2024年5月21日 厚生労働委員会質疑(育児・介護休業法等改正案審議 参考人質疑)「育児・介護と仕事の両立で子どもが大切にされる社会を」
〇天畠大輔君
代読いたします。れいわ新選組の天畠大輔です。
参考人の皆様、本日は貴重なお話をありがとうございます。工藤参考人に伺います。
諸外国における子の看護休暇制度は、フランスが「扶養する16歳未満の子」、ドイツが「12歳未満の子又は障がいを持つ子」、スウェーデンが「8か月以上12歳未満、ただし病状の深刻度に応じて18歳未満まで」、ノルウェーが「子が12歳になる暦月まで」、「ただし慢性的、長期的な疾患あるいは障がいがある場合には18歳になる暦月まで」となっております。
一方、日本においては、今回の法改正で「子の看護休暇」の対象範囲が「小学校就学前」から「小学校3年生まで」拡大することとされております。もっと大幅に拡大すべきと考えますが、ご意見をお聞かせください。
〇参考人(工藤さほ君)
ご質問ありがとうございます。
健常児において、子の看護休暇は有給としている企業の方が少なく、まずその点で使いづらさがございます。そのため、一般社員はほとんど使わずに有給休暇を優先しています。一方で、治療や療育や装具の点検にどうしても看護休暇が必要な障がい児や医療的ケア児の親は、様々な休暇を駆使して働き続けている現状がございます。
法改正後は、個別の意向確認、個別のニーズの聞き取りの配慮の義務化という項目が入ってまいりますので、障がい児や疾患児を育てている親など、逼迫した事情がある働き手については、柔軟かつ具体的に日数を都度延長して付与していただけると有り難いと思っております。
今後の子の看護休暇においても対象範囲を広げていただくことは、障がいや医療的ケアがある子を育てる保護者にとっては救いになることは確かです。ドイツのように、「障がいや疾患のある子」を別に明記していただき、年齢で区切らず利用できるようにしていただくことはいいことだと思っております。
〇天畠大輔君
代読いたします。同じく工藤参考人に伺います。
諸外国における子の看護休暇制度は、スウェーデンが「子ひとりにつき年間120日、ただし後半60日については病状に関する要件付き」となっています。付与日数についてご意見をお聞かせください。
〇参考人(工藤さほ君)
お答えいたします。
スウェーデンのように、最大で年間120日の子の看護休暇があるのはとても恵まれていると思います。
とはいえ、付与日数についても、さきに述べましたとおり、個別のニーズの聞き取りと配慮が義務化されますので、そちらで柔軟かつ具体的な支援をしていただけたら有り難いです。急な子の付添い入院や、進学や進級後に120日以上の学校付添いが求められるケースなど、事情は様々なため、必要な日数はお子さんの特性やご家庭の事情によってまちまちだからです。
〇天畠大輔君
代読いたします。同じく工藤参考人に伺います。
子の看護などで休業した親への経済支援については、ドイツが「法定健康保険から手取り賃金の90%を保障」、ノルウェーが、「使用者が被用者に対し賃金の100%を介護手当として支払う、ただし、10日間を超えた部分を国民保険が使用者に対し補填する」というものです。工藤参考人、こういった有給化措置について、お考えをお聞かせください。
〇参考人(工藤さほ君)
お答えいたします。
こうした制度がある国を羨ましいと思う反面、使用者が働けない従業員に対して十分に手当を払わなければならないとなると、代替人員を確保する費用もなくなってしまい、そうしたリスクのある従業員は雇用しないという判断をする企業も増えてしまう懸念があります。
国民保険による補填などは、制度設計の変更や保険料の増額などにも関わってくることも予想されますし、既に退職して子どものケアをしている人との格差があまりに広がる面も考慮する必要があると考えます。以上です。
〇委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
重要なご意見だと思いました。国が公的資金を投入して支えるべきと改めて思いました。代読お願いします。
工藤参考人は、「移動支援制度」について、地域支援事業であるため自治体の「財力」によって格差があると指摘されております。格差の実態について具体例をお聞かせください。また、格差解消についてご提案がおありでしたらご教示ください。お願いいたします。
〇参考人(工藤さほ君)
障害者総合支援法に基づく移動支援事業については、市町村によって通学や学童への移動の適用を認めているところとそうでないところがございます。
都内の自治体では、障がいのある児童生徒が学校や学童クラブに通う際に、保護者の疾病、就労などの事情で移動支援が利用できるところが多いですが、例えば中野区などは平成30年から対象を、小中学生から高校生に対象を広げました。世田谷区、新宿区、港区などでも利用できます。
地方の場合、通学支援には使えない自治体も多く、親の会の会員の事例では、千葉県流山市では、移動支援はレクリエーションやデイサービス等の余暇活動のみで、学童の送迎には利用できず、親や祖父母が送迎しています。大阪府高槻市も同じ運用となっております。
通学支援という観点から申し上げますと、医療的ケアがあるためスクールバスに乗せてもらえず、毎日学校に送迎するために離職せざるを得ない親の会の会員も複数います。こうした学校や学童への移動を支援してもらうことで働き続けられる人は確実に増えます。障がい児者本人と家族にとって移動支援は暮らしを支える肝の部分でもあるにもかかわらず、脆弱なのは問題だと思っておりますし、最低限の暮らしの足場を確保する基準が必要と思います。
親が倒れたら子の学習の機会が奪われてしまうことはおかしなことですし、親が送迎のために収入源を絶たれ、家族が困窮し、きょうだい児を含めた子の暮らしや将来の選択肢の幅が狭まることもおかしなことです。以上です。
〇天畠大輔君
代読いたします。工藤参考人に伺います。 在学中は送迎に活用できていたにもかかわらず、卒業した途端に就労場所への移動支援がなくなってしまうことについてどう感じますか。また、改善提案などおありでしたらお聞かせください。
〇参考人(工藤さほ君)
お答えいたします。
世田谷区の場合、子が学校を卒業すると移動支援の付与時間数は40時間から50時間に増えますが、それまで親が就労証明書を出すと学校やデイの送迎に利用できましたが、日々の作業所と自宅の送迎には利用できなくなり、お出かけなどの余暇活動のみに制限されます。長年勤めた職場を辞めざるを得なくなった人もいます。近隣の区では利用できるところもございます。
かように、改善策としては、さきの質問とかぶりますけれども、学校や作業所から自宅の足は暮らしの肝ですから、全国的に可能にしていただきたく思います。以上でございます。
〇委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
〇天畠大輔君
工藤参考人、ありがとうございました。
私の父は介護のために仕事を休業し、母は仕事を辞めました。代読お願いします。
育児、介護と仕事の両立やキャリア形成といったテーマは極めて重要です。次に、矢島参考人に伺います。
労政審の雇用環境・均等分科会が昨年12月に取りまとめた報告、「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」には、「柔軟な働き方を実現するための措置として、制度の利用期間中に労働者の仕事と育児の状況やキャリア形成に対する考え方等も変化することが想定されるということを指摘した上で、制度の利用期間中などの機を捉え、定期的な面談を行うことが望ましい」と述べておられます。
育児状況の変化やキャリア形成に対する考え方の変化について、休業制度実施のただ中にある労使が直接話し合うことがなぜ重要なのか、またそれに伴う具体的効果についてお考えをお聞かせください。
〇委員長(比嘉奈津美君)
時間が来ておりますので、お答えは簡潔にお願いします。
〇参考人(矢島洋子君)
ありがとうございます。先ほども申しましたように、今後、柔軟な働き方の選択肢が広がると同時に、利用期間も長くなっていくことが予想されます。その中で、例えば、育休から復帰したときに、1日6時間の短時間勤務を使ったとしても、ある程度子どもと親の生活リズムが整ったときに、もう少しフルタイムに近づけることができるんじゃないかとか、あるいは、企業によって小学校以降も制度を持っている場合に、先ほどの話にもあったような小1の壁、それは障がいを持ったお子さんだけではなくて、ほかのお子さんも小1の壁に当たることがありますので、そうしたときにもう1回働き方を短くしてといったような、本人にとっても、それから職場にとってもプラスになる有効な働き方をうまく組み合わせて使っていくために、上司と本人との面談というのが非常に重要だと考えております。以上です。
〇委員長(比嘉奈津美君)
もうおまとめください。
〇天畠大輔君
質問を終わります。ありがとうございました。