【2024年通常国会ハイライト④】「介助付き就労」を多角的に取り上げました

重度の障がい者が働くためには、仕事時間中も食事やトイレ、移動といった生活動作、また資料読み上げやパソコン操作といった業務補助のための介助を受ける必要があります。これを短く表現するならば、「介助付き就労」です。しかし現在の障がい福祉制度では、就学や就労などにヘルパーをつけられないルールになっています。この理不尽なルールの改正、つまり「介助付き就労」の実現が、天畠の政策の一丁目一番地です。

これまでは、都市部在住の重度身体障がい当事者の立場からの事例を中心に、国会質疑や発信に取り組んできました。今国会では、視覚障がいの方々、地方在住の方々から話を伺う機会に恵まれ、国会質疑でもその一部を訴えました。

「同行援護」を使う視覚障がい者にとっての「介助付き就労」ニーズは?

「就学や就労などにヘルパーをつけられないルール」は、障害者総合支援法に基づく厚労大臣告示第523号に定められています(そもそも告示を根拠に権利制限することがおかしいという論点はこちらをご参照ください)。

この告示は、「重度訪問介護」という国のヘルパー派遣事業について、派遣事業所の報酬単位数を定める基準です。上記のように報酬を出せるサービスの範囲から「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出」が除かれており、さらに「第3及び第4において同じ」、つまり同告示第3にあたる「同行援護」というサービスと、第4にあたる「行動援護」というサービスにも、「就学や就労などにヘルパーをつけられないルール」は適用されるのです。

同行援護は、単独外出が難しい視覚障がい者に対して、移動の援護や、移動時や外出先において必要な視覚的情報の支援(代筆・代読含む)、トイレ・食事等の介護、その他の外出時に必要な援助を行うヘルパー派遣サービスです。そこで、40年以上前から視覚障がい者の就労時の介助制度を求めてきた全日本視覚障害者協議会の方々に、話を伺いました。

視覚障がい者の就労時介助には、通勤介助、資料の代読・代筆、清潔保持・整理整頓、特に地方部ではヘルパー運転の自動車での移動のニーズがあります。これらの介助費用を全額私費負担するのは厳しいですから、通勤や就労中の介助費用に対する補助金(職場介助者助成金)があります。これは同協議会などが長年厚労省と交渉して作られたもので、利用する視覚障がい者は150人ほど(令和4年度)います。ただ全額補助ではないので、雇用主側の費用負担はなくなりませんし、申請にかかる事務負担もあります。また利用上限が15年なので、長年働き続けられません。

また国が用意している支援事業に、「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」があります。この事業は重度訪問介護、同行援護、行動援護の利用者が使えるものですが、利用者全159人中58人と4割近くを、同行援護利用者=視覚障がい者が占めています(令和5年10月末時点)。しかし、そもそもこの制度の実施は各市区町村の判断に委ねられており、現状の実施自治体は51のみ(令和5年10月末時点)です。重度身体障がい者と同じように、視覚障がいの方達の「介助付き就労」ニーズが満たされていないことがよくわかりました。

公共交通機関がない地方の重度障がい者は、どうやって通勤する?

「介助つき就労」実現のための支援が、通勤や就労時間中のヘルパー介助だけでは足りない場合があります。例えば、公共交通機関が足りない地方で、自力運転が難しい人のケースです。

2019年6月6日の参議院厚生労働委員会で、秋田県の中学校教員で脳性麻痺の三戸学さんの事例が取り上げられました。異動を命じられた学校の近くには、三戸さんが暮らせるバリアフリー対応の賃貸住宅はなく、自宅から通おうにも、バスはノンステップではない、タクシー通勤には手当が出ないので自己負担が重いという事例でした。

この問題への対処は、自治体や教育委員会の裁量に委ねられていることが問題視されていました。三戸さんの問題提起後、秋田県では、県職員に対して、タクシーやハイヤーを通勤手段として認め、5万5千円を上限に通勤手当を支給する制度改正をしました。ただ、これは秋田県だけが制度改正すればよいという問題ではありません。5月9日の参議院厚生労働委員会では、当面の方策として、秋田県の事例の周知を求めました。今後とも、様々な障がい者のニーズを想定し、政策提言を進めていきます。(文責:秘書 篠田恵)

天畠:政府は、公共交通機関の少ない地域での障がい者の通勤保障は重要だとお考えですか。また、最低限の方策として、公共交通機関の少ない地域で働く障がい者の通勤保障について、秋田県の事例を自治体や教育委員会に文科省から周知すべきではないでしょうか。

文部科学省:お答えいたします。障がいのある教師が継続的に働くためには、通勤の支援を含む合理的な配慮が提供されることが重要であると考えております。

障がいのある教師の通勤につきましては、それぞれの障がいの程度等を勘案しながら、自宅から通勤しやすい学校へ配置するなど、人事異動の際に配慮を行っている例や、委員ご指摘のような秋田県における事例のように、タクシー等に係る運賃を支給したりするなどの例があると承知しております。

文部科学省としては、障がいのある教師が働きやすい職場環境の整備に向け、ご指摘の秋田県の事例も含め、好事例を収集、発信することにより、任命権者である各教育委員会の取組を促してまいりたいと考えております。

天畠:ぜひ周知してください。ただ、タクシーやハイヤーを通勤手当の対象とすることは一歩前進ではありますが、最終の解決策ではありません。移動介助の方法が独特だったり、医療的ケアが必要だったりと、様々なケースが考えられ、福祉制度との組合せも必要になってきます。引き続き、通勤の保障について、文科省と厚労省で連携して検討していただきたいと求め、次に行きます。

2024年5月9日参議院厚生労働委員会質疑