2023年11月29日 予算委員会質疑「年越しは許さない!強制不妊手術、精神科病院・虐待事件からの被害回復」

○天畠大輔君
代読します。
れいわ新選組の天畠大輔です。
本日は、補正予算、国民全体に関わる課題の審議です。
10人に1人が一生に一度はうつ病を経験すると言われる現代。精神科病院での虐待事件からの被害回復は、皆さん、明日は我が身の問題です。
今年2月に虐待、暴行事件が判明した精神科・滝山病院に今も残る入院患者の数など、国は把握していますか。総理、データをお示しください。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
虐待はあってはならないことであり、虐待の防止、早期発見、再発防止に努めることは重要です。ご指摘の滝山病院に対しては、東京都において、本年4月、精神保健福祉法に基づく改善命令が行われ、その後、入院中の患者の意向を踏まえ、転退院の支援が行われていると承知をしております。

その上で、滝山病院については、医療法に基づく許可病床数は288床であり、本年10月末現在、84名が入院中です。また、本年5月以降、東京都が転退院に関する意向調査を行った約70名の入院患者のうち約半数の方が転院や退院を希望し、そのうち、11月20、あっ、失礼、11月16日までに10名の方が転院したものであると聞いております。

○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
虐待があった場所で、年を越す人がこのままでは84人もいます。総理、1人の政治家として、おかしいと思いませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
転退院に向けての取組は、これ、先ほど申し上げた時点で終わっているものではありません。これは、引き続きこうした転退院を支援する取組は東京都において続けられています。引き続き、東京都において、本人やご家族の意向も踏まえつつ、転退院の支援、適切に対応するものと承知をしております。

○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしていますので、お待ちください。

○天畠大輔君
いやいや、異常事態です。代読お願いします。

精神科病院で虐待などが起こっても、そこに残る人たちはいつも置き去りです。虐待を受けたり、見たり聞いたりした患者1人1人に対する謝罪、回復ケア、そして事件直後の緊急的な転退院支援などの被害回復を定めた仕組みはありません。東京都は、現在転院支援をしていますが、ペースは遅く、結果として84人が残っています。半年前に退院を希望したのに出られていない人だけでも25人ほどいます。

滝山病院からの退院支援に取り組んできた相原啓介弁護士は、こう警鐘を鳴らします。
「まるで、災害時に被災地に取り残されている人たちが地面に倒れていることを誰も気に留めず、政府の責任追及や今後の再発防止策ばかりを全国民が語り合っているかのようです。」
総理、先ほど申し上げたような被害回復の支援を確実かつ早急に行うための法令上の仕組みが必要ではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
まず、虐待はあってはならないことですが、虐待事案が生じた場合、ご指摘の、患者への個別のケア、転退院支援等が必要になる場合がある、ご指摘のとおりであります。こうした場合は、都道府県等の指導監督の下、精神科病院において、患者の状況に応じ適切に患者の処遇改善が図られる必要があると考えています。

そして、ご質問は、この法整備、法令上の仕組みについてでありますが、昨年改正された精神保健福祉法に基づき、来年4月から、精神科病院における虐待防止措置や虐待を発見した場合の都道府県等への通報義務、これらに関する報告徴収等の仕組み、こうしたものが創設されることとなります。こうした取組の推進によって、入院中の患者の処遇の改善、これを前に進めていくことを考えていくことが重要であると考えております。

○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
総理、その今の仕組みでは無理です。絶対に新しい仕組みが必要です。代読お願いします。

次に行きます。
出生前診断が普及している今、優生思想は私たち1人1人に突き付けられた問題です。
旧優生保護法被害の国賠訴訟で、国側の敗訴は既に8件です。直近10月25日の仙台高裁判決は、これまでより大きく踏み込んでいます。原告の損害賠償権が既になくなっていると国が主張すること自体が不誠実で乱暴な態度だと、国の主張を完膚なきまでに否定しました。

総理、やはり政府はこれまでの上訴を取り下げ、総理が原告らと会うべきではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
旧優生保護法に基づき、又はこの法律の存在を背景として、特定の疾病や障がいを理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられた方々については、平成31年4月24日、議員立法により、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律が成立した際に、内閣総理大臣及び厚生労働大臣からそれぞれ真摯な反省と心のおわび、心からのおわびを表明しています。こうした政府の立場、これは今も変わっておりません。政府としては、引き続き、立法府の総意により制定していただいたこの法律に基づいて、こうした方々に対して一時金を円滑かつ確実に支給し、その責務を果たしてまいりたいと思います。

そして、この被害者に会うべきだというご指摘が今ありました。優生手術等を受けた方々の声、これは大切であると考えております。優生手術等を受けた方々との面会については、今訴訟が係争中であります。その点も考えて、その方法等を検討したいと考えます。

○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。

○天畠大輔君
総理が会うべきだと言っているんです。最高裁の判断を待つのは無責任ではないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
優生手術を受けた方々の声は大切であると申し上げました。そして、面会等については、訴訟が係争中でありますので、その方法等は検討したいとお答えをさせていただいております。

○天畠大輔君
代読します。
原告団代表で80歳の北三郎さんは、妻に優生手術のことをずっと言えず、妻の死の間際にやっと打ち明けたといいます。「私がいなくなっても、ご飯ちゃんと食べるんだよ」が最後の会話だったそうです。優生手術の被害者は80代、90代の高齢者です。

総理に改めて伺います。最高裁判断を待つのではなく、1日も早い政治決断が必要ではありませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
係争中の個別の訴訟については、それぞれ具体的な事情も異なることから、法律の解釈、適用を含めて個々に検討し、そして事案の内容に応じて1つ1つ丁寧に対応しているところですが、こういった観点から内容を精査したところ、この民法724条後段の解釈に関して、いずれも旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいること等から上訴せざるを得ないと判断に至ったと報告を受けております。

いずれにせよ、政府としては、全ての国民が、疾病や障がいの有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重しながら共生する社会実現に向けて、引き続き努力をしてまいります。

○委員長(末松信介君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
解決は待ったなしです。総理は、今年3月の予算委員会でも、会い方を検討するとおっしゃいました。遅過ぎませんか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君)
訴訟をめぐる状況、事情は様々であります。その事情に応じて、この被害者の方の声を聞くについても方法を工夫しなければなりません。係争中の事案であるからこそ、方法についても検討を考えているところであります。

○天畠大輔君
代読します。
虐待のあった精神科病院でも、優生保護法問題でも、安心して新年を迎えられない人が多くいる。
誰かに責任を押し付けず、政府も国会も行動すべきと申し上げ、質疑を終わります。