2024年4月4日 厚生労働委員会質疑「あなたの街にも?あの法律にも?障がい者を締め出す欠格・制限条項の改正を」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
われわれ障がい者に対する欠格条項について質問します。代読お願いします。
15年ほど前、私は大学から社会福祉士の受験推薦が得られませんでした。介助を付けて実習を済ませ、点数も十分だったのにです。「社会福祉士の仕事の本質の部分は、介助を付ければこうできる」ではなく、「前例がない」という予防的発想の門前払いで、あきらめざるを得ませんでした。
今日質問する欠格条項や制限条項は、障がい者を社会から締め出すことが、直接的な問題です。一方で、「障がい者には無理・できない・危険」という予防的な思い込みを助長するという間接的な弊害も深刻です。私の経験は、この間接的な弊害から出発していると思います。あのむなしさをほかの障がい当事者には味わってほしくないという思いから、質問します。
まず、制限条項について伺います。制限条項とは、障がいを理由に、傍聴や入場、参加を制限する規定のことです。
資料1をご覧ください。おととし、精神障がい者の議会傍聴を禁止する規定が秋田県内の市町村議会規則に残っているとの報道が注目されました。資料2に示したとおり、その後、全国で同様の報道が相次ぎました。
資料3をご覧ください。この問題から派生して、精神障がい当事者の団体「心の旅の会」が、全国の自治体の条例や規則を調査したところ、今年1月31日時点で少なくとも333の制限条項があることが分かりました。精神障がい者に対するものが中心でした。もっと数が多い可能性もあります。
資料4をご覧ください。東北のある町の教育委員会傍聴規則です。「精神に異常があると認められる者には、傍聴を許さない」と、完全に門戸を閉ざしています。
こういった制限条項は、障害者差別解消法第2条にある「社会的障壁」のなかの制度的障壁そのもので、差別解消法の趣旨に反しています。
一方で、地方自治法第244条第3項には、「普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない」とあります。この「不当な差別的取扱い」は、一般的に、信条、性別、社会的身分、年齢、職業などにより合理的な理由なく利用を制限したりすることなどを指すと総務省より伺っています。先ほど紹介したような制限条項は、この地方自治法第244条にも抵触していると思います。
さて、実は、自治体の条例や規則に残る制限条項に対しては、少なくとも50年以上前から当事者が是正を求める運動を行い、担当省庁などが個別で対応をしてきました。
たとえば、1972年には、東京都世田谷の区営プールの規則から精神障がい者の入場制限が撤廃されました。また、総務省が監修し、地方自治体の条例のモデルとなる「市町村例規準則集」という出版物があります。過去、「精神異常者」は自治体の公平委員会を傍聴できないとする記述がありましたが、2000年、当時の自治省が誤りを認め削除しました。これらの個別対応の結果が、今なお少なくとも333残ってしまっている制限条項です。指摘されたところは直すけれど、全体での見直しや検証はしてこなかった縦割り行政の結果です。
ここまで過去の経緯をご紹介しましたが、政府全体として取り組まなければ差別的な制限条項は変わり得ないということをご認識いただけたでしょうか。総務省と内閣府、お願いします。
○副大臣(馬場成志君)
お答えします。
精神障がいを理由に会議の傍聴などを制限する条項についての市民団体の調査が報道されていることについては承知をしております。今お話がありました市町村例規準則集などは、総務省ではなく、地方自治法実務研究会によって編集されて第一法規株式会社によって出版されております。当時の監修について把握は、詳細は把握しておりませんが、そのような報道があったことは承知しています。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
われわれもその報道については承知をいたしております。この障害者差別解消法におけるこの不当な差別的取扱いに当たるかどうかについては、当該分野を所管いたします省庁、自治体が個別具体的に判断すると、このようにされておりますので、ご指摘の事項につきましては、個別分野ごとの所管省庁あるいは自治体が必要性を踏まえて適切に判断して対応されるべきものと、こういうふうな認識を持っております。
以上です。
○天畠大輔君
代読します。
ご認識をいただいている市民団体の調査についての報道は、資料3の毎日新聞ですね。こちらには過去の経緯も一定書いてありますので、政府として取り組まなければ制限条項は変わり得ない、ということもご認識いただいたと受け止めました。
資料1に戻り、赤囲みをご覧ください。
ある市議会の事務局は、「合併前にあった条文が合併後もそのまま残ったのではないか、これまで議論する機会がなかった」と話しています。当事者団体の問合せによると、同じように、「存続している理由は特になく、制定後、見直す機会がなかったため」といった答えが多かったといいます。
それぞれの自治体にとっては「うっかりミス」かもしれませんが、俯瞰すれば、これは無知による差別です。当事者からすれば、常に差別を浴び続けています。そして、障害者差別解消法の意義が希薄になっているということです。
制限条項は、教育委員会、農業委員会、公園、資料館、文化会館、プール、県警など幅広い機関に残っており、多くの中央省庁が関係します。省庁横断で連携して、政府として制限条項の調査、検証、自治体への働きかけをすべきではないですか。総務省、お答えください。
○副大臣(馬場成志君)
お答えします。
障害者差別解消法第7条において、行政機関等は障がいを理由とする差別を禁止されております。同法については内閣府が所管しておりますが、各省庁においても所管分野について同法を踏まえて必要な対応をしているものと承知をしておるところであります。
総務省においては、たとえば、地方議会制度を所管する立場から、一部の議会の傍聴規則等において精神に異常があると認められる者等の傍聴を認めない旨を規定している例が複数あることを把握し、助言の必要性があると判断したことから、令和5年9月に、このような規定がある場合には見直しを行うよう地方公共団体に周知をしたところであります。
委員ご指摘の点について、それぞれの行政分野を所管する各省庁を含めた政府全体としての取組が重要でありますので、総務省としてもその取組に連携して必要な対応をしてまいります。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
内閣府はいかがですか。省庁横断での連携をすべきではないですか。通告なしですが、お答えください。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
先ほども触れたところでありますが、個別の分野ごとにその所管省庁あるいは自治体が必要性を踏まえて適切に判断して対応していくと、このように認識しておりますけれども、この障害者施策の推進につきましては、関係省庁連携して、政府一体となって取り組んでいるところでございまして、内閣府といたしましても、引き続き、関係省庁と必要な連携を図りながら取り組んでいきたいと、このように考えております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
政務官は、ご自分で変えられないことを理由に傍聴を拒否されたら、どう思いますか。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
そういった当事者の方々の心情をやっぱりしっかりと推察をして、それで政策に生かしていくことが肝要かと、こう思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
そう思うならば、今すぐ内閣府は取組を始めるべきです。代読お願いします。
精神障がい者は、明治から昭和期の私宅監置、また戦後も、優生保護法下での強制不妊手術による断種といった歴史があります。今も、強制性のある入院や、長期入院により、政策的に隔離されています。「何をするか分からない危険な人」と恐れられ、社会防衛のために遠ざけられています。自治体の条例や規則に残る制限条項は、これらの隔離、社会防衛の象徴です。政府が掲げる「共生社会」が本物なら、この根っこの部分の改善は不可欠なはずです。
制限条項について、省庁横断で連携、具体的に調査、検証、自治体への働きかけをすべきと重ねて申し上げ、次に行きます。
次に、国の法令上の欠格条項について伺います。
「障がいがあるから資格を取れない」という規定が絶対的欠格条項、「できないかもしれないからチェックする」規定が相対的欠格条項です。
資料5-1をご覧ください。
当事者団体の「障害者欠格条項をなくす会」による調査データです。欠格条項がある法令の数は2023年時点で699本と、過去最多です。特に精神の機能の障がいに対する欠格条項が急増しており、2016年に75だったものが2023年には276と3.7倍です。
2019年、成年後見制度利用者であることを理由とする欠格条項がある法令、約200本を、政府は一括改正しました。
しかし、この改正は、「成年後見制度を利用していたら即ダメ」という絶対的欠格条項から、「心身の故障により業務を適切に行えない者には免許を与えないことがある」という相対的欠格条項への改正がメインでした。さらに、法文上の「心身の故障」を政省令で「精神の機能の障害」と規定したものが多くありました。精神障がい者に対する新種の相対的欠格条項をもうけた、と言えます。
まず、現在、成年後見制度利用促進室のある厚労省に伺います。2019年の法改正の趣旨を教えてください。
○政府参考人(朝川知昭君)
お答えいたします。
委員ご指摘の「成年被後見人等の利用の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」の趣旨、目的につきましては、令和元年5月の衆議院内閣委員会において、当時の内閣府特命担当大臣から、「成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づく措置として、成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等に対する欠格条項その他の権利の制限に係る措置の適正化等を図ることを目的としたものです。」と説明されているものと承知しております。
○天畠大輔君
代読します。
日本の成年後見制度は、国連から勧告を受けており、私も見直す必要があると思います。ただ、とはいえ、2019年当時の改正は権利の制限を改善することを意図していたということは、わかりました。
さて、資料5-2の2023年の欠格条項のある総法令数は、2020年に比べて38本増えています。これは、2019年の法改正後にできた新法や改正法に、「心身の故障」の文面がコピー・&ペーストされた結果です。言い換えれば、成年後見制度利用者の絶対的欠格条項をなくす法改正が、それと引換えのように、主に精神障がい者の「心身の故障」による相対的欠格条項を増やすきっかけとなったのです。
2019年の法改正の目的が、権利制限を改善することだったなら、成年後見制度利用者であることに直接ひもづかない相対的欠格条項だとしても、それが増えることは、法改正の趣旨に合わない、望ましくないのではないでしょうか。
障害者基本計画を取りまとめる内閣府に伺います。この間の相対的欠格条項の新設、増加の事実を、政府として把握していますか。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
2019年の法改正、先ほど厚労省から答弁があったわけでございますが、そうした法律改正によりまして、その成年被後見人等に係る欠格条項を設けている各制度について、個別的、実質的に審査をして、各制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定、つまり、絶対的欠格条項から相対的欠格条項への規定の変更、適正化が行われたことが原因ではない、が原因ではないかと、そういうふうに思っておりますけれども、この第5次障害者基本計画におきましては、いわゆるこの相対的欠格条項について、各制度の趣旨や技術の進展、社会情勢の変化、障がい者やその他関係者の意見等を踏まえまして、真に必要な規定か検証をして、必要に応じて見直しを行うと、このように記載をされておりまして、各制度を所管する省庁において適切に対応されるものと、このように認識をいたしております。
この記載を踏まえた関係省庁の対応状況を含めまして、この第5次障害者基本計画の実施状況につきましては、障害者政策委員会で必要な監視を行っていただくものと、このように認識をいたしております。
○天畠大輔君
代読します。
基本計画に書かれているからこそ、差別解消法を所管する内閣府が把握すべきではないでしょうか。
過去に障害者施策推進課長会議という省庁横断の組織が内閣府にありましたが、2008年以降開かれていません。2001年の医師法等の一括改正、今日例に挙げた2019年の一括改正など、欠格条項をなくすに当たっては、これまで省庁横断的な取組が行われてきました。今回も同じような協議体をつくり、省庁横断で検討するとともに、障害者政策委員会でも議題に上げて、意見聴取を求めるべきではありませんか。内閣府、お願いいたします。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
担当課長会議を開催をしてというようなご指摘でございましたけれども、いわゆるこの相対的欠格条項につきましては、この第5次障害者基本計画の記載に基づきまして各制度を所管する省庁において適切に対応がなされるものと、このように承知をいたしております。
その実施状況については、障がい当事者等の方が委員となりまして、関係省庁も出席をすると、こういった障害者政策委員会において必要な監視を行っていただくと、こういった制度の立て付けになっております。そういった政策委員会の中でしっかりと対応してまいりたいと、このように考えております。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
各省庁や政策委員会に丸投げするわけではないということですね。内閣府としての意気込みをお願いします。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
今申し上げたとおり、この第5次の障害者基本計画は、あの第4次の計画に比して、この真に必要な規定かどうかを検証するという文言を追加しております。したがいまして、この第5次の基本計画が、これは昨年度から施行いたしておりますので、そういった監視をですね、第5次計画の監視を今後その障害者政策委員会において行っていくと、これが大変肝要な取組だと、こう考えておりますので、その中でわれわれも関係省庁を、出席していただく中でこの監視をやっていきたいと、こういうふうに考えております。
○天畠大輔君
代読します。
国連の総括所見では、「国及び地方自治体の法令において、心身の故障に基づく欠格条項等の侮蔑的文言及び法規制を廃止すること」と指摘されています。
改めて伺います。総括所見を真摯に受け止めるべき今だからこそ、障害者政策委員会の意見聴取だけでなく、行政側でも省庁横断での検討をすべきではありませんか。内閣府、お願いします。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
多少繰り返しにはなりますが、この障害者政策委員会において第5次の基本計画をしっかり監視していくということがこれは政府一体の取組になると、このように考えておりますので、先ほど来申し上げてまいりました必要な監視を、各省に出席をしてもらう中でわれわれとしても取り組んでいきたいと、このように考えております。
○天畠大輔君
丸投げではなく、省庁横断での検討を求めて、質疑を終わります。
〈配付資料〉