2024年5月14日 厚生労働委員会質疑「糖尿病への正しい理解が支援拡充につながります」

〇天畠大輔君 

れいわ新選組の天畠大輔です。
糖尿病全体のイメージ向上を願い、質問します。代読お願いします。

糖尿病は生活習慣病だから自己責任だというイメージが社会通念の根底にあり、日々の大変さについてなかなか理解が広まっていないと考えています。

例えば、糖尿病はインスリン注射さえすれば普通に暮らせるという認識もありますが、そうとは言えません。1型糖尿病を始め、インスリン分泌が枯渇している場合、血糖降下作用を一手に担うインスリンが欠乏するため、重症の糖代謝異常を来します。最新の医学では、血糖値を上げるホルモン、グルカゴンの分泌異常という点からも血糖コントロールの難しさが指摘されています。

厚労省は、糖尿病とともに生きていく上で血糖コントロールが難しいケースもあるものと認識しているか、また、インスリン治療により良好な血糖コントロールが得られている場合においても、コントロールのためには日々の努力、苦労があることを認識しているか、以上2点について大臣よりお答えください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

この1型糖尿病に限らず、インシュリン分泌が枯渇している場合には、委員ご指摘のとおり、低血糖が頻回に起こります。それから、血糖コントロールが難しいケースもございます。血糖コントロールが良好な場合でも、日々の食事や身体活動量等に応じたインシュリン投与量の調整などが必要となります。こういった側面があるということは私も重々認識をしております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

今大臣から重要な答弁をいただきました。代読お願いします。

糖尿病の方の日々の苦労を政府が認識していることは明らかになりました。しかしながら、障害年金認定の文脈では、この血糖コントロールにかかる苦労などがきちんと汲み取られてきませんでした。障害年金は、成人の糖尿病の方にとって唯一といってよい公的保障であり、日常生活に著しい制限がある患者さんの命綱です。

その象徴的な出来事が、糖尿病の障害認定基準改正により障害基礎年金の支給を突然打ち切られた事件です。平成28年には、大阪で、患者らが不支給処分の取消しを求め、国に対して集団訴訟を起こしていましたが、今年4月19日、ついにその控訴審判決が出ました。原告側の全面逆転勝訴でした。障害基礎年金2級の支給停止を受けていた8名全員に2級の支給が認められました。

この度の控訴審判決で合併症がない糖尿病単体で障害基礎年金2級が認められたことをどう受け止められたか、そして今回の結果をどのように活かすおつもりか、大臣、率直にお聞かせください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

今回の大阪高等裁判所における判決は、この厚生労働省が定めた糖尿病についての障害認定基準は「一定の合理性を有する」として国の主張を認めた上で、1型糖尿病患者である控訴人8名について、国の判断と異なり、障害等級2級に該当すると判断されたものであり、国は上告せず、判決は確定しております。

今回の判決においても認定基準は合理性があるとされておりますので、現時点では障害認定基準の見直しは考えておりませんが、1型糖尿病による障がいの状態は様々であることを踏まえて、引き続き適正な認定に取り組んでいきたいと考えております。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

全員に認められたということは、今の認定基準では日常生活の制限の把握が困難だということではないですか。大臣、いかがですか。

〇国務大臣(武見敬三君) 

今回の判決においてもこの障害認定基準は合理性があるとされておりまして、これまでの1型糖尿病患者の障害等級の認定においても、症状などの他の判断基準とともに、日常生活の活動能力も踏まえ、総合的に判断してきたところでもございます。

引き続き、適正な認定に取り組んでまいりたいと考えます。

〇天畠大輔君

代読します。
血糖コントロールにかかる苦労そのものが「日常生活に著しい制限がある」ことをきちんと認識し、認定基準に反映させるべきです。裁判で何年も証拠を積み上げてやっと認められる現状では、障害年金を受給する権利が保障されているとは言えません。糖尿病単体でも、血糖コントロールにかかる苦労が認定において考慮され、裁判を経ずとも2級と認められるよう基準を見直すべきと強く訴えます。この件については次の機会にじっくり質問したいと思いますので、大臣、よろしくお願いします。

さて、先日、糖尿病への偏見を払拭するため、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会から「ダイアベティス」への名称変更が提案されました。しかし、偏見や差別を助長した背景には、国が1996年にがんなどの「成人病」を糖尿病なども含めて生活習慣病という名称に変更したことも一因なのではないかと考えています。

生活習慣病への名称変更については、当時の厚生省が主導し、公衆衛生審議会成人病難病予防部会で議論されました。実は、その議論の過程において生活習慣病という名称に対しては既に懸念が示されており、変更されてから今日に至るまでも様々な批判がされてきています。

実際にどのような懸念や批判があると政府は認識していますか。また、そうした指摘を踏まえ、名称変更から約30年が経過した今、果たして生活習慣病という言葉は使い続ける言葉なのでしょうか。名称の見直しについて、大臣の見解をお聞かせください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

令和4年から5年にかけて開催されましたこの「次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会」におきまして、「生活習慣病」との名称は生活習慣の影響のみで発症すると誤解されやすくスティグマを生むとの指摘があったものの、生活習慣病という用語が広く定着していることを踏まえまして、用語の在り方については中長期的に検討が必要であるという結論が、結論付けられたところであります。

このため、現時点におきましては「生活習慣病」という用語の見直しを行うことは考えておりませんが、生活習慣病にかかるスティグマを生まないようにすることは重要であって、引き続き、正しい知識の普及の啓発に努めてまいりたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

生活習慣病は生活習慣の改善によって予防が期待できる病気であるという本来の意図が伝わっていません。国が偏見、差別を招いたと反省すべきです。代読お願いします。

政府の意図に反して、外部環境や遺伝的な要因の軽視、自己責任論の助長といったデメリットが上回っていると考えます。また、そもそも予防医療による医療費削減効果の根拠の薄弱さも見逃せません。

資料1をご覧ください。生活習慣病の名称見直しを主張する日本福祉大学名誉教授の二木立(にき・りゅう)氏によれば、予防医療による医療費削減効果はほとんど確認されておらず、健康改善による費用削減は長生きによる医療費増加で相殺され、長期的に見れば医療費は増えると主張されています。このことも含めて、生活習慣病の名称見直しを重ねて求めます。

冒頭でも述べましたが、生活習慣病のイメージも相まって、糖尿病の方々に対する理解が広まらず、社会から負の烙印、いわゆるスティグマを押され、偏見、差別に苦しんでいる方が多くいます。

資料2をご覧ください。5422名の糖尿病患者を対象にした海外のアンケート調査によれば、1型糖尿病の方の76%、2型糖尿病の方の52%が何らかの差別を感じていると回答したそうです。また、日本糖尿病協会が実施したアンケート調査でも、糖尿病があることで不利益を感じたことがあると答えた方が76%います。

日本においても、「糖尿病イコール生活習慣病、自己責任」というマイナスイメージによって、家族を含めた周囲の無理解にさらされたり、職場など社会からの不当な評価を受けたりし、経済的基盤が不安定な中でも一生続く治療費に対する補助もない、生命保険や医療保険にも入れない、入れても保険料が高い、これが現実です。

糖尿病に対する根深い偏見を国が率先して改め、不当な評価や扱いを取り除くために、日本糖尿病学会や日本糖尿病協会とも連携しつつ、事務連絡やポスター、チラシ、政府広報等、新たな周知方法を不断に検討していただけないでしょうか。大臣からお答えください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

これまで、健康日本21(第三次)推進のための説明資料であるとか、生活習慣病予防のための健康情報サイト、これは「e―ヘルスネット」と呼んでおりますけれども、これを広く厚生労働省ホームページで公表をし、その中で、2型糖尿病の発症には生活習慣だけではなくて遺伝的な影響も関与していることなどを示してきたところでございます。

今後、委員のご指摘も踏まえまして、関係する学会であるとかあるいは団体とも連携をしつつ、正しい知識の普及のための取組を進めていきたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

ぜひ進めてください。今の方法だけでは国民への周知とは言えません。代読お願いします。

資料3をご覧ください。先ほど大臣が言及した「健康日本21推進のための説明資料」には、「2型糖尿病は生活習慣の影響のみで発症するわけではなく、遺伝的素因等も関与していることには十分に留意する必要であるが」と、あくまで前置きとして記されているだけです。

また、資料4のとおり、確かにe―ヘルスネット、生活習慣病ページには、糖尿病などの生活習慣病は「個人の責任に帰することのできない複数の要因が関与していることから、病気になったのは個人の責任といった疾患や患者に対する差別や偏見が生まれるおそれがあるという点に配慮する必要がある」と記されています。

しかし、どちらの資料も国民が自らアクセスするのはごく一部に限られ、広く国民に周知しているとは到底言えず、スティグマを生まないための具体策とは言えません。先ほど、指摘を踏まえて、学会や団体とも連携して取組を進めてまいりたいと言っていただいたので、具体的な取組につながるよう今後も注視します。

次に、糖尿病など服薬をやめると命の危険がある人の災害時の避難について伺います。前回質疑では、服薬をやめると命の危険がある人が「総合防災訓練大綱」における「要配慮者」であることは確認できました。そこで、今回はもう一歩地域に踏み込んで、国が率先して各自治体の避難計画に彼らを「避難行動要支援者」として組み込み、確実な薬剤の受渡しができるかできないか、伺います。

「避難行動要支援者」とは、「自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要する者」と災害対策基本法で定義されています。

先ほどもお話ししたように、糖尿病の方などは薬があれば普通に日常生活を送れると思われがちで、支援の必要性が見えにくく、各自治体で作成する避難行動要支援者名簿の対象からこぼれかねないと懸念しています。

そこで、内閣府に伺います。
政府は、インスリン依存型の糖尿病患者など服薬をやめると命の危険がある人たちが安心して避難するための対策は重要とお考えでしょうか。実際に能登半島の被災地を現場で見てきた経験を踏まえてお答えください。そして、その人たちが「避難行動要支援者」に当たり得ると認識されているのでしょうか。もし認識されているのであれば、そうした方が要支援者名簿からこぼれ落ちないよう自治体に周知すべきではないでしょうか。

以上3点について、内閣府の見解をお聞かせください。

〇大臣政務官(平沼正二郎君)

お答え申し上げます。
令和6年能登半島地震への対応においては、私自身も被災地に累次に足を運び、非常災害現地対策本部長として陣頭指揮に当たってきておるところでございます。そのような中において、被災された糖尿病患者の皆さんがインスリン製剤等の供給を必要としていた事例があったとも承知をしております。使用を中断すると生命に危険が及ぶ薬剤を必要とする人たちが安心して避難するための対策は、大変重要なものと認識をしております。

次に、避難行動要支援者名簿についてのお尋ねがありました。
避難行動要支援者名簿には、それぞれの地域の実情を踏まえ、各市町村において作成されるものではありますが、自ら避難することが困難であり、避難の際に特に避難の支援が必要である場合には、使用を中断すると生命に危険が及ぶ薬剤を必要とする人たちについても「避難行動要支援者」に当たり得ると考えております。

そして、避難行動要支援者名簿を作成するに当たっての取組指針においては、地域において真に重点的、優先的に支援が必要と認める人たちが支援対象から漏れることがないようにするため、きめ細かく要件を設けることや、関係者が避難行動要支援者名簿への掲載を求めることなどができる仕組みを示しております。

関係省庁や都道府県と連携を図りつつ、より一層の理解が得られるよう、あらゆる機会を通じて周知を徹底してまいりたいと思っております。

〇委員長(比嘉奈津美君) 

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君 

良い答弁をいただきました。周知の方法、内容については今後意見交換をさせてください。代読お願いします。

さて、糖尿病は内部疾患なので、一見すると本人の大変さは分かりづらいところがあります。さらに、糖尿病に対するスティグマの背景から、公的支援が行き届いていないのは先ほどから伝えているところです。そうした問題意識から取組を続けていますが、政府から前向きに検討をいただいている部分もある一方、そうでない部分がまだまだたくさんあります。今後も、糖尿病への理解を広め、支援の拡充に向けて提言をしていきますので、大臣にはぜひ前向きな検討を引き続きよろしくお願いいたします。

次に、障害者差別解消法の改正に伴い、今年4月に各分野の差別解消法ガイドラインも改定されました。分野ごとに不当な差別や合理的配慮の例を具体的に記載した重要な指針です。

昨年11月の厚生労働委員会において、重度障がい者の入院時に介助者が付き添えるよう医療機関が配慮することを合理的配慮の例としてガイドラインに記載するよう大臣に求めてまいりました。その後どのように対応されたのか、大臣よりご説明ください。

〇国務大臣(武見敬三君) 

この委員ご指摘の障害者差別解消法医療関係事業者向けガイドラインにつきましては、昨年11月の厚生労働委員会の後、ご指摘の点について関係団体などからもヒアリングをした上で、今年の3月に改正をしたところでございます。

具体的には、入院時の介助者の付添いについては、合理的配慮に該当すると考えられる例として、特別なコミュニケーション支援が必要な障がい児者の入院に当たっては、医療機関は、院内感染対策に配慮しつつ、患者本人の意思や関係者間での支援の範囲、方法などを十分に確認をし、可能な限り支援者が付き添えるよう配慮することを盛り込みました。また、支援者が入院中に付き添うことは差し支えないことなどを示しました。そして、令和5年11月20日の事務連絡の内容を明記するとともに、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例として、正当な理由なく介助者等の同伴を拒否することを盛り込んだところでございます。

今回の改正した内容については関係団体や医療機関などに周知したところでありまして、引き続き、医療機関等で適切な対応がなされるよう取り組んでいきたいと思います。

〇委員長(比嘉奈津美君)

天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

〇天畠大輔君

周知徹底を図ってください。一方で、課題もまだまだあります。代読お願いします。

入院時の介助者の付添いについては、最終的に看護職員が入院中にコミュニケーション支援の技術を習得することが前提となっていますが、他の患者さんの対応もある中で習得することは極めて困難です。私の「あ、か、さ、た、な話法」も、ゆっくりであれば誰でもコミュニケーションが取れますが、スムーズに意思疎通できるようになるには半年以上掛かります。

また、そもそも入院時の重度訪問介護の利用がコミュニケーション支援に限定されていること自体が問題です。例えば、私の食事介助は何か月も練習しないとできません。看護師がやれば確実に誤嚥のリスクが高まります。介助内容に関わらず、入院時の介助者の付添いは障がい当事者が長年訴えてきたところですので、社会保障審議会の障害者部会や医療保険部会での議論を強く要望しまして、質問を終わります。

〈配布資料〉