【2024年通常国会ハイライト③】服薬をやめると命の危険がある方々への災害対策を強化するよう求めました
糖尿病をもつ人々の中には、インスリンを投与しなければ数日で命を落としてしまう方がいます。しかし、これまでの「大規模災害時の医薬品等供給マニュアル」では、インスリン製剤の確保が「避難所生活が長期化する頃」に位置づけられていました。
昨年11月の臨時国会で厚労大臣に改善を求めた結果、インスリン製剤や注射針等の備品について、災害発生時から3日以内の超急性期に必要な医薬品と同等に取り扱うよう各都道府県に事務連絡が発出されました。
災害の多い日本で安心して暮らせるために、災害対策は待ったなしと考え取り組んだことでしたが、質疑から2ヶ月もたたないうちに、能登半島地震が起きてしまいました。
能登半島地震で浮き彫りになった課題
2024年元旦に起こった能登半島地震。地震の規模を示すマグニチュードは7.6で、阪神・淡路大震災よりも大きな規模の災害でした。被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
ひとたび大規模災害が起きると、医療的ケアが必要な障がい者や慢性疾患をもつ方々は深刻な状況に置かれます。特に能登半島地震では、地形的な理由から、医療従事者をいかに半島に派遣し、医薬品を処方できるかが問題となりました。また、元旦という特殊な日だったため、被災者はどのようにSOSを伝え、必要な情報を得るかという課題も浮き彫りになりました。電波の復旧に時間がかかったり、役所や医療機関への連絡がつながりにくかったことで、被災者の方々はいつまでたえればよいのか、いつ医薬品が供給されるのかなど、状況が分からず大変不安だったのではないでしょうか。
厚労省は糖尿病医療支援チームDiaMATと連携し、インスリン製剤の不足情報をあつめ、必要に応じて対応できる体制をとっていました。厚労省によると、石川県内の医療機関には必要な医薬品が供給され、インスリン製剤が不足している情報はなかったそうです。しかし、被災地に医薬品が届いたとしても、本当に一人ひとりの患者さんのもとに届いていたのでしょうか。被災者がSOSを出すためには、自分で情報を取りに行かなければたどり着けない状況にも、強い危機感を覚えました。
SOSがなくても必要な医薬品が供給される支援のしくみ
そこで、2024年通常国会では、厚労省やDiaMAT、各医療機関の情報ネットワークを活用して、糖尿病患者がどの地域にどのくらいいるか把握し、SOSがなくても必要なインスリン製剤が供給される支援のしくみを構築するよう求めました。
DiaMATの中心メンバーであり、日本糖尿病協会理事、佐賀大学医学部教授の安西慶三先生によると、これまでの一方通行の情報提供では不十分ということです。DiaMATでは、災害に備えた患者登録・情報発信の手段としてLINEアプリ(配付資料参照)の活用を検討しており、素早い情報提供に加えて、インスリン依存型の患者さんとの双方向のコミュニケーションにより、インスリンを必要な場所に正確に届けることが期待されます。糖尿病に限らず、抗不整脈薬や抗てんかん薬など、休薬が危険な薬剤を使う人たちもこの仕組みを広く活用できる可能性があります。
質疑ではこの点を深掘りし、服薬をやめると命の危険がある方々の災害対策について、LINEアプリ活用も含めて、積極的に情報収集し、対応を検討していくべきだと訴えました。厚労大臣からは、糖尿病や不整脈、てんかんの患者など、服薬をやめると命の危険がある人たちの災害対策は極めて重要で、DiaMATを運営している日本糖尿病協会から状況を伺いながら検討するとの前向きな答弁をいただきました。
内閣府の災害対策にも迫りました。4月2日の質疑では、服薬をやめると命の危険がある人が「総合防災訓練大綱」の「要配慮者」であることは確認できたため、5月14日の質疑ではもう一歩地域に踏み込んで、国が率先して各自治体の避難計画に彼らを「避難行動要支援者」として組み込み、確実な薬剤の受渡しができないか伺いました。
誰もが安心して暮らせる災害対策を目指し、今後も取り組んでまいります
年明けに開催された「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク伊勢崎大会」では、石川県議会議員竹田良平さんをはじめとする当事者が集まり、能登半島地震での被災障がい者支援について議論しました。私からはこれまでの災害時の医薬品供給についての取組を報告し、参加者と国が改善すべき課題について意見交換を行いました。
これらの一連の取り組みにあたっては、DiaMATを運営する日本糖尿病協会と連携しています。引き続き、奥能登での災害救助に携わったDiaMATへのヒアリングを継続するとともに、その内容を関係省庁に情報共有していきます。
また、災害時の医薬品供給を考える上では、医療費の無償化も欠かせません。現時点では減免の判断が保険者の判断に委ねられているので、被災者は医療費や医薬品を原則無料とすべきと考えています。
今後も、災害の多い日本で誰もが安心して生活できるよう、より良い災害対策の検討と国への提言を行ってまいります。(文責:秘書 黒田宗矢)