【2023年通常国会ハイライト④】感染症対策に社会的格差の視点があるかただしました

感染症対策で障がい者は文字どおり「置き去り」

2023年通常国会には、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、「国立健康危機管理研究機構」を作るための国立健康危機管理研究機構法案が政府から提出されました。米国の疾病対策センター(CDC)をモデルに、感染症に関する科学的知見を政府に提供する役割を担うもので、新機構は「日本版CDC」とも呼ばれます。

米国でも日本でも、新型コロナウイルス感染症の蔓延下で、社会的格差が感染リスクや医療格差に直結したことは、報道でもよく取り上げられ、一般的にも記憶に新しいのではないでしょうか。

「感染拡大防止」の名の下に、コロナ禍では多くの障がい者たちがきわめて深刻なレベルでの不利益を被りました。たとえば、コロナ感染でいったんは入院したものの、介助者の付添いが認められず、肺炎を起こしかけていたのに退院せざるを得なかった方、介助者を伴う入院を希望したものの、医療機関側が受け入れず、自宅療養を余儀なくされた挙げ句亡くなられた方。ほかにも障がい者の入院にまつわる困難の事例は後を絶ちません。健常者と障がい者の間に明確な医療格差があったことを、当事者は痛感しています。

しかし政府は、新型コロナ感染症患者について、併存疾患やADL(日常生活動作)とその状態等が患者の重症化に与える影響等は分析しましたが、障がいがあることに付随する感染リスク格差、医療格差は把握していません。さらに今後の把握についても、「新型コロナの5類への位置付け変更後も、障がい者施設等において集団的な新型コロナの発生があった場合には、保健所に連絡していただき、保健所においては積極的疫学調査や指導等、引き続き必要な対応を行っていただくことをお願いしている」と言うばかりで、在宅の障がい者がまた置き去りになりかねません。

日本版CDCに社会的格差の視点はあるか?

そこで今回の法案審査では、政府が作ろうとしている日本版CDCに社会的格差の視点があるのかただしました。

天畠:米国CDCの組織図には、トップである「所長局」に直属する部署として、「格差管理公平雇用局」と「健康格差局」が置かれており、エスニックマイノリティや貧困層の感染症リスクについて知見を集め、政策につなげています。国立健康危機管理研究機構においても、そのような部分は大いに見習い、研究メニューの中に積極的に取り入れるべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤大臣:国立健康危機管理研究機構と米国CDC、様々な点が異なっておりますが、感染症の予防や感染拡大の防止などのため、基礎から臨床までの一体的な研究基盤等により獲得した質の高い科学知見を危機管理統括庁、そして厚労省に提供し、そして政策決定に役立てるとしているわけであります。感染症の発症リスクや重症化リスクとしては、年齢や基礎疾患などの要因のほか、ご指摘のような社会的な要因も考えられることから、必要に応じて、研究内容や方法等について社会学等の専門家やアカデミアとも連携した検討がなされていくものと考えております。

2023年5月30日 厚生労働委員会質疑(国立健康危機管理研究機構法案審議)「感染症対策は『格差対策』だ」

「必要に応じて、研究内容や方法等について社会学等の専門家やアカデミアとも連携した検討がなされていくものと考えている」という他人事のような答弁、またこのやり取り以外でも政府が、感染症対策にあたり社会的格差の視点を取り入れた十分な施策を取り入れていないことが分かったため、法案には反対しました。しかし賛成多数で法案は成立、今後日本版CDCは発足しますので、この質疑を起点に、より具体的に働きかけてまいります。(文責:秘書 篠田恵)