃止しても影響は少ないとされております。しかしながら、経歴等で就職が難しい方や障がい者などの場合、いきなり1年を超える長期雇用が確約される就職は難しいことも多く、トライアル的な雇用をまずやってみる必要性があり得ます。また、当初は1年を超える雇用の確実性がない就職であっても、その他の労働条件は良い場合もあり得ますし、雇用期間の延長の可能性もあり得ます。そのような就職を希望する労働者には個別の事情があろうかと思います。政府は「多様な働き方を効果的に支える」ことを政策目標としておりますので、就業手当の廃止との整合性が問題になると思います。
事業の開始については、自立可能とハローワークが認定できない事業を開始した場合でも、その後に事業が軌道に乗る場合もあり得ます。「起業を奨励する」という政府の政策目標からすると、このような事業も就職促進給付の対象としてよいように思います。むしろ、現行の就業手当制度は基本手当日額の3/10相当額であるのに、就業手当の給付日数分基本手当が支給されたものとみなされており、再就職手当は基本手当日額の6/10ないし7/10相当額で、更に就業促進定着手当の加算があり得るのと比較すると十分に冷遇されているものと言えます。特に、就職困難者のトライアル的な就業を不安定就職だとしてこれだけ冷遇してよいものかはもう少し議論が必要ではないかと考えております。以上から、就業手当の廃止については疑問が残ると考えております。
長くなりましたが、「就業促進定着手当」の減額について述べます。
就業促進定着手当は、手当の名称や雇用保険法の条文を一見しますと、「再就職手当の受給にかかる就職の後、6か月間雇用が継続した」という条件のみで受給できるように見えます。しかし、省令により、「再就職後の6か月間の賃金が前職の離職前の賃金を下回っている」という条件をも要求し、賃金低下による再就職意欲の低下を緩和することを目的とした給付になっております。
本来、1年を超える雇用の確実性がある再就職をして、実際にも6か月間雇用が続いたというその時点で、安定雇用による再就職は達成できたものとして、就業促進定着手当の支給対象としてもよいのではないでしょうか。モラルハザードを警戒する立場からしても、このような就業促進給付の拡充は必要だと思います。
再就職により給与が下がったことを就業促進定着手当の支給条件とする現行制度を前提とするのではなく、就業の定着自体についてインセンティブを与える制度を拡充していく、これを是非とも検討していただきたいです。
なお、再就職手当及び就業促進定着手当は、基本手当日額と支給残日数を掛け合わせた金額が両者を併せた上限額であり、基本手当の所定給付日数分を超えた財政負担をもたらすものではありません。就業促進定着手当は、再就職手当と並んで雇用保険の再就職促進機能を高めていく重要な鍵になるものと思っております。以上です。
〇委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
就業手当は不安定雇用につく障がい者のセーフティーネットでもあることがよく分かりました。
その点につきまして、房安参考人、もしよろしければご意見伺えればと思います。
〇参考人(房安強君)
就業手当は、そういう意味で、1年以上の雇用の確実性がない、そういう就職に対して給付されるものなんですが、先ほど申したとおり、不安、障がい者等の就職困難者がトライアル雇用をするのにこういう促進対象とされるべきではないかというふうな視点で申し上げたところです。
雇用安定事業においては、トライアル雇用に対する給付も存在しております。これについても就業手当の対象となり得るというふうに業務取扱要領には書いてあったかと思いますが、このように、その就職困難者に対するものとして、やはり、その重要性というのはもう少し認識して議論をしたい、しないといけないかなと思っております。以上です。
〇天畠大輔君
代読いたします。引き続き房安参考人に伺います。
厚労省は事前レクチャーにおいて、今回「の就業手当」廃止と「就業促進手当」減額にあたり、このように説明しました。「より低い労働条件への転職に対する就労支援施策を廃止ないし減額するという『ディスインセンティブ』、いわゆる不利益効果による誘導策の導入によってより高い労働条件への雇用移動を促す」。このような考え方についてどう思われますか。
〇参考人(房安強君)
「就業手当」の廃止や「就業定着促進手当」の減額が「ディスインセンティブ」の導入によってより高い労働条件への雇用移動を促すことになるというふうに言いますけど、そこまでディスインセンティブが導入されなくとも、必要もないのに不安定な就労を自ら望む労働者は多くないように思います。むしろ、前に述べたとおり、いきなり1年を超える長期雇用が確約される就職が難しい就職困難者について、ディスインセンティブがあっても1年以内の雇用期間しかない就労をせざるを得ないという場面はあり得ます。結局、この場合、不利益のみ残るということになります。よって、このような場面においてディスインセンティブを持ち出す説明には疑問が残ります。以上です。
〇天畠大輔君
代読いたします。次に、村上参考人に伺います。
参考人資料48ページにあります「連合 要求と提言の「10番、すべての働く人に対する職業能力開発施策と、日本の成長と競争力を支える人材の育成を強化する」の⑤の中には、「障がい者施策」として、「居住地近隣での職業訓練機会を拡充するとともに、地方自治体・地域の教育訓練機関・ハローワークなどが一体となり、就労に向けてきめ細かな支援を行う」とあります。
このような障がい者への職業能力開発施策について、具体的な内容をお聞かせください。
〇参考人(村上陽子君)
ありがとうございます。
障がいをお持ちの方が自立して生活していくためには経済的基盤が必要でありまして、そのためには、障がいをお持ちの方が居住する地域において訓練機会が提供される必要があると考えます。
そのための具体策ということですけれども、地域の訓練校において障がい者向けの職業訓練コースを拡充すること、また受入れ施設の導入、充実が求められると考えます。また、ハローワークを含めて関係機関との連携協力を密にして、訓練期間中のみならず就職とその後の職場の定着も含めて、皆さんで連携していただいてフォローしていくということが必要かと考えております。
〇天畠大輔君
参考人の皆様、ありがとうございます。質疑を終わります。