津久井やまゆり園事件から7年を迎えて

元職員が自分のかつての職場である知的障がい者福祉施設に刃物を持って侵入、入所者19人を刺殺し、職員を含む26人に重軽傷を負わせたあの事件から7年が経過しました。この事件で亡くなった方々のご冥福を心からお祈りいたします。

犯人は逮捕後の取り調べにおいて「障がい者なんていなくなってしまえ」と供述するなど、強固な差別意識が動機となって犯行に至ったことが明らかになりました。その衝撃は、私を含む多くの障がい当事者、支援者、障がい者運動に取り組んできた人々の心に、今も消えない傷跡を残したままです。

殺害行為にあたり、犯人が「言葉をしゃべれるか否か」について執拗にこだわったという事実に、発話障がいを持つ私は震撼しました。それ以来、「いつか殺されるのではないか」という不安が、私の心から消え去りません。

言葉の表出がなくても、知的に障がいがあっても、殺されるべき人など断じていません。この事件で犠牲となった方々の、永遠に踏みにじられた声を、「生き残った」障がい者のひとりとして心に刻み、発信し続けていく覚悟です。

杉田水脈衆議院議員は過去、「LGBTには生産性がない」と寄稿しました。「生産性があるか否か」「役に立つか否か」で人間を判断する社会は、マイノリティーのみならず、すべての人々にとって残酷で生きづらい世の中に他なりません。

津久井やまゆり園事件を、決して繰り返させてはいけません。同時に、この問題を犯人への処罰(確定判決は死刑です)で終わらせることもまた、許されません。

犯人は小学生時代の作文に「障がい者はいらない」旨つづったそうです。もしも日本社会と学びの場が、子どもたちに対して、すべての人間の命が等しく尊重される社会の素晴らしさ、それを求める闘いの尊さを示せていたのなら、このような事件は起きなかったでしょう。

旧優生保護法下で行われた強制不妊手術等の裁判で、政府は最高裁まで争う態度を崩していません。まさに日本社会はいまだ「優生思想」からの脱却を成し遂げていないのです。

議員活動の中では、障がい者が抱えている多くの困難、差別と偏見を目の当たりにします。同時に、それらの問題に対して正面から向き合い、人間としての尊厳の回復と差別のない社会を目指す取り組みに、日々勇気づけられてもいます。

津久井やまゆり園のような事件の再発を許さない取り組みに、全力を尽くしてまいります。

2023年7月26日 天畠大輔