2023年11月16日 厚生労働委員会質疑「テーマいろいろいきます!改正旅館業法下での宿泊拒否を防ぐ・改正障害者差別解消法ガイドラインへ提案・障害者医療費助成の国保減額措置に異議あり!」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。
まず、改正旅館業法について伺います。代読お願いします。

第211回国会で成立した改正旅館業法では、障がいを理由とする宿泊拒否が生じ得るなどの懸念から、私は反対の立場を取りました。法案成立後に、厚労省は「改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会」を開きました。障がい当事者も委員として参画し、様々な障がい者団体の意見聴取を行ったうえで、先月、とりまとめ及び政省令・指針案が示されました。

この指針案は、障がい者団体などの主張がおおむね反映された内容です。合理的配慮の求めは宿泊拒否事由に該当しないこと、などが明記されました。改正法への懸念は拭い切れませんが、指針案は一定の評価をできる、と考えています。

一方、この政省令・指針に実効性を持たせるためには、当事者参画の研修を徹底すること、そして、万が一拒否に遭った場合に相談できる体制が不可欠です。特に、私はこれまで、4名の障がい事者国会議員とともに、「研修ツール」の作成について、障がい当事者や事業者が参画した協議の場を速やかに設置するよう求めてきました。厚労大臣から検討状況をお聞かせください。

○国務大臣(武見敬三君)
ご指摘の研修ツールにつきましては、そのような宿泊サービスの提供のため、先月取りまとめた検討会の報告書において、旅館業の営業者、患者等団体や障がい者団体等の協力を得てその作成等を検討すべきとされております。その作成等に当たりましては、ご指摘のように、協議の場を設定し、障がい者団体や事業者にも参画を呼びかける方向で考えておりまして、できるだけ速やかに検討を進めます。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
当事者参画の方向を示していただき、ありがとうございます。代読お願いします。

次に、資料1をご覧ください。
指針案にはこうあります。
「厚生労働省において、旅館業の施設内に掲示できる相談窓口一覧の資料を用意しているため、必要に応じて施設内に掲示することが考えられる。」
しかし、掲示するかどうかは宿泊業者に委ねられており、相談窓口がきちんと周知されるか懸念が残ります。

そこで、以下2点を厚労省に求めてきました。
1つ目に、障がいや病気を理由に宿泊拒否に遭いかねない方々にとって、相談窓口の浸透が重要であることを、施行に伴う事務連絡にきちんと明記していただくこと。
2つ目に、相談窓口の周知方法についても、掲示に限らず検討し、事務連絡に例示していただくことです。
厚労省での検討状況をお聞かせください。

○政府参考人(大坪寛子君)
お答え申し上げます。
先生ご指摘のように、この相談窓口、これの周知徹底、極めて重要だというふうに考えております。私どもとしましては、これ、6月7日に法案成立させていただいた後に検討会を行い、その取りまとめが先日、10月の10日に取りまとめられまして、11月の15日に政省令の公布をさせていただきました。その際に事務連絡等々発出をしておりまして、その際、まず、公布に合わせて、厚生労働省のホームページの中で、一般の方向けに、この法律の趣旨に関しての周知のポスターですとか相談窓口のポスター、その一覧など、既に掲示をしております。

また、同日発出いたしました自治体への通知、この中で相談窓口の周知を要請をいたしましたほか、宿泊事業団体、これに対しましても事務連絡を発出をいたしまして、相談窓口の重要性、これをお伝えするとともに、傘下の旅館業の営業者が施設内で相談窓口のポスターを掲示することのほかにも、各施設のホームページで相談窓口を周知するよう促すなど、様々な方法で周知していただくように呼びかけたところであります。加えて、宿泊事業団体のホームページでの相談窓口の周知、これもお願いをしています。

さらに、政府広報のオンラインなども使いまして、国民の皆様にも広く相談窓口の周知徹底を図っているところでございます。厚生労働省といたしましては、引き続き、改正旅館業法が適切に理解され、運用されていくように努めてまいります。

○天畠大輔君
代読します。
周知徹底をお願いいたします。

次に、障害者差別解消法ガイドラインについて伺います。
来年4月に、民間事業者の合理的配慮提供義務などを盛り込んだ改正差別解消法が施行されます。各省庁では、今、各分野の事業者に向けたガイドラインの改定作業が進んでいます。今回は、障がい当事者の立場から指摘したいことが2点あります。

1点目は、重度障がい者の入院に不可欠な介助者付添いについてです。これまでも、委員会で何度も指摘してきました。
資料2をご覧ください。
令和4年11月9日の事務連絡では、介助者の付添いを受け入れた病院の対応例をまとめています。その上で、各医療機関に対して、「こうした対応例も参考に、院内感染対策に留意しつつ受入れを御検討いただきたい」としています。
コロナ禍では、感染対策などを理由に入院時の介助者付添いを断れ、やむなく自宅療養をして亡くなったという事例もあります。
介助者が付き添えるよう医療機関が配慮することは、重度障がい者が適切な医療を受けるための合理的配慮ではないでしょうか。医療関係事業者向けの差別解消法ガイドラインに合理的配慮と考えられる例として盛り込み、医療機関への周知を行うべきではないでしょうか。大臣の見解をお答えください。

○国務大臣(武見敬三君)
厚生労働省、これまでも障害者差別解消法に基づく医療関係事業者向けガイドラインを策定をしております。医療関係事業者が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないようにすることや、必要かつ合理的な配慮を行うようにするための基本的な考え方を示してまいりました。
ご指摘の介助者の付添いがなければ入院できない障がい者への対応については、昨年11月に事務連絡で、院内感染対策に配慮しつつ付添いを受け入れるよう、医療機関に対し検討を促してまいりました。そして、可能な限り介護者が付き添えるよう配慮することは、一般的には合理的配慮に当たるという考え方を示しております。
来年度から障害者差別解消法の改正法の施行に向けて、障がい者団体の意見も伺いながら、現在、ガイドラインの改正作業を進めているところでございます。委員のご指摘も極めて重要でございます。引き続き、様々なご意見を踏まえつつガイドラインの改正作業を進め、医療機関に対し周知徹底を進めてまいりたいと思います。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
医療機関が合理的配慮として認識することが重要ですので、前向きに検討をお願いします。代読お願いします。

2点目は、ヘルパー派遣拒否の問題です。
ヘルパー派遣拒否は至る所で起きていますが、今回は化学物質過敏症の事例を共有いたします。

資料3をご覧ください。
化学物質過敏症は、環境中の化学物質に過敏に反応して多臓器の症状を呈し、重症化すると仕事や日常生活にも支障が出てくる疾患です。国内では少なくとも70万から100万人程度の患者がいると推定され、2009年10月に健康保険の適用が認められましたが、国としての対策はいまだ十分ではないとされています。

先日、化学物質過敏症で障がいを持つ方から話を聞きました。介助者の衣服に柔軟剤の香りなどが付いていると頭痛や目まいが起きてしまいます。そのため、介助者は衣服を無香料のもので洗濯するなどの配慮が必要です。しかし、「化学物質過敏症の方に対応したことがない」「介助者にそこまで求められない」として、事業所がヘルパー派遣を断っているそうです。自治体から認められた支給時間数をほとんど使えず、生活が成り立たないので学業を中断したといいます。さらに、唯一入ってくれていたヘルパーも入院し、介護ゼロになってしまったそうです。

ヘルパー派遣の拒否は、障がい者の社会参加を妨げ、命さえも脅かします。厚労省として実態を把握し、ヘルパー派遣の拒否を防げるよう、自治体や事業者への周知徹底を、周知啓発を徹底してください。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君)
障がい福祉サービスの指定基準において、訪問系サービスの指定事業者は正当な理由がなくサービスの提供を拒んではならないと定められています。これは、化学物質過敏症の方も含め、正当な理由がなくヘルパーが派遣されないということがないようにしなければならないということであり、その旨、自治体に対して適切な方法で周知をしてまいりたいと思います。

また、柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするとの相談を踏まえ、現在、政府では、関係省庁の協力の下、香りへの配慮に関する啓発ポスターを作成をし、これを活用した周知広報活動などを進めており、障がい福祉サービス事業者への周知等も進めていきたいと思います。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
今年度の主管課長会議資料で周知するのはいかがでしょうか。大臣、お答えください。

○政府参考人(辺見聡君)
毎年度、委員ご指摘のような主管課長会議、分野ごとに行っているところでございます。障害福祉分野の主管課長会議について、まだどのような形で行うのかについて具体的なところは決まっていないところでございますけれども、委員ご指摘の点も踏まえまして検討を進めてまいりたいと考えております。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
是非検討してください。代読お願いします。

次に、資料4をご覧ください。
障害者差別解消法の福祉事業者向けガイドラインには、不当な差別的取扱いの例として、「人的体制、設備体制が整っており、対応が可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な障害者、重度の障害者、多動の障害者の福祉サービスの利用を拒否すること」が挙げられています。
もちろん、事業者がどのように対応できるかは、当事者と事業者双方で建設的な対話が必要です。一方で、対策も検討もせずヘルパー派遣を断ることは事業所側の差別にあたりうると考えます。また、障がいや疾病を理由にヘルパー派遣を断る事例は化学物質過敏症だけではありません。

ヘルパー派遣の拒否という差別を防ぐため、当事者へのヒアリングを進めた上で、障害者差別解消法の福祉事業者向けガイドラインの記載をより充実させる必要があると考えます。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君)
障害者差別解消法の福祉事業者向けガイドラインについては、来年4月からの改正後の障害者差別解消法の施行に向けて、当事者を含む関係者のご意見を伺いながら改正の作業を進めております。お尋ねの化学物質過敏症に関わる事案について、同法による合理的配慮としてガイドラインに掲載をし、事業者に履行を求めるかどうか、適切かどうかを含め、検討を進めていきたいと思います。

○天畠大輔君
代読します。
検討をお願いいたします。また、ヘルパー派遣の拒否を防ぐためには、事業所の負担軽減のため、行政からの財政的な支援も欠かせないことを申し添えて、次の質問に移ります。

障がい者への医療費助成について伺います。現在、子供やひとり親家庭、障がい者に対して、各自治体独自の事業として医療費助成が行われています。

医療費の助成には2種類あります。窓口での医療費支払が軽減される現物給付方式と、一旦は自己負担分を窓口で支払い、後から市町村に申請することで助成される償還払い方式です。現物給付方式の場合、窓口での負担が軽減されることで一般的に医療機関を受診する人が増えるとされています。その分、増えた医療費については医療費助成を行う自治体が負担すべきという考えから、国民健康保険の国庫負担金が減額される仕組みになっています。こうした減額調整措置があるため、自治体によっては、医療費の負担増を避けるため、助成方法を償還払い方式に限定したり、所得制限を掛けたり、精神障がいを対象外にしたりといった対応をしています。

資料5をご覧ください。
たとえば、山梨県では2008年に重度障がい者の医療費の窓口無料化を実施しましたが、減額調整措置を理由に、2016年、償還払い方式に戻しています。「重度心身障害者医療費の窓口無料復活を求める会」では、県内の全27市町村への調査を行い、医療費の還付を受けられなかった患者が県内で208人いたとする結果が出ました。

本来は全額助成される医療費を一旦立て替えることが障がい者にとって負担になっていることは明白です。窓口無料化や精神障がい者への対象拡大などの要望は、山梨県や宮城県、宮崎県、鹿児島県、栃木県、京都府などさまざまな自治体で行われていますが、減額調整措置がハードルとなり進まない自治体もあります。このような現状において、子どもの医療費助成については今年6月13日のこども未来戦略方針で減額措置制度の廃止が盛り込まれました。

政府は廃止の理由を、自治体による医療費助成が全国的に実施されているからとしていますが、障がい者への医療費助成も全ての都道府県、政令市、中核市で行われています。子どもと同じように医療費助成の必要性がずっと認識されてきたということではないでしょうか。障がい者を置き去りにする理由が見当たりませんが、なぜ廃止の検討が進まないのでしょうか。大臣、理由をお答えください。

○国務大臣(武見敬三君)
先ほどご指摘のその子どもについては、おおむね全ての地方自治体で子供医療費助成が実施されていることを踏まえて、自治体独自の少子化対策の取組を支援する観点から、こども未来戦略方針において廃止する方針が盛り込まれたものと考えます。

他方で、この障がい者については国として医療費の自己負担額を公費で軽減する全国一律の自立支援医療制度を設けております。さらに上乗せして実施されている各自治体独自の医療費助成には、給付の方法や対象範囲を含め実施状況等の差があることから、これに関しては慎重な検討が必要と考えているところでございます。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
答弁にあった自立支援医療は障がいを治すための制度です。でも、障がい者はたとえば感染症への罹患など普通の医療も受けます。代読お願いします。

自立支援医療制度は障がいに起因した治療にしか適用されません。しかし、障がいに直接起因していなくても、体が弱くほかの病気にかかりやすかったり、低所得により受診を控えたりする方々も想定される中で、障がい者の福祉増進の観点から医療費助成は極めて重要な施策であるはずです。しかし、政府が行う減額調整措置は、各自治体の取組を後退させ、障がい者の受診を抑制しうるものです。

大臣、通告をしておりませんが伺います。せめて自治体の取組状況を調査すべきではないですか。いかがでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君)
この国保の減額調整措置というのは、基本的に国保財政に与える影響や限られた財源の公平な配分などの観点から、市町村が行う医療費助成により患者の窓口負担が軽減される場合に、負担軽減に伴う医療費分の公費負担を減額調整する制度でございます。そこで、障がい者については、国として医療費の自己負担額を公費で軽減する全国一律の自立支援医療制度を設けておりますので、こうした中で自治体が独自に行う障がい者への医療費助成に関わる減額調整措置を廃止することは、国民健康保険の財政に与える影響に加え、自治体によって給付の方法や対象範囲を含めた医療費助成の実施状況等に差がある中で、限られた財源を公平に配分する観点から、今まで慎重に検討をしてまいりました。基本的にはこの考え方でご了解をいただければと思います。

○委員長(比嘉奈津美君)
天畠君が発言の準備をしておりますので、お待ちください。

○天畠大輔君
なぜ調査すらできないのですか。大臣、理由を明確にお答えください。

○委員長(比嘉奈津美君)
時間が来ておりますので、お答えは簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(武見敬三君)
はい。この自立支援医療制度というものに基づいてこの減額調整措置というものが行われるに際して、こうした障がい者の方に関わるところで、実際に社会的にこれは問題であるというような矛盾がもし生じてくるとすれば、これは改めてそこでまた検討をする必要も出てくるということはあり得りますので、改めて、まずどのようなその調査の仕方をすることが適切であるのかということを検討させていただきたいと思います。

○天畠大輔君
是非検討してください。引き続き注視します。質疑を終わります。

〈配付資料〉