2024年4月9日 厚生労働委員会質疑(生活困窮者自立支援法等法案審議)「なぜ認めない!?生活保護世帯の世帯内就学」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
生活保護世帯の子どもの「教育を受ける権利」の保障について質問します。代読お願いします。
現在の生活保護制度は、大学生に対して一律に保護の受給を認めていません。憲法25条1項には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。「教育を受ける権利」の保障は、この憲法25条1項の「生存権」の保障における文化的側面をもつものでもあります。大臣、生活保護世帯の子どもの大学進学、世帯内就学をなぜ認めないのでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
生活保護費を受給しながら大学等に就学することについては、一般世帯においても、高等学校卒業後、大学等に進学せずに就職する方や、それから奨学金、アルバイト収入などで学費や生活費を賄いながら大学などに就学する方などがおり、このような方々とのバランスを考慮する必要があるために、大学等への進学者を世帯分離した上で最低生活保障の対象とはしておりません。
一方で、令和2年度から文部科学省の高等教育の修学支援新制度が開始され、生活保護世帯出身者を含む低所得世帯を対象として、授業料、入学金の減免や給付型奨学金による生活費などの支給が行われており、就学しやすい環境が整ってきていると思います。また、生活保護世帯でも、本人の希望により大学等に進学することについては、平成30年の生活保護法改正においても、「進学準備給付金」を創設するとともに、世帯分離をして自宅から大学等に通学する場合に住宅扶助を減額しないという措置も実施しております。自立助長、助長の観点を踏まえて、こうした進学を支援はしているというわけであります。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
子どもの「教育を受ける権利」を剥奪しています。代読お願いします。
資料1をご覧ください。
日本における全世帯の大学等への進学率は、令和4年時点で76.2%です。ただ、この数字は現役入学のみの数字です。文科省の令和5年度学校基本調査の結果によれば、浪人を含めると大学等進学率は84%です。生活保護世帯の子どもの大学等進学率は42.4%ですので、生活保護世帯の子どもの大学等への進学率をめぐる格差は極めて深刻な状況にあります。
今や8割以上の子どもたちが高等教育機関で学んでいるにもかかわらず、社会保障審議会をはじめ政府は、生活保護世帯の大学進学をかたくなに認めない方針までも繰り出しています。大学進学時の世帯内就学を認めない理由として、奨学金等、教育・生活にかかる「借金」を背負いながら、アルバイト収入で学費や生活費を賄う学生の姿を引き合いに出し説明すること自体が、生活保護世帯のスティグマやバッシングを助長するものです。
今回の生活困窮者自立支援法等の改正案は、生活保護世帯の子どもたちなど、世代を超えた「貧困の連鎖」を防止するための法案であるとも説明されていますが、生活保護世帯と全体の進学率の格差について認識されていますでしょうか。世代間で連鎖している「つながりの貧困」など、格差の要因について、どのように分析し、対処されていますか。大臣からお答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
この生活保護世帯の大学等への進学率は、令和4年度に42.4%であり、この全世帯平均の大学等への進学率は76.2%でありますから、著しく低いというふうに認識をしております。ただ、昨今、数年間の動向を見てみますと、多少は向上し、改善はされてきているというふうに思います。
その上で、この生活保護受給中の子育て世帯については、子どもが将来の進学にむけた意識などの面で課題を抱えていることが大変多いことや、保護者も周囲の地域との関わり合いが少ない傾向があって必要な情報や支援が行き届きにくいこと、それから子どもが支援の場に来ないこと、それから保護者自身が生活保護世帯出身であったり、子どもが学校に行かなくても違和感がない、教育に対する意識が低いといったような課題がございまして、こうした課題も生活保護世帯の大学などへの進学率が低いことへの要因の1つになっているものと考えます。こうしたことが貧困の循環というもの、悪循環をつくり出しているということだと考えますので、それをいかに克服していくかということを私どもは考えなければいけないというふうに思います。
本法案では、生活保護受給中の子育て世帯に対して、訪問などによって学習・生活環境の改善に向けた働きかけをしたり、子どもの学習・生活支援事業をはじめとする子どもへの居場所へのつなぎをしたり、奨学金の活用を始めとする進路選択に関する情報の提供をしたりなど、この相談や助言を行う事業を新たに創設することとしております。こうした支援を行うことによって、生活保護受給中の子育て世帯においても早い段階から学習環境の改善を行うことが非常に必要であって、この高校卒業後の進学や就職など、本人の希望を踏まえて進路選択の実現が図られるように取り組むことによって、こうした大学進学の格差を是正していく努力を進めていきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
いやいや、貧困から抜け出せないのは、社会構造の問題ですよね。代読お願いします。
現行の生活保護法では、生活保護世帯の子どもが大学に進学することは保障されていません。大学等に進学を希望する場合は、世帯内就学が禁止され、世帯分離措置がとられている現状にあります。かつては、生活保護世帯の子どもの高校進学も保障されていませんでした。
生活保護世帯の子どもの世帯内高校進学が認められたのは1970年でしたが、高校の学費や教材代が支給されたのは2005年になってからです。生活保護世帯の子どもが安心して高校で学べる仕組みができてから、まだ19年しかたっていません。私と同世代のかつての子どもの中に、不十分な制度のために高校への進学を諦めざるを得なかった方々がおられるという現実は、許し難い事実です。
資料2をご覧ください。
学歴に見る格差は、大学、大学院卒業の男性と高校卒業の女性における生涯賃金を見ても明らかです。親の生活が苦しくなることを考え、高校への進学を諦めざるを得なかった同世代が、今もなお、生涯賃金や教育、健康や社会関係など多くの格差を抱えさせられていることが予測できます。さらに、生活保護世帯の女性や母子世帯が背負わされている複合差別の世代間連鎖も見過ごすことができません。子どもの貧困の背景には女性の貧困の世代間連鎖があり、貧困の連鎖は、国がつくった格差だという認識に立ち、生活保護制度からの「自立」後のアフターケア政策を充実させる必要があります。
2018年の生活保護法改正により、答弁にもありました「進学準備給付金」が創設され、自宅からの通学生は10万円、自宅外の通学生は30万円が支給されてきました。給付金を受給し、保護から外れた子どもへのアフターケアについて伺います。「進学準備給付金」を受け取り大学等へ進学した子どもたちの卒業率及び中退率については把握されていますか。また、今回新設される「就職準備給付金」について、給付金を受給し就職された子どもへのアフターケアを担う機関や見守り、家計管理等のフォローする仕組みはあるのか。大臣からお答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
ご指摘の卒業率や中退率については把握はしておりませんが、生活保護世帯出身の大学生等の進学後の生活実態については、直近で公表している平成29年度調査では、経済的な状況については、奨学金等を利用している方が約87%、アルバイトをしている方が約83%となっております。また、学生生活に関する悩みのうち、経済的に勉強を続けることが難しいという悩みについては、全くないが22.4%、余りないが34.7%、少しあるが28.6%、大いにあるが12.2%となっています。また、この実態調査については、改めて実施をして、現在取りまとめに向けて集計、分析を行っているところでございます。
また、本法案で創設するご指摘の給付金、これは、生活保護世帯の子どもが高等学校を卒業する後に就職をし、生活保護から自立する場合にも、新生活の立ち上げ費用を支援するために支給するものでございます。この給付金を受給し自立した後においても支援が必要となる子どもがいることも考えられるために、生活困窮者自立支援制度による支援を福祉事務所において情報提供や助言などを行うことを進めてまいりたいと思います。
○天畠大輔君
代読します。
給付金は一時金にすぎません。10万円、30万円で何ができるのでしょうか。必要なのは伴走支援です。かつて生活保護世帯の子どもの高校進学が、その他の貧困世帯の子どもとのバランスを口実に、厳しく制限されていたのと同様の手口で、国は生活保護世帯の子どもの大学進学を認めていません。子どもは世帯を養うための存在ではなく、自立した個人として尊敬される存在であり、社会や高等教育の機会に参加することを奨励されるべき存在だと考えます。
生活保護世帯の子どもの大学進学を認めない政府の態度と、保護の対象外となった子どもたちに対する具体的なアフターケアの政策を何ら講じない国の態度は、国民運動としての子どもの貧困対策とのバランスを欠くどころか、貧困対策から逆行しています。様々な困難な環境から進学を果たした子どもや若者への総合政策として、奨学金や給付金支給後の就学の定着支援やファイナンシャルプランニング支援、キャンパス訪問やメンタルヘルスケア、総合相談等の政策をなくして貧困の連鎖を断ち切ることはできません。
生活保護世帯の子どもの大学入学後の支援、生活保護世帯を含む子どもの貧困対策に本気で取り組む意気込みはあるでしょうか。大臣、お聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
私も先般、台東区の子どもの学習支援をされているこども極楽堂というところ、その取組、視察をさせていただきました。
この生活が困窮する中で、学習意欲が持てないケースであるとか学校に行くことをやめてしまうケースが生じたときには、行政と連携しながら、訪問などを通じて粘り強く必要な支援につなげていくことが重要であるということを改めて認識をしたところであります。中学卒業後、高校進学をせずにいた方が、実際にその自分の担任の先生と引き続き関係があって、そして、その先生に励まされて改めて高校進学を決意して進学をするというようなケースがこの極楽堂の中で現実にありました。
こうしたことをいかに国が政策として支援するかということをこの本法案の中では実践しようとしているわけであります。この本法案では、生活保護受給中の子育て世帯に対して、訪問などによって進路選択に関する相談や助言を行う事業を新たに創設するなど、世代を超えた貧困の連鎖を防止するためにこの生活保護世帯の子どもの自立に向けた支援をより一層強化することとしております。この本法案が成立した場合には、この法案により設けられた事業などを着実に実施をして、生活保護世帯の子どもに対する支援の充実を図るとともに、子どもの生まれ育った環境によって子どもの現在及び将来が左右されることがない社会を実現していきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
貧困の連鎖を断ち切るために、今こそ生活保護世帯内での大学進学を認めるべきではないですか。大臣、お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
この生活保護費を受給しながら大学等に就学することについては、一般世帯においても、先ほど申し上げたとおりに、高等学校卒業後、大学等に進学せずに就職する方がいらっしゃることであるとか、それから、奨学金やアルバイト収入などで学費や生計費を賄いながら大学等に就学する方もいらっしゃいます。このような方々とのバランスを考慮する必要があるために、大学等への進学者を世帯分離した上でこの最低生活保障の対象とはしておりません。他方、文部科学省では、奨学金等の、あるいは授業料や入学金の減免を通じて支援をしております。
こうした複合的な、厚生労働省及び文部科学省の立場からの支援を通じて、この生活保護世帯の方々が大学に進学をして、そしてまた、それが同時に貧困の連鎖を断ち切る役割を果たすように、そうした政策を整えていきたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
貧困に苦しむ子どもや大学生が目の前にいると仮定して、せめて前向きなメッセージをお願いします。大臣、お願いします。
○国務大臣(武見敬三君)
今回の新たな法改正などを通じまして、こうした生活に困窮されておられる方々、さらにはこうした生活保護の下にある方々、そして特にその子どもたちがしっかりとその夢のある将来をきちんと築くことができるように、こうした進学等に関わる支援というものについては、文部科学省等とも連携をしてしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。貧困の連鎖というものを確実に断ち切ることは、これは1つの大きな私どもの使命だと思っております。以上です。
○天畠大輔君
次に、子どもの進路選択支援事業では、生活保護世帯の親と子に対して、訪問などを通し相談援助や助言がなされるということですが、訪問を受ける世帯の子どもの安全性はどのように確保されているのでしょうか。
子どもの性暴力被害などを防止する観点から、訪問等により教育情報を提供して相談援助を実施するものについては、複数名や同性による訪問を原則とするなど、子どもへの暴力を未然に防止するための基準が必要と考えます。また、子どもと親子に直接関わる訪問員については、こども性暴力防止法案の対象となっているのかという点についてもお伺いしたく存じます。武見大臣、古賀政務官の順にお答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
本法案で創設する子どもの進路選択支援事業においては、この生活保護受給中の子育て世帯に対して、訪問等により学習・生活環境の改善、奨学金の活用等に関する相談や助言などを行うこととしております。
本事業は、今国会に提出されているこども性暴力防止法案の対象には該当しないと承知しておりますが、いずれにしても、子どもに対する性暴力を防止することは大変重要であり、実際に支援を行うに際しましては、生活保護世帯との関わりを持つケースワーカーの助言などを基に、これ十分に配慮をしながら進めていきたいと考えます。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
今、今国会に提出しているこのこども性暴力防止法案におきましては、子どもへの指導などを通して支配的、継続的な人間関係を持ち、親等の監視が届かない閉鎖的な状況となるような事業を対象としているということでございまして、したがいまして、この子どもの進路選択支援事業のようにご家庭を訪問して相談事業、相談支援を行う事業につきましては、親等が同席するなど必ずしも閉鎖的な状況で行われるわけではないことなどから対象事業とはなっておらず、当該事業に従事して家庭を訪問する方につきましても、その従事者ということをもって犯歴確認の対象者とはしていないということでございます。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠大輔君、時間が来ておりますので、おまとめください。
○天畠大輔君
代読します。
「教育を受ける権利」が全ての子どもにあることを忘れてはいけません。引き続き生活保護制度等の充実を強く訴えまして、質疑を終わります。
〈配付資料〉