2024年4月25日 厚生労働委員会質疑(雇用保険法等改正案審議)「『雇用政策拡充』うたうならまずは非正規労働者に『均等待遇』を」

〇天畠大輔君

れいわ新選組の天畠大輔です。短時間労働者の多くは非正規で働いています。代読お願いします。

今般の「雇用保険法一部改正法案」において、雇用保険の対象者が週間労働20時間以上から同10時間以上へと拡大されました。しかし、この短時間労働者の数が増加してきたこと自体が大きな問題です。

資料1をご覧ください。
週間労働時間20時間未満の短時間労働者数は、2013年の494万人から2022年の718万人まで、実に1.5倍になっています。最新データによると、昨2023年は734万人です。この原因を厚労省はどう分析していますか。

○政府参考人(堀井奈津子君) 

お答えいたします。
今ご指摘がございましたように、週間労働時間、週間就業時間20時間未満の短時間労働者数は増加をしております。

まず、この背景でございますが、雇用者のうち週間労働時間20時間未満の短時間労働者数を年齢階級別に見ますと、15歳から24歳の年齢階級の短時間労働者が77万人増加、そして65歳以上の年齢階級の短時間労働者が98万人増加をしております。

これらで合わせて増加全体の約7割を占めておりまして、短時間で働く若者の増加や高齢者の就労参加が進む中で増加をしているものと考えられます。

○天畠大輔君 

代読します。なぜ、若者や高齢者の年代層において短時間労働者が増えているのでしょうか。雇用の劣化が進み、若者がアルバイト、パートなど不安定雇用労働者として社会人生活をスタートせざるを得ない状況になっていること、そして、ベテラン世代においても、年金制度の劣化により将来不安を抱えた高齢者が暮らしを少しでも防衛するために短時間労働に従事しているのではないですか。

親世代の雇用の不安定化によって進学を諦めた若者、たとえ進学できたとしても学費や生活費の捻出のためにアルバイトに追われ、学業に支障をきたす学生もたくさんいます。貧困の連鎖は解消されないままです。これらはすべて政府の雇用政策、経済政策の失敗の影響にほかなりません。

資料2をご覧ください。
全労働者に対する非正規雇用労働者の割合は、1984年の15.3%から2021年の36.7%まで、最新データでは昨23年の37.1%まで激増しましたが、この原因を厚労省はどう分析していますか。

○政府参考人(堀井奈津子君) 

役員を除く雇用者に占める非正規雇用労働者の割合は、ご指摘のとおり増加をしております。これは、1984年から2023年までの長期的な推移で見れば、正規雇用労働者数、正規雇用労働者は273万人増加をする一方で、非正規雇用労働者数が1520万人増加をしております。非正規雇用労働者数の増加数が正規雇用労働者数の増加数を上回っていることなどがあると考えられます。

この非正規雇用労働者の増加の背景といたしましては、女性の非正規雇用労働者が1984年の408万人から2023年には1441万人と、1033万人増加、そして、65歳以上の年齢階級の非正規雇用労働者が1988年の34万人から2023年には417万人と、383万人増加をしております。女性や高齢者等の就労参加が進む中で増加をしてきた面もあると考えられます。

そして、厚生労働省といたしましては、これまでも非正規雇用労働者の正社員転換、これを促進をしてきております。引き続き、正社員への転換に取り組む事業主への助成金による支援、非正規雇用労働者に対するリ・スキリング支援やハローワークにおけるきめ細やかな就職支援などにより希望する方の正社員転換を進めていくとともに、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の遵守の徹底などにより非正規雇用労働者の処遇改善を進めてまいりたいと存じます。

○委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君 

日本は、女性が働きづらく、引退世代にとっても不安だらけの社会です。代読お願いします。

ただいまの答弁からも、女性と高齢者の非正規雇用労働者の激増が示されました。2021年における非正規労働者数は2065万人ですが、男性652万人に対して女性1413万人。男性3対女性7という割合です。

日本の労働市場が女性に対する差別構造を前提に成り立っていること、年金、医療、介護といった福祉政策の脆弱性のために死ぬまで働かないと食べていけないという暮らしの実態が日本社会の活力を大きく損なっていることがよく分かります。この根本的問題に切り込むことなく雇用保険を小手先で拡大しても、焼け石に水です。

内閣府は、「平成18年度版 年次経済財政報告書」において、「労働者派遣事業の規制緩和が非正規雇用比率を高めた」と結論付けています。労働政策における規制緩和が雇用の劣化、不安定化を起こしてしまったという認識はありますか、また、その是正に向けて方策はありますか。

○国務大臣(武見敬三君) 

この労働者派遣制度につきましては、これまで、労働者保護を図りながら、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度の整備を行ってまいりました。

この非正規雇用労働者の割合は、高齢者や女性などの就労参加が進む中で高まってきた面があり、また、役員を除く雇用者に占める派遣労働者の割合は2023年平均で2.7%であることからも、我が国全体の非正規雇用割合の増加の主な原因を派遣労働に求めることは必ずしも適当ではないと考えます。

また、ご指摘の報告書においても、OECDの分析を基に、労働者派遣事業の規制緩和が「非正規雇用比率を高めた要因の一つになったとみられる」という旨が記載されていると承知をしております。

厚生労働省といたしましては、同一労働同一賃金、雇用安定措置、キャリアアップ措置の導入など、派遣労働者の待遇を向上させるための整備を進めてきたところであり、引き続き、派遣労働者が能力を発揮をし、公正な待遇を得て働ける環境を整えてまいりたいと考えます。

〇天畠大輔君

代読します。「派遣労働者の割合は全体の2.7%にすぎないから非正規雇用増加の主な原因ではない」と政府は言います。しかし、これは詭弁です。

労働者派遣法の規制緩和と同時並行で非正規労働が拡大してきました。業務の臨時性のあるなしにかかわらず期間の定めのある労働契約を締結できるといういわゆる「入口規制」の問題、正社員との差別を禁じる「同一労働同一賃金」や「均等待遇」の問題、そして、直接雇用化、常用雇用化を義務付けるいわゆる「出口規制」の問題、そのすべてにおいて非正規雇用拡大の牽引役を果たしてきたのが労働者派遣法なのです。

資料3をご覧ください。職業安定法四十四条は労働者供給事業を禁止、労働基準法六条は中間搾取の排除を規定しています。しかし、こんにち、この規定は労働者派遣法によって無効化されていると言って過言ではありません。労働者派遣法は、派遣会社に対し、賃金の決定、教育機関、教育訓練の実施、福利厚生の実施にあたり、派遣先企業における同種業務労働者との均衡を考慮しながら「配慮」するよう求めています。しかし、そもそも派遣先企業が支払う人的費用の一部が派遣元である人材派遣会社を経由して派遣労働者に支払われるのですから、このビジネスモデルそのものが労働規範を侵害しているのです。直接雇用、直接払いが労働基準の根幹だからこそ、職安法や労基法は労働者供給や中間搾取を禁じていることを忘れてはなりません。

次に、3つの就業促進手当について伺います。資料4をご覧ください。今般の法改正において、厚労省は、より安定した職業への転職に成功した人に対する「再就職手当」を維持する一方で、それ以外の不安定な職業への転職者に支給する「就業手当」を廃止したり、賃金が低下してしまった転職者に支給する「就業促進定着手当」の支給レベルを下げたりするという改定を行っています。
これらの改定の立法事実を簡潔に述べてください。


〇政府参考人(山田雅彦君) 

今ご指摘のあった3つの手当、総称して「就業促進手当」と言っておりますが、これは失業給付受給者の早期の再就職を促すことを目的とする制度であり、今般、委員ご指摘のように見直すこととしたものであります。

具体的には、まず、就業手当については、失業給付の受給資格者が安定した職業以外の職業に就いた場合に失業給付の3割相当額を支給するものでありますが、現下の人手不足の状況下においては安定した職業以外の職業への就職を政策的に促す意義が薄れていること、また受給者数が現在約3500人と少数であるということから、更に減少傾向にあるということを踏まえて廃止することとしたものであります。

一方で、「就業促進定着手当」につきましては、失業給付の受給者が早期再就職し、再就職6か月後において再就職時賃金が離職時賃金よりも低下した場合にその低下した分を給付するものでありますが、この人手不足の状況が今後一層深刻化することが見込まれる中で、賃金の低下を伴う再就職を後押しする必要性が薄れているということは、一方で、受給者数自体はこちらは約9万人で、早期再就職を行った者への支援として一定の役割を果たしているのもまた事実としてあると、そういったことを踏まえて、制度は継続した上で給付額の上限を引き下げることとしたものであります。

○天畠大輔君 

代読します。事前の法案レクチャーで厚労省は、より低い労働条件への転職に対する就労支援施策を廃止ないし減額するという「ディスインセンティブ」、いわゆる不利益効果による誘導策の導入によって、より高い労働条件への雇用移動を促すと説明しました。実際にそのような効果を示す研究や知見がありましたら、具体的にお示しください。

〇政府参考人(山田雅彦君)

ご指摘のような研究結果や知見については把握していませんが、現在の労働市場の状況等を踏まえれば、安定した職業以外の職業や賃金の低下が見込まれる職業への再就職を政策的に促していく必要性が薄れていることから、本法案では就業手当の廃止、就業促進定着手当の減額を行うこととしたものであります。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

把握していないのですね。立法事実がないと認めますか。大臣、お答えください。

〇政府参考人(山田雅彦君)

先ほど申し上げたとおり、研究成果や知見については我々の方では把握していないということははっきり言えます。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

もう一度聞きます。立法事実がないと認めますか。大臣、お答えください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

基本的に、この「就業手当」については、失業給付の受給資格者が安定した職業以外の職業に就いた場合に失業給付の3割相当額を給付するというのがその基本的な考え方になっております。

現下は人手不足の状況下にあります。安定した職業以外の職業への就職を政策的に促す意義が薄れていることや、受給者数が3500人と少数であり、更に減少傾向にあるというその事実を踏まえてあえて廃止することとしたものであり、立法事実はここにあると考えます。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

支援を削って雇用環境が改善されるはずはありません。代読お願いします。

今回のような就業促進手当の「ディスインセンティブ」、いわゆる不利益効果による誘導策が雇用環境を改善するなどという根拠はどこにもありません。すなわち、今般の法改正に盛り込まれている就業促進手当改定の立法事実はまったくないのです。次に、就業促進手当の「セーフティーネット」機能について、厚労省の見解をお聞かせください。

〇政府参考人(山田雅彦君)

「就業促進手当」は、失業給付受給者の再就職意欲を喚起し、できる限り早く再就職することを積極的に奨励しているものであります。

こうした就業促進手当の役割は今後も重要であり、労働市場の状況や雇用保険制度に求められる役割の変化などを踏まえて給付内容の見直しも行いながら、ハローワークにおける就職支援と相まって、今後とも失業された方の早期再就職を促進できるように制度運営に取り組んでまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君 

それならば、現行の手当は維持した上で、より良い転職ができた人への「インセンティブ」を別途考えるべきではありませんか。大臣、いかがですか。

〇国務大臣(武見敬三君)

この就業促進定着手当というものは、賃金の低下を伴う再就職にインセンティブを与えることにより早期の再就職を促すものでございまして、賃金を低下した場合の生活支援を目的とするものではございません。就業の促進手当の在り方については、制度の利用状況をよく見ていきながらこれから検討していきたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

「優生思想」が見え隠れします。引き続き検討を求めます。代読お願いします。

次に、いわゆる「就職氷河期世代」について伺います。1993年から2005年頃に就職活動を迎えた世代です。資料5をご覧ください。専門実践教育訓練給付金受給者の訓練終了後の賃金の変化です。20歳から54歳までの階層の中で、就職氷河期世代である40歳から44歳の年代層が最も賃金減少が多く、40%に上っています。                             

このように、就職氷河期世代の労働者の転職が他の世代に比べて労働条件向上になかなか結び付かず、その生活レベルが上向かないことの原因を厚労省はどう分析していますか。また、この問題を解決するための具体的方策は何ですか。

○国務大臣(武見敬三君) 

いわゆる就職氷河期世代には不本意ながら非正規雇用で働いている方々などがおり、一般に、非正規雇用労働者は正社員に比べて能力開発の機会に乏しいため、処遇面も含めて現在も厳しい状況に置かれているという認識をしております。こうした中で、就職氷河期世代支援については、より希望に沿った安定的な就労などを支援するため、政府としては、骨太方針2019に盛り込まれた「就職氷河期世代支援プログラム」の下で、2024年度までの集中的な支援に取り組んでいるところでございます。厚生労働省としては、具体的には、ハローワークの専門窓口における担当者制によるきめ細かな就職支援等を実施しております。また、就職氷河期世代を含めて、非正規雇用労働者に対するキャリアアップや新たな採用を行った企業に対しても助成を行っているところでございます。引き続き、これらの施策を着実に実行をして、一人でも多くの方々の安定就労を実現するよう全力で取り組んでまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

時間が来ておりますので、おまとめください。

〇天畠大輔君 

代読します。「就職氷河期世代だから一生非正規雇用労働者」などという状況は一刻も早く解消すべきと申し上げ、質疑を終わります。

〈配布資料〉