2025年12月2日 厚生労働委員会質疑(医療法改正案審議)「精神病床削減の目的は地域移行です!」


〇天畠大輔君
代読します。
れいわ新選組の天畠大輔です。医療法の質疑に入る前に、障害年金の総点検について、どうしても指摘しておきたい点があり、質問します。

先日の所信質疑で、私は不合理な理由で不支給とされた障害年金の認定事例を紹介しましたが、実はそのすべてが今回の不支給事案の総点検の対象外です。理由は、審査請求に進んでいるからです。不支給急増問題を受けて厚労省が発表した障害年金の総点検は、期間は令和6年4月から令和7年8月まで。障害種別は「精神障害」と「その他の疾病による障害」のみです。総点検の趣旨は、障害年金を本来支給できる人をきちんと救済することであったはずなのに、点検範囲が非常に限定的で、対象から漏れている人が大勢いるのは不公正ではないでしょうか。

資料1をご覧ください。令和6年度は、審査請求・再審査請求ともに原処分が妥当と判断され請求人の主張が退けられる「棄却」が増加しています。その数計4347件。書類の不備等による「却下」を除き、いったん審査請求のレールに乗ったものは点検の対象外となってしまいます。

審査請求とは、行政による処分等に対し、国民が不服を申し立てることのできる制度です。裁判とは異なり、簡易に、法的な形で審理を行うことができる点はもちろん重要です。しかし、今回の障害年金の総点検は、異例中の異例なわけです。本人に不服があるかどうかにかかわらず、厚労省が一部に問題があったことを認め、自ら総点検しています。審査請求とはその趣旨や経緯が全く違うのです。

また、厚労省は今回の不支給増加問題について、障害年金の審理を担当する社会保険審査官・社会保険審査会には調査報告書を共有したのみです。社会保険審査官・社会保険審査会は、厚労省がどのような視点で点検をしているのか、年金機構のどのような認定が適切でなかったのかを熟知しているとは言えません。やはり、不支給事案の点検を担当しているグループが一括して点検を行うべきです。

そこで、大臣にお伺いします。審査請求・再審査請求が行われた事案についても総点検の対象とすべきではないでしょうか。

国務大臣(上野賢一郎君)
お答えいたします。審査請求・再審査請求につきましては、特別の法律に基づいて国民の権利利益の救済を図るものとして位置付けられております。具体的には、原処分に関与しない社会保険審査官及び社会保険審査会が決定、採決を行うこととなっております。また、審査請求における口頭意見陳述や再審査請求における公開審理など、請求人にとって法的に保護された手続の下で運用されております。審査請求再審査請求事案については、このような制度上の枠組みの下で公平な審理が既に進行しているところであります。原処分時とは置かれている状況が異なりますので、今回の原処分庁、これは厚生労働大臣になりますが、が自ら行う点検の対象とすることは考えてはおりません。

また、容認率のお話が少しありました。今回の点検と審査請求では見ている事案が異なりますので、一概に数字を比較することは、評価することは難しいわけでありますが、容認率に関しては、例えば審査請求事案は、直近3年間で見ますと2%台から3%台後半で推移をしています。今回の点検により支給となった割合は、現時点では約四%となっております。ここでご留意をいただきたいのは、原処分庁が審査請求の決定を待たずに自ら処分を変更することもありまして、その件数は直近3年間で平均で100件程度となっております。これらを加えますと、例えば令和6年度では4.3%が変更あるいは容認されたこととなりますので、結果的に現在厚生労働省で進めているものと差はないような状況となっております。

いずれにいたしましても、このような状況を踏まえながら、厚生労働省としてはしっかりと点検を進めていきたいと考えています。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
よりきめ細やかな救済をするために、点検に加えてください。代読お願いします。

総点検の救済率は、現在4.2~4.3%と公表されています。このように一定の結果が出ているわけですから、審査庁が別だてで審理しているからといって対象から外すのではなく、審査請求、再審査請求に進んだ事案も点検に加え、本当の意味での「総点検」をしてください。重ねて強く求めます。

さて、よりきめ細やかな救済という観点で、対象期間についても伺います。厚労省は6月に公表した調査報告書で、事務職員による事前審査自体は問題ないと位置づけましたが、私はおかしいと思います。そこで不支給割合の上昇に事前審査が与えた影響を再検証すべきと求めていました。

資料2は、先日、厚労省から提出されたデータです。抽出調査における不支給事案85件のうち、①事務職員が目安よりも下位等級案を出し認定医が同等級と判定したケースは27件31.8%、②目安が2つの等級にまたがるものについて、事務職員が下位等級案を出し認定医が同等級と判定したケースは、32件37.6%だそうです。これらは重複していないので、実に約7割で事務職員の等級案が踏襲されていることがわかります。事務職員による事前審査が認定医の判定に強い影響を与えていたことは明らかです。

そこで大臣にお伺いします。事前審査が認定に影響を与えていたことは否定できないため、事前審査が与えた影響を把握するうえでも、事前確認票に等級案をつけることがはじまった令和4年4月から点検を行うべきではないでしょうか。

国務大臣(上野賢一郎君)
ご趣旨はよく理解をいたしますが、令和4年度又は令和5年度の精神障害等の事案につきましては、両年度の不支給割合、不支給割合は令和6年度と比較しますと低い状況にございます。現在、令和6年度、そして今後は令和7年度の点検結果、現在のところ、これに是非注力をさせていただきたいと考えております。その後のことにつきましては、そうした状況も踏まえて改めて 整理、検討をしてまいります。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
やらないわけではないということなので、令和4年度、5年度分の総点検、ぜひお願いします。次に行きます。代読お願いします。

それでは、医療法改正案の質疑に入ります。本法案については、衆議院で自民・維新・公明・立憲・国民の5党修正案が反映されています。特に注目すべきは、病床削減をより一層進めるための法的枠組みを導入する内容です。当該規定は令和9年3月31日までの時限措置として位置づけられているため、令和9年4月の新しい地域医療構想のスタートに向けて、短期間での削減を促す圧力が強くなっています。法文上は削減数を明記していないものの、今年6月の3党合意における11万床削減を前提とした規定であることは明らかです。

この11万床のうち、約5.3万床は精神病床に当たります。れいわ新選組は一般病床の削減には明確に反対ですが、精神病床の削減については、入院中心から地域中心への移行の観点からむしろ賛成です。問題はその目的です。本来、精神病床の削減は、いわゆる社会的入院を余儀なくされている人の地域移行や社会復帰が目的のはずです。

しかし、3党合意で謳われる病床削減は空きベッドを減らすだけで、地域移行の促進に資するわけではありません。病床削減と地域移行は車の両輪でなければ施策として意味がないのです。この前提に立ち、精神病床からの地域移行にむけた具体策について質問します。

最初に海外の事例を紹介します。精神科病院を廃止したイタリアの事例は大変有名ですが、病床削減と地域移行のあり方を考えるにあたっては、ベルギーの事例も参考になります。ベルギーでは、精神科病院が病床を自主的に削減する際、削減による病院収入の減少分を国が一定期間補償し、その条件として病院が訪問医療・地域ケア等へ機能転換し、アウトリーチチームの整備を進める仕組みが導入されています。収入補償、機能転換、人員再配置がセットで行われ、過剰な人員が地域移行の人材として活用されることで、病床削減と地域移行が一体的に進められてきました。この点は、日本の精神科医療改革にとって大変参考になると考えます。

大臣、このベルギー方式についてご存知でしたか。私はベルギー方式を含む海外の地域移行政策について体系的な調査研究を行う必要があると思います。そこから得られた知見をぜひ日本における地域移行施策に活かしていただきたい。大臣の見解を伺います。

国務大臣(上野賢一郎君)
ベルギーのケースにつきまして今ご指摘をいただきました。これまで我が国におきましても、医療計画に基づく精神病床の適正化、機能分化等の推進、精神障害者が早期に退院するための体制の確保や多職種のチームによる質の高い医療の提供などを行ってきたところであります。精神医療を取り巻く経緯あるいは環境などは国ごとに大きく異なっておりますので、諸外国の制度をそのまま適用するということはいろいろ課題も多いというふうに考えておりますが、今ご紹介をいただきましたベルギーの地域移行に関する政策の状況については必要に応じて参考とさせていただきたいと考えています。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
参考にするというなら、ベルギーの事例も含めて調査研究しますよね。大臣、いかがですか。大臣に聞いています。

政府参考人(野村知司君)
すみません。私の方からお答えをさせていただきます。委員ご指摘のベルギーの事例、報道を始め各種情報等で私どもも把握をしているところでございます。一方で、限られた予算、人員の中でどのような調査研究を優先的に行うかというのは、ほかに様々なテーマや課題もある中で、なかなか悩ましいところでもありまして、慎重に検討する必要があるかなというふうに思っております。なかなか諸外国の状況、各国によっていろいろ状況も違いますので、そのまま調査研究して引っ張ってくるということはなかなか難しゅうございますが、いろいろな報道をはじめとする様々な提供されている情報、こういったものを収集しながら、必要に応じて参考とさせていただきたいと考えております。

〇天畠大輔君
大臣からも改めて調査研究についてお願いします。

国務大臣(上野賢一郎君)
局長の方から答弁がありました、本格的な調査というのは現段階の人員等の問題でなかなか難しいと考えておりますが、情報収集、これは大使館等も通じて適切に対応していきたいというふうに思っています。

〇天畠大輔君
代読します。
一方で、日本の現状はどうでしょうか。入院中心の施策を進めてきた日本の精神医療の現状を変えることは容易ではありません。にもかかわらず、政府の地域移行の目標設定には疑問が多く、その本気度を疑わざるを得ません。

資料3をご覧ください。厚労省が令和4年3月に公表した「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築にむけた事例集」には、「退院の可能性や見通し」について統計調査のデータが示されています。精神病床を有する医療機関における認知症を除く1年半以上の長期入院患者のうち、33%は「居住や支援がないため」退院が困難と回答しています。

令和6年度の精神保健福祉資料によると、1年以上の入院者、つまり長期入院患者は約15万人です。資料3の統計とは調査年度が異なり、アンケート調査の対象は1年半以上の長期入院患者なので正確な数字は出せませんが、およそ5万は本来入院の必要がなく、すぐにでも地域での暮らしを保障すべき人数だと言えるのではないでしょうか。

一方、第7期障害福祉計画では、1年以上の長期入院者を3.3万人削減するという成果目標が掲げられています。厚労省、この3.3万人という数字の計算方法をお答えください。

政府参考人(野村知司君)
お答え申し上げます。令和6年度から令和8年度までを計画期間といたします現在の第7期障害福祉計画におきましては、成果目標として、精神病床における1年以上長期入院患者数を設定しておりまして、令和8年度末までに令和2年度と比べて3.3万人の減少というものを掲げております。この3.3万人の計算といいましょうか、算出でございますけれども、平成26年から平成29年にかけての精神病床における入院患者数の変化の動向、それに加えまして、1年以上の長期入院患者に対する地域移行の取組を進めることによる入院患者の減少というものも上乗せで勘案いたしまして、令和2年の入院患者数をもとに令和8年のこの入院患者数を推計しております。そのうえで、精神病床における1年以上の長期入院患者数について、この今のようなお話を申し上げたような形で算出した結果の令和8年の推計入院患者数と令和2年の入院患者数の差の分、これが約3.3万人ということで設定をさせていただいております。

〇天畠大輔君
もっともらしい計算式ですが、3.3万人という数字は、患者数の自然減少が大前提ですよね。地域移行したくてもできていない生身の人間を見てください。この数字に向けて何を整備し、どれだけ予算を投入するのかという財政フレームも明らかにされていません。これで政策目標とは言えるでしょうか。

一方で、かつての高齢者施策における「ゴールドプラン」では、ホームヘルパーやデイサービスの数を明確に数値目標として掲げたからこそ、予算と整備が実際に進みました。きちんとした到達目標を示し、そこにむけた財政・施策の裏付けを伴わせることが政策の役割ではないでしょうか。

地域移行のための支援があれば退院できる人の数を基準に、必要なヘルパー数や事業所数など地域援助事業者体制を見積もり、そこから政策目標を立てるべきです。患者数の自然減少を前提にした3.3万人ではなく、支援の整備と予算措置を伴う政策目標こそ必要だと考えます。大臣の見解を伺います。

国務大臣(上野賢一郎君)
現在の目標値の3.3万人の削減につきましては、今し方、局長の方から答弁をさせていただいたとおりでありますが、現在、関係の審議会におきまして、令和9年度からの次期社会、障害福祉計画にむけた検討を進めておりますが、1年以上の長期入院患者数の減少等の成果目標を掲げることや、地域医療に伴い、地域移行に伴い必要となる今委員からお話のありましたサービス利用者数の見込み等を設定することについてご議論をいただいておりますので、引き続き、地域移行にむけた充実した議論を進めて、適切な対応を進めてまいりたいと考えています。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
地域での支援で退院可能な人数をもとに、整備と予算をセットにした、より明確な目標を作るお考えはありませんか。大臣、はいかいいえで、二択でお答えください。

国務大臣(上野賢一郎君)
いずれにいたしましても、ご指摘も踏まえて適切な目標設定に努めてまいります。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
予算の裏付けがある目標を立ててください。代読お願いします。

次の質問にうつります。私自身、重度障がい者が地域で暮らすうえで、ヘルパー制度の活用が不可欠であることを実体験として痛感してきました。また当事者として、ヘルパー制度が十分に周知されていなかったり、ヘルパーを派遣する事業所が少なかったりする現状と向き合い、問題意識を持ってきました。特に、精神病床から地域移行した方々の支援状況については、全国的なデータが存在していないのが現状です。

この「数字の欠如」は、単に把握が不十分というだけで済む話ではありません。実態が見えなければ、地域での生活を支えるための具体的な整備目標も立てられず、必要なヘルパー数の見積もりもできない。結果として予算措置も後追いとなり、支援につながりやすい自治体とつながれない自治体で格差が固定化されてしまいます。つまり、数字がないこと自体が地域移行政策のブレーキになっているのです。

精神科病院からの地域移行を進めるためには、病院から地域援助事業者へどの程度紹介されているのか、どの支援につながっているのか、その現状と課題の把握が不可欠です。厚生労働省として、全国的な実態の把握と課題整理に踏み込む考えはあるか。大臣の見解を伺います。

国務大臣(上野賢一郎君)
まず、ご指摘のように、地域援助事業者の実態を把握することは大切だと考えております。ただ、サービスの種別であったり受入れ状況であったり、詳細までを幅広く調査を行うのは、現場の皆さまにも過度な負担を課すおそれがあるので、難しい課題だと考えています。ただ一方で、今年度実施をしております調査研究において、精神科病院と地域援助事業者との連携の状況、これを実態調査を行っておりますので、その実態調査の結果を踏まえて、引き続き必要な対応を取っていきたいと考えています。

〇天畠大輔君
代読します。
精神科病院を対象とした調査が行われていることは承知しております。確かに退院時・退院後の支援状況の「傾向」はわかるかもしれません。しかし私が申しているのは、ヘルパー数や事業所数をはじめとした地域の受け皿整備の具体的な目標を設定するための「数字」が必要だということです。現場の過度な負担と言いますが、抽出調査でもより具体的で踏み込んだ調査ができるはずです。大臣、前向きに検討してくれませんか。もう一度ご答弁願います。

国務大臣(上野賢一郎君)
今年度実施している調査につきましては今ご指摘のあったとおりかと思いますが、その調査結果をまず踏まえさせていただいて、今後どのような調査が必要なのか、その対応についても検討をしてまいります。

〇天畠大輔君
代読します。
次に行きます。冒頭でご紹介したベルギー方式は、精神病床の削減により過剰となった看護職員を、その病院のアウトリーチチームの整備などに振り向けるという、人員の再配置の仕組みを中心に据えています。精神病床の削減には、人員の効果的な再配置につなげる取り組みが欠かせません。

そこで、最後に大臣に伺います。精神科病床を削減する場合、看護職員をほかの病棟や地域支援へ再配置する必要が生じます。これは身体拘束ゼロや手厚いケアの実現にも寄与します。しかし、再配置に伴う財政支援は現時点では存在しません。地域包括ケアの構築に資するためにも、再配置への財政支援を検討すべきではないでしょうか。大臣の見解を伺います。

国務大臣(上野賢一郎君)
それぞれの病床の機能に応じまして、精神障がい者が早期に退院するための体制を確保し、精神障害者の状況に応じた多職種のチームによる質の高い医療を提供することなどによりまして退院の促進に取り組む、そうしたことを指針において示しております。こうした内容も踏まえて、各医療機関においてはその体制等について検討いただくものだと認識をしております。

病床削減を行う精神科病院の状況は様々でありますから、ご指摘のように看護職員等の再配置に対して財政支援を行う、それについてはなかなか課題が多いかなというふうには考えております。ただ、現在開催をしております有識者検討会におきましても、精神病床の人員配置につきまして、医師、看護職員をはじめとする多職種による手厚い医療を提供できる体制を確保し、地域医療にむけた取組を推進していくことの必要性、これは指摘をされておりますので、そうした指摘も踏まえながら、どのような体制の整備を整えるのが大切か、それについても十分検討して整備を進めてまいりたい、適切な対応をしてまいりたいと考えています。

委員長(小川克巳君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君
財政支援についても前向きに検討をお願いします。代読お願いします。

地域で暮らしたいというわれわれ障がい者が、その希望を実現できるだけの制度と予算を整えること。地域移行は理念ではなく、具体的な制度、人材、予算によって初めて進みます。病床削減ありきではなく、地域移行と車の両輪で、国が責任を持って進めていただきたい。そのことを強く申し上げ、質問を終わります。