【2023年通常国会ハイライト⑧】滝山病院問題を予算委員会で取り上げました

予算委員会で精神科病院を取り上げる意味

東京都八王子市の精神科「滝山病院」の看護師が、今年に入り複数名、患者への暴行容疑で逮捕、略式起訴されています。この件を扱ったNHKのドキュメンタリー番組は、社会全体に大きな衝撃を与えました。このような事態を二度と繰り返さない観点から、2023年通常国会にのぞみました。

「我が国幾十万の精神病者は実にこの病を受けたる不幸のほかに、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものと言うべし」これは精神病者私宅監置の実況及びその統計的観察の中の一節であります。呉秀三らによってこの調査が行われました。これは日本で最初の座敷牢に関する疫学調査でありました。

この有名なフレーズの後にこういう一文が付くことをご存じでしょうか。「精神病者の救済と保護は実に人道問題にして、我が国目下の急務と言わざるべからず」この急務と言った時期から105年が経過しています。まさに日本の社会は一体何をしてきたんでしょうか。

2022年12月5日 厚生労働委員会質疑「だれのための障がい者政策?尊厳をかけて行動する当事者の声を届ける/障がい者関連束ね法案」

昨年12月、障がい者関連束ね法案審議の参考人質疑で、日本障害者協議会(JD)の藤井克徳代表が述べた言葉が思い出されます。藤井さんはこの指摘に続き、「精神保健福祉法、もちろん今度の法案、いろんな議論は必要だけれども、時には歴史を振り返って、構造的な問題をきちんと考えるべきじゃないでしょうか」と提起しておられました。

障がい当事者や関係者はみんな知っている、悲惨が常態化しているが、世の中では重要視されていない。障がい者がこうむる人権侵害の中には、そんなテーマがいくつもあります。精神科病院での虐待やその結果の死亡も、その一つです。滝山病院をはじめ精神科病院では、これまでも幾度となく虐待事件が起きていますが、また精神科病院で病院全体の体質とみられる虐待事件が起こってしまったのです。

天畠は当事者議員として、通常の委員会よりも注目度が高く、テレビ、ラジオの中継が入ることもある予算委員会で、これらの問題を取り上げるようにしています。一人でも多くの人に知ってもらい、障がい者と関係者だけが知っていて解決しない、そんな構図を一日も早く終わらせるためです。今回も滝山病院事件が発覚して約1か月後にめぐってきた予算委の機会で、精神科病院を取り上げました。

滝山病院事件の議論から抜け落ちがちな「当事者の人権擁護」の視点

3月20日の予算委質疑では、「精神科病院問題を議論するときに、人権擁護の観点が足りていない」点を重視しました。もちろん、虐待防止・発見の仕組み、診療報酬不正請求の追及、生活保護行政として適正だったか、などの検証と改善は必要ですし、天畠も取り組みます。ただより急ぎ、重視されるべきは、虐待を受けた方、間近で見た方、今も病院内に残っている退院・転院・地域移行希望者の回復、新しい生活のための支援ではないでしょうか。「当事者性の回復」、つまり自らが直面する困難がどのようなものかを自覚し、病院をはじめ社会全体に訴えていけるようになっていくこと、そのような当事者の回復過程を病院内外の支援者が支えていく仕組みが必要なのです。

天畠「(前略)精神科病院での虐待事件では、病院への行政処分にだけ焦点が当たりがちです。虐待を受けた当事者やほかの患者たちに対する退院支援、回復のケア、謝罪などを定めた仕組みは、国にも自治体にもありません。この課題に対して国はどのように取り組むのか、加藤大臣のお考えをお聞かせください」

加藤勝信厚労大臣「精神科病院の医療、これはまさに患者のために行われるわけでありますから、患者の尊厳、人権が確保されることは何よりも重要であります。また加えて、精神科病院における入院患者に対しては、地域の事業者やピアサポーターを含む当事者の方々の関わりにより退院や地域での生活移行が進められるべきであり、厚生労働省としてもこうした取組を支援してきたところであります。

昨年の精神保健福祉法の改正で、家族との音信がない患者等に対し、本人の希望に応じ、外部の支援員が精神科病院を訪れ、患者の話を丁寧に聞き、生活相談に応じる等の事業を創設をいたしました。また、精神科病院は、医療保護入院者等の患者に、少なくとも半年に1回、退院支援委員会を開催して地域生活への移行等について検討し、必要がある場合には相談支援事業者等を紹介しなければならないことを義務化したところであります。こうした取組により、様々な支援者が関わり、退院や地域での生活移行の推進を図っていきたいと考えております。また、虐待を受けた場合の個別の当事者のケアについて、これらについては適切な対応が図られるよう、都道府県とよく連携して対応していきたいと考えております」

天畠「当事者主体の権利擁護の視点をもっと持ってください」

2023年3月20日 予算委員会質疑「精神科病院での虐待を繰り返さないために」

この時の質疑では、滝山病院事件のように病院全体で虐待が起こりやすい体質だった場合の退院・転院支援をどう考えるか課題提起をしましたが、精神科病院一般の退院支援を並べる答弁で残念だったので、念押しをしました。

滝山病院については現在、東京都が中心となって、入院する患者への退院・転院希望の意向調査を行い、患者の家族や関係各所との調整が行われていますが、残念ながら十分とは言えません。そこで、この問題に心を寄せる市民、市民団体、自治体議員、国会議員が集まり、関係各所との連携を強化するため、当事者、市民、議員との連絡会議が発足しました。天畠もこの連絡会議に賛同。この連絡会議に賛同する首都圏中心の自治体議員がそれぞれの議会質問で滝山病院問題を取り上げるなど、この問題を風化させない取り組みが進んでいます。今後も、滝山病院、国、東京都、八王子市など様々な関係機関に働きかけていきます。(文責:秘書 篠田恵)