2025年11月14日 予算委員会質疑「差別の法廷に葬られた命 ハンセン病・菊池事件の再審を」
○天畠大輔君 代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。かつて、ハンセン病への差別から、憲法違反の隔離法廷が九十五件も開かれました。その一つで、冤罪事件でもある菊池事件を取り上げます。
資料一。一九五一年、村役場職員の家にダイナマイトが投げ込まれ、Fさんが逮捕されました。当時は、差別的ならい予防法の下、地域ぐるみで患者を見付け、通報、強制収容が全国でありました。被害者は過去にFさんを熊本県に通報していたため、恨みによる犯行だと警察は見込み捜査。裁判はハンセン病療養所の中で行われ、懲役十年。まともな審議も弁護もない、傍聴人もゼロ。その後、Fさんが逃走中、その被害者が殺されました。裁判はまたも隔離法廷。裁判官や検察官はゴム手袋をはめ、調書をめくるのに箸を使用、人間扱いではありません。Fさんは無実を主張しましたが、死刑判決、執行がされました。
資料二。この菊池事件の隔離法廷について、熊本地裁は二〇二〇年、違憲判決を出し、確定しました。そして、来年一月末までに熊本地裁は再審の可否を決めます。
最高裁に伺います。二〇一六年、隔離法廷についての調査報告書を発表、その記者会見で当時の事務総長が憲法違反が疑われる旨言及しました。そうですね。
○最高裁判所長官代理者(清藤健一君) お答えいたします。委員御指摘の記者会見において、当時の今崎幸彦事務総長が、ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する記者からの憲法十四条違反の疑いがあったということかとの質問に対し、そのように理解していただいて結構である旨答えたことは事実でございます。
○委員長(藤川政人君) 天畠大輔君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君 改めて最高裁よりハンセン病元患者とその家族に謝罪願います。
○最高裁判所長官代理者(清藤健一君) 委員御承知のとおり、裁判所では、昭和二十三年から昭和四十七年までの間、基本的に、当事者が現にハンセン病に罹患していることが確認できれば、科学的な知見や当事者の病状の程度ないし他者への伝染可能性の有無及び程度、伝染予防の措置をとることが可能か否か、将来における病状の改善や伝染可能性の低下の見込みの有無等の諸事情を具体的に検討することなく、裁判所外における開廷の必要性を認定して開廷場所の指定を行うとの定型的な運用を行っておりました。
このような開廷場所指定の運用は、遅くとも昭和三十五年以降については、合理性を欠く差別的な取扱いであったことが強く疑われ、認可が許されるのは真にやむを得ない場合に限られると解される裁判所法六十九条二項に違反するものであったと考えております。
平成二十八年にはこの問題に関する調査結果をまとめた調査報告書を公表し、その際にも申し上げたところではございますが、改めて、誤った開廷場所指定の運用がハンセン病患者に対する偏見、差別を助長することにつながるものになったこと、さらには、当事者であるハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけるものであったことについて、ハンセン病に罹患された患者、元患者の方々はもとより、その御家族など関係者の皆様に対して深い反省の意を表するとともに、おわびを申し上げます。
○委員長(藤川政人君) 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君 最高裁が憲法違反が疑われると認め、謝罪もしました。その隔離法廷での判決ですから、菊池事件は再審すべきです。代読お願いします。
さて、総理、資料三と四、ハンセン病問題について総理談話は二つあります。元患者と家族への極めて厳しい偏見、差別を認め、苦難に対しおわびしています。総理、この二つの談話を高市内閣も維持されますね。
○内閣総理大臣(高市早苗君) 現内閣におきましても、御指摘の二つの内閣総理談話を継承いたします。ハンセン病患者の皆様、元患者の皆様、その御家族の名誉の回復や、偏見、差別の解消、御家族への補償金の支給などの取組を進め、ハンセン病問題の解決に向けて力を尽くしてまいります。
○委員長(藤川政人君) 天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君 四十余りで死刑で亡くなったFさんに、総理、何と声を掛けますか。差別は繰り返さないと約束してください。
○内閣総理大臣(高市早苗君) その尊厳を傷つけ、筆舌に尽くし難い苦しみを与えてしまったこと、もうお亡くなりになった御本人もそうですけれども、御家族の皆様に対しても深くおわびを申し上げます。
○天畠大輔君 代読します。談話を出した当時の小泉総理も安倍総理も、国が敗訴した判決に控訴しないと決断しました。菊池事件でも、熊本地裁で再審開始が認められた場合、政府が即時抗告をしないよう強く求めます。
さて、Fさんが逃走した二十七日間、支援したのは友人たちでした。このことは逃走中の殺人容疑への有力なアリバイでしたが、彼はそれを隠しました。仲間に犯人隠避の罪が及ぶからです。たとえ死刑になっても話せない。苛烈な差別の中にあってなお、人間への信頼を保とうとする姿がそこにあります。
資料五は彼が残した歌です。「澄み渡る空の青さよ 真実の再審を寄せよ 我は祈る」。差別の中で世を去った人間の血のにじむ叫びです。終わります。
<配布資料>






