2022年11月1日 厚生労働委員会質疑「重度障がい者が働けるか、住んでいる場所で決まるのはおかしくないですか?」

○天畠大輔君
れいわ新選組の天畠大輔です。今日は、重度障がい者が介助を付けて仕事ができない問題について質問します。代読お願いします。

代読いたします。はじめに、大臣の所信表明演説についてお伺いします。今国会冒頭、障がい者や難病患者への支援について何を述べられたか、大臣、もう一度お聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)
10月25日の参議院厚生労働委員会での私の挨拶といいますか発言において述べた内容でございますが、障がい者や難病患者の方々が、地域や職場において、本人の希望に応じて、医療、福祉、雇用等の各分野の支援を受けながら、その方らしく暮らし、働くことを推進することが重要であります、このため、障がい者等の地域生活の支援体制の強化、就労選択支援 の創設や短時間の雇用機会の拡大など多様な就労ニーズに対応した取組の推進、精神科病院の入院患者への支援の充実、難病患者等に対する適切な 医療の充実等を内容とする関連法案を国会に提出 いたします旨述べたところでございます。

○天畠大輔君
代読いたします。ありがとうございます。先ほどおっしゃっていた「多様な就労ニーズ」には、我々のような重度訪問介護等を利用している障がい者も含まれていると理解しています。障がい者の就労促進を目指しているわけですから、この方針自体は私は非常に重要だと思います。しかし、実際には就労が促進される制度になっていません。

私が利用する重度訪問介護をはじめ、視覚障がい者の移動を支援する同行援護、そして知的障がい者や精神障がい者への支援を行う行動援護。ここで問題になるのが告示第523号です。この3つの制度に対して社会参加の制限をかけています。

資料1をご覧ください。障がい者の移動中の介助ができるのは、「通勤、 営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。」と定めているのです。

つまり、ここにいる 議員の皆さんのように政治活動をしたり、健常者 の人たちが普段しているようにスポーツバーや漫画喫茶に行ったりすることも、自治体が「社会通念上適当でない」と判断すれば、できません。そして、障がい者の就労促進といいながら、仕事をするときには介助者を付けられない。2019年に重度障がいを持つ舩後靖彦さんと木村英子さんが国会議員となったことで、この問題が広く知られることになり、議員活動中の介助保障が国会内外で議論となりました。

しかし、あれから3年、私は国会議員になりましたが、厚生労働省はまたも議員活動中の重度訪問介護の利用を認めませんでした。今、私の介助費用は参議院が出しています。理不尽な国の制度によって、介助を必要とする障がい者の社会参加が阻まれる現状は何も解決していません。大臣に質問いたします。日本国憲法第27条第1項の条文について端的にお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
日本国憲法第27条第1項、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」とされております。

○天畠大輔君
代読いたします。介助が必要な障がい者は、勤労の権利が保障されている状態とは言えません。大昔の話ではなく、今20代、30代、40代のこれからの日本を支えていく若者が権利を保障されていないのです。 ですから、介助制度を使わずに無理して働いている当事者がたくさんいます。

資料2、フリーライターの30代女性。電動車椅子で取材に赴き、書き上げた記事の原稿料から 自腹で介助費用を出しています。

資料3、大学職員の30代男性。人工呼吸器を付けているのに、勤務時間中は介助者が席を外さざるを得ません。危険と隣り合わせで働いています。

資料4、地方公務員の30代女性。介助がないことで仕事中の無理な動作がたたり、障がいが原因の疲労骨折を何度も起こしています。

また、私は参議院から介助費用が出ていますが、地方議会では、介助費用が出ず自己負担している障がい者議員の方もいます。重度訪問介護は、何より憲法に定められた生存権にもとづく権利です。働くときの生命維持が保障されないことは、勤労の権利はおろか、障がい者の生きる権利さえ保障しないということになります。これは、憲法の理念に反すると思います。代読お願いします。

さらに、障害者基本法第3条には、「全て障害者は経済分野の活動に参加する機会が確保されること」とあります。そして、障害者総合支援法では、 障がい者福祉サービスは「障害者基本法の基本的な理念にのっとり」行うとされています。経済活動中の介護保障を行わないことは障害者基本法の趣旨から外れていると思います。

経済活動中の介護保障を国が行わないならば、民間企業はどのように介助を必要とする障がい者を雇用しているのでしょうか。大臣、簡潔にお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
重度の障がい者の通勤、職場等における支援については、雇用政策と福祉政策が連携して対応し、事業主に対しては重度訪問介護サービス利用者等のための職場介助者や通勤援助者を委嘱した費用の一部助成を障害者雇用納付金によって行っております。この助成措置を活用しても支障が残る場合や自営業者等として働く場合については、市町村の地域生活支援促進事業により障害者ご本人に対する支援を行っているところでございます。

○天畠大輔君
代読いたします。今おっしゃっていた職場介助者の助成金、障がい者を雇う企業自身が、厚生労働省所管の独立行政法人に申請をしなければいけません。つまり、煩雑な助成金申請事務、関係機関との調整が必要です。そこまでして重度障がい者を雇用する民間企業は、ほとんどありません。今のままでは、障がい者は自治体や企業に対し、健常者と平等な立場での応募ができません。実態として、障がい者が働きたければ頭を下げて企業にお願いしないといけないのです。

また、そもそもこの助成金は仕事上の介助に対するものです。生命維持に関わる介助や医療的ケアは想定されていません。これでは重度障がい者が働く際の介助制度にはなりません。

そして、今の答弁で2つ目に触れられていた市町村の地域生活支援促進事業ですが、これは令和2年10月から開始した「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」になります。この事業は自治体にも財源負担があり、この制度を導入するかどうかは自治体の裁量に委ねられています。働きたい障がい者と雇いたい雇用主がその自治体にいたとしてもです。自治体に丸投げと言われても仕方ありません。

大臣、就労支援特別事業の実施自治体数と利用者数をお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業の実績であり ますが、令和4年7月1日時点で実施自治体数が25市区町村、利用者数が82名となっております。

○天畠大輔君
代読いたします。 事業開始から2年がたっていますが、日本全体で1718ある市町村のうち25の市町村しか実施していないということになります。住む地域によって働けるか、雇えるかが決まるのは明らかにおかしいと思います。代読お願いします。

この就労支援特別事業を導入するのは自治体次第、つまり行政と議会が決定権を持っているということです。各地域の政治的な決定で働ける人と働けない人が出る。告示を改正せずに、このような制度をつくること自体、政府は働きたいと願う障がい者の権利をないがしろにしているのではないでしょうか。さらに、告示第523号にもとづき、 自治体によっては政治活動にも介助者は付けられません。私たち当事者が行政や議会に訴えて制度を是正すること自体、制度の上ではできないのです。

私の知り合いで脊髄性筋萎縮症、SMAという難病の20代女性がいます。大学進学後、一般企業への就職を目指して、インターンシップなど就職活動をしてきました。でも、介助が必要であることを理由に、受けた全ての企業で不採用でした。彼女はこう言います。

「私の病気は進行性だから生き急いでいる、できることが減る前に仕事をしたい、隣の市で就労支援特別事業ができたけど、地域によって働けるかどうか決まってしまうのはおかしい。」

重度訪問介護の仕事利用ができるようになれば、どこにいても介助を付けて働けるようになります。企業側も負担がないので採用しやすくなります。重度訪問介護を仕事利用できるシンプルな仕組みに変えていくべきではないでしょうか。

大臣、なぜ重度訪問介護の仕事利用を告示で制限し続けるのですか。

○国務大臣(加藤勝信君)
まず、法律の仕組みから申し上げますと、障がい者の日常生活及び社会 生活を総合的に支援するための法律というのがあり、その第5条第3項、また第29条第3項を踏まえて、今委員がお示しのこの告示が作られているわけであります。現状の取扱いについては、重度訪問介護における就労中の介助や外出支援のうち、通勤や営業活動等の経済活動に伴うもの、通学等に通年かつ長期にわたるものなどに係る支援は、障害者総合支援法及び関係告示によってこの対象とされていないわけであります。そこにおいては、重度の障がい者に対する就労中の介助等に対する公的な支援については、障がい者雇用を促進する観点から事業主に対する助成措置を講じてきていること、障害者雇用促進法にもとづく事業主による合理的配慮との関係、また、重度訪問介護における個人の経済活動に関する支援を公費で負担すべきかなどといった課題があり、最終的には、社会保障制度審議会障害者部会において、こうした告示を定めさせていただいたところであります。重度の障がい者の通勤や職場等における支援については、これまでも制度の谷間となっており、今委員からご指摘があったように、働く機会を、まさに働く権利を行使できない、こうした指摘もあり、令和2年度より、雇用と福祉の両施策が連携した取組ということで、先ほど申し上げた、意欲的な企業や自治体を支援するため、障害者雇用納付金制度にもとづく助成金の拡充、また、障害者総合支援法にもとづき、自治体が行う地域生活支援事業による支援メニューを創設し、実施をしてきたところであります。ただ、残念ながら、その使用実数は両制度とも決して高くない、多くないというところでございます。こうした取組が更に円滑に実施されるよう、必要な周知を図るとともに、今ご指摘をいただいた、運用面における様々な課題があれば課題に対して改善を行い、重度障がい者に対する職場や通勤における支援を推進し、重度の障がいを持っている方々も働くことのできる環境をしっかりつくらせていただきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
私のような重度障がい者は、仕事中にトイレや食事、呼吸の確保などといった生命維持の介助が必要なのか否か、大臣、二択でお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
それぞれの方の症状において必要な支援というのは当然あって、すみません、天畠様が何がどう必要なのか、ちょっと私は全部承知しておりませんから答弁できませんけれども、様々な支援が求められる方にはそうした支援が行われるということが重要だというふうに認識をしております。

○委員長(山田宏君)
速記を止めてください。

○委員長(山田宏君)
速記を起こしてください。

○天畠大輔君
そうです。どんな場面でも生命維持は絶対に必要な介助です。代読お願いします。

代読いたします。先ほど大臣は、個人の経済活動に関する支援を公費で負担するべきかといった課題があるといった趣旨のことをおっしゃいました。しかし、私たち当事者は経済活動への支援を求めているのではなく、経済活動をするときに必要な生命維持を求めているだけです。自分で動けなくても、介助者を伴えば、仕事を探し、生きがいを探し、社会に貢献したいという人はたくさんいます。その人たちから介助者を奪う告示第523号の制限を改正してください。制限がなくなれば介助を必要とする障がい者が地域で生きていく希望を持つことができます。大臣、介助が必要な障がい者の地域移行を本気で進めるつもりはあるのかないのか、二択でお答えください。

○国務大臣(加藤勝信君)
冒頭のたしかご質問の中で、この厚生労働委員会においても、障がい者や難病患者の方々が、地域や職場において、本人の希望に応じて、医療、福祉、雇用等の各分野の支援を受けながら、その方らしく暮らし、働くことを推進することが重要ですということを申し上げたところでございますので、これにのっとって対応していきたいと思っております。

なお、今の件も含めて、議論された件が社会保障審議会障害者部会及び労働政策審議会障害者雇用分科会においてそれぞれ議論が行われ、本年6月にも取りまとめが行われたところでございますので、その中においては、雇用と福祉の両施策が連携した取組の実施状況を踏まえながら支援を推進すべき旨が指摘をされているところでございますので、こうした取りまとめも踏まえて厚労省としても必要な対応を図っていきたいというふうに考えております。

○天畠大輔君
そうならば、告示の改正が先決です。代読お願いします。

まとめます。告示第523号は、医療的ケア児や若い障がい者の社会参加の道を奪うことにもつながります。障がいを持つ子供たちが高校、大学への進学や地域の企業への就職を諦めることがないようにするべきです。これからも告示第523号の改正を求め続けます。

質疑を終わります。

資料1

※資料2~4は、一般社団法人わをん発行ハンドブック『なにそれ!? 介助付き就労』からの抜粋
https://wawon.org/assets/file/202203/webhandbook.pdf