精神科病院での携帯電話・スマートフォン利用自由化に向けた厚労省交渉に同席しました(2025年6月26日)

6月26日、精神障がいの当事者団体「人権精神ネット」の皆さんが行う精神科病院での携帯電話・スマートフォン利用自由化に向けた厚労省交渉に同席しました。精神・保健福祉課長も一部出席しました。
精神科病院内における携帯電話・スマートフォン利用については、精神保健福祉法に基づく厚労省告示130号には「通信及び来院者との面会は、患者と家族、地域社会等との接触を保ち、医療上も重要な意義を有するとともに、患者の人権の観点からも重要な意義を有するものであり、原則として自由に行われることが必要」とあるのに、携帯電話やスマホは個別の症状判断ではなく病棟丸ごとで禁止されているところもあり、通信の自由確保、社会生活の維持、虐待防止や本人による通報などあらゆる面で人権侵害だ、と指摘され続けてきました。昨年12月の質疑では天畠からも、精神科病院での携帯電話やスマートフォンの利用実態調査を求めました。
今年3月31日付けで、厚労省から都道府県宛てに事務連絡が発出されました。この事務連絡では「可能な限り、携帯電話等を自由に使用できることが望ましい」と明記しました。そのうえで、使用可能な精神科病院に運用上のルールや効果を聞き取って事例を紹介し、どうやってトラブルを防ぐか、ルールを作るかということに力点が置かれています。前進だった一方で、告示130号で想定されている固定電話と同様に「個別の症状により制限する以外は、携帯・スマートフォンの使用は自由」といったところまでは踏み込んでいません。また当の患者の視点からなぜ携帯電話やスマホがなぜ必要なのかは含まれていません。
交渉では、「病棟丸ごとの禁止はダメ」「個別の症状以外は携帯・スマートフォンの使用は自由」という厚労省課長として通達を出すべきではないか、また3月の事務連絡発出後に全国の病院でどのような変化があったのか調査すべきと求めました。課長からは、全国調査も検討するとの回答が示されました。
天畠からは下記のとおり挨拶しました。
課長にお越しいただき、ありがとうございます。代読お願いします。課長は、事前にお送りした、東大の熊倉医師の論考を読まれましたか?
2つの点で興味深いものでした。
一つは、熊倉医師が「自分だったら、精神科病院に急に入院が決まったとき、携帯電話やスマホがなかったら何に困るだろう?」と個人的に想像していること。
二つ目は、論考の後半で、公衆電話の設置のみをもって通信の自由が保障されているという建て前は、市民感覚として腑に落ちないことが病院内で議論された、というくだりです。
携帯やスマホを自由化しようとする過程で、当事者と医療者の間にある大きな力関係の差、高い壁が、少し低くなっていることがわかります。
相手の身になって対話してみる、という仕事のうえで当然といえば当然のことですが、携帯やスマホを自由化する過程でこういった視点の転換がうまれています。
3月の通知を出したことで、この流れは一定程度後押しされたと思いますが、まだまだ出来ることはたくさんあります。今日の厚労省交渉の場が、もっとこの流れを加速させる、有意義な場になることを願っています。以上です。