2024年5月9日 厚生労働委員会質疑(雇用保険法等改正案審議)「障がい者を労働から締め出す政策、まだ残ってます!」
○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。障がい者は労働から締め出されています。代読お願いします。
本日は雇用保険法改正案の審議ですが、障がい者雇用の促進政策は様々ある一方で、障がい者を労働から締め出す政策がまだまだ残っています。この問題意識のもと、法案の関連として質問いたします。
15年ほど前、実習点数も十分だったのに、私は大学から社会福祉士の受験推薦が得られませんでした。その理由の一つは、私のような重度障がい者に対して試験での配慮を提供した前例がない、でした。人生を切り開こうとする障がい者が夢をくじかれないためにも、資格試験段階での合理的配慮の必要性を痛感しています。
まず、実例をご紹介します。後ほど資料1で詳細を読んでいただければと思いますが、肢体、視覚、言語、てんかんの障がいがある当事者が社会福祉士資格に挑戦しました。ただ、パソコン受験がなかなか認められず、代わりの方法で何年も受験をし続けざるを得ませんでした。2021年、この方が合格した受験の年にやっとパソコン受験の許可が出たといいます。合理的配慮の建設的対話に一定の時間と労力は必要ですが、現状ではその苦労が膨大過ぎます。特定の障がいのある人が資格を取得できない規定である「絶対的欠格条項」は2001年の法改正で削除されました。しかし、それまで障がい者を資格試験から締め出していたため、翌年からの試験でも同等に受験できない状態が続きました。例えば、障がい当事者が事前に申請した内容が受験会場に行ったら用意されていなかったといったこともあったそうです。
そうした受験者の経験と声を受けて、「資格取得試験などにおける障害の態様に応じた共通的な配慮について」という基準文書が作られました。資料2の1は、厚労省のホームページにある医師試験、薬剤師試験の配慮申請書です。ちなみに、看護師試験の配慮申請書は医師のものとまったく同じです。資料2の2は、基準文書の附属文書です。それぞれの赤枠部分を見ていただくと分かるように、今も「基準文書附属の申請書等における配慮のイメージ」をベースにしたものが各試験で使われています。つまり、基準文書は策定から約20年たった今も重要だと言えます。しかし、パソコン受験が合理的配慮だということは共通的な認識にはなっていません。例えば、社会福祉士の国家試験では、パソコン受験の前例があるにもかかわらず、今年2月の配慮申請書にもパソコン受験という選択肢はありません。
基準文書は、技術進展や時代の変化に応じて不断の見直しをすべきです。パソコン受験や代読、代筆も先ほどの附属文書の選択肢に含めるなど、改定の検討を始めるべきと考えますが、政府の見解はいかがですか。基準文書策定をされた内閣府よりお願いいたします。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
お答えを申し上げます。
国家資格試験における合理的配慮に関して、天畠委員のご指摘のこの基準文書の改定のお尋ねということでございますが、ご指摘の平成17年のこの文書におきましては、各試験制度に共通的に対応すべき配慮事項を整理したものでございますけれども、この第5次の障害者基本計画におきましては、国家資格試験の実施について、障がい特性に応じた合理的配慮を行う旨定めているところでございまして、このご指摘のパソコン受験を含めどのような配慮を行うか、また、配慮を行う場合に具体的にどのような方法を認めるかにつきましては、本文書で一律に行うというよりも、各試験制度ごとに、各省庁におきまして、試験内容や技術の進展などを踏まえた検討や判断を行った上で、本文書に記載されていない配慮事項も含めて障がいのある個々の受験者の実情に応じて合理的配慮を行っていただきたいと、このように考えているところでございます。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
「明示していないけれど、やっているからよい」ということですか。次の受験者がより配慮を受けやすいようにするのが国の責務ではないですか。古賀政務官、お答えください。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
先ほど申し上げたとおり、各試験制度において所管をする省庁が個別に検討をして、そしてその合理的配慮を提供していくと、こういうことだろうと、こう考えております。
そして、試験でございますので、試験そのものの公平性、公正性にも配慮をした上で、どういう合理的配慮の提供が可能かということを各省庁でご判断いただきたいと、こういうふうに考えているところでございます。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
先ほどのパソコン受験の当事者のケースを軽んじています。基準文書を改訂すべきと強く申し上げ、次に行きます。代読お願いします。
次に、通告なしですが、欠格条項について伺います。
「障がいがあるから資格を取れない」という規定が絶対的欠格条項、「できないかもしれないからチェックする」規定が相対的欠格条項です。
2019年の法改正で成年後見制度利用者に対する絶対的欠格条項がすべての法令からなくなったことは前進でした。しかし、まるで引換えのように、少なくとも124本の法律に心身の故障による相対的欠格条項が新設されました。例えば、社会福祉士、精神保健福祉士、建築士、保育士で、2019年まで「機能の障害」を対象とした欠格条項が「ゼロ」だったところに新たに相対的欠格条項ができたため、精神障がい者らが新たな不利益を負うことになりました。
4月4日の私の質問に対して古賀政務官は、絶対的欠格条項から相対的欠格条項への規定の変更、適正化が行われたと答弁されました。
しかし、政府が言う「適正化」後の今もなお、当事者の不利益は日々生じています。当事者団体によると、絶対的欠格条項があった時代から今に至るまで、「免許を交付されるのか心配」、「勉強しても無駄になるのではないか」という相談が絶えません。そうした大きな不安をもたらしているのは欠格条項であると認識していただきたいです。
政府は、当事者のこの状況を踏まえてもなお適正化とおっしゃるのですか。通告なしですが、古賀政務官、お答えください。
○大臣政務官(古賀友一郎君)
その2019年の法律改正によりまして、今ご指摘のございました、成年被後見人であることをもって欠格条項とするという、これ、いわゆる絶対的欠格条項というのを廃止いたしまして、個別、実質的にその能力について判断をしていくという、いわゆる相対的欠格条項という改正を行ったわけでございます。
それに伴いまして、この関係省庁の省令等に精神の機能の障害等の用語を用いた規定が設けられたわけでございますけれども、そうした規定は制度ごとに必要な能力の有無を個別的、実質的に審査するための具体的な基準等を定める規定の整備の一環として設けられたものと、こう承知しておりますので、そのことをもって精神障がい者が新たな不利益を負うことになったというご指摘はあたらないのではないかと、こういうふうに考えております。
さらに、この相対的欠格条項に改正した後も、この第5次の障害者基本計画からは、その当該相対的欠格条項が真に必要なものかどうか、これをしっかり判断をして、そして見直し、必要な見直しを行っていくと、こういう計画にしておりますので、そういった意味では、絶対的欠格条項から相対的欠格条項、そしてまた、その相対的欠格条項も真に必要な条項なのかどうかという、こういった見直しをやっていくと、こういうことにしておりますので、ご理解いただきたいと、このように思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
「真に必要な」とおっしゃいますが、当事者から見れば、欠格条項そのものが必要ないのです。代読お願いします。
資料1の2の赤枠部分は、先ほどの障がいのある社会福祉士のコメントです。私も深く共感しますので、意見として読み上げます。
「障がいがあってもなくても、福祉専門職として体調管理は必須条件ですし、障がいがあることは本人が一番分かっていることで、当然そのノウハウを持って仕事をすることが求められます、そして、どういうふうにやれば職務が遂行できるかどうかを考える方が、相対的欠格事由を設けるより大事なのではないかと心から思います」。
引用は以上です。引き続き追及します。次に行きます。
さて、2018年の障がい者雇用水増し問題の発覚まで、公務員試験では、自力通勤、単独職務遂行、活字印刷文に対応可能といった慣習的な受験資格が残っていました。大きな批判を浴びた結果、政府はようやくこれらの受験資格や募集条件を不適切と認めました。
慣習的な受験資格を見直したのは良かったのですが、現在の障がい者雇用促進や障がい福祉サービスの制度では、私のような重度の障がい者が働くことは実質的に不可能です。
例えば、公共交通機関が足りない地方で運転が難しい人のケースです。2019年6月6日の参議院厚生労働委員会で、秋田県の中学校教員で脳性麻痺の三戸学(さんのへ・まなぶ)さんの事例が取り上げられました。異動を命じられた学校の近くには、三戸さんが暮らせるバリアフリー対応の賃貸住宅はなく、自宅から通おうにも、バスはノンステップではない、タクシー通勤には手当が出ないので自己負担が重いという事例でした。
この問題への対処は、自治体や教育委員会の裁量に委ねられていることが問題視されていました。三戸さんの問題提起後、秋田県では、県職員に対して、タクシーやハイヤーを通勤手段として認め、5万5千円を上限に通勤手当を支給する制度改正をしました。ただ、これは秋田県だけが制度改正すればよいという問題ではありません。私の知り合いに、地方に住む支援学校の教員がいます。20代の電動車椅子ユーザーですが、自宅からご両親が自家用車で送迎しています。しかし、ご両親も年を重ね、送迎できなくなる日がいつか来ます。
そこで伺います。
政府は、公共交通機関の少ない地域での障がい者の通勤保障は重要だとお考えですか。また、最低限の方策として、公共交通機関の少ない地域で働く障がい者の通勤保障について、秋田県の事例を自治体や教育委員会に文科省から周知すべきではないでしょうか。
○政府参考人(浅野敦行君)
お答えいたします。
障がいのある教師が継続的に働くためには、通勤の支援を含む合理的な配慮が提供されることが重要であると考えております。
障がいのある教師の通勤につきましては、それぞれの障がいの程度等を勘案しながら、自宅から通勤しやすい学校へ配置するなど、人事異動の際に配慮を行っている例や、委員ご指摘のような秋田県における事例のように、タクシー等に係る運賃を支給したりするなどの例があると承知しております。
文部科学省としては、障がいのある教師が働きやすい職場環境の整備に向け、ご指摘の秋田県の事例も含め、好事例を収集、発信することにより、任命権者である各教育委員会の取組を促してまいりたいと考えております。
○天畠大輔君
代読します。ぜひ周知してください。
ただ、タクシーやハイヤーを通勤手当の対象とすることは一歩前進ではありますが、最終の解決策ではありません。移動介助の方法が独特だったり、医療的ケアが必要だったりと、様々なケースが考えられ、福祉制度との組合せも必要になってきます。引き続き、通勤の保障について、文科省と厚労省で連携して検討していただきたいと求め、次に行きます。
次に、通勤や就労時間中のヘルパー利用についてです。
障がい者総合支援法に基づく国のヘルパー派遣制度は、通勤と就労時間には使えないため、私のようにほぼ常時介助が必要な障がい者は実質的に働けません。それは民間でも公務部門でも同じです。
厚労省は、公務部門は民間企業と比べ障がい者雇用に積極的に取り組むべき立場であること、また、公費による補助金について公務部門に支出するのが適切かという課題もあるため、雇用主である自治体や中央官庁などの行政が合理的配慮として通勤や就労中の介助費用支出にも対応すべきとレクなどで説明をしていますが、そもそも国家公務員や地方公務員の介助費用を自治体や中央官庁が負担している事例は現在あるのでしょうか。大臣、お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
国、地方公共団体が自ら率先して障がい者を雇用すべき立場であり、国家公務員法及び障害者雇用促進法に基づき、障がい者の雇用に際しては、個々の障がい特性に応じて、必要な施設の整備、援助を行う者の配置などの合理的配慮に取り組むこととされております。
国や地方公共団体における、お尋ねのこの介助費用の負担事例の有無につきましては、厚生労働省としては把握をしておりません。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
把握していないのは、介助費用負担の事例がほぼないからではないでしょうか。代読お願いします。
資料3の記事をご覧ください。
ある市役所の正規職員の方は、骨形成不全症の電動車椅子ユーザーです。今は1人で電車通勤、勤務もしておられますが、介助がないことで、けがの危険といつも隣り合わせです。市民のお宅などの訪問に当たっては、介助者がいないので行けず、責任を持ち一貫した仕事ができないことが悩みです。
つまり、各自治体で障がい者雇用が進められてはいても、介助者が付けられないことが原因で、けがなど体への影響があり、しかも、仕事の幅が狭くてキャリアアップが見込めず、平等に働ける環境にはなっていないということです。体調不良、本人都合が離職理由の場合にも、その背後には、通勤や就労中にヘルパーを利用できないという制度の不備があると推測できます。
就労時間のほとんどに介助者が必要な障がい者もいます。その介助者の人件費を自治体や中央省庁が負担することは、一般的に考えれば、民間企業と同様に厳しいと思われます。負担が大きいことを理由に、ほぼ常時介助が必要な障がい者の雇用を敬遠することも容易に想定できます。民間における重度障がい者の就労を後押しするのと同じ理屈で、自治体などへ支援するのは不適切とは言えないのではないでしょうか。
2020年には、この通勤や就労中にヘルパーを利用できない問題を少しでも解決するため、「雇用施策との連携による重度障がい者等就労支援特別事業」ができました。しかし、公務員は対象外なので、現実に困難を抱えている人がいます。
大臣に伺います。私は特別事業は永続させるべきではないと思いますが、すぐにできる方策として、公務員も特別事業の対象に含めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
国や地方公共団体に勤務する重度障がい者の通勤、就労中の介助につきましては、障害者雇用促進法等における国や地方公共団体の責務を踏まえ、国等が雇用主として障がい者に対する合理的配慮を提供するものと認識をしており、公費による補助金を公務部門に支出するのは適切かという課題もあり、お尋ねの特別事業の対象とはしておりません。
公的機関における法定雇用率は民間部門よりも高く設定されておりまして、率先して障がい者雇用を促進しているところでもあり、引き続き、重度障がい者を含め、公的機関として障がい者雇用を進めるよう関係機関とも連携して取り組んでまいりたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
政府が公務部門における介助費用負担の実態を把握してもいないのに、公的機関だから率先してというのは都合がいいと思います。国が実態調査をすべきではないですか。大臣、お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
雇用分野における公的機関における障がい者への合理的配慮事例集というものについては、これをまとめております。今後の事例集の改定の際に、重度障がい者に対する配慮事例についても収集することは当然検討されるべきことかと考えます。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
追加調査をすべきです。代読お願いします。
令和5年度に、厚労省は、「重度障がい者の就労中の支援の推進方策の検討に関する調査研究」を行いました。公務員は回答者に含まれていますが、その方々のインタビュー回答や公務員ならではの課題などについては特段の知見が示されていません。障がい者の公務員の実態や雇用する側の自治体の事情など、追加調査をすべきと強く求め、次に行きます。
資料4をご覧ください。
現在、障がい者が国家公務員を目指す場合、ルートは二つあります。人事院が毎年一度行う一斉の採用試験に合格して常勤になるルート、そして各省庁が必要に応じて募集を掛ける障がい者向けの個別選考に合格して常勤や非常勤になるルートです。2018年、障がい者雇用水増し問題の発覚後、人事院が実施した障がい者向け選考も過去にはありました。
次のような声が私のところに届いています。現行の各省庁障がい者採用か過去の人事院障がい者採用のどちらかで国家公務員になった方だと思われます。読み上げます。
「障がい者も健常者と同じ業務内容と説明を受けたが、入庁してみたら、障がい者採用は一つの部署にまとめて配属されている。一度、家庭の事情で違う部署に異動したが、希望していないのにまた異動となり、前の部署に戻った。なぜ障がい者がその部署に固められているのか、障がい者は異動がないのかも説明もない」。引用は以上です。
一般論として、本人に説明もなく、障がい者採用を理由に集中配置する部署に配属したり異動をさせなかったりすることがあってよいと政府はお考えですか。内閣人事局からお答えください。
○政府参考人(野村謙一郎君)
お答えいたします。
障がい者の雇用に際しては、障がいのある職員に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、障がいのある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境を整備することが重要であると考えております。
国家公務員につきましては、人事院が平成30年に策定いたしました「職員の募集及び採用時並びに採用後において障がい者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」におきまして、職員の募集及び採用時、採用後に各省庁が講ずべき措置が定められております。その中で、各省各庁の長には、障がい者との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講ずるかを検討することとされております。
また、令和4年の「障害者雇用促進法」の改正によりまして、公務部門も含めたすべての事業主の責務として、「職業能力の開発及び向上に関する措置」が含まれることが明確化され、障がい者の雇用の質の向上を図ることが重要とされております。
このため、障がい者に対して講ずべき合理的配慮の提供義務を負う各府省におきましては、障がいのある職員との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重し、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を行い、障がいのある職員が意欲と能力を発揮して活躍できるようにすることが重要であると考えております。
内閣人事局といたしましても、各府省において、障がいのある職員の意向を尊重しつつ、適切な合理的な配慮が行われるよう、厚生労働省や人事院とも連携しながら各府省を支援してまいります。以上でございます。
○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。
○天畠大輔君
ぜひよろしくお願いします。代読お願いします。
「雇用の質の向上」というキーワードが出てきました。障がい者職員の集中配置という方法があることは、内閣人事局、厚生労働省、人事院作成の「公務部門における障害者雇用マニュアル」にも書かれていますし、健常者も希望どおりの異動やキャリア形成とならないことももちろんあります。
ただ、障がい者は、障がいを理由に仕事をセーブしたいものと勝手に思い込まれたり、そもそも集中配置という特殊な人事配置に直面するなど、健常者とは明らかに違う立場にあります。「雇用の質」を上げるためには、相互理解のための説明、対話は必須と考えます。
引き続き議論をさせていただきたいと申し上げ、質疑を終わります。
〈反対討論〉
〇天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
雇用保険法改正は、労働政策を根本から立て直すことから始めるべきです。代読お願いします。
私は、れいわ新選組を代表し、雇用保険法改正案原案並びに同法案修正案の双方に対して、反対の立場から討論を行います。
まず、原案への反対理由の第一は、本法案が週間労働時間10時間以上20時間未満の短時間労働者への雇用保険適用拡大を図っているものの、そもそもこの短時間労働者の大部分を占める非正規雇用が拡大した最大の原因である雇用劣化、雇用破壊への反省と改善策がまったくないまま雇用保険拡大だけが行われているという点です。
「今や非正規雇用労働者は身分ないし階級となっている」と多くの労働学者、経済学者が指摘しています。就職氷河期世代を始めとして、「一旦非正規雇用になったらなかなか正社員になれない」という現実が、この指摘が正しいことを証明しています。
同一労働同一賃金、均等待遇の徹底実施などによって労働基準を正常化することこそ急務です。すべての人々が差別なく安心して働ける社会を保障しない限り、日本社会に未来はありません。
原案への反対理由の第二は、今回の改正によって雇用保険のセーフティーネット機能が低下しているという点です。
「就業手当」が廃止され、「就業促進手当」が減額されています。これら二つはいずれも、不安定な労働環境への転職を余儀なくされた労働者への手当です。
政府は、より低い労働条件への転職に対する就労支援施策を廃止ないし減額するという「ディスインセンティブ」、いわゆる「不利益効果による誘導策」によってより高い労働条件への雇用移動を促すと説明しています。しかし、そのような効果を示す研究や知見が実は見当たらないということを政府自身が本委員会の質疑で認めているのです。立法事実が完全に欠落した改定です。
原案への反対理由の第三は、上記のような手当の改定が、困難な状況にある人々にあえて冷たい姿勢で臨み、安定雇用への移動を果たした「転職成功者」への手当は維持するという、あめとむちの政策だからです。
人間を「優れた者」と「劣った者」とに分けるのは優生思想であり、根絶すべき考え方です。「優勝劣敗」で物事がうまくいくのなら、政治は必要ありません。弱肉強食の動物の世界だからです。
次に、修正案についてです。本修正案は、施行期日を2年半前倒しして雇用保険の対象範囲拡大をより早期に実現するというものです。その意図自体を否定するものではありませんが、上述したような原案の決定的瑕疵を修正するものとは言えないため、同じく反対いたします。
「障がい者を含め様々な困難を抱える人々と、共に生き、共に働ける社会をつくりましょう」と強く申し上げ、以上をもって原案並びに修正案に対する反対討論といたします。
〈配布資料〉