2024年12月19日 厚生労働委員会質疑「テーマいろいろいきます!「カスハラ」定義で差別、生まれない?/精神科病院での携帯電話、スマホ利用の実態は?/治療してるから働ける難病「指定難病外し」しないで!」

○天畠大輔君 
れいわ新選組の天畠大輔です。まず、おとといの予算委員会の答弁について確認します。代読お願いします。

 12月17日の参議院予算委員会において、私は、選挙運動中のヘルパー制度利用を一律に禁止する自治体があると指摘いたしました。事例の詳細は資料1と2をご覧ください。この件について福岡大臣より答弁がありましたが、若干分かりにくい点がありましたので、確認です。

 障害者総合支援法の告示523号では、ヘルパー制度の利用は「社会通念上適当でない外出を除く」と定めていますが、この文言は選挙運動中のヘルパー制度利用を一律に禁止するものではない旨、主管課長会議などで各自治体への周知を前向きに検討しているとの認識で合っているのでしょうか。大臣からお答えください。

○国務大臣(福岡資麿君)
 選挙の公平公正を確保しつつ障がい者の方々の選挙運動を含めた政治参画を進めていくことについては、大変重要な課題であると認識をしております。

 重度訪問介護を含む障害福祉サービスの利用については、障害者総合支援法上、各市町村において、障がい者の方々の置かれている環境であったり障害福祉サービスの利用意向等を勘案して支給の要否が決定されるものでございます。重度訪問介護の支給決定に当たりましては、選挙運動のための外出であることのみをもって一律に社会通念上適当でない外出に当たるものではないと考えておりまして、各自治体に対し、関係課長会議の場などを活用して周知をしてまいりたいと考えております。

○天畠大輔君 
 代読します。
 周知を徹底してください。また、選挙運動以外の政治活動、宗教活動、飲酒を目的とした外出なども一律に禁止する自治体があります。そもそも大前提として、重度障がい者は常に他者の介助を必要とするため、どんな場面でも生命維持のための介助保障が必要です。告示523号の外出制限は撤廃すべきと改めて申し上げ、次に行きます。

 さて、大臣は所信挨拶において、カスタマーハラスメント対策の強化を検討すると言われました。われわれ障がい者にとって、社会にはソフト面、ハード面のバリアがまだまだたくさんあります。そのひとつひとつのバリアを除くよう求めること、つまり障害者差別解消法に基づく社会的障壁除去の求めはカスハラに該当しないと考えて差し支えないでしょうか。大臣、お答えください。

○国務大臣(福岡資麿君)
 カスタマーハラスメントにつきましては、現在、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、労働者保護の観点から、社会通念上相当な範囲を超える言動を対象に、事業主の雇用管理上の措置義務を設ける方向で議論がなされている一方、対策を講ずる際、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務を遵守する必要があることも指摘をされております。

 合理的配慮を求められる際に、障がいのある方から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、一般的にカスタマーハラスメントには当たらないと考えております。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 ありがとうございます。しかし、注意が必要です。代読お願いします。

 現在、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、事業者に対するカスハラ対策の義務付けが議論されています。カスハラ対策の必要性については異論がありません。一方で、障がい当事者として懸念するのは、カスハラの定義が法的に位置付けられ、それが社会に浸透する中で、お店などで合理的配慮を求めたら誤ってカスハラ扱いされ、結果として差別が助長される事態です。

 資料3をご覧ください。労政審で示されたカスハラの3要素のうち、「社会通念上相当な範囲を超えた言動であること」は特に注意が必要です。言動の内容がバリアを取り除くための要望であっても、障がい特性を理由にカスハラに捉えられる懸念があります。たとえば、脳性麻痺で言語障がいのある方がお店のスタッフと話そうとしたところ、発語に時間がかかり、泥酔していると誤解され、通報されてしまったという事例があります。

 また、資料4のとおり、カスハラに当たり得る手段、態様の具体例として「長時間の拘束」が挙げられています。障がい者が事業者に社会的障壁の除去を求め、時にそれが難しいとき、理由の説明や代替手段の検討には相当な時間を要する場合があります。これが長時間拘束としてカスハラ扱いされる懸念は拭えません。

 大臣、そして委員の皆さまには、改正旅館業法における宿泊拒否事由拡大にあたっての議論を思い起こしていただきたいのです。改正法施行前に、障がい当事者も委員に入った検討会において、多くの障害者団体にヒアリングし、差別の実態や合理的配慮の事例を洗い出し、社会的障壁除去の求めが宿泊拒否事由に該当しないことを具体例とともに指針に盛り込み、明確化しました。

 カスハラ対策に関する指針策定を議論する際にも、障がい者など当事者参画での検討を徹底し、障害者団体へのヒアリングを通して実態を詳しく把握したうえで、社会的障壁除去の求めがカスハラに該当しない旨を明確化すべきです。大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(福岡資麿君)
 カスタマーハラスメント対策の強化につきましては、現在、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において労使の議論が行われておりまして、その議論においても、障害者差別解消法に基づく「合理的配慮」の提供義務は当然に遵守されなければならない旨が指摘をされております。

 現時点では、同分科会において法制上の措置の方向性についての議論をいただいている段階でありますため、法改正を前提としたご質問にお答えすることは困難でございますが、いただいたご意見も参考に、障害者差別解消法を所管する内閣府等とも連携しながら、必要な検討を進めてまいりたいと存じます。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 当事者参画がきちんとなされるか、引き続き注視します。代読お願いします。

 資料5をご覧ください。精神保健福祉法の大臣告示130号です。通信・面会についての「基本的な考え方」にはこうあります。「精神科病院入院患者の院外にある者との通信及び来院者との面会は、原則として自由に行われることが必要である」

 しかし、現実はどうでしょうか。今年、市民団体が精神科病院での携帯電話、スマートフォンの利用状況について調査をしました。兵庫県精神科病院協会の33病院に郵便で無記名アンケートを送付したところ、6件の回答があったそうです。母数はとても少ないですが、私が無視できないと思ったのは、原則全病棟で禁止との回答が2件あったことです。原則全病棟で禁止している理由は、携帯電話のカメラ機能でほかの患者を撮影してSNSにアップし、プライバシーを侵害した事例がほかの病院であったと聞いている、もしくはそのおそれがあるというものでした。これは、資料5、告示130号の「医療又は保護に欠くことのできない限度での制限」にはあたらず、不当な制限のおそれが強いと考えます。

 このような事例は2件だけではないはずです。入院経験のある精神障害の当事者に話を聞くと、原則禁止の病棟の話をよく聞きます。また、2022年3月3日の厚労省の検討会議事録には、当事者の委員から「携帯電話などは取り上げられるのが確実」といった文言が書かれています。実態を知らせる声を政府は看過してはいけなかったはずです。しかし、現在、国が精神科病院での携帯電話やスマートフォンの利用実態を把握した調査はないと伺っています。

 一方で、従来は携帯電話、スマートフォンを使えないことの多かった女性自立支援施設、これは旧婦人保護施設です、については、政府の検討会などが議論を重ね、2022年度には基本的対応方針を策定。「DV加害者からの追跡の回避など入所者の安全、安心を最優先としつつ、携帯電話の使用を可能とすること」に見直しました。この過程で、厚労省は2度実態調査を行っています。実態が分からないままでは解決もできません。

 大臣、政府が精神科病院での携帯電話、スマートフォンの利用実態について調査すべきではないでしょうか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 厚生労働省といたしましては、携帯電話やスマートフォンの普及状況等を踏まえまして、現在、入院患者の携帯電話等の使用に関する精神科病院への今ヒアリングを行ってございます。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 それは十分に実態をつかめる規模のヒアリングでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 現在、入院患者さんに対して携帯電話やスマートフォンの使用を可能としている今複数の精神科病院に対して、その運用上のルールやメリット、デメリット等について個別に聞き取りを行っているところでございます。

 ヒアリングは今順次実施しているところでございまして、その取りまとめ時期を現時点で明示することは困難でありますが、ヒアリング結果については、その活用方法については引き続き検討してまいりたいと考えております。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 全国的に、そして当事者の話も聞くべきです。大臣、いかがですか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 今はまず医療機関、病院から聞き取りを行っている最中でございまして、その結果を受けまして更なる対応については検討してまいりたいと存じます。

○天畠大輔君
 代読します。いくつかの好事例だけを聞いても本当の実態はつかめません。全国的な規模で良い事例も悪い事例も含めて調査し、そして病院側だけでなく当事者からも調査してください。

 さて、総務省の「通信利用動向調査」によると、2020年、携帯電話の世帯保有率は96.8%、スマートフォンは86.8%です。家族や友人との連絡手段というだけでなく、仕事への応募や連絡、インターネットを使った調べ物など、ほとんどの人にとって社会生活上必要不可欠です。一般的な病院では、99%で携帯電話やスマートフォンを自由に使えるとの調査結果が出ています。

 告示130号に書かれた「通信」「電話」という言葉には、公衆電話や面会だけでなく、携帯電話やスマートフォンも含まれることを事務連絡などの文書で各精神科病院に示すべきではないでしょうか。大臣、お答えください。

○国務大臣(福岡資麿君)
 基本的には、精神科病院の入院患者さんたちが可能な限り携帯電話やスマートフォンを自由に使用できることは望ましいことだというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、携帯電話やスマートフォンの普及状況等を踏まえ、現在行っております入院患者さんの携帯電話等の使用に関する精神科病院へのヒアリング結果なども参考にしながら、対応を検討してまいりたいと考えております。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 携帯電話やスマートフォンの普及率は100%に近いです。大臣、前向きなお答えということでよろしいですか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 重ねてのお答えで恐縮ですが、現在、病院に対しましてヒアリングを行っている最中でございまして、それを踏まえて更なる対応については検討してまいりたいと思います。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 前向きに進めてください。携帯電話やスマホは虐待防止にもなります。代読お願いします。

 さて、資料6にあるように、告示130号で公衆電話の設置が求められていますが、NTTは現在全国的に公衆電話の数を減らしていく方針です。

 精神科病院では、現在、公衆電話の設置率は2022年度で96.5%と、完全ではありません。入院患者の中には携帯電話を持たない人もいますし、ナースステーションから電話の声がはっきり聞こえる場所に公衆電話が置かれているなど、実質的に患者の人権やプライバシーが担保されていないこともあります。適切な場所への公衆電話の設置は引き続き進めていくべきです。

 また、携帯電話やスマホは、患者さんたちが虐待の通報や相談をする手段になり得ます。携帯電話、スマホ、公衆電話、どの通信手段であっても人権擁護の視点が重要だと申し上げ、次のテーマに移ります。

 希少疾患の患者を支えることを目的とした難病法が間もなく施行10年を迎えます。5つの要件を満たすと指定難病の対象とされ、医療費が助成されます。現在は341疾病にまで増えました。

 資料7をご覧ください。今年10月10日の指定難病検討委員会で、指定難病の要件について整理がなされました。

 特に、「②治療方法が確立していない」には、たとえ根治のための治療法がなくても、対症療法や進行を遅らせる治療方法等により一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合、指定難病に該当しないという表記が追加されました。これは、治療を続けているからこそ社会参加が可能となっている者を理解しない解釈です。

 そこで、大臣に伺います。国は、難病を持つ方の適切な治療や重症化しないための日々の努力、周囲の支援や配慮などにより何とか社会生活が送れている状況をも指定難病から排除してしまうおつもりですか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 指定難病の対象となる疾患の選定や対象患者の認定基準等につきましては、客観的かつ公平に行うため、指定難病検討委員会を設置し、その意見を聞くこととされておりまして、このことは患者団体の代表者も含む第35回厚生科学審議会難病対策委員会において了承をされているところでございます。

 その上で、指定難病の要件の1つでございます「治療方法が確立していないこと」の解釈については、指定難病検討委員会におきまして、「対症療法や進行を遅らせる治療方法等により、一般と同等の社会生活を送ることが可能である場合」には要件に該当しないこととされたものでございます。

 現時点におきましては、この判断は、あくまで医学的見地に基づき、総合的に行うこととしてございますが、ご指摘の点につきましては、患者さんの療養生活に関する情報は重要でありますことから、疾患ごとの研究班において情報収集をお願いしていくこととなります。

○天畠大輔君
 代読します。
 療養生活が重要であると認識しているなら、治療を続けているからこそ社会生活が送れている難病を一律に排除はしないということだと受け止めました。しかし、難病を持つ方々は、この明文化により、指定難病の対象から排除されることを危惧しています。

 資料8をご覧ください。潰瘍性大腸炎は指定難病です。下痢や腹痛を引き起こし、トイレの回数が増えるなど生活上の困難さがありますが、「ただの腹痛だ」と理解されず、離職するケースもあります。患者会である大阪IBDの三好和也共同代表は、普通に生活できていると言われるが、体調が落ちると治療費が莫大に掛かり、助成がなければ病院に行けないと吐露しています。

 資料9をご覧ください。中程度の治療費が一生続く難病グループには、潰瘍性大腸炎と1型糖尿病があります。1型糖尿病はいまだ指定難病ではありません。どちらも内部疾患なので、体調の良いときには普通に生活ができていると誤解されがちですが、治療しなければ命が危険にさらされる「見えない難病」です。ともに外来での自己負担額は、理想的な治療を選べば月約3万円。潰瘍性大腸炎は指定難病認定後、月約1万円になりました。その結果、生涯にわたる医療費負担の累計は、潰瘍性大腸炎は平均的な世帯年収でも耐え得る水準に落ち着き、1型糖尿病は極端な高額水準のままです。指定難病の有無が生涯の医療費負担の累計に大きく影響することが分かります。

 難病を持つ方々の不安の背景には、今回指定難病の要件に書き加えられた「一般と同等の社会生活」という表現が分かりにくいこと、指定難病の要件に社会との関係における「生活上の困難さ」をはかる視点がないことなどがあると考えます。

 これについては、今年10月15日の難病対策委員会で、日本難病・疾病団体協議会常務理事の辻参考人も、「一般と同等の社会生活」を判断するうえでの懸念点を指摘しました。どのようなやり取りだったのか、事務局の返答も含め、大臣よりお答えください。

○国務大臣(福岡資麿君)
 今お話がございました、今年10月15日に開催されました難病対策委員会、小児慢性特定疾病対策委員会の合同委員会におきまして、日本難病・疾病団体協議会の常務理事、辻参考人より、「一般と同等の社会生活」の考え方について、医療の専門家のみで構成される指定難病検討委員会で検討することが適切なのか、指定難病検討委員会にも当事者の方など複数の一般の立場の方を入れるべきではないかという趣旨のご発言がございました。

 これに対しまして、事務局であります厚生労働省難病対策課より、指定難病検討委員会は客観的かつ公平に疾病を選定するため設置されており、指定難病の要件の1つである「一般と同等の社会生活」も医学的見地により検討を行うことが必要である、他方、患者さんの療養生活に関する情報を収集することは重要であり、引き続き疾患ごとの研究班にて療養生活に関する情報収集を行うようお願いする旨を回答されていると承知しております。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 人の命が懸かっています。医学的見地で判断する制度の立て付けを変えるべきではないですか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(福岡資麿君)
 たとえば、その治療の侵襲性や知見、治療実施時の患者さんの身体的状況について考慮する際に医学的見地から総合的に判断を行うものでございまして、他方で、その就労等の身体的状況にとどまらない観点も含むものについては直接的には考慮されてございません。

 今後、研究班において、新たに療養生活に関する情報といたしまして、就労等の生活状況について収集をさせていただく予定でございます。

○委員長(比嘉奈津美君)
 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
 社会モデルの視点が足りていません。代読お願いします。

 2018年8月9日の指定難病検討委員会では、要件の1つ「長期の療養」について、直江委員が、「仕事ができ、療養が必要ないというイメージはほぼヘルシーな人」つまり健康な人ではないかと述べています。

 しかし、安易に判断すべきではありません。より良い療養生活を送るためには、「生活を支える就労」も見過ごせませんが、医学的に働ける体の状態しか検討しないのも問題です。健康な人と変わらない社会生活を送り、長生きできる難病患者が増えたとしても、それは医学の進歩だけでなく、適切な治療を続ける本人の努力や周囲の配慮も大きいのです。このままだと、指定難病の要件が困っている人をより排除する方向になりかねません。

 障害年金制度では障害認定基準に生活上の困難さを測る指標がなく、生活実態が正しく伝わる仕組みに変えるべきだと議論されています。そこで、難病制度でも、今後要件のあり方を議論する際には、最新の医学的見地に加え、社会モデルの視点を取り入れられるよう専門家を参画させるべきです。こちらについては今後も追及します。

 質疑を終わります。