2024年5月23日 厚生労働委員会質疑(育児・介護休業法等改正案審議 )「里親にも育児休業を!」

〇天畠大輔君

れいわ新選組の天畠大輔です。まず、大臣に質問です。代読お願いします。

厚生労働省では、障がいを持つ子どもを育てている職員はどれくらいいますか。また、どのような両立支援をされているのか、大臣からお答えください。

〇国務大臣(武見敬三君)

厚生労働省において、職員の家族の状況については、職員のプライバシーを考慮をして、人事上必要な範囲で把握をしております。

そのご指摘のような職員数というのは把握はしておりませんが、お尋ねの障がいのある子の養育に関しては、職員本人が人事上の配慮を希望する場合に人事担当との面談や人事調書などにおいてその状況を個別に把握をして必要な配慮は行っております。

具体的には、ひとりひとりの状況に応じて、勤務地、配属、部署、勤務時間の調整、子の看護休暇の取得などにより、仕事との両立が実現できるよう対応をしてきているところでございます。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

まずは、厚労省の中で職員のニーズについて実態把握をしてみてはいかがですか。制度の足りないところが見えてくると思います。大臣、いかがですか。

〇国務大臣(武見敬三君)

この点は、やはり職員の皆さん方のプライバシーにも関わる問題だとも思います。職員本人がこの人事上の配慮を希望する場合に必要な範囲で私ども把握をしておりまして、省全体としての該当者数等についての把握であるとか集計というのは行っておりません。あくまでも人事上必要な範囲での把握という考え方で対応させていただいているところであります。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

厚労省だけに好事例が多いのではないでしょうか。代読お願いします。

おとといの参考人質疑において、障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会会長の工藤さほ参考人は、「治療や療育や装具の点検にどうしても看護休暇が必要な障がい児や医療的ケア児の親は、様々な休暇を駆使して働き続けている現状があります。今後、子の看護休暇において対象範囲を広げてもらうことは、障がいや医療的ケアがある子を育てる保護者にとっては救いになることは確かです」とおっしゃっていました。厚労省でも障がいを持つ子どもを育てる職員がいらっしゃるようですから、まずは職員の声を聞くべきと申し上げ、次に行きます。

さて、私のヘルパーにも子育て中の人が複数います。私は、自分のヘルパーにこの仕事をできるだけ長く続けてもらいたいと考えており、それには仕事と子育てとの両立支援がとても大切だと日々実感しています。子どもに関する不安を抱えながらでは、仕事で良いパフォーマンスは出せません。さらに、両立が難しいことが理由で離職になってしまうと、元も子もない結果になるからです。また、子どものニーズを満たせていない状態にもかかわらず仕事に来ていると思ったら、私もそのヘルパーに安心して仕事をお願いすることはできません。仕事とケアの両立支援の目的は働く保護者のサポートですが、それ以上に子どもが安心して生活できることが重要なのです。

本日は、子どもを権利主体として考えたときに、どのような家族形態でも両立支援の恩恵を受けられるような仕組みづくりに向けて質問します。まず、育児休業は、事実婚の子どもの育児の場合にも適用されますか。

〇政府参考人(堀井奈津子君)

お答えをいたします。育児・介護休業法に基づき、事業主の義務の対象となる育児休業の対象ですが、これは、法律上の親子関係がある者、法律上の親子関係に準じる、準ずる関係がある者を養育する場合でございます。労働者にとっての「子」であれば、両親間の婚姻関係は問うていないところでございます。

〇天畠大輔君

代読いたします。法律婚の子どもと同じ扱いをする理由を述べてください。

〇政府参考人(堀井奈津子君)

育児・介護休業法に基づく育児休業は、原則として、1歳になるまでの子を養育する労働者について、その雇用の継続を図り、職業生活と家庭生活の両立を実現することを目的としております。そのようなことから、法律上の親子関係に準ずる関係がある子についても認めているものでございます。

〇天畠大輔君

代読いたします。「両親間の婚姻関係は問わない」という姿勢は大いに評価します。両親が婚姻関係であるか否かによって不利益取扱いを設けて子どもに押し付けることは許されざる差別だからです。里親に養育される子どもにとっても、親が実親か養親か里親かによって育児休業の恩恵を享受できるか排除されるか、差別すべきではありません。

「里親」は、育児休業法の対象となりますか。

〇政府参考人(堀井奈津子君)

養子縁組里親は、養子縁組によって永続的な親子関係を形成することを目指して子を養育しており、法律上の親子関係に準じる関係があると言える者を養育するものであることから、平成28年の育児・介護休業法改正によりまして、養子縁組里親に委託されている子も育児・介護休業法に基づく育児休業の対象となりました。

一方、養育里親、専門里親、親族里親は、法律上の親子関係に準じる関係があるとまでは言えず、これらの者の育児休業は育児・介護休業法の対象とはなっていないところです。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

育児休業や里親は、子どものための制度でもあります。もっと幅広く応援すべきです。代読お願いします。

資料1をご覧ください。
「里親」には、養子縁組里親以外にも、養子縁組を目的とせずに要保護児童を預かる「養育里親」、虐待された児童や非行の問題を抱える児童、身体障がい児や知的障がい児などを養育する「専門里親」、さらには、祖父母、おじ、おばなど3親等以内の親族の児童の親が死亡、行方不明、拘禁、入院や疾患などで養育できない場合の里親である「親族里親」などもあります。

先ほど厚労省は、「事実婚における育休取得について、子を養育する労働者についてその雇用の継続を図り、職業生活と家庭生活の両立を実現することを目的としていることから両親間の法律上の婚姻関係は問わない」と言いました。養育里親も子を養育する労働者であることに変わりはなく、法律上の親子関係を前提とする必然性はありません。

大臣、なぜ養育里親は育児休業の対象ではないのですか。

〇国務大臣(武見敬三君)

この育児・介護休業法に基づき事業主の義務となる育児休業の対象は、法律上の親子関係がある者、これは養子を含みます、そのほか、平成28年の法改正により法律上の親子関係に準じる関係がある者として特別養子縁組の監護期間の中の子、養子縁組里親に委託されている子なども対象となりましたけれども、この養育里親はその性質から対象となっておりません。

一方で、育児・介護休業法に定める育児休業の要件は最低基準でありますので、各事業主において広く里親一般も対象とするなど法律を上回る取組を行うことはこれは望ましいものであると考えております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

親子関係の形ではなく、子どもを権利主体として見てください。代読お願いします。

では、里親希望者が共働きである場合、認定からは排除されないという認識でよろしいでしょうか。

〇政府参考人(野村知司君)

里親と共働きの関係に関するお尋ねございました。里親の登録に関しましては、平成14年に提示をいたしました里親制度運営要綱においてその種類ごとの要件をお示しをしております。例えば、養育里親でございますれば、要保護児童の養育の理解であるとか熱意、さらには児童への豊かな愛情を有していること、経済的に困窮をしていないこと、各自治体の養育里親研修を修了していること、禁錮以上の刑に処せられるなど欠格事由に該当していないことなどが要件とされております。

里親要件は以上のような状態で、以上のようになっておりまして、里親希望者が共働きであるという理由をもって一律に里親登録をしないといったような取扱いではございませんで、里親の種類に応じた要件に沿って認定するかどうかが判断をされるべきものというふうに考えております。

〇天畠大輔君

代読いたします。今や、共働き世帯は全体の7割を占めているのです。内閣府男女共同参画局の調査などによると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」といった考え方に賛成する人の割合は、1979年の31.8%から2022年の4%へと激減しています。夫も妻も共に働き、共に家事、育児、介護を担うという在り方を社会全体で支えなくてはいけない、そのための育児・介護休業法ではないでしょうか。

そして、それは里親についても保障されるべきです。様々な事情を抱えて養育を必要としている子どもに対して、「あなたの親は里親だから育児休業は取れませんよ」などと大臣は言えますか。里子に対して「養育あって育児なし」という社会でいいのでしょうか。

また、同性カップルの里親認定も少しずつ増えていますが、私が聞いた事例の方は、養育里親になるために片方が仕事を辞めたとのことです。育児休業が取れれば、仕事を辞めずに養育里親となり、仕事と育児の両立ができた可能性があります。里親の育児休業取得は、異性カップル、同性カップルにかかわらないニーズです。

先ほども申し上げたとおり、大人が育児休業をしてその恩恵を受けるのは子ども自身であり、権利の主体でもあります。養子縁組里親なのか、養育里親なのかは、子どもの最善の利益を考えて認定されるものであり、養子縁組里親でなければ育休が取れず、仕事と両立できない状況は差別ではないでしょうか。様々な理由で実の親の養育を受けられない子どもたちが「法律関係」という形式によって差別されるのは間違っています。

里親制度の普及発展に取り組む公益財団法人全国里親会にもお話を伺いました。共働き世帯の里親認定も増えている、増えてきているとのことです。そのため、養育里親などへの育児休業の対象拡大を要望されておられます。特に、里親として委託する前から委託直後にかけては特に大変な時期であり、里親制度の普及発展のためにも対象拡大は不可欠です。

厚労大臣、今後の対象拡大について検討する気持ちはありますか。

〇国務大臣(武見敬三君)

先ほども申し上げたとおり、育児・介護休業法に定める育児休業の要件は最低基準というものでございます。各事業主において、広く里親一般も対象とするなど、法律を上回る制度を実施することは望ましいと考えております。

里親制度は、何らかの事情により家庭での養育が困難となった子どもなどに温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境での養育を提供する制度と承知しており、厚生労働省としても、育児・介護休業法を上回る事業主の取組の状況の周知や、さらにこども家庭庁における里親の支援の状況などについて注視をしてまいりたいと考えております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

状況把握の結果いかんでは、今後国の制度として、育児休業の対象に里親を入れる可能性があると理解しました。
大臣、いかがですか。通告なしですが、お答えください。

〇国務大臣(武見敬三君)

まずは、やはり、こうした里親制度に関わる好事例というようなものについて、改めてこの育児・介護休業法を上回る事業主の取組、これらについての周知をしっかりとすること、それから、やはり、こども家庭庁における里親の支援の状況といったものを踏まえて、こども家庭庁ともしっかりと調整をしつつ、こうした課題については慎重に検討していきたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

検討を強く求めて、次に行きます。代読お願いします。

次に、産後パパ育休について伺います。生後8週の中で、育休を取得しつつも短時間の就労を認めているという制度であり、減収を極力抑えたい労働者と少しでも働いてほしい企業側、双方にメリットがあると言われています。産後パパ育休の経済的支援は、育児休業補償と社会保険料免除の2本柱から成り立っているのですが、この社会保険料免除のルールが極めて分かりにくいのです。

資料2をご覧ください。
その月の末日を休む場合には、休業日数に関係なく、いちにち休んだだけでも社会保険料が免除されます。例えば、3月31日にいちにちだけ休んだ人は免除になります。その一方で、その日に休めなかった人は、3月1日から30日までの間に14日間以上休まないと免除の対象にならないというルールなのです。

産後パパ育休は、短時間労働を認めながらパパの育児休業を進めようという制度にもかかわらず、これでは本末転倒です。

このように分かりにくく不合理感を否めない部分は改善すべきと考えますが、大臣、いかがですか。

〇国務大臣(武見敬三君)

この育児休業期間の長さにかかわらず、月の末日が育児休業期間中であるか否かにより免除の対象となされるかが決定され、不公平であるというご指摘も踏まえて、令和3年の法改正において、月の末日が育児休業等期間中である場合に加えまして、育児休業月の途中に14日以上の育児休業等を取得している場合についても保険料免除の対象とするようにしております。

この改正の趣旨は、保険料の納付に応じて給付を行うことが社会保険制度の原則である中、育児休業期間中であっても休業前の標準報酬に基づいた保険料負担を求められることが経済的負担となっており、月の少なくとも半分以上の育児休業を取得している方々は特に負担が大きいと考えられることから、審議会の議論踏まえまして、月途中で14日以上の育児休業等の場合を免除の対象としたものでございます。

このため、加えて、月の末日を含まない14日未満の育児休業についても免除の対象とすることについては、慎重な検討が必要だと、このように考えるところであります。

〇天畠大輔君

代読いたします。取得日数の多寡にかかわらず一律に社会保険料は免除するという措置を行うべきと申し上げ、次の質問に移ります。

現行法の「勤続6か月未満の労働者を労使協定で除外できる」という規定を今回の改正によって廃止したことは評価いたします。しかし、そもそも労働者と使用者がひとつのテーブルに着いて話し合った末の合意である「労使協定」にそのような規定を設ける意味があったのでしょうか。

厚労省所管の他の法令において、このように「労使協定において除外できる」などという規定を持つ法令は存在しますか。

〇政府参考人(堀井奈津子君)

労使協定で、一定期間の勤続期間を満たしていない労働者等、これを除外することができる規定を持つ法令につきまして網羅的に確認をするということは困難でございますが、育児・介護休業法のほかには承知をしていないところでございます。

〇天畠大輔君

代読いたします。そのとおりです。労使協定の除外項目に関して法令でわざわざ規定する必要などないと思います。労使の自由な対話に対して政府はもっと信頼を置くべきです。

今回の法改正においても、「柔軟な働き方を実現するための措置」に関して、まずは事業主が5つのメニュー、すなわち、①始業時刻の変更、②テレワーク、③保育施設の設置、運営、④新たな休暇の付与、⑤短時間勤務制度の中からふたつを選び、その後で労働者がふたつのうちのどちらかを選ぶという順序になっています。

この規定も、あらかじめ事業者に対して5項目のうちの3つについて除外する権利を認めているようなものです。これでは、労使のせっかくの知恵の出し合いの機会を奪ってしまいかねません。

このような使用者の条件制限の権利、先行決定の権利については撤廃すべきではないですか。厚労大臣、お願いします。

〇国務大臣(武見敬三君)

事業主が柔軟な働き方を実現するための措置の内容を選択する際には、労働者における仕事と育児の両立の在り方やキャリア形成への希望に応じて活用できる措置とするために、労働者の代表である過半数組合などから意見を聞かなければならないというふうにしてあります。

あわせて、今回の法案が成立した場合には、育児当事者などからの意見聴取や労働者のアンケート調査の活用も並行して行うことが望ましい旨を指針で示すこととしており、労働者のきめ細かなニーズが適切に反映されるよう対応していきたいと思います。

なお、事業主が自社の状況に応じて3つ以上の措置を講ずることなど、可能な限り労働者の選択肢を広げるよう工夫することは望ましいことから、事業主の望ましい行動としてこうした内容についても指針においてお示しすることとしております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

障がい者への合理的配慮でも、育児、介護における労使関係でも、「対話」こそ重要と申し上げ、次に行きます。代読お願いします。

今回の法改正に当たり、在宅での家事や育児、介護もまた「労働」であるという観点が抜け落ちています。生活保護受給世帯におけるヤングケアラーやトリプル介護など、生活と看護、介護の両立に困難を抱える世帯への支援を充実させる必要もあります。

先般の生活保護法の改正により、支援する側がチームで対応する合議体の法定化がなされましたが、生活保護世帯における生活とケアの両立について、当事者を真ん中に据え、NPO等の民間事業者や他機関との連携により、チームで見守り、支える仕組みが必要です。

生活保護行政の遂行に当たり、なくてはならない存在が自治体の福祉事務所のケースワーカーの方々です。ケースワーカーの仕事は、面接、調査、個別ケースの対応、指導、居宅への訪問、就労支援、医療連携、報告書の作成など、その職務は多岐にわたるにもかかわらず、例えば居宅介護支援のケアマネジャーの担当上限をはるかに超える世帯と人数を受け持っているのが現状です。

生活保護行政においてケースワーカーの負担の軽減やスーパーバイズ機能の強化を図るための方策について、最後に厚生労働大臣の所見をお聞かせください。

〇国務大臣(武見敬三君)

ケースワーカーにつきましては、生活保護の受給世帯に応じて適切な配置がなされることが重要と考えています。これまで、地方交付税の算定上、ケースワーカーの増員が図られ、また、指導監査におきましてもその適切な配置について指導を行ってまいりました。

こうした中で、ケースワーカー1人当たりの世帯担当者数は減少をしてきております。また、ケースワーカーの専門性や資質の向上は重要でございます。厚生労働省においては、ケースワーカーやその指導に当たる職員の研修を実施するとともに、この自治体が実施する研修を支援しています。今年度は、ケースワーカーの質の更なる向上を目的として、ケースワーカーの研修に関する調査研究も実施することとしております。

さらに、先般成立した生活困窮者自立支援法等改正法におきまして、生活保護法を改正し、福祉事務所が関係機関との支援の調整や情報共有、体制の検討を行うための会議体の設置規定を新たに設けております。この会議体を活用することで、関係機関と連携しつつ、専門的知見も取り入れることが可能となることから、ケースワーカーなどの業務負担の軽減につながる面があると考えております。

このような仕組み活用しながら、ケースワーカーの負担の軽減、生活保護受給者への支援体制の整備強化を図ってまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君)

時間が来ておりますので、おまとめください。

〇天畠大輔君

代読いたします。ケア労働を担う全ての人々の負担や現実の危機に真摯に向き合いながら、全力で応援することを約束してください。質問を終わります。

〈配布資料〉