障がい当事者議員の大会に参加しました(2024年7月30、31日)

日本には少なくとも50人弱の障がい者議員がいます。これらの議員で構成する「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク」では、年2回全国大会を開いています。7月30、31日、東京都内とさいたま市での大会に参加し、視察や交流をしてきました。

議会活動に介助が必要な自治体議員への合理的配慮を、国が後押しへ

7月30日午後、全国から障がいのある当事者議員が参議院議員会館に集まりました。中央省庁との交渉のためです。天畠も当事者国会議員として同席しました。

1件目の要望は、地方議会の障がい当事者議員への合理的配慮について。自治体ごとに対応が異なり、議会活動に支障が出ることもしばしば。当選後、合理的配慮を得るまでに多くの時間と労力を自ら割かなければならず、ほかの議員と平等に活動できる環境を得られず、十分な議員活動ができないことさえあります。この自治体間での格差を埋めるべく、総務省から自治体へ、通知の発出を求めました。

総務省からは、今後何かしらの通知を出すときに、障がいある議員への合理的配慮の徹底も入れ込みたい、また事例をホームページに記載し周知もしたいとのご回答がありました。
能登半島地震での障がい者に関する課題についての要望も行いました。この日の要望は、NHK東京新聞で取り上げられました。

バリアフリーなさいたま市議会を視察

7月31日は、さいたま市役所に集合。さいたま市の障がい福祉施策について職員から説明を受けるとともに、市議会の議場も見学しました。さいたま市議を5期務め、昨年勇退された傳田(でんだ)ひろみさんが障がい者議員として議会のバリアフリーにも取り組んだため、議場はスロープの設置や演台が車椅子の高さに合わせて上下するなど、バリアフリーが整っていました。

障がい者議員の視察に介助者が同行できない

市議会視察後の意見交換会では、優生保護法問題にも触れました。旧優生保護法下の強制不妊手術は都道府県が主体となって、まさしく地域の草の根から優生思想が広がってしまったわけですが、この歴史を厳しく見つめ直し、過ちを繰り返させないための闘いもまた地域から生み出していく必要があると呼びかけました。

障がい者議員が初めてという自治体の議員からは、視察への介助者の同行が認められないため視察ができず、制度づくりから始めなければならなかったといった報告がありました。議員活動中の介助問題が改めて浮き彫りになりました。全国の障がい者議員と連携し、各地の介助ニーズを国に届けたいと思いを新たにしました。

以下に天畠の報告の全文を紹介します。

天畠大輔です。皆さん、こんにちは!初めに少しだけ「自慢話」を。

今年の通常国会「第213回国会」は1月26日から6月23日まで150日間の会期でした。150日のうち、土日祝日が50日、平日が100日という日程の中、私は合計23回質問に立ちました。単純に割り算すると4.3日に1回というペースになります。質問テーマを考えて、資料を集めて、原稿を練り上げて、リハーサルして本番。心身ともにハードな毎日ですが、ここにおられる仲間の皆さんのお顔を思い浮かべながら頑張っています。

私は参議院厚生労働委員会に所属しています。厚労分野において岸田内閣は今回、4つの法案を国会に提出しました。生活困窮者自立支援法、雇用保険法、育児介護休業法、再生医療法の各改正法案ですが、私は育児介護休業法以外の3つの法案に反対しました。生活保護受給世帯の子どもが大学進学する場合「世帯分離」という名の福祉施策からの排除を政府が強要している問題、非正規雇用拡大による雇用の劣化に対して政府が何ら有効な政策を講じていないという問題、医療技術の進歩によって生じうる新たな差別をしっかりと防止する姿勢が政府に欠落していることなどを法案審議の中で精一杯訴えました。

終盤国会の最大の山場は自民党の裏金問題でした。政治改革特別委員会で私は岸田総理に対し「4人にひとりが裏金議員である自民党に政治改革を議論する資格がそもそも無い」と批判しました。また、多額の裏金が刑罰を免れて動かされる一方で、日々の生活に苦しむ高齢者や、福祉施策からこぼれ落とされた子どもたちの万引きが増加していることも指摘しました。

歴史に刻まれる重大な判決が今年出ました。

最高裁大法廷は7月3日、旧優生保護法に基づく強制不妊手術(優生手術)に関する5件の訴訟すべてにおいて、原告勝訴の判決を出しました。札幌、東京、大阪、神戸の4つの訴訟に関して1,100万円から1,650万円の損害賠償を国に命じ、仙台高裁には裁判のやり直しを言い渡しました。戦後最悪の人権侵害であるこの法律によって、長きにわたり苦しめられ、人権を奪われてきた被害者の方々の訴えが、ようやく報われたのです。

私は昨年3月、5月、11月そして今年6月にも岸田総理に対して再三再四「被害当事者に会って謝罪すべきだ。上訴を取り下げ即時全面解決すべきだ」と訴えてきました。総理は「被害当事者に会う。会い方について検討する」と繰り返し答弁しましたが、実際は口約束に過ぎず、「不法行為から20年で損害賠償請求権が消えるとされる『除斥期間』について最高裁の判断を仰ぎたい」などと恥知らずな態度を続けた挙句、7月3日の完全敗北を迎えたわけです。

最高裁判決を受け岸田総理は記者会見の場でおわびの言葉を述べたうえで、判決から2週間後の7月17日には原告団・弁護団と官邸で面会し、謝罪しました。しかし、損害賠償請求権の行使に関して、私を含め多くの批判を受けながらも除斥期間の適用を執拗に主張し、最高裁判決までの長い時間、原告を苦しめたことについては「皆様方が感じられた思いを重く受け止めたい」と述べるにとどまり、この点についての謝罪はいまだに無いままです。本当に許せません。

今後は、優生保護法議連ならびに同PTの場で、被害者救済のための新法づくりの作業が進んでいくわけですが、木村英子議員、舩後靖彦議員そして私の3人で力を合わせ、被害者の皆さんが本当に納得できる法律を成立させるために全力を尽くすつもりです。

ついては本日お集まりの皆さんにご相談があります。被害者救済と優生思想根絶のための取り組みを全国津々浦々から立ち上げるための取り組みを始めませんか。旧優生保護法下の強制不妊手術は都道府県が主体となって、まさしく地域の草の根から優生思想が広がってしまったわけですが、この歴史を厳しく見つめ直し、過ちを繰り返させないための闘いもまた地域から生み出していく必要があると思うのです。

たとえば「一時金支給法」の実施に当たっては、地域で様々な独自の取り組みが行われています。たとえば、鳥取県では市町村から居住生存確認が取れた方に対して、「本人限定郵便」による通知が行われているそうです。

強制不妊手術の被害者は全国で2万5千人に上ります。旧優生保護法の下、自分たちの住む町でいったい何が行われたのか、どのような声が圧殺され、かけがえのない未来が奪われたのか、その救済はどうあるべきか、再び繰り返さないために何をなすべきなのか。私たちが地域という暮らしの現場で背負わなければならない問いは、とても多岐にわたり、かつとても重いものです。しかし、みんなでいっしょに背負っていきましょう。7.3最高裁判決は、私たちにそのことを提示していると思います。

裁判の話をもうひとつさせてください。京都地裁のALS患者嘱託殺人事件です。

5年前、ALSを患う京都市の女性から依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして「嘱託殺人罪」に問われていた医師に対して京都地裁は3月5日、別件の殺人事件と合わせ懲役18年を言い渡しました。判決は「短時間で軽々しく犯行に及び、生命軽視の姿勢は顕著で強い非難に値する」と述べましたが、被告の医師は公判において「(自分を)処罰することは、患者本人の選択や決定を否定し、自己決定権を定めた憲法に違反する」として無罪を主張していました。

こうしたなか、超党派の議員による「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」が法制化に向けて動きを活発化させているという情報が入ってきました。また、尊厳死・安楽死に対して批判的な立場を取る団体や個人に対して、誹謗中傷・バッシングが激しくなっているという指摘も寄せられています。

京都嘱託殺人事件の被告や終末期議連が異口同音に言う「本人の意思の尊重」という言葉は、とても注意が必要です。私もまた、かつては「死にたい」という言葉を「あかさたな話法」を通じて幾度か発したことがあります。

障がいや疾病に限らず、人は誰しも困難な状況を前にした場合、時にこの言葉を口に出します。そしてそれは多くの場合「生きたい」という願いが閉ざされそうな時の命の慟哭なのではないでしょうか。慟哭の大きさ、長さ、音色は目まぐるしく変わります。人間の心の営みなのですから当然です。ある瞬間の、あるいはある時期の言葉の内容を持って「本人の意思だ」「死にたいと言っている」「尊重すべきだ」というのはあまりに乱暴すぎます。しかも本人にその言葉を言わせている、社会的経済的環境など外的要因、将来の見通しや、人間関係、支援体制もまた変化し得るものです。

「生きるか死ぬかは2通り。生き方は80億通り」という岡部宏生さんの言葉を今一度噛みしめるべきです。生か死かを選べるというのは多様性ではありません。すべての人にそれぞれの生き方がきちんと保障されてこそ真の多様性なのではないでしょうか。皆さんとともに、そのことを考え続けていきたいと思います。

先日、横浜市の障がい者スポーツ文化センター「横浜ラポール」を視察いたしました。1992年に設立された、障がい者のレクリエーションおよびリハビリテーション施設で、25メートルプール、ペダリングマシン、ボーリング場、体育館、グラウンド、おもちゃ図書館、ビデオライブラリーなどが整備されています。ただいまプールの大規模改修で、再来年3月まで使用できないのが残念ですが、施設長やスタッフの皆さんからお話を伺い、とても参考になりました。

職員・スタッフは、重度障がい者を受け入れるための高い専門性を有しています。個々人の障がい特性を的確に把握しながら、利用者が安心して安全にスポーツやレクリエーションを楽しめる環境を提供していることがよく分かりました。ハード面においても、リフトの仕様や設置工事などに関して、隣接する横浜総合リハビリテーションセンターと密に連携しながら設備や機器を整備しています。

特に重度の障がいがあり、様々な配慮を必要とする人にとって、横浜ラポールは仲間とともにスポーツに触れ、社会とつながる居場所にもなっていると感じました。一方、横浜ラポールのようにハード面の設備やスタッフの柔軟な対応が進んでいる施設は一部に限られています。横浜ラポールのバリアフリーや合理的配慮の工夫を好事例として、住んでいる近くのスポーツ施設に気軽に行けるようなユニバーサルデザイン化がどうしたら実現できるのか、今後も調査や視察を進めながら考え、取り組んでいきたいと思います。皆様のご意見もぜひお聞かせください。

最後に、就労中の介助保障については、国が新しい制度を創設したものの、導入する自治体はまだ少なく、導入されても手続きが複雑で使いにくいという当事者の声を聞いています。就労中の介助もまさに生命維持なので、重度訪問介護などの国の制度に1本化すべきです。みなさまの自治体でも就労中の介助ニーズをすくい上げ、ぜひ一緒に省庁交渉をして国に声を届けていきましょう。よろしくお願いします。私の発表は以上です。ありがとうございました。