2025年6月17日 厚生労働委員会質疑(社労士法改正案審議)「労使対話への社労士の適正な参画を望みます」

〇天畠大輔君

代読します。れいわ新選組の天畠大輔です。

労使の話合いである団体交渉で、社会保険労務士は労使折衝に主体的に関与できません。厚労省が平成28年3月11日に発出した「基監発0311第1号」にはこのようにあります。社会保険労務士が、労働争議時の団体交渉において①当事者の一方の代理人となって相手方との折衝に当たること、②当事者の間に立って交渉の妥結のためにあっせん等の関与をなすことはできない。

ところが、東京都北区のある社労士事務所はそのホームページで「労使のトラブル・労働組合折衝に強い事務所代表」と宣伝しています。厚労省は是正指導すべきではないですか。

〇政府参考人(岸本武史君)

お答えいたします。「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」との社会保険労務士の職責を規定した社会保険労務士法第1条の2の規定に基づき、その業務を行うことが重要であると考えております。

個別の情報発信が不適切なものであるか否かにつきましては具体的な事情に即して個別に判断されるものでございますが、その上で、一般的に申し上げますと、社会保険労務士の不適切な情報発信に関しましては、一義的には社会保険労務士法に基づき社会保険労務士会において必要な対応が図られるべきものと考えておりまして、厚生労働省においては、社会保険労務士会に対して、不適切な情報発信が行われることがないよう社会保険労務士への研修を実施するとともに、不適切な情報発信を認めた場合には適切に処分等を行うよう、必要な指導等を行っているところでございます。

また、社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行に該当する可能性があるものにつきましては、厚生労働省において、社会保険労務士法に基づき、調査を実施し、事実関係を確認した上で、懲戒事由に該当するか否かを判断することとしておりますが、労働争議時の団体交渉において当事者の一方の代理人となって相手方との折衝に当たっている事実が確認された場合には、懲戒の対象となり得るものと考えております。

〇天畠大輔君

代読します。資料1をご覧ください。非正規雇用や不安定雇用の労働者を中心に組織している地域合同労組である「プレカリアートユニオン」が、2023年10月20日、池袋の病院に勤務する組合員の未払賃金問題で団体交渉を行ったところ、病院側「顧問兼企業統治担当」として団交に出席したこの北区内の社労士が、同ユニオン書記長ほか1名の組合員に対して、殴る、蹴るなどの暴行を行ったという情報が当事務所に寄せられました。2人は救急隊によって病院に搬送され、頸部挫傷、左肩部挫傷、左臀部挫傷を負いました。このときの様子は同ユニオンのホームページでも動画がアップされており、実際に見てみると極めて悪質な有形力の行使と暴言が確認できます。

さて、6月6日の衆議院厚生労働委員会で鰐淵副大臣と岸本政府参考人は「厚生労働省におきましては、社会保険労務士の不正事案等を把握した場合には、社会保険労務士法に基づきまして調査を実施し、事実関係を確認した上で、懲戒事由に該当する場合には懲戒処分を行っております」と答弁しております。

上記のような暴力行為が確認された場合には、速やかに懲戒処分を行うということでよろしいですか。

〇政府参考人(岸本武史君)

お答えいたします。個別の事案についてはお答えすることを差し控えさせていただきたく存じます。一般論として申し上げれば、厚生労働大臣に対して社会保険労務士の懲戒請求が行われました場合には、厚生労働省において社会保険労務士法に基づき調査を実施し、事実関係を確認した上で、懲戒事由に該当する場合には懲戒処分を行っているところでございます。

〇委員長(柘植芳文君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

資料1を改めてご覧ください。暴言と暴力、どちらがより悪質でしょうか。代読お願いします。

10年前「社員をうつ病に罹患させる方法」というブログを公然とアップした愛知県内の社労士に対し、厚労省は「業務停止3か月」の懲戒処分を下しました。団体交渉において組合員2名を負傷させた社労士は今も業務を続けています。処分の基準がおかしいと指摘をしておきます。

次に、社労士会に対する厚労省の指導について過去の事例を紹介します。障害年金の申請についての相談や代行を担う社会保険労務士事務所において、そのホームページに「合併症がないと糖尿病は障害基礎年金が下りない」など不適切な掲載が散見される問題がありました。

昨年5月30日の当委員会において当時の武見厚労大臣は「誤解を与えない内容となるように、全国社会保険労務士会連合会を通じて改めて注意喚起をしてまいりたい」と答弁しました。

前述したような到底許されざる心得違いをしている一部の社労士の暴行・暴言についても、厚労省として、糖尿病告知の問題同様に社労士連合会に対して注意喚起並びに断固とした対応を行うよう強く求めます。

さて、本法案では、社会保険労務士の使命に関する規定が新設されました。いわく「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もって豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする」とあります。

団体交渉の場で組合員に暴力を振るうような社労士がいなくなってから、このような崇高な使命について議論を始めるべきではありませんか。

〇衆議院議員(山井和則君)

お答え申し上げます。急速な少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、多様な働き方へのニーズが高まり、また、労務コンプライアンスの徹底や適切な労務管理が一層求められる中で、社会保険労務士の担う業務や役割の重要性が飛躍的に高まっていると言えます。

このような現状を踏まえれば、それぞれの社会保険労務士においてその業務を遂行するに当たっては、その役割の重要性やこれに伴う責任をしっかり自覚していただく必要があります。このため、社会保険労務士法の第1条を使命規定に改正したところであります。

もちろん、問題事案があるとすれば、適切に対処する必要があることは言うまでもありません。本法案が成立すれば、社会保険労務士がその業務に行うに当たっては、この使命規定がその指針となるものと期待しております。

〇天畠大輔君

代読します。田畑裕明衆議院議員は、6月6日の衆議院厚生労働委員会において「一部の社労士による問題事案につきましては、個々の事案に応じて、社労士会において、内部規律の問題として適時適切に対処されてきたものと承知をしております」と答弁しています。適時適切に対処されているのであれば、なぜこのような暴力社労士が今も業務を続けているのですか。

〇衆議院議員(田畑裕明君)

お答えを申し上げます。まず、個別の事案につきまして、その是非、対処の是非をお答えすることは控えさせていただきたいと思います。

その上で、社会保険労務士が適切な労使関係を損なう行為を行った場合は、都道府県社会保険労務士会において指導が行われ、その調査審議の結果、全国社会保険労務士会連合会から厚生労働大臣に懲戒事由の報告がなされた場合には、厚生労働大臣は厳正に対処し、必要に応じ懲戒処分を行うとされているところでございます。このような制度運用を踏まえて、先日の衆議院厚生労働委員会で答弁をしたところでございます。

〇天畠大輔君

代読します。危機感が不足しています。一部の不正を働く者のせいで社労士会全体が壊れています。労使の話合いの場である団体交渉での暴力は絶対に許されないと申し上げ、質問を終わります。

〈反対討論〉

〇天畠大輔君

社会保険労務士は、個人の尊厳と労働者の福祉向上に尽力してください。代読お願いします。
私は、れいわ新選組を代表し「社会保険労務士法の一部を改正する法律案」に反対の立場から討論いたします。

本法案第1条にはこうあります。

「社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もって豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする」

全国に38,000人いる社労士の大部分が既にこの崇高な使命に基づいて日々尽力なさっていることは紛れもない事実です。にもかかわらず、先ほどの資料にもありますように、心得違いをした一部の社労士がおよそ常識では考えられない反人権的言辞や執拗な暴力行為を働いているのです。累次の社労士法改正が一貫して全会一致で成立してきたことをどう受け止めればいいのでしょうか。

10年前「社員をうつ病に罹患させる方法」というブログを公然とアップした愛知県内の社労士に対し、厚労省は業務停止3か月の懲戒処分を下しました。一方で、団体交渉において組合員2名を負傷させた社労士は、今も業務を続けています。暴言と暴力、どちらがより悪質か、社労士業界はこの不毛で絶望的な命題を抱え込んだままです。一部の不正を働く者のせいで業界全体が壊れてしまっているのです。悪質な行為を行う社労士を厳罰に処する法整備と運用が急務です。

障がい者などマイノリティーへの差別は言うまでもなく、女性差別や労働者への人権侵害は日本の恥ずべき暗部です。働く者の闘いもまた、一部使用者とその手先との死闘の連続でした。

1960年の三池争議において、三池労組の組合員、久保清(くぼ・きよし)さんは、3月29日、暴力団に胸を刺されて死亡しました。32歳でした。それから65年、いまだに労働組合の組合員が団体交渉中に殴る蹴るの暴行を受けているのです。
久保さんのお墓の隣にある石碑に刻まれた詩の冒頭部分です。

やがて来る日に 歴史が正しく書かれる

やがて来る日に 私たちは正しい道を 進んだといわれよう

私たちは正しく生きたといわれよう

今なお多くの労働者たちを励まし続けている言葉です。労働基本権への侵害・弾圧をれいわ新選組は絶対に許しません。社会保険労務士自身の自浄能力の向上に心から期待し、反対討論といたします。

〈配布資料〉